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子どもと考えるSDGs|海洋プラスチック問題から海を守ろう

SDGsの目標14【海の豊かさを守ろう】について考える時に必ず出てくるのは「海洋プラスチック問題」です。私たちの生活を豊かにするプラスチックは、海の豊かな環境を破壊する要因のひとつです。

 

今回は「海洋プラスチック問題」についてその原因や対策アクションについて考えます。子どもと一緒に絵本を使って話し合ってみましょう。

海洋プラスチック問題ってなあに?

私たちの生活に必要不可欠なプラスチック。しかし、そのプラスチックごみが海の環境を壊しているのでSDGsの中でも重要な課題となっています。

 

海に流れ込み、海を汚染しているプラスチックのことを「海洋プラスチックごみ」と呼んでいます。

ウミガメの体に捨てられた漁業網が巻きついる写真や、海鳥の体にビニール袋が引っかかってい

る写真を見たことはありませんか?

また、海岸にプラスチックごみがたくさん打ち上げられている様子を見たことがある方も多いでしょう。

海洋プラスチックごみで海の生き物たちは危機にさらされています。ポリ袋が海にぷかぷか浮く様子がクラゲに似ているため、ウミガメが餌と間違えて食べてしまう事例も。プラスチックごみは消化されずお腹に溜まってしまうので、必要な栄養が取れずに死んでしまうのです。

2019年にスコットランドの砂浜で発見されたクジラの死体からは、恐ろしいことに100kgものプラスチックが見つかりました。

 

海洋プラスチックごみにより、私たちにとって大切な海、しいては地球が危機的状況にあると言えます。

海洋プラスチックごみの量が大変なことに!その原因は?

プラスチックは私たちの生活を非常に豊かにしてくれます。20世紀の初めに発明されてから様々な場面で活用されているプラスチック。

 

軽くて、丈夫で、安価でそれまでガラスや鉄、象牙などの自然資源の代用品になりました。これにより自然資源の節約や、運搬時のエネルギー軽減などメリットもたくさんあります。

 

プラスチックが大量に作られるようになった1950年から70年余りが経ちます。その期間で、80億トン以上のプラスチックが生産されました。

そして問題はここから。プラスチックは自然に分解されない素材なので正しく処理されないといつまでもごみとして残り続けます。

そのごみは川を越え、やがて海へと流れ込んでいきます。その量はなんと1年間に800万トンに及んでいるのです。自然に還らないプラスチックごみは、半永久的に海を漂うことに。

 

紙ごみが分解されるまでに2~6週間かかるのに対し、プラスチックボトルは450年、プラスチック袋は最大1000年かかると言われています。

 

6歳の息子に「あなたの子どもの子どものそのまた子どもが生きている時代にも、今使っているプラスチックごみが残っているんだよ」と伝えると大変驚いていました。

消えることがなく、増え続けるプラスチックごみ。このままでは2050年には海の中で魚の量よりも多くなってしまいます

やっかいな「マイクロプラスチック」は私たちも食べている?!

海洋プラスチック問題で一番厄介なのが「マイクロプラスチック」です。マイクロプラスチックは、紫外線や海の流れで細かくなったプラスチックごみのこと。また、歯磨き粉に入っているマイクロビーズや化学繊維でできた衣類からほつれた繊維も含まれます。

 

マイクロプラスチックは5mmほどのとても小さなものです。しかし、分解されないため海流に乗り集まっていき世界中に巨大なごみだまりを作ります。帯状に広がったごみだまりは「ごみベルト」と呼ばれ、北太平洋には世界最大の「太平洋ごみベルト」があるのです。

食物連鎖に入り込んでいるマイクロプラスチック

マイクロプラスチックが海の流れに沿って漂うさまは、プランクトンの動きに似ているため、小さな魚が間違えて食べてしまいます。

そして、マイクロプラスチックを食べた小さな魚をさらに大きな魚が食べ、プラスチックが含まれた海の食物連鎖ができあがっているのです。

 

さらに恐ろしいことに、その魚を私たち人間も食べています。つまり、私たちもマイクロプラスチックを食べているということ。

プラスチック自体は体の外に排出されますが、人体に影響があるかどうか研究されている最中です。

 

どんな影響があるのかはまだわかっていませんが、「プラスチックを食べている」という事実に驚きを隠せません。

海洋プラスチックを減らすための「3R(リユース・リデュース・リサイクル)」

今すでにある海洋プラスチックをすべて無くすことは難しいです。しかし、これ以上増えないようにできることがあるはず。自然に分解されないプラスチックですが、燃やすとなくなります。

 

では、すべて燃やせば問題解決なのでしょうか。答えはNO。プラスチックを燃やすと二酸化炭素が排出され地球温暖化を促進させるだけでなく、ダイオキシンなど有害物質が発生します。

