子どもと考えるSDGs|陸の豊かさって?生物多様性や森林環境について知ろう!
SDGsの目標15 【陸の豊かさを守ろう】の課題は、こちらになります。
陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する。
難しい言葉が並んでいますが、要するに陸地の自然環境が陥っている危機的状況を持続可能な状態に変えていこうという目標です。
【陸の豊かさを守ろう】で考えなければいけない問題
たくさんの課題がありますが、ここでは「持続可能な森林の経営」「生物多様性の損失を阻止」の2点にスポットを当てます。
森林破壊の原因は?
人間の生活が便利になっていく裏で森林破壊が進んでいます。国連の2020年SDGs報告では、2015年以降年間約1000万ヘクタールもの森林が失われていると発表されました。
これは毎年北海道の面積以上、一週間で東京都の面積程度の森林がなくなっている計算です。このまま森林破壊が続いていくと自然環境はいったいどうなってしまうのでしょう。
これほど広大な面積の森林が破壊される原因を知っていますか?
違法な伐採、商業伐採、農地への転用、インフラ整備、火災などさまざまな原因があり、人間の生活を豊かにするための伐採が多くを占めています。
木材や紙、パーム油、ゴムなど生活必需品は木からできています。私たちの生活において、木を切ることは不可欠です。林業を生業とする人や、エネルギーや食料など森林資源を頼りに生活する人もいます。
しかし、切りすぎては森林が減っていくばかり。持続可能なかたちで森林を管理し、上手に付き合っていく必要があります。
動物たちが危機状態!生物多様性を守ろう
地球上にはたくさんの生き物が食物連鎖を繰り返し、それぞれが繋がって生きています。肉食・草食動物、昆虫、植物、目に見えない微生物が互いに影響し合う自然環境のバランスを「生態系」、多様な生き物のつながりを「生物多様性」と言います。
森林環境の破壊は生態系や生物多様性にも影響を及ぼしています。過剰な森林伐採や森林火災は生き物たちの居場所を奪い、生態系を破壊するのです。
オーストラリアで2019年から2020年にかけて起こった大規模な森林火災が発生しました。この火災でオーストラリアの固有種を含む動物、約30億匹が被害にあいました。死滅しただけでなく、住む場所を失ったのです。
なぜここまで大規模な森林火災が起きたのでしょう。気温上昇や乾燥、降雨現象など地球温暖化による気候変動が影響していると言われています。地球温暖化の原因のひとつに森林伐採があるので、人為的な火災ではないとはいえヒトの行動も関わっていると考えられますね。
生物多様性の面で考えると、世界では約3万1000種の動物が絶滅の危機に瀕しています。2020年国連SDGs報告では、その数はいまだ改善されていないと発表がありました。
自然環境の変化だけでなく、絶滅危惧種に指定されている動物が密漁や違法取引のターゲットになり続けていることも原因です。
生物多様性の崩壊が感染症の一因?
最も違反売買が多いと言われているセンザンコウという哺乳類を知っていますか?からだ中が鱗で覆われているアリクイのような見た目の動物です。
2020年3月に学術誌『nature』で、センザンコウから新型コロナウイルスに非常に類似したウイルスが発見されたと発表されました。新型コロナウイルス感染拡大が続く状況下で、国連では野生生物の違法取引の禁止をより強く提唱しています。
新型コロナウイルスだけでなく、SARSやエボラ出血熱なども動物由来感染症です。違法取引での不衛生な管理環境や、乱獲による生物多様性の崩壊によるヒトとの接触も感染原因と考えられます。
生物多様性が豊かであれば、動物からヒトへウイルスが届くまでに距離がありますが、減少するとヒトまですぐ届いてしまうのです。
陸の豊かさを守るための世界での取り組み
世界各国で陸の豊かさを守るためにさまざまな取り組みが行われています。
切って、使って、植える。森の循環を守る
森林を守るために必要なことは伐採を止めることだけではありません。木を切りすぎてはいけませんが、資源として使うこともで必要です。
過剰な伐採が問題となる一方で、管理が行き届かず荒れ果てた森林もまた問題となっています。持続可能な森林環境を整えるためには、正しい管理をしなければなりません。
伐採適齢期がきた木は切り、適切な方法で使い、また新しく植えて育てる。森林の循環を守りながら、持続可能な森林経営を行うことがSDGsの取り組みです。
日本では住友林業株式会社がこのような取り組みを行なっています。
野生動物を保全し、違法取引を防ぎ生物多様性を守る
生物多様性を守るためには、危機に瀕した動物の保護区の設立、保全環境の整備などが必要です。
たとえばJALグループでは、日本の天然記念物であるタンチョウの保全活動を行なっています。また、野生動物の違法取引防止にも力を入れています。
実際に石垣空港で絶滅危惧種に指定されているヤシガニの持ち出しを未然に防ぐなど、違法取引の阻止に繋がった事例があるそうです。
生物多様性・森林環境がわかる絵本5冊
動物たちが追いやられていく光景に考えさせられる絵本
ぞうはどこ? 深い森の中ではなかなか見つからない。ところが、木が切り倒され、家が建ち始めると、だんだんとかくれる場所がなくなってゆき……。ユーモラスなイラストに込められた環境問題への強烈なメッセージが響く。
生物多様性の素晴らしさを歌にのせた物語
「生物多様性」という言葉が、テレビのニュースや新聞などで、よく聞かれます。地球の環境を考える上で、その言葉は、とても大切な言葉です。本書 は、東京工業大学で教鞭をとり、歌う生物学者としても知られる本川達雄先生の生物多様性をテーマにしたうたを、子どもたちにも親しみやすいよう絵本として まとめたものです。「いろんな生きものがいるから、地球は豊かな星なのです」。読み聞かせにもぴったりな科学絵本です。
豊かな自然林での四季の移ろいをのぞいてみよう
ユーモアあふれる描き方で地球をおびやかす原因がわかる
環境を破壊するモンスターはどんどん大きくなって、大切な地球をおびやかしている! 個性豊かなモンスターを通して、環境問題を身近にとらえるための最初の一冊として最適な絵本。
ジュージュードラゴン(地球温暖化)、バッサイオニ(森林伐採)、ギラピカ(光害)、ドクモクモク(大気汚染)、ザンパーン(食品ロス)、オオプラダコ(海洋プラスチックごみ問題)、ウラーン(放射能汚染)……
地球は、たくさんの「モンスター」にあふれている!モンスターはどんどん大きくなって、大切な地球をおびやかしているんだ。
さあ、どうすればモンスターをやっつけられるか、みんなで一緒に考えよう!
