やっぱりあかが好き。 2017年12月22日
「いつから着なくなったんだっけ」
タンスの奥の方にチラっと見えるのは、仕事を始めた頃、ちょっと奮発して購入したダッフルコート。これ以上ないくらい、鮮やかな赤。
子どもの頃から「赤」は私にとって憧れの色。
一番明るくて、一番輝いていて、正しくて。
そして何よりも強い、そう信じて疑わない。
自分が身につけたい、というより、好きなものに赤があると安心する。憧れのともだちが赤い服を着こなしていれば、「ああ、やっぱり似合うね」と感心するし、赤を素敵に着こなしている人を見ればうっとりする。そんな感じ。(そういう人、きっと多いよね)
大人になるにつれ、好きな色はどんどん増えて、自分に似合う色もわかってくる。聞かれれば「緑が好き」と答えたり、「青い服」ばかり買ったり。「ピンク」だって悪くないと思ったり。真っ赤なコートを買った頃の私は、自分に自信があったのだろうか。「赤が好き」だからと、堂々と着ていたものです。今じゃ、ちょっと気恥ずかしい。いくら憧れの色、だとしても…。
そんな時、どこからか聞こえてくるのは女の子の声。
「おかあさんったら あかのこと、なんにも わかってないんだよ」
あかがいちばん
わたしは「あかい」くつしたが好き。
「あかい」うわぎがいちばん好き。
ながぐつだって「あか」、てぶくろだって「あか」。
パジャマだって、コップだって、ピンどめだって。
もちろん絵の具も「あか」がいちばん。
「おかあさんったら あかのこと、なんにも わかってないんだよ」
女の子は言います。
確かにおかあさんは「こっちの方が似合うでしょ」「穴があいてるからやめなさい」「それじゃ寒いでしょ」「何色だって一緒でしょ」って。おかあさんですからね、そりゃ言います。
でもね、女の子はわかっているんです。「あか」には特別な力があるってこと。「あかいくつした」なら、いつもより高くジャンプできるし、「あかいてぶくろ」なら上手に雪玉がつくれる。「あかいパジャマ」を着ていれば、寝ている間におばけを追い払ってくれるし、「あかいピンどめ」をすると、髪の毛が笑い出す。
彼女は「あか」が大好きなのです。わかる、わかるよ。
大人の私も思います。「あかって、とっても素敵な色だよね。」
子どもの「好き」を、こんなに明確に愛らしく描いた絵本があるでしょうか。
そして、それは何かを「好き」な人たちの心を確実に捉えて離さないのです。
カナダ生まれの世界的ロングセラー絵本、待望の復刊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
彼女と同じように、私だってわかっていたはず。
色には力があるってこと。「赤」には特別な力があるってこと。
赤を着ると、なんだか堂々とした強い気持ちになれるってこと。
あのコートを着ていた頃は、そうやって気を張っていたのかもしれない。
久々に着てみようかな、大好きだった父の事を思って。
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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