【今週の今日の1冊】2022年の干支は寅年! 絵本の中のトラはどんなトラ?
12月27日~2022年1月2日までの絵本「今日の1冊」をご紹介
2022年の干支は寅年です。「寅」は動物の「虎」に対応しているので、実際のところは、強くてカッコいい猛獣のイメージがありますよね。では、絵本に出てくるトラにはどんなトラがいるのでしょう? 意外にも可愛らしかったり、人間と仲良しだったり、ユーモラス? それでいて高貴なイメージもあるような‥‥‥。
今週はそんな「トラの絵本」を大特集! いろんなトラを読み比べてみませんか?
12月27日 ペンキ屋さんの子どものとらのこちゃん、大活躍!?
月曜日は『だるまちゃんととらのこちゃん』
出版社からの内容紹介
やってみたいな!町中でペンキ塗り
だるまちゃんの友だちのとらのこちゃんは、とらの町のペンキ屋さんの子どもです。ふたりは黄色と赤の土でペンキを作り、町中の道路や壁にきれいな模様をどんどん描いていき、調子にのってタクシーの車体にも塗ってしまって大目玉。ところがそのことから本当にペンキで絵を描く仕事をすることに……。子どもの大好きな泥遊びやいたずらがきをモチーフにした、だるまちゃんの絵本第4弾。
読者の声より
だるまちゃんと とらのこちゃんは、まちのあちこちにお絵かき。
だるまちゃんも、とらのこちゃんも、絵うますぎ!
たちまち町中から、注文が殺到します。
こどものお絵かきから、こんな風にお話が広がっていくなんて、かこさんのお話は本当に楽しいです。
そして、本来ならコワイイメージのだるまなのに、とってもかわいくて親しみを感じるキャラに仕立てられているも、このシリーズのスゴイところ。
更にあとがきを読んで、とらのこちゃんが相手に選ばれた理由の深さにビックリしました!
このお話が、どれほどよく考えられたストーリーなのかも!!
だるまちゃんシリーズの中でも、上位に持っていきたい作品です☆
(しゅうくりぃむさん 40代・ママ 女の子7歳)
12月28日 雪の森でおばあさんは、 トラと出会いました。
火曜日は『おばあさんとトラ』(2021年12月の新刊)
出版社からの内容紹介
オランダで
最高の絵本作家に贈られる
「金の絵筆」賞を3回受賞した作家による
心がいやされる絵本!
ひとりぐらしのおばあさんが
雪の森で出会った
かけがえのない友とは……?
ラストでほろりとさせられる
凛としたおばあさんの物語。
「寅年の最初の1冊」としてもお薦め!
雪の森を散歩していたおばあさんは、
トラと出会いました。
トラはすぐに、ゴロゴロとのどを鳴らし、
頭をこすりつけてきました。
おばあさんはいいました。「うちにくるかい?」
ふたりはすぐになかよくなり、
毎日楽しくくらすようになりました。
おばあさんは、
トラの体の上に足をのせてあたためながら、
大好きな本を読み、
トラは、大きな音でのどを鳴らしました。
最初は、トラをこわがっていた町の人たちも、
すっかりトラを好きになり、
絵描きさんは、
トラをモデルに絵を描きましたし、
子どもたちは、
トラのせなかに乗せてもらいました。
ところがある晩、
トラがのどを鳴らす音が、聞こえなくなりました。
おばあさんが、ようすを見にいくと、
トラは、ぐあいが悪そうで、
しま模様が消えかかっていました。
町いちばんの獣医さんは、いいました。
「ホームシックじゃな」
心をいためたおばあさんが、
ついに決めたこととは……?
人と動物のあいだのきずなを描いた、
心あたたまる物語。
「ほんとうに動物のためになること」を決断する
おばあさんの姿は、
動物好きの人、ペットを飼ったことのある人の
胸を打ちます。
太く、のびやかな線で描かれた
トラや人々の姿も印象的。
オランダを代表する絵本作家の
大型絵本です。
12月29日 ある日、トラはひらめきました!