ユーモラスで美しいイラストと、個性的なモンスターの描写で、楽しくそしてしっかりと環境問題が学べます。
巻末に環境用語集も収録しているので、はじめて環境問題にふれる人にもおすすめの一冊。海外でも大好評の絵本です。
日本固有種から環境問題を考えよう
生息地が限定される固有種は、森林伐採・乱獲・外来種などの影響を受けやすく、さまざまな問題に直面しています。
日本の森・林・草原にすむ固有種の生態と環境問題について、グラフや表を使いながら解説します。
【目標15 陸の豊かさを守ろう】親子でできる取り組み
今回取り上げる目標は壮大で家庭への落とし込みは難しく思えますが、親子でできることはたくさんあります。
森林認証制度FSCマークの商品を選ぼう
「FSCマーク」を知っていますか?持続可能な森林管理のもと作られた商品にはこの「FSCマーク」がついています。
紙袋や紙パックなどの紙製品や木のおもちゃにもこのマークがついています。筆者はこのマークについて初めて知ったのですが意外と身近な製品についていました。
どんな商品にFSCマークがついているか、おうちの中で探してみましょう!
ティッシュペーパーやおむつなど、実は木からできている製品がたくさんあることに気づく機会にもなりますね。
わが家で見つかったのは、牛乳パックです。そしてドイツHABA社のボードゲームの裏にも発見!こちらにはPEFCマークがついていました。PEFCも森林認証制度のひとつです。
木のおもちゃにもFSC/PEFCマークがついています。BRIOのおもちゃやバンダイから発売されている積み木Disney KIDEAもFSC認証の木材で作られているんですよ。
製品を手に取るときにはFSCマークに注目し、認証されているものをなるべく購入することで森林保護につながります。
生物多様性について考えよう
環境省が生物多様性を守るためのアクション「MY行動宣言」を掲げています。
Act1 地元でとれたものを食べ、旬のものを味わいます。
Act2 自然の中へ出かけ、動物園・植物園などを訪ね、自然や生きものにふれます。
Act3 自然の素晴らしさや季節の移ろいを感じて、写真や絵、文章などで伝えます。
Act4 生きものや自然、人や文化との「つながり」を守るため、地域や全国の活動に参加します。
Act5 エコラベルなどが付いた環境に優しい商品を選んで買います。
生物多様性を守る直接的なアクションは難しいですが、「知る」ことも立派な取り組みのひとつです。
生物多様性の意味、世界にはいなくなりそうな動物がいること、虫も動物も人も植物もみんなつながっていること。絵本や映像を使って話し合ってみませんか?
今地球が抱えている問題を知ったあと、自然や動物園、博物館などで目で見て確認するとより理解が深まります。生物多様性に関するイベントが開催されていることもありますよ。
わが家の長男は生き物好きなので、絶滅危惧種について知るとすごく悲しんでいました。なかなか直接的なアクションは難しいですが、知ることで意識が変わり未来につながると思っています。
自然環境保護活動に参加しよう
生物多様性が失われつつある中、豊かな自然を感じることは貴重な経験です。子どもたちが自然に触れる機会も同様に少なくなっているので、意識的に自然を感じる時間を作ってあげると良いと思います。
環境省では「子どもパークレンジャー」という自然環境体験プログラムを開催しています。お住まいの地域でも自然を考える体験プログラムが開催されているかもしれません。
他にも植林活動に親子で参加したり、自然保護のためのクラウドファンディングに協力したり…保護活動への参加はさまざまな形があります。
実際に自然に触れることできっと愛着がわくはず。そこから「自然を守りたい」という気持ちが芽生えるのではないでしょうか。
SDGsのキーワードは「持続可能」です。自然へ想いを馳せる人材が消えてしまっては、陸の豊かさも途絶えていってしまいます。
幼少期の活動をきっかけに自然環境保護を考える人が増えたら、この先も陸の豊かさが守られることでしょう。
「知ること」もアクションのひとつ!
目標15【陸の豊かさを守ろう】で掲げられている課題は、地球全体で考える必要があります。壮大なテーマなので、自分とは関係ないように感じますが生態系のなかに生きる人間である以上、無視できない問題です。
まずは「知ること」が解決への第一歩。絵本や体験を通して「陸の豊かさ」について考えてみましょう。
秋音 ゆう
東京都在住。
3人の男の子(6歳と2歳と0歳)を育てるWEBライター。
「絵本」「幼児教育」「子どもの発達」「多様性」を得意とし、子育てメディアで執筆。
自身も絵本育児で育ち、母になってからは子どもたちと絵本のある時間を大切に過ごしている。
「生きる力の育み」をモットーに、国語講師の夫と幅広い視野で子育て・教育に奮闘中!
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