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「新宿絵本日記」

南の国は……ここにある!?  2017年11月28日

 

今日も寒い朝です。

 

本格的な冬がやってきました。
「さむがりの人」にとって、冬の朝はひたすら試練の時間です。

 

まず、一日をちょうどよく過ごすための服を選ばなくてはなりません。寒いからと言って、ひたすら着込めばいいというものではありません。これから更に寒い日がやってくるかと思うと、一番暖かい上着はまだ着れません。かといって、ちょっとカッコつけて薄着で家を出てしまえば、とんでもない一日が待っています。

 

例えば、通勤途中の乗り継ぎで失敗、ホームで長時間待たされる時の寒さ。
「…ああ、あと一枚セーターを多く着ていれば!!」
ガタガタ震えながら心で自分を叱ります。

 

雪が降るような寒さにはなっていないのに重ね着をしすぎた時は、電車の中で寒暖差に耐えられなくなったり、会社で無意味に汗をかいたりします。そんな時も心で自分を叱ります。
「まだ…はやい!」

 

そう、「さむがりの人」の朝は忙しいのです。そして、考えすぎて着込んでみたら、トータルコーディネートが恐ろしいことになっていたりして…やり直しです。今日はこの服を着る!って思ってたのに、思ったより寒くて諦めなくてはいけないこともあります。そうやって、ああだこうだやっているうちに、決まって思うのです。

 

「ああ、どこか暖かい世界に行きたい。」

 

シャツ一枚で快適、たまに上着を羽織る程度で過ごせる世界。毎日、寒さの程度に振り回されることのない世界。そんな世界があればなあ…。

 

「さむがりやの人」は現実逃避しがちでもあるのです。…このねこちゃんみたいにね!

さむがりやのねこ

さむがりやのねこ

さむがりやのねこは、寒い冬が大嫌い。秋になり、冷たい風が吹き始めると、耳付き帽子をかぶり、秋も終わりの風が吹くとセーターを着ます。そうしていよいよ冬になると、ズボンを履き、マフラーとてぶくろをして。それでも寒くてたまりません。

そこで、ねこは思います。
「きたぐになんて まっぴらだ……。
 そうだ、あったかい みなみの くにへ いこう。」

南へ向かってどんどん歩くねこ。だいぶ南へ近づいたと思った頃に現れたのは一件の家。見ると、軒下に洋服がいっぱい詰まったかごがあります。
「こりゃ あったかそうだ。」
ねこは、そこで一休みしようともぐりこむのですが……。

さあ、そこからの展開がものすごいのです。さむがりやのねこにとって、まさかの試練の連続です。ああなって、こうなって、しまいには「かちんかちんのねこ」になって!? 散々です。一体どうなっちゃうのでしょう?

最初は寒がっているねこを見て、「わかるわかる!」とうなずいていた子どもたちも、あまりにも意表をつく出来事に目がまん丸になっちゃうはず。そして「かわいそう」をとっくに通りこして大爆笑してしまうのです。だって、目が覚めた時のねこの表情ときたら……ね!

ところが、物語はこれでは終わりません。意外な結末へと向かいますよ。最初とはうってかわったねこの顔。その充実した表情は、身をもって体験をした後に答えを見つけた時の顔。頬が紅潮して、自信に満ち溢れていて、とっても愛おしくて。こんな顔をした子どもたち、見たことありますよね。読んだ後、大人だって何だかソワソワしてきちゃうのです。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

とにもかくにも、自分の身を持って「あたたかい場所」を見つけ出した裏表紙のねこの顔が大好きなのです。「なんだ、こんな世界もあったんだ!」これは、子どもの顔であり、自分の顔でもあるからです。笑っちゃうくらい、いい顔です。

 

「さむがりの人」は、自分の気持ちよさに対して案外「貪欲」なのかもしれませんね。

磯崎 園子(絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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