【今週の今日の一冊】10月9日は「世界郵便の日」。個性的なゆうびんやさんの絵本、大集合♪
10月9日は「世界郵便の日」。1874年のこの日、全世界を一つの郵便地域にすることを目的に、万国郵便連合(UPU)が発足し、地球上のほぼすべての地域から固定料金に近い形で郵便物が送れるようになりました。日本は1877年にこの万国郵便連合に加盟したのだそうです。ポストに投函すれば、世界中に郵便が届く。今では当たり前のことかもしれませんが、よく考えるとこれってすごいことですよね。そんな今週は、郵便配達でお世話になっているゆうびんやさんに注目! 特に個性的なゆうびんやさんが登場する本を集めてみました。
さて、どんなゆうびんやさんと出会えるでしょうか。
2022年10月3日から10月9日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
10月3日 野越え山越え、自転車に乗って手紙を届けます
月曜日は『ゆかいなゆうびんやさん』
いつかある日、野越え山越え、自転車に乗ってやってきたのはゆかいな郵便屋さん。
まずは3匹のくまにお手紙を配達です。何と差し出し人は、赤ちゃんぐまのおかゆを全部食べてしまい、おまけに椅子を壊してしまった金髪の女の子ゴールディロックス。手紙の中でゴールディロックスは自分のしたことを謝って、赤ちゃんぐまをパーティに招待しました。――さて、お次は森の中、お菓子の家に住む魔女に配達です。差し出し人は、魔女グッズを販売している小悪魔商会。これは商品広告の郵便ですね。――その次は、豆の木農園に住む大男あてのお手紙。内容は魔法のじゅうたんツアーへのお誘い。――そして次は、お城に住むシンデレラ姫あてのお手紙です……。
読者の声より
同じシリーズのクリスマスのお話を知っていましたが、それよりも前に描かれた絵本があったのは知りませんでした。
郵便屋さんが自転車に乗って、野を超え、山を越えて、いろんな人に手紙を運びます。手紙を受け取ったのは、3びきのくまやお菓子の家に住む魔女、おしろのなかのシンデレラなど、物語の主人公たち。その手紙がちゃんと本の中に入っているという仕掛けが、なんともワクワクします。
今はあまり手紙を受け取るという機会も減ってしまったので、なんだか特別感がありました。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子17歳、女の子14歳、男の子12歳)
10月4日 海でまいごになった手紙の配達はかけがえのない仕事
火曜日は『海のてがみのゆうびんや』
ある日、波にゆられてとどいたガラスのびん。中から出てきたなぞめいた手紙が、こどくなゆうびんやにとどけてくれたものとは…。
読者の声より
何だかミステリアスで切ないお話です。
手紙が入った瓶が流れ着いたら、その手紙を送り届ける、これほど不確かな仕事もないでしょう。
それでも来るはずのない手紙が届かないかと、希望を持つ郵便屋さんです。
誰宛かもわからない手紙を手にして、いつが明日か不明なパーティのことを考える、これほど不確かなのに、なぜか心は満たされていきます。
パーティの場に集まった人たちとともに過ごした時間が、手紙のボトルに満たされたようです。
幻想的な絵に癒やされました。
(ヒラP21さん 60代・その他の方)
10月5日 ゆうびんやのヤギがしてしまった大失敗とは!?
読者の声より
うちの子供も、お手紙を書いたりもらったりするのが大好きです。
このオオカミさんの気持ち、すごくわかったのじゃないかな。
ヤギさん、勇気を出して本当のことをオオカミに伝えることができてえらいぞ!とも思いました。
おてがみが、どんなに大事なものかよくわかっているからこそのこの展開。
でも、封筒をあまり鼻に近づけないほうがいいと思うよ。
(だっこらっこさん 40代・ママ 女の子7歳)
10月6日 ギコギコギーッ、ホネホネさんがやってきます
木曜日は『ゆうびんやさんのホネホネさん』
ギコギコキーと自転車をこいで、ホネホネさんは、村の動物たちに郵便を届けます。夏休み前、みんなは夏の旅行のお誘いの手紙を受け取ります。トリオくんはカモメさんから氷の山へのお誘い、ニョロコさんはワニオくんからジャングルおしゃれコンテストへのお誘い、ブタヤマさんの子どもたちは山のイノキチからの花火大会お誘い、池のナマズさんはアンコウさんからの海へお誘い。そして夏休み、みんなはそれぞれの旅へ出かけます!
