【小学4年生におすすめ】『こそあどの森の物語(1) ふしぎな木の実の料理法』
思春期の入口に立つ、10歳の子どもたちに。心が成長するときにこそ読んでほしい本
「この森でもなければ、その森でもない、あの森でもなければ、どの森でもない」
こそあどの森は、どこにあるかわからない、ふしぎな森。あなたの身近にあるのかもしれない・・・個性的でチャーミングな妖精たちに会えるかもしれない、なつかしの森。思いもかけないことが、あたり前のように起きている、魅力いっぱいの森。
1994年に最初の巻『こそあどの森の物語(1) ふしぎな木の実の料理法』がスタートし、専門家から「日本のムーミン谷」とも言われるこちらのシリーズは、全12巻! 刊行から22年もの間、子どもから大人まで多くの読者に愛されてきました。
森で起こる不思議な出来事や、個性的だけれど心温かな住人たち、それぞれが住むとっても素敵な住まい、その楽しさに子どもたちはまず惹きつけられることでしょう。そしてお話が進むにつれ、主人公の内気で恥ずかしがり屋の少年スキッパーが、さまざまな出来事を通して変わっていく様子にもどんどん惹き込まれるのではないでしょうか。
子どもたちに言葉で伝えるのはちょっと難しいけれど、この物語には「1人の自分とみんなの中にいる自分のあり方」や、「自分の内面世界の持ち方とその大切さ」ということが深いテーマとして感じ取れ、ちょうど思春期の入口にたち、心がぐんと成長する10歳の子どもたちに特に手渡したい物語です。
人とつながることの楽しさを知る『こそあどの森の物語(1) ふしぎな木の実の料理法』
『こそあどの森の物語(1) ふしぎな木の実の料理法』
「この森でもなければ その森でもない あの森でもなければ どの森でもない こそあどの森 こそあどの森」
謎に包まれた不思議な森。そこには5つのユニークな形をした家があり、個性的な住人たちが暮らしています。
その住人の1人で物語の主人公的存在となるのが恥ずかしがり屋の少年スキッパー。ある日、スキッパーのところに一通の手紙が届いたところから最初の物語が展開していきます。手紙の差出人は、一緒に暮らしているけれど今は旅行中の博物学者バーバさんです。ダンボール箱の中には、手紙と一緒にポアポアという実(バーバさんが旅先のナンデモ島で出会った)が20個入っていました。
しかし、あいにくポアポアの実の料理法が書いてある手紙の箇所が雪で濡れてしまっていて、ところどころしか読めません。気になるのは、「 さんにたずねるとわかるでしょう」という部分。いったい誰にたずねれば料理法が分かるのでしょう?
そこでスキッパーは、次の日から、勇気を出して「こそあどの森」の住人1人1人を順番におとずれ、料理法をたずねて周ります。たずねられた人たちはそれぞれに知恵をしぼり、ゆでたり、炒ったり、焼いたり、たたいたり、呪文?!を唱えたり。しかしポアポアはびくともしません。
やしの実よりも小さくて、りんごよりは大きい、色はうす茶色で固くすべすべしているポアポアの実。いったいどうやって食べるのか、そのナゾを解き明かす過程もワクワクするのですが、同時に少年スキッパーの心の微妙な変化と、行動が変わっていく様子が大きなみどころ。恥ずかしがりやで人と接することが面倒だと考えていたスキッパーの生活の中に、ポアポアの実をきっかけとして少しずつ他の人たちの存在と過ごした時間の記憶が入り込んでいくのです。1人だけのしんとした生活や空想の世界に、他の誰かが入ってくるのは、なんだかウキウキするような嬉しい気持ちです。けれどもその一方で、同じ空間にいながらも、1人1人の頭の中ではそれぞれの世界を持っている、ということも大切に描かれていて、1人の自分とみんなの中にいる自分など、自分の内面世界の持ち方について意識するきっかけともなりそうなお話です。
作品の中の楽しいイラストも作者の岡田淳さんによるもの。
主人公スキッパーとバーバさんが住むウニマルや、ポットさんとトマトさん夫婦が住む湯わかしの家、作家のトワイエさんが住んでいる木の上の屋根裏部屋…などユニークな家の断面図は、しばらく眺めていたくなるほどの楽しさと工夫がいっぱいです。それぞれがどんな生活をしているのか、大きく空想が広がっていきますね。
1冊読んだらどんどん次のお話が読みたくなってしまう魅力たっぷりの「こそあどの森」の世界。読み始めは10歳ぐらいから、大人の方にもぜひ読んでいただきたいシリーズです。そのはじまりとなる1巻をどうぞたっぷりとお楽しみください。
(絵本ナビ児童書担当 秋山朋恵)
読者の声より「人とのふれあいの温かさ、楽しさを感じることのできる物語」
実際に読んだ方や子どもたちには、どんな反応があったのでしょう?絵本ナビユーザーから寄せられたレビューをご紹介します!
