詩人・谷川俊太郎さんの絵本を超えた魅力とは
日本を代表する詩人、谷川俊太郎さんの絵本の魅力に迫る!
今から60年以上も前の1952年に処女詩集『二十億光年の孤独』で戦慄のデビューを果たして以来、日本を代表する詩人として数多くの作品を発表している谷川俊太郎さん。絵本も300冊を超える作品が出版されています。赤ちゃんから大人まで夢中になる谷川俊太郎さんの魅力を、作品を紹介しながらひも解いてまいりましょう。
赤ちゃんが夢中になるロングセラー絵本をご紹介
谷川俊太郎さんの絵本の魅力について語る上で外すことができないのは、まずはこちらの「もこもこもこ」。オノマトペと抽象絵画だけで構成される不思議な絵本が、小さな赤ちゃんの心を捉えて離さない、大人よりも子どもが夢中になる絵本です。ほかにも「谷川俊太郎の『赤ちゃんから絵本』シリーズ」として7冊が出版されており、長く愛され続けています。
想像を膨らませる絵本
作者の谷川俊太郎さんは、現代日本を代表する詩人です。そして、多才な方でもあり、翻訳では、日本翻訳文化賞を受けた「マザー・グースのうた」、スヌーピーの「ピーナッツ」、レオ・レオーニの名作「スイミー」など、長く読みつがれている作品を数多く手がけています。谷川さん自身、レオ・レオーニの「あかくんきいろちゃん」にショックを受けて絵本を作り始めたとのことで、「ことばあそびうた」「けんはへっちゃら」「こっぷ」「わたし」「もこもこもこ」など、作品は数十冊を数えています。そんな谷川さんのこの絵本「まり」も彼らしい作品だと思います。
鞠が跳んだり跳ねたり落ちたり…そんな様子をわかりやすい擬音語で表現していきます。「ぽん。ぽん。ぽん。」「かきーん。」など。そして、鞠のイラストがその動きをもっとリアルに伝えてくれます。一見するとただそれだけなのですが、小さいお子さんでも十分楽しめる絵本だと思います。
(るかさん 20代・東京都北区)
言葉のリズムが心地よい、詩集のような絵本
詩人・谷川俊太郎さんの絵本の最大の魅力はなんといっても、日本語の楽しさ、美しさを存分の味わえるところにあります。お子さんと一緒に声に出して読みながら、その美しいリズムに酔いしれてみませんか?
「ことばのえほん」シリーズ1冊目『ぴよぴよ』は、“ぴよぴよ”から始まり“しゅばしゅば”“とぷん”“きいいっ”など、擬音だけで場面が進んでいきます。
これ以上ないくらいのシンプルな谷川さんの言葉に、カラフルで愛らしい堀内さんの絵がかぶさって、読んでみれば小さなひよこの冒険物語となっています。更に声に出して読むと、言葉の一つ一つが生き生きと響いてきて、「ああ、これは音の絵本なんだな」と体感してしまうのです。
谷川俊太郎さんと堀内誠一さん、二人の天才がこの作品を生み出したのは何と1972年!最新作として手に取った方も多いのではないでしょうか。30年以上経っても全く鮮度を失わない堀内さんの絵のセンスに脱帽ですよね。
一方で、『もこ もこもこ』『ことばあそびうた』など、谷川さんの多くのことば遊びの絵本でその楽しさを経験しているであろう今のお母さんや子ども達にとっては『ぴよぴよ』の楽しみ方もお手のもの?きっと自然に受け入れられていくはずです。そういう意味でもこの幻の絵本の復刊は嬉しいばかりですよね!