読者の声より
4歳の息子のお気に入りとなりました。
ホネホネさん、がいこつですが、かなり魅力的です。
このキャラと、ギコギコキーッという擬音のリズムと
そして白と黒の2トーンの線画の模様が、独特で心地よいのです。
やっぱり線がいいのですね。
息子も迷路を楽しむように、この絵を楽しんでいました。
物語も、登場人物(動物)も独特。
住んでいる場所、彼らの手紙のやりとりが、おもしろい。
水の中だったり、土の中だったり、木の上だったり。
最後の方の見開きには、線のみならず、きっぱりとした青が使われていて、
それも、夏の青空、旅行に行く楽しみや開放感が表れています。
(トゥリーハウスさん 40代・ママ 男の子4歳)
10月7日 暗い洋館でゆうびんやさんを待ち受けていたのは…
金曜日は『てがみがきたな きしししし』
「てがみがきたな」
暗い洋館の扉を開け、ひっそり静か……でも気配の充満しているその部屋を、手紙を握って通り抜けるのはゆうびんやさん。
「きしししし」
「まちにまった てがみがきた」
実体があるような、ないような。おぞましいような、愛らしいような。そこにいるのは大勢の幽霊たち。どうやら彼らは手紙がきたのを喜んでいるらしい。手紙の宛先は、まだまだ見えぬ謎の洋館の上に住むあるじ。てんやわんや大騒ぎの彼らに囲まれ、いったいゆうびんやさんは無事に配達を完了することができるのか。
とんでもない絵本が届きました。ゆうびんやさんは、ただ手紙を届けたいだけなのに、待ち受けているのは、想像を超えるクライマックス。恐ろしいはずなのに、どこか懐かしく、居心地が良く、美しく……。これが網代幸介さんの世界なのかと驚いていると、ぽいっと日常にはきだされる。あれれ、今自分には何が起きたのか。
子どもから大人まで。ぽかんとした顔で絵本を閉じるのは、きっと同じ。これはクセになりそうです……。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
10月8日 「クジラ海」で手紙を配達しているのは…?
土曜日は『ぼくは気の小さいサメ次郎といいます』
メールやアプリ、SNSで、情報のやりとりをする現在。
そんなテクノロジーの波とはいまだ無縁の「クジラ海」では、ペリカン配達員や新米配達員のザラシーくんたちが、今日もせっせと手紙を配達中。
手紙なんて、手間もかかるし時間もかかる。
既読かどうかもわからない!
でも、ここクジラ海ではいつも、一通の手紙から物語ははじまるのです——
主人公は、ほんとはやさしいのに顔がこわいせいで友だちのできないサメ次郎。
ひとりぼっちの彼は、クジラ海の底で今日もポコポコとため息を泡に変えています。
そんな彼が拾った一通の手紙。
それはコンブ林に住むラッコ、プカプカさんのものでした。
どうしても、プカプカさんと友だちになりたい!
がまんのならなくなったサメ次郎は、スヤスヤお昼寝中の新米配達員、ザラシーくんの配達袋に、こっそり返事を忍ばせるのですが——
シリーズ1作目『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』が2018年度ドイツ児童文学賞・児童書部門を受賞!
“手紙”ではじまるクジラ海の物語、第5弾です。
手紙からはじまるクジラ海のあたらしい物語では、サメ次郎の友だち探しとはちがう、もうひとつ別の物語が描かれます。
その主人公は、新米配達員のザラシーくんです。
先輩であるベテランのアザラシ配達員が、実は自分あての手紙を受け取ったことがないと知ったザラシーくん。
あこがれのアザラシ配達員のために、心をこめたプレゼントを用意します。
でも、あんまりよろこんでくれていないみたい?
