おしゃべりな子って、おしゃべりするとは限らない。2017年11月30日
子どもの頃。
人前に出るのが苦手で、あいさつもちゃんと出来ない私を、母はいつも
「この子はすごく恥ずかしがり屋で…」
と知らない大人の人に説明していた。
10代になって、やっぱりみんなの前で上手くしゃべれなかったり、積極的に話しかけられなかったりすると、自分は「人見知りであまりしゃべらない大人しい子」なんだと自覚し、そのまま、20代になっても人前でしゃべることに苦手意識を持っていた。
そうして大人になってから、実家に帰った時。久しぶりに兄と話をしていると流れの中で「私はしゃべるのが苦手で無口な方だから…」と言った途端、兄が「どこが? さっきからものすごい勢いでしゃべってるけど。」と突っ込んできた。
確かに。
私は、ものすごくおしゃべりなのです。頭の中でしゃべりたい事があふれすぎて、家族や近い友人を相手に止まらなくなる事があるくらい。今まで私は「人見知りをする」=「無口で大人しい」と決め込んできただけだったのか…。
そうなってくると、いつもモジモジしているあの子も、なかなか目が合わないあの子も、「うん」「ううん」しか言わないあの子だって。声に出すのが恥ずかしいだけで、実は頭の中ではずっとおしゃべりしているのかもしれない、ということなのです。うーん。大人になるまで、こんな簡単なことに気が付かないなんて!
この絵本の中の「わたし」だって、自分のことをちゃんと分析して考えて、そして(絵本の中だけで)ちゃんとおしゃべりしてくれています。
わたしのひみつ
「わたしね てつぼうは にがてなの。だけど へいの うえなら ねこみたいに あるける。」
女の子が自分の秘密を教えてくれます。
給食は半分しか食べられないけど、りんごは3つ食べられることや、けんばんハーモニカは苦手だけど、知ってる歌なら元気に歌えることとか。
彼女の秘密はなんて事ないけど、とっても大切なことばかり。
聞いていると、すべての秘密に答えてあげたくなっちゃう。
「ありさんと仲良く遊べるってすごい!こんなに大きな絵を描けるなんて、尊敬しちゃう!」
だけど、彼女の本当にすごい秘密はね・・・誰にも言わない。
空が大好きな、いつか空を飛びたいと思っている彼女の、願いが叶った、一番大事な体験だものね。
女の子の気持ちがまっすぐに伝わってくる、シンプルだけど生き生きとした言葉。
そして、まるで踊る様な線と色彩で描かれた魅力的な絵。
石津ちひろさんと、きくちちきさんの組み合わせは、何て素敵なのでしょう。
この絵本こそ、「わたしのひみつ」にしたくなっちゃいます。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
こんな心の中のおしゃべり、すごく素敵。もっとみんなのおしゃべりも聞けるようになりたいな。
さて。
散々仕事をしてきて、子育てもしてきた今の私。それでも、ついクセで「私、人見知りだから…」とか言ってしまっています。言ってから思わず吹き出してしまいます。はい、今の私はただの「おしゃべり」です。
「おしゃべり」な絵本
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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