谷川俊太郎さんの言葉は大人に「効く」
谷川俊太郎さんの絵本には、大人の心にもすーっと沁み込んでくる作品が多くあります。忘れていた大切なことを思い出させてくれたり、絡まってもやもやしていたものがするりとほどけたり。大人にこそおすすめ?!疲れた心、イガイガした気持ちに「効く」作品をご紹介します。
「ともだちって」
かぜがうつっても へいきだっていってくれるひと
いっしょに かえりたくなるひと
「ともだちなら」
いやがることを するのは よそう
「ひとりでは」
もてない おもいものも ふたりでなら もてる
つまらないことも ふたりでやれば おもしろい
ともだちってなんだろう・・・例えば子どもたちがそんな風に思っていたとしたら、こんなにも具体的にわかりやすく教えてくれる答えはないですよね。
谷川俊太郎さんの詩に、和田誠さんのほのぼのとした絵が子ども達の心にぐっと近づいてきます。
そこで、詩の内容は広がっていきます。
「どんなきもちかな」「けんか」「ともだちはともだち」
それぞれのテーマに続く詩はひとつひとつ、どれも相手の気持ちを想像することにつながります。ともだちはどんな気持ちになるんだろう、ともだちにこういう事をするのは良くないな、お父さんお母さんだってともだちみたいな時があるな。
こんな風に考えられるようになったら、想像する力は大きくなっていきます。
会った事のない子だってともだちになれるかもしれない。
その子たちが困っていたら、なにをしてあげられるんだろう。
難しいことはありません。だれだってひとりで生きていくことはできない、みんなともだちが必要なんだ、そういう大切なことは小さな子どもたちにだってきっと伝わるはずです。
「ともだちって すばらしい」
子どもから大人まで、年齢に関係なく読み続けていきたい一冊です。
言葉で遊ぶ天才。谷川俊太郎の詩。
谷川俊太郎さんは「絵本」作家だけでなく、「詩人」です。言葉遊びの天才が紡ぐ言葉は、くすっと笑えたり、グサッと突き刺したり、ほわっと解き放ったり。「詩集」として発表されている作品もまた素晴らしい。絵本と違った詩人としての谷川俊太郎さんの世界にどっぷりと浸ってみてください。
[本書まえがきより 抜粋]
詩が読みたくなるとき、詩が書きたくなるとき、私たちは日々の生活で感じている苦しいこと、悲しいことを心の中にためこんでおかないで、言葉で解放しよう、言葉で美しいもの、楽しいものに変換しようとしているのではないでしょうか。
1980年にジュニアポエム双書の一冊として、選詩集『地球へのピクニック』が刊行されてから、ずいぶん時が経ちました。その後出版された私の詩集から、一冊に一篇ずつ選んでこの『そして』ができました。
詩集は小説などとは違って、始めからページを追って読むよりも、一篇一篇を気が向くままに読むほうが楽しいと思います。
初めて読んでひと目ぼれする詩もあるし、何度も読み返しているうちに、じわじわ心にしみてくる詩もあるでしょう。地球上の生物が多様なように、詩も多様です。たとえひとつでも好きな詩に出会えたら、それはもしかす
るとあなたの運命を変えることにつながるかもしれません。
ストーリーも、読み方も、型破り。それが谷川俊太郎さんの魅力!
絵本の話題の中心に、谷川俊太郎さんがいる。そんな気がしてきます。
おはなし会で大人気の1冊
単純だけどおもしろい
1ページ1ページ一言ずつ加えられていくだけの絵本なので、この絵本をはじめて読んだとき、「子供は喜ぶだろうか」と思っていました。1ページ目は「これはのみのぴこ」2ページ目は「これはのみのぴこの すんでいるねこのごえもん」とほんとに前のページの言葉に新しい言葉が付け加えられていくだけなんです。恐る恐る子供に読んであげました。
まあ、おどろきました。なんと当時4歳だった息子は大喜び。すごく気に入って全部文章を覚えてしまいました。3ページ目は「これはのみのぴこの すんでいるねこのごえもんの しっぽをふんずけた あきらくん・・・」どんどん文章がながくなっていきます。なれてくると「早口でよんで」と注文がはいり早口言葉のように全ページを毎日読んでいたのでちょっと疲れましたが子供と楽しく読むことができました。
(たまっこさん 30代・愛知県名古屋市 男5歳、女2歳)
谷川俊太郎×tupera tupera 初コラボ!
ことばが つながる たのしい “つみあげうた”えほん!
谷川俊太郎とtupera tuperaの初コラボレーション絵本。“これはすいへいせん”の一文から始まって、ページをめくるごとに、つぎの文がくっつき最後はとても長くなる、“つみあげうた”の言葉あそび絵本です。詩人の独特の語感とリズムにみちた言葉に、クラシックな世界観が新しいtupera tuperaの絵が応えます。ブックデザインは、新進気鋭のデザイナー岡田善敬。遊び心満載の装丁と造本にも注目です。
訳者としての顔も持つ。谷川俊太郎さんが訳すと…
翻訳者としても数多くの名作を発表されている谷川俊太郎さん。小さな魚が活躍する、みんなが大好きな「スイミー」も、実は谷川俊太郎さんが翻訳した作品なんです。谷川俊太郎さんの翻訳作品は、物語の面白さと言葉の感覚を両方楽しめる、魅力がいっぱいの絵本たちです。
ちいさな黒い魚のスイミー。
海の中で出会ういろいろな海の生き物たち。
小さな赤い魚たちが集まってできた赤い大きな魚。
ページいっぱいに描かれている海の様子は、きっと子供たちの目を引くことでしょう。
また「虹色のゼリーのような…」「ドロップみたいな岩から…」といったいろんなイメージが広がる表現や「スイミーは考えた。いろいろ考えた。うんと考えた。」というリズムに乗った文章を読み手も一緒に楽しんでみてくださいね。
変わってるってどういう事?
