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「新宿絵本日記」

大好きって儚くて、味わい深い。 2018年1月10日

 

「だって、好きなんだもん!」

 

これだけで全てを強引に押しきって進もうとする子、いるよね。嫌いじゃないし、見ていて清々しい。だけど「好き」を貫き通すって結構大変なこと。だから、大人になるにつれ、そういう人は減っていくもの。みんな、ちゃんと感情と行動をコントロール出来るようになるのです。

 

…なんて言いたいところですが、そんなことは全然ない。

 

私のまわりには「大好きなことにまっしぐら」な大人が結構いる。予定調和なんて気にしない。一心不乱に突き進む。それはそれは見事なものです。すぐに「好き」が移り変わってしまう私の心とは裏腹に、友人はいつだって前向きに突進していく。後ろなんて振り向かないし、後悔だってしない。「大好き」のベテランパワーは素晴らしいのです。

 

「進み続けた結果、ひとりきりになるってことはないの?」

 

でも、どうやら大丈夫。
ベテランは「大好き」にプラスアルファをしているのです。例えば、夢見たり…?

だいすき、でも、ゆめみてる

だいすき、でも、ゆめみてる

ぼくが誕生日におばあちゃんからもらったのは、迷子の赤ん坊のきりん。

…そんなバカな!?

でも、ほんと。ぼくは「ウィリアム」って名前をつけて、部屋で一緒に過ごす。ぼくのベッドで一緒に寝て、一緒に食事をする。

ウィリアムは毎日大きくなって、天井に頭がつっかえるようになって、とうとうベランダに出されちゃった。ぼくはウィリアムが大好きなのに、ウィリアムはどんどん大きくなって、最近じゃ一緒にいられるのは足ばかりでつまんない。だって、頭は4かいにあって…。

なんだか「だいすき」って切ない。「だいすき」って儚い。ぼくの気持ちが痛いほど伝わってくる。でも、でもね。それだけじゃあないんだよ。ぼくは、ウィリアムが大好きだけど、夢だってみてる。それはね……。

ナンセンスな設定だけど。こんなのありえない!って思うけど。案外「だいすき」ってこういう事なんじゃないかな、って思えるから面白い。ギリギリまで「だいすき」を貫くのも素敵だし、ちゃんと最後には自分なりの距離感をつかんでいるのも感心しちゃう。

様々な形の「だいすき」をナンセンスな話に料理してしまう二宮由起子さんの「だいすきえほん」シリーズ。「でも」がいいよね。そして、高畠那生さんの描く「きりん」がすごくいい!大好きなシリーズです。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
 

https://www.ehonnavi.net/ehon/105267/%E3%81%A0%E3%81%84%E3%81%99%E3%81%8D%E3%80%81%E3%81%A7%E3%82%82%E3%80%81%E3%82%86%E3%82%81%E3%81%BF%E3%81%A6%E3%82%8B/

大好きって、夢を見ることでもあり、
大好きって、秘密をかかえることでもある。
同意なんていらない「大好き」だってあるみたい。

 

なかなか奥が深くて味わい深い。その友人と語り尽くしたいものです。

 

驚くのは、この歳になっても新たな「大好き」に出会うってこと。知らなかった感情がまだまだある。だからこのシリーズは、今の私が読んでも発見に満ちあふれているのです。

だいすき、でも、でもね

だいすき、でも、でもね

まいちゃんがだいすきなのは、こねこのバニラ。でもバニラがだいすきなのは、青いクッション。でも、でもね、青いクッションがだいすきなのは……。

だいすき、でも、ひみつ

だいすき、でも、ひみつ

みぎあしのおやゆびが、みぎあしのこゆびを好きになった。間には、ひとさしゆびと、なかゆびと、くすりゆびがいる。みぎあしのおやゆびとこゆびは、付き合うことができるのか…。

磯崎 園子(絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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