【編集長の気になる1冊】「ずるずり」と「カシャカシャ」『わにわにとあかわに』
出会った瞬間、相手と心が通じる。
いったい、そんなことってあるのでしょうか?
「ともだち」と言えば、大体最初は「いけ好かないヤツだ」と思っていたけれど、色々な出来事や困難を一緒に乗り越えていくうちに、段々と相手を理解していき…っていう流れが相場です。
(あくまで一方的なイメージです。)
「好きな人」と言えば、大体最初はどちらかが気になる相手を柱の陰から見守って、ふいに起こるアクシデントで一気に距離を縮めるチャンスを待っているものです。
(こちらも偏ったイメージです。)
だけど…たまにはあるようなのです。
目があった瞬間、「お」っと感じることが。
何かをしゃべる前から心が通じる気がするような出会いが。
だって、「ずるずり」と「カシャカシャ」。
廊下を鳴らす音はまるで違う音のふたりが、こんなにもあっという間に心を通わせてしまう瞬間を見てしまったらね。
わにわにとあかわに
静かな家の中。居眠りしていたわにわにが目を覚まします。
…「ぎろり。」
大きなゴツゴツした緑のからだに金色の鋭い目。こわい?
いえいえ、子どもたちは彼がとても愛嬌のあるわにだって事は知っていますよね。
何しろ人気シリーズの第5作目なんです。
さて、わにわにが誰もいない家の廊下を「ずるずりずるずり」と歩いていくと、少しだけあいているふすまの奥から“クィ…”となく声が。だれ?
出てきたのは小さな赤いわに!あかわにはわにわにの後を「カシャカシャ」ついていきます。そうしてわにわには、あかわにに「食べるかな?」とプリンをあげてみたり、「およぐかな?」とお風呂場に連れていってみたり……。
なんでしょう、この最高に心の和む2ひきの交流は。わにわにが愛してやまない瞬間を、どうやらあかわにも同じように愛しているみたい。
「ぐにっ ぐにっ ぐなっ ぐなっ」
「くにっ くにっ くなっ くなっ」
言葉はなくとも、体の大きさはちがっても、やっぱり同じ「わに」。とても気が合ったようですね。
「ゴツゴツ、ずるずり」なのにとても愛らしいわにわに。
ふいに忘れられない出来事が起こるお話の展開。
毎回、わにわにの違う一面を見せてくれて…ああ、だからこのシリーズが大好きなんです。
(磯崎 園子 絵本ナビ編集長)
一度読んだだけなのに。実際に見たことも会ったこともないのに。
もう私は廊下を「カシャカシャ」と音を立てて歩くあかわにに心を奪われてしまっています。
私の脳内で、あかわにがカシャカシャ自由に動き回っています。
どうやら、みんなの心をあっという間に奪っていく小悪魔なのは、あかわにの方だったようですね。
磯崎 園子 (絵本ナビ編集長)
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