主人が大好きな絵本で娘に買ってきてくれたもの。
初めて読んだ時もなんだか詩的でレオ・レオニらしく芸術性にあふれた絵本だと思いました(実際、主人公のフレデリックは芸術肌の詩人なのです)。でも何度も何度も読んでいくと、色々な解釈がでてくるのです。絵本の奥深さを初めて知りました。
サブタイトルが、~ちょっとかわったのねずみのはなし~とあります。
人と違う考え方をしたり、人と違う視点で物を考えたり、一見すると悪い事に思えてしまうようなことも、自分を信じてそれをまっとうする。それで良いんだ。ってフレデリックは教えてくれる。それが自分でも、他人でも。
芸術家になろうと思ったり、今は偉人だと言われる人や、例えばエジソンだって、その時は出る杭は打たれるような扱いで、「あの人は変わってる」ってきっと言われていたはず。でも人と違う事を考えたり、違う視点で物を考える事を誰もしなくなってしまったら、なんてつまらない世の中になってしまうのだろう・・この絵本に出会って初めて気づきました。
みなさんの傍らにいるお子さんを見てください。 可能性にあふれ、柔軟で、純粋で・・・ 自分の子供がちょっと変わった考え方をする、と思ったり、子供から、あの子は変わってるんだよ。って聞いたりしたら、「フレデリック」を読んであげてほしい。『大丈夫。あなたはあなたでそれで良いんだよ』って教えてあげてほしいし、『あなたと違う考えをするからって、その子を排除しないで、そんな考えをする子もいるんだよ』って、教えてあげてほしい。
大人が言葉で説明するよりも簡単にそんな事を教えてくれるレオニ・マジックを是非一度!
(ソレイユさん 30代・東京都東久留米市 女2歳)
言葉のはなつ重みと強さ
心が安らかになる素敵な絵本
まずはじめにこの絵本は本当に美しい絵本です。読んでいる私自身、あまりのこの絵本の美しい絵に読むことを忘れ子供共々みいってしまったくらいです。海の中に1ぴきのそれはすばらしくきらきら輝く魚がいます。魚の絵に特殊な細工がしてあるのでじっさいとてもきれいです。でもその魚は自分の美しさを自慢して他の魚たちから敬遠されてしまうのです。どうしたらよいのかおばあさんたこの所へ相談に行くのです。そして自分のきらきら輝くうろこを1枚ずつ他の魚に分けてあげなさいとアドバイスされます。自分が1番きれいではなくなってしまうがどうすれば幸せになれるかわかるだろうと言います。そしてそのアドバイス通りきれいな魚は1枚ずつうろこを他の魚達に分け与えてあげるのです。最後には輝くうろこは1枚になってしまいますが魚はみんなと一緒に楽しく暮らすことが出来たのです。子供はとかくおもちゃなど独り占めしたがるものです。この絵本では人に分け与えることの楽しさを教えてくれました。おもちゃだって独り占めして自分一人で遊ぶより他の子にも貸して一緒に遊んだ方が楽しいです。そんなことを自然に教えてくれる絵本でとても気に入っています。
(利恵子さん 20代・千葉県長生郡 男4歳)
作品の数だけあふれる谷川俊太郎さんの魅力
「え?!これも谷川俊太郎さんの作品?」と驚くほど、その作品数、そして愛され方は他に例を見ないほどです。
言葉遊びの天才、谷川さんの作品は、音を楽しんだり、日本語の美しさを味わったり、忘れていた大切なことを思い出したり……
谷川俊太郎さんの絵本は、私たちの日常の中に目に見えない大事なことを気づかせてくれるのかもしれません。ぜひ、あなたも時間を忘れて「谷川ワールド」にどっぷりとはまってみてくださいね。
編集協力:洪愛舜(編集者・ライター)
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