【編集長の気になる1冊】世界は「わたし」を中心に…ではない!?
「世界はわたしを中心にまわっているんじゃないんだ!」
自分中心だと思っていた宇宙がぐらっとくずれていった瞬間。当時小学一年生だった私が受けた大きなショック、それはもうなんだかはっきりと記憶に残っているのです。きっかけは何だったか、肝心なそちらは覚えていないんだけれど。
自分には父と母と兄がいて、学校に行ってて、習い事もしていて、クラスには友達もいてすごく楽しい。でも何だかうまくいかない事もたくさんあって。ほしいものだってたくさんある。嫌いな子だっている。こんなに毎日色々と頭の中でぐるぐると考えているのは自分だけだと思っていて。
…でも、どうやら頭の中でぐるぐるしているのは私だけじゃないらしい。まわりのみんなも色々なことを考えているし、みんなにも家族がいるし、私のことを嫌いな人だっている。
それどころか、大人だってそうみたいだ。先生だって、お父さんやお母さんだって、こんなに色んなことを考えているの? 大人だからといってみんな私だけを見ているだけじゃない。大人だからといって何にも悩みがないわけじゃない!?
そんなのって…この世界は一体どうなっているの?
気がつくのが遅いと言えば遅い。でも「世界には自分みたく頭の中にぐるぐると世界がまわっている人がたくさん存在している」という考えは、この時に誕生して、今に至っているのです。これって大事な気づきだと思うし、これこそ哲学のはじまりなのかな、とも思ったりして。
「考え方の揺れ」「視点のずれ」みたいなものを体験するのって面白い。それはきっと年齢なんて関係ないんだと思うのです。
わたし
「わたし」は「わたし」。
山口みちこ、5さい。
でも、「わたし」って誰なんだろう?
生まれたばかりのあかちゃんから見ると「おねえちゃん」。
お兄ちゃんからみると「いもうと」。
お母さんやお父さんから見ると「むすめ」だし、おばあちゃんやおじいちゃんからみると「まご」。
先生から見れば「せいと」だし、みっちゃんからみれば「おともだち」。
犬からみれば「にんげん」だし、宇宙人から見ると…「地球人」!?
「わたし」は「わたし」。
一人のはずなのに、こんなにもいっぱいの呼び名がある。
れすとらんへ行けば「おじょうさん」って呼ばれるし、映画館ではただの「こども」になる。じゃあ、私のこと知らない人から見たら…?
考えはじめると止まらない。
今まで見ていた景色がちがってみえる。
自分の世界がぐらぐら揺れる、はじめての「哲学絵本」!
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
「知らない世界で関係性を築くのは難しい」
大人になったって、案外悩みは変わらないもの。
でも、丁寧に紐解いていくと…「わたし」がたくさんいる、っていうだけのことなのかもしれませんね。うん、意外と簡単。
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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