水曜日は『トラのじゅうたんになりたかったトラ』
出版社からの内容紹介
いいなあ。オレも、なかまにはいりたいなあ。やせこけたトラは、宮殿のひろまで楽しそうにごはんを食べている王さま一家が、うらやましくてたまりません。ある日、宮殿の庭にじゅうたんが干されているのを目にしたトラは、とんでもないことを思いつきます! ケイト・グリーナウェイ賞作家による、とびきりゆかいな絵本。
読者の声より
絨毯(敷物)ですよ~、生きたまま絨毯になりきるっていうんだから愉快です。
インドのジャングルに一頭のトラが住んでしました。
すっかり年を取り、獲物がめったに獲れなくなり、骨と皮ばかりに痩せていて、ほかの動物たちにバカにされているような存在でした。
そんなトラの楽しみは、王様の宮殿を覗きに行く事。
トラがしみじみ思う事は、居心地の良さそうな広間で王さんと家族が美味しそうにごはんを食べているところに仲間にはいりたいということ。
ここでこのトラの優しく穏やかな性格が解ります。獰猛さの欠片もありません。
ある日宮殿の庭で、召使がじゅうたんを干し、ほこりを掃っていました。
そのじゅうたんの中に、トラの毛皮があったのです。
そこで、トラは・・・・・・。
ここまで読んで、あ~バレちゃうバレちゃうって焦りました。
ところが、このトラはとっても痩せているので、広間に敷かれても誰も気づかないのです。
そして、王様たちの食事の時間がやって来て、トラは楽しそうなみんなと一緒にいられて嬉しくてたまりません。
絶対にバレないようにと心に誓うトラの気持ちも分かります。
臭いと言われ、洗われて、せっけんが目に入ろうが、固いブラシでごしごし洗われようと、がまん・がまんのトラです。
でも、王様たちの食事の後で、あんなことをしているのですから、毛並みの良い肉厚な絨毯になって来るのも無理もありません。
バレるのも時間の問題。
バレたら本当の絨毯にされるかもしれない、と悩んでいた矢先に、・・・・・・。
バレる事も忘れて、頑張ったトラの活躍が、カッコイイです。
この後のトラの生活の様子が、楽しそうで、良かった良かった~って思いました。
3・4年生に読んでみたいです。
(アダム&デヴさん 50代・ママ 青森県 男の子17歳)
12月30日 母トラと王子に芽生えた信頼と愛情を描く名作
読者の声より
子供を人間に殺されたトラが怒りと悲しみで人間を襲うのですが、
国王は国を守るために自分の子供をトラに差し出します。
トラは占い師の言うとおり、子供を殺すのではなく自分の子供のように育てます。
心配でならない国王は、トラを取り戻しに兵を差し向けますが・・
ストーリー展開の重要な場面で登場人物の「愛情」「情愛」「絆」によって
事態が好転していくのに感動しました。憎しみは何も生まない。
少しの勇気と慈しみの気持ちがいい方向へと導くんだなと、改めて思いました。
本の大きさが大きく絵の迫力も満点です。特にトラがすんでいる場所の描写がとても綺麗でした。
(キャベツさん 30代・ママ 男の子9歳、男の子6歳)
12月31日 トラはいいました「さんぽにいこうよ」
金曜日は『トラといっしょに』
みどころ
トムがじっと見つめているのは、美術館にあるトラの絵。家に帰ると、トムは紙と色えんぴつをとりだし、大きな大きなトラの絵を描きました。緑の宝石のような目、とがった歯、とても立派なトラです。
その夜。トムの部屋にはふいに暗闇が広がり、壁には緑の目。トラが向こうからやってきたのです! 息をのむトムに、トラはのどをならしながら言います。
「さんぽに いこう」
でも……。怖がるトムを背中に乗せて、ふたりは月の輝く夜の散歩に出かけるのでした。そこで待っていたのは、昼間見た絵のように、奥深く続いていく森。キツネやライオンやクマがいて、ウナギの泳ぐ大きな川があり、さらに夜の遊園地や洞穴も。
「ぼく、ちょっとこわいんだ」
小さな声でトムが言えば、トラは必ず答えます。
「こわくなんてない。しっかりつかまって」
そうやって少しずつ克服しながら、トムはトラとの時間を存分に楽しむのです。やがて疲れて眠くなってきたトムは……。
その美しく、たくましく、そして迫力のあるトラの姿を見ながら目が離せなくなってしまったのは、トムだけではありません。私たち読者だって同じです。それもそのはず、この絵本はフランスの画家アンリ・ルソーの実際にある絵から生まれてきたものなのです。絵が子どもの心を捉え、怯えながらもその世界に魅了されていく。そんな豊かで繊細な心の模様を、ファンタジックな手法で描き出します。月の光に照らされるトラの表情と言ったら……。
この絵本に出会えた子どもたちの心には、どんな景色が残っていくのでしょう。忘れられない1冊になりそうです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
2022年1月1日 あたらしいいちねんに「あけまして おめでとう」
土曜日は『おしょうがつのかみさま』
みどころ
「まだかな、はやくこないかな~」
家じゅうをきれいに掃除して、しめ飾りや門松を準備して、心待ちにしているのは誰でしょう。
「あけまして おめでとう」
年が明けて、新しい一年のはじまり。ぞろぞろとみんながやってきて、おうちはあっという間に賑やかです。最後にやってきたトラは、背中に鏡もちを乗せています。その時。
「ちょいと おまち!
わたしが おしょうがつの かみさまなのよ」
えっ、この美味しそうな方が神様!?
……そうなのです。どうやら神様は、毎年毎年姿を変えてやってくるそうで。
今年はまたとびっきり可愛らしいお姿で読者もびっくり。
そうとわかれば、神様を中心にして、楽しいお正月のはじまりです!
おもちをついて、お雑煮食べて、たこあげをして、花札をして、テレビを見て。
ああ、なんて楽しいお正月。おせちもあるよね。
お正月が大好きという作者おくはらゆめさんが描いたこの作品の場面は、全てがの~んびり、ゆったり、いい気分。確かにこれは楽しそう。神様に会えたみんなの表情はとっても嬉しそう。なんだか小さい頃親戚一同で集まったあの頃の「お正月」を思い出します。
特筆すべきは、この作品が絵本ナビオリジナルトートバッグ『EHONTOTE』から誕生したということ!「絵本みたいなトートバッグをつくりたい」とおくはらゆめさんが描きおろしてくださったデザインのテーマは「Everyday Shogatsukibun」(Everyday 正月気分)。まるで今にもキャラクターたちが動き出しそうなそのバッグから、本当にお話が誕生してしまったのです。嬉しいお話なのです。
読めばいつでも「お正月気分」になれるというこの絵本、トートバッグも合わせて、まるごと「おくはらゆめの世界」を親子一緒に満喫してくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
1月2日 失敗ばかりの小さいとらこ。けれども実は…。
いかがでしたか? 今回で、今年の公開は最後となります。
2017年に始まった「未来の今日の1冊 ~今週はどんな一週間?~」の連載も、2021年で5年目となりました。来年もまた、行事や記念日に合わせて、またその時々の読んで下さる皆さまの気持ちに寄り添いながら、本を選び、心を込めて紹介していきたいと思います。2021年も「今日の一冊」を温かい目で見守って下さり、ありがとうございました。
来年もまたどうぞよろしくお願い致します。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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