【体験news】こんな展覧会見たことない!?丸裸の谷川俊太郎展@東京オペラシティ アートギャラリー
「谷川俊太郎」という人物・人生・作品を視覚的に知る刺激的な方法
2018年1月13日(土)から東京オペラシティ アートギャラリーにて開催中の話題の「谷川俊太郎展」。みなさんは、もう行かれましたか。
オープン前日、1月12日(金)の内覧会に一足お先にお邪魔してきました。谷川俊太郎さんの人物像に焦点をあてたという今回の展覧会。そこには、足を踏み入れるまで全く想像のつかない新しい驚きの世界が待っていました。「谷川俊太郎展」は、東京オペラシティ アートギャラリーで、3月25日[日]まで開催されています。是非、この機会に谷川さんの詩の世界に飛び込んでみましょう。みなさんのその目で実際に体験してみてくださね。それでは、その刺激的な展覧会の様子をちょっぴりとご紹介いたします。
詩がわからない人ほど感じてほしいGallery1:音と映像による新たな詩の体験
ギャラリーの入口を入って左側の展示室へ。
白い大きなカーテンをくぐると、そこには名作絵本『ことばあそびうた』に収録されている詩「かっぱ」などが展示されています。ドキドキ高鳴る胸を抑え、さらに奥の部屋へと進みます。通された部屋は薄暗く、たくさんのテレビのスクリーンが壁に取り付けられ一回りしています。
一体、何が始まるというのでしょう...?鑑賞している人たちは部屋の真ん中に立ったまま、壁のそれぞれのスクリーンを見てキョロキョロ。するといきなり!1つのスクリーンに、大きなひらがなの1文字と谷川さんが発音したその文字の音が映し出され、消え、また次の文字が次のスクリーンへとどんどん伝染していくではありませんか!気づけば、その音は脳内の中でことばとなり、「詩」となり、音楽と姿をかえていきます。映像は、それぞれの詩によって、文字ではなく人間の口元が映し出される演出もありました。この空間にいる時だけ確実に「時」が止まっています。時空を超えた部屋の中で、音楽とことばがまるで振り続ける雨や、押し寄せる波のように脳内の中に渦となりぐるぐる。気づけばどっぷりと谷川俊太郎さんの「詩」の世界のど真ん中にいました。
小山田圭吾さん(コーネリアス)の音楽とインターフェイスデザイナー中村勇吾さん(tha ltd.)の映像による、谷川俊太郎さんの詩の空間。こんな体験は初めてでした!紙に書かれた詩が音になる瞬間を耳で、目で体感できるなんて、なんて面白いんでしょう。文章で説明してもきっとなんのことやらさっぱりですよね。これはもう体験していただくしか...。「詩」のことはわからない!という人に体験してほしいです。
谷川さんを構築しているモノ・思い・カタチGallery2:「自己紹介」
詩の世界へどっぷりダイビングした部屋をあとにして、白いカーテンをまたくぐります。
すると今度は、ぱぁっと開けた大きな展示室へ。これがまた見たことのない不思議な柱がたくさん並んでいるのです。柱には断片的な文章が書かれています。「?」と思って、一歩足を踏み入れると、なんとその白い柱と思っていたものは、違う角度からみるとそれぞれが巨大な棚のようなものになっています。棚には大切にされてきたモノが陳列されていたり、写真や手紙が貼られていたり...。
部屋の中へと進めば進むほど違う世界が見えてきます。一番衝撃的だったのは、「私は背の低い禿頭の老人です」という文章が書かれた柱のサイドをみると、なんと等身大の「谷川俊太郎さん」が!
20行からなる谷川さんの詩「自己紹介」 谷川俊太郎
私は背の低い禿頭の老人です
もう半世紀以上のあいだ
名詞や動詞や助詞や形容詞や疑問符など
言葉どもに揉まれながら暮らしてきましたから
どちらかというと無言を好みます
私は工具類が嫌いではありません
また樹木が灌木も含めて大好きですが
それらの名称を覚えるのは苦手です
私は過去の日付にあまり関心がなく
権威というものに反感をもっています
斜視で乱視で老眼です
家には仏壇も神棚もありませんが
室内に直結の巨大な郵便受けがあります
私にとって睡眠は快楽の一種です
夢は見ても目覚めたときには忘れています
ここに述べていることはすべて事実ですが
こうして言葉にしてしまうとどこか嘘くさい
別居の子ども二人孫四人犬猫は飼っていません
夏はほとんどTシャツで過ごします
私が書く言葉には値段がつくことがあります
このメインの展示室では、谷川さんご自身の20行からなる詩「自己紹介」の文章から、20のテーマを抜き出し、谷川さんが影響を受けた「もの」や音楽、家族写真、大切な人たちとのお手紙、コレクションなどが展示されています。その様子はまるで、谷川さんの頭の中にこっそり入って、引き出しを覗いてしまったような不思議な感覚を体験できます。
谷川さんの多岐にわたる創作の数々は、詩はもちろんのこと、詩作以外にも有名な主題歌の作詞、翻訳、映画の脚本など、様々な形でその時代に存在し、今日まで誕生し続けています。そのため、子どもから年配の方、それぞれの世代によって感じる谷川俊太郎像が、異なるみたい。膨大な作品を残した谷川俊太郎像をどのように視覚的に切り取り、浮かび上がらせるのかを挑戦しているのがこの展覧会の醍醐味でもあり、とても面白いのです!