内気な男の子スキッパーが木の実の料理法を調べるために、森のみんなの家をまわるお話です。
人と関わることの楽しさを次第に感じていくスキッパーの微妙な気持ちの変化が、とてもよく表現されています。
そしてこの作品の面白いところは、お話の内容だけではありません。森に住む人々の家が、どれも個性的で大変面白いです。住人の性格も様々。個人的にふたごのレモンとアップルのやりとりが、とても愉快で気に入りました。
(スキッパーにとっては、一番苦手なタイプだったかもしれませんけどね。)
人とのふれあいの温かさ、楽しさをしみじみと感じることのできる物語です。
(こりえ♪さん 30代・ママ 女の子2歳)
日本版ムーミンという紹介で読んでみました。ホント海外の作品のような世界観ですっかりその世界にはまってしまいました。
まず挿絵が素敵。登場人物の部屋が家が素敵で、こどもはじ~とその部屋を見て「いいなぁ~ここに部屋があって。みてみてここに階段が」と見入ってました。
そして主人公のスキッパーのうんざりした顔!いやいやながら人に会いに行ったり。娘のもつ主人公のイメージとはじめは違ったもののでスキーパーの話をする時にどきどきする感じや人と会ってはずかしがるところ、自然に読み進めていけました。
はでな作品ではないのに、読んだ後にこの作品すきだなぁ~と親子ともども思えた作品です
(はらっぱコロコロさん 30代・ママ 女の子7歳、女の子4歳)
岡田淳さんの作品が好きです。
これは知らないシリーズだったけど、人気のある本だということで借りてきました。借りてきて、私のほうが先に読んでしまいました。
主人公のスキッパーは、ちょっとつかみどころのない少年。
表情もなく、笑わない。内気で人付き合いなんかとても出来ない、静かに本を読んで過ごすのが好き、といったぱっとしない少年です。
でも、不思議な実、「ぽわぽわ」のおかげで、最初は仕方なくではあったけれど、いろんな人と話をせざるをえなくなり、そして、だんだんとそのことが楽しくなっていくのです。
こそあどの森に住む人たちは、ほんとに不思議な人ばかり。住んでいる家も実にユニークで、ところどころに出てくる挿絵で、その家の間取りを見るのも楽しい。
最後は、なんだか、ほわ~っとあたたかい感じに包まれて問題も解決。シリーズものらしいので、ぜひ次の巻も読みたい!
(たかくんママさん 30代ママ 女の子11歳、男の子8歳)
合わせて読んでね!「こそあどの森の物語」シリーズ岡田淳さんインタビュー
小学校の図書室に必ず並んでいる岡田淳さんの作品。岡田さんが20年描き続けた「こそあどの森の物語」シリーズは、専門家から「日本のムーミン谷」と言われているシリーズでもあります。「こそあどの森の物語」シリーズ20周年を記念し、神戸にある岡田淳さんのアトリエにお邪魔して、おはなしを伺いました。(続きはこちら>>)
「こそあどの森の物語」シリーズと合わせて読みたい【小学4年生におすすめの本】
世界の出来事に目が開き、平和について考えさせられる『ともだちのしるしだよ』
リナが救援物資の中に見つけた、片っぽだけのサンダル。もう片方はフェローザが持っていた。
一足のサンダルによって結ばれた、難民キャンプに暮らす少女たちの友情物語。
合わせて読みたい小学4年生におすすめの本(絵本は少し内容の深いものを)
小学4年生の子にはどんな本がおすすめなの?
名作から推理ものまで読書興味を広げよう
長く読み継がれる名作から、学校、友達、家族など身近なテーマの物語、推理もの、冒険物語、ファンタジーまで、さまざまなジャンルの本に触れることで、読書がどんどん楽しくなる時期です。日本の物語だけでなく外国の物語も積極的に手渡していきたいですね。一方で読書離れを起こす子どもたちも出てくる時期ですので、周りにいる大人が、おすすめ本を紹介したり、感想を共有したりなど、しっかりサポートしていくことが大切です。
絵本ナビ児童書担当 秋山朋恵
小学4年生におすすめの本が毎月2冊届く定期購読のお知らせ
ここで紹介した絵本を、ご家庭やオフィスに毎月お届けする定期購読サービスがあります。それが、絵本ナビの「絵本クラブ」、お届けするのは「幸せな時間」です。
今回ご紹介した『こそあどの森の物語(1) ふしぎな木の実の料理法』は絵本クラブ小学4年生コース2月の配本です。
2月配本スタート の入会受付は 1月31日 まで。
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