そして、エピローグには前作までに登場した動物たちも大集合!
彼らが集まったのは、クジラ海での「手紙のあり方」を大きく変えてしまう「ある物」のためなのですが——?
電子メールの発明?
いえいえ、もっとおおきくて、もっとワクワクするもの!
舞台がクジラ海の本巻ではありますが、じつは最後の最後に、意外な形で第1作目の「キリン」が登場しています!
見つけられるでしょうか?
たまにはスマホを置いて、大切な友だちのことを考えながら筆をとるのもいいかも。
そんなふうに思わせてくれる、かわいらしい一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
手紙がつなぐとびっきりの友情! 『クジラ海のお話』。こちらも合わせてどうぞ
10月9日 本日、世界郵便の日!郵便と手紙のこと学んでみよう
日曜日は『ゆうびん・手紙のひみつをたんけん!』
さいごに手紙を書いたのはいつでしょう?
バースデーカード?
旅行先からのポストカード?
それとも年賀状?
近年はアプリやSNSを通じたメッセージのやりとりが主流となり、手書きの手紙を送る機会はどんどん減っています。
でもそんな今だからこそ、手紙を書くことの価値は、むかしよりもずっと特別なものになったともいえるのではないでしょうか。
手紙を書く楽しさ、もらううれしさを紹介する「おもしろい!楽しい!うれしい!手紙」シリーズ、最初の一冊!
手紙ってどうやって書くの?
郵便屋さんはどうやって手紙をとどけるの?
そんな疑問に答えてくれるのはもちろん、本書では、飛脚が走って手紙を届けていた頃にまでさかのぼって、ゆうびんの歴史についても描かれています。
しかし、ここで本書のおおきなみどころとしてお伝えしたいのは、ゆうびんにまつわるアイテムの一覧写真!
ピアノの鍵盤になっていたり、二枚でひとつの絵柄になっていたり、千差万別の『切手』
実は形もいろいろある!切手のうえに郵便局が押してくれる『消印』
ビーチサンダルにヤシの実!?もはや紙でもなんでもない、『手紙』
ゆうびんとはこんなにも自由で多種多様なのかと、びっくりするやら笑えてくるやら——
そんななかで、『ゆうびんポスト』の写真は特にみどころ!
ポストといえば、一本足で立つ赤くて四角いものを思い描いてしまいますが、日本で使われていたかつてのポストをみれば、それが工夫に工夫を重ねてたどり着いたデザインなのだということがわかります。
もちろん、日本だけでなく世界で使われているポストの写真も!
これがまたすごくかわいい……
黄色だったり緑だったり、その形も模様もじつにさまざまなんです。
知らなかった魅力がまだまだいっぱい!
ゆうびんと手紙の秘密を学べばきっと、遠くのあの人のために、筆をとりたくなってしまうはず。
(堀井拓馬 小説家)
読者の声より
8歳次女と読みました。
郵便、手紙についての知識がいっぱい載っています。今時の子供たちは手紙を書いたり、はがきを書いたりする機会が減っていると思うので、あて名や自分の住所を書く場所がわからない子もいっぱいいると思います。うちの子はその一人でした。わかりやすい絵と言葉で丁寧に書かれていて、よくわかると思います。
いろんな切手や世界のポストなども写真で載っていて、親が読んでもとっても面白かったです。
(きーちゃんママさん 30代・ママ 女の子10歳、女の子8歳)
いかがでしたか。今は携帯のSNS等でメッセージのやりとりをするのが主流となっていますが、そんな今だからこそ、ゆうびんやさんから手書きのお手紙を受け取ると、特別な感じがして嬉しい気持ちになったりしませんか。「世界郵便の日」がやってくる今週は、久しぶりの誰かに手書きの手紙を書いてみるのも良いかもしれませんね。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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