究極のわすれもの、とは? 2018年8月23日
朝起きて、慌ただしく支度をしながら鏡の前に立って、ふと思う。
「あれ、 今朝はもう歯磨きしたっけ?」
いくら考えても思い出せないので、歯ブラシに触ってみるとぬれている。
うーん、もう磨いたのかな。
こんなやり取りをしょっちゅうしているうちに、忘れていたのは昨日なのか、今日なのか。それすらもごっちゃになって、本当にわからなくなってくる。他のことはそんなに忘れない方だとは思っているんだけど、どうしても朝歯磨きをしたかどうかだけ、ブラックホールのように覚えていられない…。仕方ないから2回磨いたりする。このまま私は、歯磨き周辺の記憶だけがブラックホールのまま一生を終えていくのだろうか。それとも何か対策を練った方がいいのだろうか。
…と、そこまでいくと、取るに足らない悩みだと判断して考えるのをやめてしまうので、結局次の日もまた同じブラックホールに出会うのです。人に話すほどの事でもありませんが。
母は歳をとるにつれ、覚えていられなくなっていくのが怖いという。確かに、さっき言ったことをもう一回繰り返して言う事が増えたし、私が帰省する日程も覚えていられない。メモしておいても、メモしておいたことを忘れてしまう。その度にちょっと落ち込んでいる。
だけど、母は結構肝心なことを覚えている。そしてびっくりするような遠い記憶を引っぱり出してきたりもする。まだまだ教えられることの方が多い。
大事なことを覚えられないっていうけれど、大事なことってなんだっけ。それって忘れちゃいけないんだっけ?
かものはしくんをみていると、そこがぐらぐらっと揺れてくるのです
え!?そんなものまで忘れていっちゃうの……?
かものはしくんのわすれもの
かものはしくん、今日はとびきりおめかしをして家を出ました。
だって今日は、おばあちゃんの誕生日!
大切なプレゼントをかかえて、おばあちゃんのおうちにむかいます。
おともだちに会ったり、大好きな水場に寄ったり、カフェで休んだり。
あちらこちらへ寄り道しているうちに…。
ちょっと、かものはしくん! わすれものわすれもの!
忘れんぼうのかものはしくんと、忘れものを届けようとそのあとを追いかけるハリネズミくんの追いかけっこ。
どうぶつたちのつぶらな目がかわいいなあ、なんて読みすすめていくと──
あれ? なんだかようすがおかしいぞ…?
物語はじょじょに奇妙なふんいきに。
予測不能の衝撃展開!
いったいだれがこれを予測できるでしょう?
よくよく表紙をながめれば、なるほどたしかにヒントはありますが…。
かものはしくん、わすれんぼうにもほどがあるよ……。
びっくりして「きゃー!」
それとも「きょとん?」
「そんなバカな」でゲラゲラ?
この絵本を読んで、みんなはどんなふうに感じるんだろう?
そんないたずら心をくすぐられ、「この絵本、読んでみて!」と、きっと人にすすめたくなる一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
このお話、繰り返し3回読んだ辺りから猛烈に可笑しくなってきます。
かものはしくんが身軽すぎるのです。忘れ方が鮮やかすぎる。
だけど大丈夫。彼にはハリネズミくんがいるのです。
いるよね、こんな人たち。ほっとけない人と、ついついお世話しちゃう人。
だから母も私も大丈夫。なんだかそう思えてくるのです。
他にもあります!「忘れもの」の絵本
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