【編集長の新宿絵本日記】ともだちはいる?いらない? 2020年4月28日『ともだちや』
どうだろう、今なら平気で言えてしまうかもしれない。
「100円くれたら、ともだちになってあげるよ。」
なんてね。
いやいやいや、なんだかこれはおこがましい。
「……100円あげるから、1時間ともだちになって。」
こっちの方がしっくりくる。しっくり……くるかな?
だってさ、100円あげたらその時点からともだちがスタートするわけでしょ。
だったら考えておかなくちゃ。
どうふるまったら「ベストなともだち時間」を過ごせるのか。
何をしたら楽しいのか、何をしたら喜んでくれるのか。
せっかくの「ともだち時間」、嫌な気持ちにはなりたくないし、ケンカなんてもってのほか。
どうせだったら今より好かれたいし、趣味が合うと思われたい。
いや、あんまり好かれようと思いすぎてもいやらしいよね。
ここは堂々と、ありのままの自分、自然体でいかなくちゃ。
でも、ありのままを好きになってもらうには、
100円じゃ、足りなくない?
もっと用意しておいた方がいいのかしら。
そもそも、もっと相手のことを知っておかなくては何が起こるかわからない。
ああ、忙しい。ともだちってこんなに大変なの?
なんか、めんどくさくなってきたぞ。
そもそも、こんなに準備するんならお金もらっても……
なんだこれ。
なにやってるんだ、私!?
ともだちや
何だかおかしな格好をしたキツネがやってきましたよ。
両手にちょうちん、のぼりを立てて、彼は言うのです。
「えー、ともだちやです。
ともだちは いりませんか。」
彼が思いついたのは「ともだちや」。
1時間で100円、2時間で200円…お金をもらってともだちになってあげるのです。
ひとりぼっちの人に、さびしい人に、ともだちや。
うーん、これはなかなか名案!? どうかしら。
200円もらってクマのともだちになったキツネは、とても疲れているように見えますが…。
そんな時、どこかから声がかかります。
「おい、キツネ」
こわごわと声のする方を覗き込むと、そこにいたのはオオカミ。
トランプの相手をしろ、と言うのです。
言われるままにひとりしきりトランプ遊びで盛り上がった後、キツネがお代をもらうために申し訳なさそうに手を差し出します。すると、オオカミは思わぬことを言うのです……。
「ともだち1時間100円」、なんて強烈なフレーズなのでしょう。だけどこれこそ、これから長く続くキツネとオオカミの関係の始まりの物語なのです。こんな事を思いつくのは一体どんな狡猾なキツネなのかと思いきや、憎めないどころか考えている事が全部が表情に出てしまうような、愛嬌たっぷり、一度見たらすぐに好きになってしまうようなキャラクターなのです。オオカミから「ほんとうのともだち」という言葉を聞いて、心の底から驚くキツネ。どうやら何も知らずに「ともだち」を欲しがっていたのは、キツネの方だったようです。
「なるほどねえ」
いつだって媚びることなく、思ったことだけをいうのはオオカミ。しびれますよね。この二人の「ともだち関係」はこれからどうなっていくのでしょう。内田麟太郎さんと降矢ななさんによる最高傑作シリーズ「おれたち、ともだち!」の記念すべき第1作目。この1冊ははずせませんね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ふうー、今日もひとりで頭をめぐらせて疲れちゃった。
だいたいさ、ともだちなんているのかしら。
自分が好きなものと他人が好きなものが、そうそうぴったりくるわけないんだしさ。
考え方だって違うに決まってるんだしさ。
わざわざ会いにいくのだって、時間つかっちゃうしさ。
「そう思わない?」
話しかけているのはPC画面の中。長く続く在宅ワークの日々、くだらない事で頭がいっぱいになるので、時々こうやってつないでは、会社の同僚に聞いてもらっているのだ。
どうやら私には、確実に「ともだち」が必要のようですね。
「おれたち、ともだち!」シリーズ
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
この記事が気に入ったらいいね!しよう ※最近の情報をお届けします |