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日本とイギリスの距離もへっちゃら! 『ドーナツやさんのおてつだい』もとしたいづみさん、ヨシエさんインタビュー

2018年の「カルピス絵本」ができました!

「カルピス絵本」をご存知ですか?白酒に見立てた「カルピス」で乾杯し、楽しい思い出につながるように、アサヒ飲料株式会社が実施している「『カルピス』ひなまつりプレゼント」。子どもたちの健やかな成長を願い、1982年から「思いやりの気持ち」や「想像することの楽しさ」など、テーマに合った絵本を発行し、そのダイジェスト版であるミニ絵本と「カルピス」を全国の幼稚園・保育園を対象にお届けしています。
2018年は「”いっしょにつくる”楽しさ」をテーマに、絵本ナビが協力して『ドーナツやさんのおてつだい』が出来上がりました!
 

絵本ナビ初の絵本 ”こころも おなかも まんぷくえほん”

ドーナツやさんのおてつだい

ドーナツやのポルカさんは、毎日おいしいドーナツを作っています。
早春のある日、そのこうばしい香りに誘われて、町の子どもたちがわいわい楽しくポルカさんのドーナツ作りのお手伝い!そして、お礼のドーナツを食べていたら、不思議な手紙が一通届きました。
「おいしくて きれいな ドーナツ 100こ、 あした あなもりやまの てっぺんに もってくること!」
ポルカさんと子どもたちが「いっしょに」作るカラフルでおいしそうな100個のドーナツを見ているだけで、おなかが「まんぷく」になりますが、さらにあらたな出会いで心も「まんぷく」に! 幸せいっぱいの春を感じられる、読み聞かせにぴったりの絵本です!

この絵本はアサヒ飲料株式会社より、全国の幼稚園や保育園に2018年の『カルピス絵本』として贈呈されます。

おいしそうな絵本の作者は、一体どんな人たちなのでしょう? 文章担当のもとしたいづみさんと絵担当のヨシエさんに、Wインタビューしました。

●もとしたいづみさん

1960年大分県生まれ。絵本・童話作家。絵本に『どうぶつゆうびん』(産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、あべ弘士・絵 講談社)『ふってきました』(日本絵本賞、講談社出版文化賞絵本賞、石井聖岳・絵 講談社)『おむかえまだかな』(おかだちあき・絵 学研)「すっぽんぽんのすけ」シリーズ(荒井良二・絵 鈴木出版)、童話に「おばけのバケロン」シリーズ(つじむらあゆこ・絵 ポプラ社)他多数。エッセイ『レモンパイはメレンゲの彼方へ』(ホーム社)も好評。

●ヨシエさん

1979年東北生まれ。イラストレーター・絵本作家。2011年より英国に移住。イギリス人の夫と子ども2人と犬とロンドン郊外で暮らしつつ創作活動を続けている。2014年秋に友人アーティストとイラストデザインスタジオ「Sas and Yosh (サス アンド ヨシュ)」を設立。ファッション・ライフスタイル関連商品を英国から世界へ発信している。 絵本は『ヨシエフォンデュ』『ポンポルトンタン』『ギイドロとマレンカレン』『ハッピーイースター』(くもん出版)など。

きっかけは、「カルピス」のパッケージ

『ドーナツやさんのおてつだい』は小さな町のドーナツ屋さんが舞台です。ドーナツ屋さんを選んだのは、なぜなのでしょうか?

もとした:編集者さんからは、特に「この食べ物で書いてください」という指定はなかったんです。ただ、「カルピス」というと、白地に青のドットですよね? その丸が、たくさんの丸いドーナツのイメージにつながったのかもしれません。“ポルカ”という名前は、「カルピス」のイメージである水玉模様《ポルカドット》をベースにしています。

着想も主人公ポルカさんの名前も「カルピス」がきっかけなのですね。もとしたさんは、ご自身のお子さんが小さい頃によくドーナツを作ってらっしゃったそうですね。

もとした:砂糖をまぶすのはいつも子どもたちの役割。我が家では、紙袋に砂糖とドーナツを入れていたのですが、それだと中が見えないので、絵本では透明な袋を使っていますね。おいしそうなドーナツができる様子が音からも伝わるように、そして心地いい響きかどうか、オノマトペは何度も声に出して考えました。

ポルカさんがキッチンに立つシーンでは「こねこねこねこね まぜあわせ」や「ぱっこん ぱっこん かたを ぬいて」など、口に出したくなるオノマトペが出てきます。作家さん自身が子どもたちとの時間を満喫した経験が、作品に生きているのでしょう。出来上がったおはなしを読んだヨシエさんはどう感じましたか?

ヨシエ:本当にかわいいおはなしで、しかも謎解きや冒険の要素もあり、最後はすごくハッピー! ポルカさんはどんなおじさんなのかな? 「おてつだいたい」の子どもたちは元気いっぱいなんだろうな……と、文章からイメージがあっという間に湧き出てきましたね。

ドーナツが結ぶ 絵本への情熱!?