 

「燃やす」以外にプラスチックごみを減らす方法はあるのでしょうか。

もちろんあります。それがリデュース・リユース・リサイクルの3つの方法。3Rと呼ばれています。

3R

リデュース

プラスチックごみを減らしていくこと

 

リユース

使い捨てではなく、繰り返し使うこと

 

リサイクル

別のプラスチック製品へと変えるための資源にすること

この3つの中でも海洋プラスチックを減らすのに一番効果的なのはどれでしょう。ずばり「リデュース」です。

使い捨てのプラスチック製品をなくしていくこともひとつです。

 

世界では様々な取り組みが行われていますよ。フランスでは2020年から段階的にプラスチック製品の販売が禁止に。イギリスのスーパーでは野菜や果物のプラスチック包装をやめていく動きがあります。ケニアではポリ袋を作るのも使うのも法律で禁止されており、破ると厳しい罰則もあるそうです。日本では2020年7月からレジ袋有料化が始まりましたね。

親子で考えよう!「私たちにできること」対策アクションプラン

筆者が「海洋プラスチック」という言葉を耳にするようになったのは、アメリカのシアトルでプラスチック製ストローの使用を禁止した頃です。

その時は、あまり自分ごととして考えていませんでした。しかし海洋プラスチックについて調べていくと、とても身近な問題で誰しもが考える必要があると感じたのです。

 

ひ孫の子どもが大きくなっても、今あるプラスチックごみは残り続けるのです。また私たちは魚を介してプラスチックを食べているという事実もあります。とても恐ろしいですね。海洋生物が暮らす海の美しい姿を、この先の未来で見られなくなってしまう可能性も。子どもたちの未来のためにも行動に移す必要があります。

 

筆者は6歳の息子と、親子で取り組める海洋プラスチック問題の対策アクションプランを考えました。

  • 物を長く大切に使う
  • すぐ飽きてしまいそうなおもちゃは買わない
  • 木のおもちゃなど自然に還る素材で長く遊べるのものを選ぶ
  • ゴミの分別をきちんとする
  • 海のお掃除ボランティアに参加する

海洋プラスチックごみを生み出さないためには、使い捨てのプラスチックを増やさないことが重要です。昔は買い物に行く際も籐のカゴを使っていましたよね。今こそ、物を長く使い大切にすることが大事です。

 

そして、正しい処理方法をされる必要があります。そのためにきちんと分別してゴミ箱に捨てることを約束しました。

また、お掃除ボランティアに参加することも海の環境を守る第一歩になります。すぐに結果が出ることではないけれど、ひとりひとりが意識を変えて行動に写すことが持続可能な社会に繋がるでしょう。

海洋プラスチック問題がわかる絵本6選

海洋プラスチック問題について説明するときに、絵本を読み聞かせました。特に『ステラとカモメとプラスチック』というお話に関心を持ち、そこから自分にできることを一生懸命考えています。

『ステラとカモメとプラスチック』では、お友達になったカモメがプラスチックを飲み込み入院し、会えなくなってしまいます。そこからどうしたらプラスチックがなくなりきれいな海の環境を保てるのかを考え、小さな女の子が様々なアクションを起こします。

海洋プラスチックによる生き物の被害や、課題解決にむけての働きについて物語を通して知ることで、難しい環境問題のことでも入りやすくなりました。息子はこの絵本で「生き物の被害」に一番心を痛めていて、「ぼくもステラのように何かしたい!」と感じたようです。海の清掃ボランティアについてもこの絵本で知り「ぼくもお掃除をしに行きたい」と言うようになりました。

 

日常生活でも、道端に落ちているごみやプラスチック使用への関心が高まりました。また、ニュースや本などで海洋プラスチック問題を見聞きすると反応することが多くなっています。

絵本という子どもにとって想像しやすい題材があると、このような問題に対しても意識できるようになるんだなと実感します。

ステラの優しい気持ちが海を守る大きな行動に繋がっていく

ステラとカモメとプラスチック うみべのおそうじパーティー

仲良しのカモメがプラスチックを飲みこんでしまい、入院することに。
浜辺をきれいにする〈おそうじパーティー〉を開いたステラ。
女の子の小さな行動が、大きな変化を生みました。

海洋に流入するプラスチックごみは、年間800万トンにのぼるといわれおり、
持続可能な社会・環境をめざすうえで大きな問題となっていることは、
だれもが知るところです。

プラスチック製のストローや、包装が紙製やリサイクル可能なものなどに代わってきたり、
エコバックが浸透してきたりと、社会の意識も徐々に変化を見せています。

この絵本が伝えているのは、大きな変化を生み出すのに重要なのは、
「小さな初めの一歩」や「おもいやり」です。
身近なところから、自分にもできることを探して、行動してみよう。
そんな気持ちにしてくれる物語です。