谷川さんの質問に著名人が答える コリドール:「3.3の質問」
年譜を見ながら出口に向かって歩くと、「3.3の質問」があります。
谷川さんが1986年に出版した『33の質問』(ノーマン・メイラーの「69の問答」にちなんで33の質問を作り、7人の知人に問いかけをしながら語り合う)がもとになっている展示作品です。展覧会では、当初の33の質問から谷川さんが3問を選び、それに「0.3の質問」を加え作った「3.3の質問」に対する回答を作品として展示しています。回答をしているのは、様々なジャンルで活躍中の著名人。意外な人がその回答をしていて、とても興味深いです。「問うこと」、「答えること」、「そこに立ち会うこと」という詩的な体験がコンセプトなのだそうです。「詩」への距離がものすごく身近に感じられますよ。
それぞれの展示作品で、これだけ「詩」にまつわる内容を視覚的、聴覚的に脳や心を動かされながら鑑賞したことはこれまでなかったように思います。この展覧会の後に、谷川俊太郎さんの作品を改めて読み直してみたいと思いました。みなさんも、会期中に谷川俊太郎さんの日々の暮らしに触れ、ご自身の中の谷川俊太郎像に発見してみてください。そして、ちょっと変わった新しい「詩」の体験を思う存分堪能してくださいね。
「谷川俊太郎展」の図録やグッズは随時入荷!
ギャラリーショップでは、谷川さんの関連書籍がたくさん販売されていますよ。今回の展覧会のために作られた図録は、特別な装丁が施された3種類の色のカバーが用意されています。図録の入荷時期は、1月下旬とのこと。また、この展覧会の限定グッズについても随時入荷予定です。気になる方は、ギャラリーショップの更新情報をこまめにご確認くださいね!
展覧会概要
[開催概要] 展覧会名: 谷川俊太郎展 TANIKAWA Shuntaro
会期: 2018年1月13日[土]─ 3月25日[日]
会場: 東京オペラシティ アートギャラリー
開館時間: 11:00 ─19:00( 金・土は20:00まで/最終入場は閉館の30分前まで)
休館日: 月曜日(祝休日の場合翌火曜日)、2月11日[日・全館休館日]
入場料: 一般1,200(1,000)円/大・高生800(600)円/中学生以下無料
* 同時開催「収蔵品展061 なつかしき」、「project N 70 宮本穂曇」の入場料を含みます。
* 収蔵品展入場券200円(project Nを含む/割引無し)もあり。
* ( )内は15名以上の団体料金。
* 障害者手帳をお持ちの方および付添1名は無料。
* 割引の併用および入場料の払い戻しはできません。
お問合せ: 03-5777-8600(ハローダイヤル)
主催: 公益財団法人 東京オペラシティ文化財団、朝日新聞社
協賛: 日本生命保険相互会社
協力: パナソニック株式会社、株式会社ヤマハミュージックジャパン、
企画協力: ナナロク社 音楽:小山田圭吾(コーネリアス)、映像:中村勇吾(tha ltd.)、会場グラフィック:大島依提亜、会場構成:五十嵐瑠衣
開催記念対談
• 1. 1月27日[土] 都築響一(編集者) × 谷川俊太郎
• 2. 2月10日[土] 小山田圭吾(コーネリアス)(音楽家) × 谷川俊太郎
• 時間:各回14:00[ 13:45開場]会場:東京オペラシティビル7F会議室 定員:各回160名(全席自由)
• 参加費:無料(展覧会の入場は別料金)、要整理券
• *開催当日11:00よりアートギャラリー入口にて整理券を配布します。整理券はおひとり1枚のみ。
スペシャルライブ 谷川俊太郎&DiVa「 よしなしうた」
谷川俊太郎による詩の朗読と1995年に結成された、高瀬"makoring"麻里子(Vo)、谷川賢作(Pf)、大坪寛彦(B) による現代詩を歌うバンドDiVaのスペシャルライブ。
• 日時:2018年3月10日[土] 14:00開演(13:30開場)会場:東京オペラシティ リサイタルホール
• 料金:3,500円[全席自由・税込み]チケット予約:東京オペラシティ チケットセンター 03-5353-9999
NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]との展覧会相互割引 NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]の企画展「坂本龍一 with高谷史郎|設置音楽 2 IS YOUR TIME」 会期2017年12月9日[土]—2018年3月11日[日]と入場料が団体料金になる相互割引を実施します。詳細はウェ ブサイトにてお知らせします。
富田直美(絵本ナビ編集部)
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