『ちいさな宇宙の扉のまえで 続・糸子の体重計』いとうみくさん最新作は、デビュー作の続編!
いとうみくさんが描くのは、今を生きる子どもたちのリアルな姿
童心社から、児童書『ちいさな宇宙の扉のまえで 続・糸子の体重計』(いとうみく・作 佐藤真紀子・絵)が6月1日に発売されました。
細川糸子と同級生の、町田良子、坂巻まみ、滝島径介。そして、転校生の日野恵。この5人の視点で語られる、5つの物語。
6年1組・細川糸子。がさつで粗雑と言われるが、そのまっすぐな言葉は、かかわる人に時に大きな影響を与えることを、当の本人は知るよしもない。おいしいものを食べることが生きがい。
糸子が盲腸で入院している間に転校してきた日野恵。糸子との距離をグイグイつめて親友であろうとするが、糸子にはその真意がはかりかね、消耗するばかり……。転校すればリセットできる。新しい自分になれる、そう思っていたけど、わたしはニセモノの仮面をかぶっていただけ。そんなわたしに本当の友だちなんてできるはずがない。
町田良子。才色兼備でクールな一面の裏で、糸子との出会いによって、他者とかかわる心地よさに気づき、あるべき自分を探し求める。思いはことばにしなきゃ伝わらない。わたしもいつかきっと。
坂巻まみ。町田良子に憧れる気持ちの真ん中にある、自分自身の感情に気づき、疑い、うろたえて、やはりそうなんだと自覚し向き合う。いまはまだこの思いを言葉にして伝えることはしない。でもいつか、自分自身を好きになれたらそのときは。
滝島径介。母は深夜までスナックで働いている。アパートでふたり暮らしの生活。思いがすれちがう日々。話をしよう。母さんの気持ちを聞いて。オレの思いを伝えて。母さんに大事なことをあきらめてほしくない。オレもオレが幸せになることをあきらめたりなんてしない。ちょっと図々しくなればいい。だいじょうぶ。
前作『糸子の体重計』では5年生だった子どもたちは、6年生になった。
相変わらず、小さなことでいじけて、羨んで、けんかして。
うじうじ悩んで、転んだりへたりこんだり、だれかのせいにしたり、逃げたり。
そして迎える、卒業式。
あらすじを見開きページを交えてご紹介
新作の舞台は、『糸子の体重計』から1年後。
6年生になった細川糸子と同級生の、町田良子、坂巻まみ、滝島径介。そして、転校生の日野恵。この5人の視点で語られる、5つの物語です。
おいしいものを食べることが生きがいの細川糸子。
糸子との距離をぐいぐいつめて「親友」であろうとする転校生、日野恵。
才色兼備でクールだが、糸子によって人と関わることの心地よさを知った、町田良子。
町田良子にひたすら憧れていくうち、自分の中にある気持ちに気づく、坂巻まみ。
母と2人きりの生活の中でふたをしていた自分の思いをあきらめないと決意する、滝島径介。
それぞれがそれぞれの悩みをかかえ、自分自身と向き合う姿が描かれます。
絵を手がけたのは前作『糸子の体重計』と同じく、佐藤真紀子さん。少し大人になった登場人物たちの複雑な心の動きを、繊細に描きます。
登場人物を一歩でも前へ ―いとうみくさんインタビューより
―10年経っての続編ということですが、書こうと思ったきっかけはあったのですか?
『糸子の体重計』を出版したあと、ありがたいことに作家の仲間や読者の方から「『糸子の体重計』の続編は書かないの?」「あのあと滝島くんはどうなったんですか?」などのお声はいただいていました。私も糸子たちに会いたいなという思いはあったんですが、なかなか書くには至らず。
2019年、『天使のにもつ』を書き終えたあと編集のHさんと次をどうしようかと話しているとき、かるい気持ちで「『糸子の体重計』の続編でも書きましょうか」と話したんです。するとHさんが「いいですね!」ととても喜んでくださって(笑)それで書くことになったんです。
―タイトル『ちいさな宇宙の扉のまえで』にはどんな思いがこめられているのでしょうか?
改めて読み返してみると、子どもたちはなんて小さな世界で生きているんだろう、と思ったんです。「ここしかない」と思うからこそ、悩みもするし苦しい思いもする。別の世界に行ってみたら、気持ちがふっと楽にあることもあるかもしれない。また同じように悩むかもしれない。でも、悪い人ばかりではないしあきらめないでほしい、そんなふうに考えました。
扉ってなんだろう? 糸子たちはどこにいるんだろう? 読んだ子どもたちが、自分なりにタイトルのことをいろいろ考えてくれてもいいのかなと思います。
―いとうさんはデビューから10年、これまでに多くの作品を発表してこられました。幼年童話から中学生以上に向けたものまで、幅広い年齢層が対象の作品群ではありますが、一貫して子どもに向けて書いていらっしゃいます。
やはり子どもを書くのがおもしろいってことなんです。子どもって、大人が思っているよりずっと感じているし考えているんですよね。
私は、子どもに何か教えたい、とか伝えたい、といった気持ちは本当にないんです。読んだ子どもたちが結果的に何かを受けとってくれるなら、それはとても嬉しいことですが。いつも私が書きたいもの、気になる子を書いています。
もし、書き手としての責任というものを問われたら、わたしはわたしの作品に登場する子どもたちに対しては責任を負う必要があると思っています。つまり、彼らを絶望では終わらせないということ。登場人物が一歩でも、半歩でも明日へと踏み出していける、いこうと思える。そう思えるようになるためには、どう生きていくのか、登場人物に寄り添いながら模索していく。それが書き手としての責任なのではないかと思っています。
著者プロフィール
著:いとうみく
神奈川県生まれ。『糸子の体重計』(童心社)で第46回日本児童文学者協会新人賞、『空へ』(小峰書店)で第39回日本児童文芸家協会賞、『朔と新』(講談社)で第58回野間児童文芸賞、『きみひろくん』(くもん出版)で第31回ひろすけ童話賞を受賞。おもな作品に『かあちゃん取扱説明書』『アポリア あしたの風』『天使のにもつ』(以上、童心社)「車夫」シリーズ(小峰書店/文春文庫)「おねえちゃんって」シリーズ(岩崎書店)など多数。「季節風」同人。
絵:佐藤真紀子
1965年、東京都生まれ。作品に『いえでででんしゃ』『いえでででんしゃはこしょうちゅう?』『ねこじまくん』『風の森のユイ』(以上、新日本出版社)、「バッテリー」Ⅰ~Ⅵ(教育画劇)、『りんごの木』『いちばん星、みっけ!』(ポプラ社)、『なまくら』(講談社)など多数。
「糸子、大好き!」書店員さんより、ご感想が届いています
●登場人物の言葉や感情のうごき、いろいろなところにわたしがいた。
ああこれ知ってる、と何度も思った。
どんな気持ちにも素直でまっすぐな糸子の姿に、大人の私も背中を押された。
こども時代をこの物語と共に過ごせることをすごく羨ましく思います。
―紀伊國屋書店新宿本店 児童書ご担当H様
●前作『糸子の体重計』とは違い、糸子が思い悩む心の内もあれこれ描かれていて、これも成長のひとつなのかなと感じました。
登場人物ひとりひとりの抱えている悩みがこちらにも強く伝わってきましたが、思いとは裏腹な行動をとってしまうことも―。でも彼らが模索しながらも前に進んでいく姿に、今回も胸を打たれました。
最後の卒業式のシーンは、泣けました。
―絵本ナビ 副編集長児童書担当 秋山朋恵
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