プラスチックを含んだ海の食物連鎖がわかる絵本

プラスチックのうみ

プラスチックごみの海洋汚染を考える絵本

いろいろな形の製品を安く作ることができて便利なプラスチックは、1950年代ごろから、わたしたちの生活の中に急速に普及してきました。しかし、このプラスチック、微生物に分解されて自然に還るものではなく、半永久的に存在するので、ごみになったときに大きな問題を生んでいます。
世界中で毎年800万トンものプラスチックがごみとして海に流れ込み、海にすむ生き物たちを傷つけたり、命をうばったりしています。そしてこのままだと、2050年には、海に漂うプラスチックごみの重さは、海にすむ魚の重さよりも重くなると言われています。

この絵本では、人間が出したプラスチックごみが、どのように海を汚し、海に暮らす生き物に影響を及ぼしているのか、そしてきれいな海を取り戻すにはどうしたらいいのかを、美しいイラストと分かりやすい言葉で伝えます。
さらに巻末では、様々な角度から、プラスチック海洋汚染について解説し、今すぐわたしたちができることを、一緒に考えていきます。



【編集担当からのおすすめ情報】
青い海に、色とりどりの・・・・・・プラスチックごみ! 一見美しい表紙絵、そのギャップが生むメッセージにドキッとします。
アメリカで刊行された絵本ですが、巻末は、日本の実情も盛り込んだ解説になっています。
小学生の男の子が翻訳した、海の環境問題を考える絵本です。

ビジュアル豊富でわかりやすい!

プラスチックモンスターをやっつけよう!

日本のプラスチック対策は遅れていて、「焼却」に頼りすぎる傾向にあります。しかし、焼却は答えではなく「削減」を目指すべきという高田秀重さんの理念こそ、子どもたちに伝えるのにふさわしいものと考えます。汚染の実態を伝える写真、クリハラタカシさんのユーモラスな「モンスター」が興味を誘い、夏休みの自由研究等に活用できる実践例も豊富に盛り込みました。プラスチック問題を扱う児童書の決定版と自負しています。

海洋プラスチックが生まれる過程がわかるお話

つかう? やめる? かんがえよう プラスチック

じょうぶで便利な素材、プラスチックは、わたしたちの暮らしに役立ってきました。しかし、今、捨てられたプラスチックが、世界の海で生き物たちに深刻な問題を引き起こしているのです。この絵本では、プラスチックのすぐれた特性、製造の方法から開発の歴史など、プラスチックの成り立ちを知りながら、使用後の廃棄方法、リサイクル方法とその問題点、海に流れだしたプラスチックごみが生物にあたえる深刻な影響まで、豊富なイラストでやさしく、わかりやすく伝えます。

海洋プラスチック問題のガイドとしておすすめ

地球が危ない! プラスチックごみ(1) 海洋プラスチック?魚の量をこえる!?

私たちの周りには本当にたくさんのプラスチック製品があります。
ところがそれがゴミになったとたん膨大な量となって地球環境を破壊してしまいます。
1巻では海洋プラスチックが地球生物に与える悪影響の実態に迫ります。

具体的なアクションについて事例付きで解説

地球が危ない! プラスチックごみ(3) みんなで減らそう!プラスチック

増え続けるプラスチックごみは地球温暖化を招き今や危機的な状況を迎えています。
どうすれば自然を破壊しないで減らすことが出来るのか。
ごみに埋もれてしまわない為のさまざま取り組みを紹介しながら、
自分たち一人一人が今からできることは何かを考えます。

プラスチックは悪じゃない?!上手に付き合い海を守ろう

海洋プラスチックごみは重大な課題ですが、プラスチック製品はとても便利なのでゼロにすることはできないでしょう。丈夫で軽く、様々な形に変化し、衛生を保つ役割も。また、自然資源の代わりとなるメリットもあるんです。

 

ごみを増やさないためにも使い捨て製品を減らすなど、上手にプラスチックと付き合いたいですね。地球を守るためにサステイナブルな生活に取り組んでいきましょう。

 

次回は【12 つくる責任 つかう責任】「フードロス問題」について考えます。

編集協力・執筆

秋音ゆう

東京都在住。

3人の男の子(6歳と2歳と0歳)を育てるWEBライター。

「絵本」「幼児教育」「子どもの発達」「多様性」を得意とし、子育てメディアで執筆。

自身も絵本育児で育ち、母になってからは子どもたちと絵本のある時間を大切に過ごしている。

「生きる力の育み」をモットーに、国語講師の夫と幅広い視野で子育て・教育に奮闘中!

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掲載されている情報は公開当時のものです。
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