現在、イギリスにお住まいのヨシエさん。二人の作家の間には物理的な距離がありましたが、制作に支障はなかったのでしょうか?

もとした:ヨシエさんから修正が届くたびに、ラフ画がどんどん素敵になっていったので、絵を見ながら原稿を何度か書き直しましたね。

ヨシエ:編集者さんを通じて、もとしたさんが書き直してくれた原稿が届くんです。ときには私の作った絵に合うように文章もスラスラっと素敵に変えていただき、感激! 絵本の完成がさらに楽しみになりました!

なるほど、あるべき形に向かってつき進むプロの姿勢は、距離すら軽々と乗り越えるのだとよくわかります。

「おてつだいたい」、100個のドーナツ……シーン制作秘話

ポルカさんを手伝う9人の「おてつだいたい」には、細かな設定があるそうですね。

ヨシエ:名前と性格、それときょうだい関係なども設定があります。全部、もとしたさんのおはなしを読んで自然に生まれたキャラクターたちなんですよ。絵本の見返しに登場人物の名前が紹介されているので、それを読んでからまた絵本を読み返してもらえると、より楽しめると思います。いろいろな年齢、さまざまなきょうだい構成の子どもたちが絵を見て共感できるようにしてみました。

見返しには「おてつだいたい」の子どもたちの名前が紹介されています

考えるのがおもしろそう! ほかに作業していて特に楽しかったところはありますか?

ヨシエ:みんなでドーナツに絵や模様を描いている場面ですね。ドーナツをあなもりやまへ運んで、お皿に並べる場面では、ちゃんとドーナツ100個を描いたんですよ。ほんとに大変でした! 100個描くのはもちろんですが、ページをめくったときに、ちゃんと前のページと配置が合っているように、ドーナツの並び方や、柄の位置など、編集者さんに何度もチェックしてもらって、間違いのないよう修正をしたので、全部OKをもらったあとは、すごい達成感でした……。

大変だった100個のドーナツの場面、読者の子どもたちはわくわくしながら読むでしょうね。ところで、ヨシエさんの絵はどうやって描かれているのでしょうか。

ヨシエ:私のやり方はまず、すべてのキャラクターの体のパーツをアクリル絵の具で描いていき、それをパソコンに取り込みます。そのパーツたちを、事前に描いてスキャンしたラフの線画をガイドにして、パソコン上でコラージュしていくんです。今の技法になったのには、私が子どものころ、マンガ家になりたかった影響があると思うんです。スクリーントーンという画材が私はすごく好きで、昔からイラストを描くときに使っているんです。

だから絵本の絵を描くときも、自然とそういった素材や、大好きな柄生地やキラキラしたものといったパーツを、好きなようにコラージュする手法になったんだと思います。

制作に使ったパーツは、こんなにたくさん!
色がついていない方は、ラフの線画です

愛されキャラのポルカさんはじめ、絵本の絵全体にヨシエさんの「大好き」がちりばめられているのですね。

ミニ絵本も、負けない仕上がりに

『ドーナツやさんのおてつだい』の内容を8ページにまとめたダイジェスト版ミニ絵本は、アサヒ飲料株式会社が実施している「『カルピス』ひなまつりプレゼント」で全国の幼稚園・保育園に配布されています。ミニ絵本の制作もかなり力が入っていると伺いました。

もとした:そうですね。8ページでもちゃんと面白さが伝わるよう、文章を新たに書き直しました。(特に大きく変えたのは)ポルカさんの心情をどう描くかという部分かな。短い中にもポルカさんの気持ちの変化がしっかりと伝わるよう、表現を考えました。

ミニ絵本はてのひらサイズです

絵の方ではどうでしょう?

ヨシエ:絵自体は同じですが、ミニ絵本の見開きの絵を最大限に活かせるように、コラージュのデータを微調整しました。ミニ絵本だけど、絵本本体に負けない素敵な仕上がりになったと思います。

もとした:園でミニ絵本を読んで、もっとおはなしを詳しく知りたくなった子には、ぜひ本物の絵本で楽しんでもらえたら嬉しいですね。『ドーナツやさんのおてつだい』に登場する子どもたちは、おいしいドーナツを食べることだけでなく、作るのが楽しいから手伝っている。なぞの手紙が来て、ドーナツ100個作るのは大変だけど、作るなら楽しんでやろうよ! という子どもたちならではの切り替えの早さが、素敵だと思っているんです。そういう気持ちに、共感してもらえたらなと思います。

どちらの絵本も、お二人の想いがぎゅっと詰まった作品ですね。子どもたちに読んでもらうのが、待ち遠しい。どうもありがとうございました。

 

構成・文/てらしまちはる

社会から信頼され
求められる企業として

 

アサヒ飲料は、お客様に信頼される「安全、安心でおいしいモノづくり」を通じて「元気」「楽しさ」「健康」をお届けし、お客様の豊かな生活シーンづくりに貢献する企業をめざしています。また、未来を担う子どもたちの育成支援活動にも継続的に取り組んでいます。
 

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絵本ナビ編集部
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