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絵本講師ふわはねが案内する展覧会レポート

【展覧会へ行こう】「ひだまりの絵本画家 柿本幸造展」(案内人:ふわはね)

コロナも少し落ち着き、原画展や企画展などがまた増えてきたように感じます。

私は展覧会を訪れるのが大好きです。そこには生きている絵本の絵があります。

その絵からは作家さん画家さんの息遣いが聞こえてきます。描き手の背景を知り、想いを知ることで、その絵本がより好きになります。

 

これからいろいろな原画展などの展覧会のご紹介をしていければと思っています。

ぜひ大人も子どもも本物と出会う場所に足を運んでみませんか。

それはもしかするとその後の人生を変える出会いとなるかもしれません。

ひだまりの絵本画家 柿本幸造展

今回ご紹介するのは、広島県広島市中区にあるひろしま美術館で開催中の「ひだまりの絵本画家 柿本幸造展」です。

 

(※本記事の画像は、ふわはねがひろしま美術館に掲載の許可をもらい、撮影したものとなります)

ひろしま美術館エントランス

柿本幸造さんというと皆さんはどんな作品が思い浮かぶでしょうか。

やっぱりミリオンセラーの『どうぞのいす』(ひさかたチャイルド)でしょうか、

やはり「どんくまさん」シリーズ(至光社)でしょうか、いやいやなんといっても1971年から小学校の国語の教科書に掲載されている「くじらぐも」(光村図書出版)かもしれません。

本当にたくさんの作品が今なお愛され続けていると改めて実感した展覧会でした。

美術館情報

ひろしま美術館は、1978(昭和53)年に開館。

広島市の中心部、緑に囲まれた広島市中央公園の中にあり、"愛とやすらぎのために"をテーマに、モネ・ルノワール・ゴッホなど、印象派を中心としたフランス近代美術や、日本近代美術を所蔵する美術館。

青い空と公園の緑の中にある安らぎの場として人々に愛されています。

 

住所: 〒730-0011 広島県広島市中区基町3-2

電話:082-223-2530

ファックス:082-223-2519

アストラムライン県庁前駅より徒歩1分

JR広島駅南口より市電(1番・2番・6番)「紙屋町東」下車徒歩5分

デザイナーから絵本の世界へ

展示は、広島県高田郡吉田町(現在の安芸高田市吉田町)出身の柿本幸造さんの人生の歩みを辿ります。まず目に入ったのはデザイナーとして始まりでもあった日産自動車のカレンダーとして描かれた車の数々。

 

 

日産自動車カレンダー 1950年代ごろ 11•12月

鉄工所で製図の仕事に携わってたため、自動車をはじめとする乗り物を精密に描く才能に長けており、その後の絵本作りの仕事へのきっかけとなったそうです。

柿本幸造さんというと動物や子ども達という絵のイメージが強かったのですが、それらの見事な絵は車の一番いい顔を捉えていて、改めて絵本の中の乗り物に注目してみたくなりました。

構図の神様

「柿本先生は構図の神様」と編集者たちの間で言われていたそうです。

そしてどの絵も似たような場面が続くことなく描かれる、と。
 

どうぶつのカーニバル「こども音楽館 第2巻」1969年刊 文:筒井敬介 学習研究社 p25

確かに、鳥の目のような俯瞰した絵もあれば、遠くに子ども達の姿を花の影から覗く動物からの目線のようなもの。その目線は上からあり、下からありと多様で、それでいてどれも自然で一枚の絵としての完成度がとても高いと感じました。

 

また戦後まもなく『ひかりのくに』(1946年)や『チャイルドブック』(1949年)、『よいこのくに』(1952年)『こどものせかい』(1955年)が創刊され、それらの月刊絵本が柿本幸造さんの活動の場となります。

月刊絵本では月ごとの季節にちなんだものをテーマにすることが多く、四季折々の自然の豊かさや子ども達の生き生きとした姿、暮らしのあたたかさが描かれた作品が多く見られたのが印象的でした。

愛され続ける絵本たちと教科書に残るお話

私の中で柿本幸造さんといえば子ども達と楽しんだ100万部を超えるベストセラー作品『どうぞのいす』(ひさかたチャイルド)やどんくまさんのシリーズ(至光社)。

「どうぞのいす」展示風景

そして私自身大好きだった国語の教科書のお話『くじらぐも』。これは1971年以来いまなお、小学校1年生の国語の教科書(光村図書出版)に掲載され、多くの子ども達に親しまれています。その原画が見れるとは!! 大感動でした。

そしてこのお話は改訂のたびに絵が見直され、何度も描き直し届けられたそうで、展示にはその時々の教科書が並び、絵の違いを楽しむことができました。柿本幸造さんの真摯な仕事への向き合い方、丁寧さを感じることができました。

「くじらぐも」(教科書『こくご一下 ともだち』1996年度版/作:中川李枝子/光村図書出版)

故郷を描く

柿本幸造さんは広島県高田郡吉田町(現・安芸高田市)の出身。

その故郷の情景も多く描いていました。

至光社の月刊絵本『こどものせかい』ふろく『にじのひろば』の表紙絵

それは穏やかであたたかく、誰もが心に持つやさしい景色。

だからこそその絵を見ていると、どこか懐かしく安心するのかもしれません。

ゆったりとした展示は空間を最大限にいかし、柿本幸造さんの仕事への熱意と愛情を感じるものでした。コロナ禍に何度も鎌倉のアトリエに足を運ばれ、その仕事ぶりを肌で感じられた美術館職員の方の想いがつまった展示でした。

美術館のお楽しみ ミュージアムショップ

原画展のお楽しみは何と言っても最後のミュージアムショップなのは私だけでしょうか。

今回の原画展でのオリジナルのグッズもたくさん!!嬉しい悲鳴でお買い物を楽しみました。

柿本幸造さんの絵本もたくさんあり、今見た原画の絵本を持ち帰れる喜び、家に帰って楽しめる喜びを感じました。

外に出ると、こんな楽しさも!

『どうぞのいす』に登場するうさぎさんのパネル
どんくまさんも!!

おわりに

柿本幸造さんの故郷である広島で、1950年代から1990年代の作品までの原画を約200点展示した、「ひだまりの絵本画家 柿本幸造展」。人気の絵本の原画を並べるだけではなく、デザイナー時代の作品から、名作童話、また四季折々の情景画まで鑑賞することができます。

そこには鎌倉のアトリエに残されていたスケッチブックの数々や、絵を書くための資料なども展示されていました。資料集めから始まり大変丁寧で妥協を許さなかったと言われていたそうです。しっかりとした下調べや資料集めをし、妥協を許さず一筆一筆描く職人としての絵描き、柿本幸造さんの魅力が余すことなく伝わる展示でした。

 

会期は2024年1月14日まで。

さぁ、会期1ヶ月を切りました。

ぜひ冬休み足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

案内人は……

ふわはね(内田 祐子)

絵本講師・JPIC読書アドバイザー・子育てアドバイザー・ふわはねえほん 主宰
 

大学で児童文学を学ぶ。2005年絵本講師1期生として絵本講師資格取得。関西を中心に企業での定期教室をはじめ、幼児教育に携わる先生や書店員への研修。絵本講座、研修、絵本コンサルなどを行っている。

絵本のつなぎてとして、絵本の作り手と読み手を。親と子を。人と人を繋いでいる。

大学3回生と高校3年生の娘をもつ。インスタグラム @fuwahane 

また次回の展覧会レポートもお楽しみに♪

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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