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今こそ子どもと一緒に名作を読もう! ~もっと本を読んでおけばよかった、というパパママへ~

今こそ子どもと一緒に名作を読もう!『番ねずみのヤカちゃん』

 

昔、もっと本を読んでおけばよかった。

子育て中に、絵本や児童書を目にすることが増えた時、そんな風にふと後悔してしまうこと、ありませんか? 

もし、そんな風に感じたら今が読むチャンス! 今こそお子さんと一緒に児童書を読んでいきませんか。どんな本を読んだらいいの? というお悩みについては、こちらの連載で子どもの対象年齢に合わせておすすめしていきますので、参考にしていただけたらと思います。


今回ご紹介するのは、4歳から8歳ぐらいの子どもたちにおすすめの名作『番ねずみのヤカちゃん』。こちらは声に出して読むといっそう楽しいお話というのが大きな特徴なんです。

『番ねずみのヤカちゃん 』を子どもと読もう!

タイトルにある「番ねずみ」ってどういうことなのでしょう。
1992年に刊行されて以来、30年以上も読み継がれる人気の名作。その人気の秘密とは?
とくに声に出して読んでほしいお話なのですが、その理由とは? 
『番ねずみのヤカちゃん』の魅力をたっぷりご紹介します。
 

『番ねずみのヤカちゃん』ってどんなお話?

とにかく声の大きいヤカちゃんにドキドキハラハラ。

ドドさん夫婦の家の壁と壁のすき間に住む、おかあさんねずみと、四ひきの子ねずみ。そのうち四ひきめは、「やかましやのヤカちゃん」とよばれていました。どうしてこんな名前がついたかといえば、ヤカちゃんの声がとてつもなく大きかったからなんです。

たとえば、おかあさんねずみが、ドドさん夫婦に存在を気づかれないよう「けっして音をたててはいけない」と注意している時も「うん、わかったよ、おかあさん」と答える声のなんと大きいこと! 他にもおかあさんねずみの言いつけに対して、全部うんと大きな声で答えるヤカちゃんのお返事の繰り返しが何とも愉快でたまりません。

子ねずみたちは、自分ですきなところへ行って、自分で食べ物を見つけて、自分で暮らすように。

大きくなった子ねずみは、おかあさんからのさまざまな言いつけを守りながら、それぞれに暮らすように。ヤカちゃんもおかあさんが言ったことを忘れませんでした。でも、声だけはどうしても小さくすることができず、ドドさん夫婦に存在がばれてしまいます。そして、ドドさん夫婦は、ねずみとりのわなを仕掛けたり、ねこを買ってきたり、ねずみ退治に力を入れるように‥‥‥。

そんなある日、ドドさん夫婦の家にどろぼうがやってきたのです。

ヤカちゃん、大活躍!

ドドさんの家の窓から、見たこともない男の人が入ってきたのを目撃したヤカちゃん。その人は、ぼうしを、まぶかにかぶり、せなかに大きなふくろをかついでいました。しばらく男の人のする行動をこっそり見ていたヤカちゃんでしたが、男の人があるものを食べようとした瞬間、思わず……! この事件をきっかけに、ヤカちゃんは「番ねずみ」と呼ばれるようになったのでした。

対象年齢の目安は?

読んであげるなら4歳ぐらいから。ひとりで読むなら小学2年生ぐらいからがおすすめです。ただ声に出して読むと一層楽しめるお話ですので、はじめはぜひ大人の方が読んであげるなど、親子で一緒に楽しむことをおすすめします。

 

親子で楽しむポイントは?

  • ヤカちゃんのセリフの文字の大きさに注目して、大きな声で読もう。
    登場する四ひきの子ねずみたちは、おかあさんの言いつけに対してそれぞれ返事をするのですが、返事の声の大きさによって、本に表記される文字の大きさが異なっています。その文字の大きさに合わせて声の大きさを調整しながら読むと、お話の楽しさがいっそう増すでしょう。とくにヤカちゃんのセリフ部分の文字の大きさは、どれぐらい声が大きいのかが伝わってきて、楽しいところ。読者レビューにも声があがっているのですが、ヤカちゃんのセリフ部分だけ、お子さんに読んでもらうのも楽しそうです♪
     
  • 文章からも挿絵からも伝わってくるユーモアを楽しもう!
    ヤカちゃんの声があまりに大きすぎて、ドドさんとドドさんのおくさんが、壁の中にライオンがいるんじゃないかと話す場面や、ヤカちゃんの声のせいで家じゅうがぐらぐら揺れてしまう場面など、お話の中にはたくさん笑ってしまう場面があります。親子で一緒にひとつひとつ面白い場面を見つけてみませんか。
    また、挿絵にも楽しさがいっぱい。はじめは、ついついヤカちゃんばかりに気を取られてヤカちゃんばかりに注目してしまっていたのですが、他の子ねずみたちを一匹ずつよく観察してみると、おやおや女の子もいるようですし、細かく動きを追っていくと、それぞれに性格があるようです。この子ねずみは、こんな性格なんじゃないか? など一緒に想像を膨らませてみてくださいね。
     
  • おかあさんが教えてくれた歌が、あぶないところで助けてくれる。
    ひとりで暮らすようになったヤカちゃん。その大きな声のせいで、ドドさん夫婦からねずみとりのわなを仕掛けられたり、ねこを買われたりとつぎつぎにピンチが襲いかかります。けれどもすんでのところでヤカちゃんの頭に思い浮かぶのは、いつもおかあさんの歌でした。

こんな風に読んでみる?

  • 毎日読める分量だけを無理せず読もう。
    本全体のページ数は68ページ。それほど長くはありませんが、お話の場面は大きく3つに分けられますので、3回に区切って読むのも良いでしょう。区切る箇所は、➀子ねずみのおかあさんが、四ひきの子ねずみたちに自分で暮らしていく前に、言いつけをする場面、②四ひきのねずみが自分で暮らしていくようになり、そのうちヤカちゃんが、ドドさんの家でねずみとりやねこと出会う場面、③ある晩、ドドさんの家に、窓から見たこともない男の人が入ってくる場面です。
     
  • 歌の部分は、自由に節をつけて読もう。
    お話の中にはいくつか歌が出てきます。それはおかあさんが子ねずみが危険なものと出会った時に思い出してほしいと願って教える歌で、「ねずみとりのわなの歌」「ねこの歌」があります。こちらをどんな風に歌うかは正解はありませんので、自由に節をつけてみると楽しさが増すでしょう。
    節をつけるのが難しい場合には、もちろん普通に読んでも大丈夫です!

実際に読んだ親子の声をご紹介します!

ヤカちゃん役を息子に任せ

楽しい幼年童話です。
ドドさんという人間の家に4匹のこねずみと住みついているねずみのお母さん。ドドさん夫婦に気付かれぬように、静かに静かに子育てをしてきました。ある日お母さんは、子どもたちに自立を促します。自立と言っても同じドドさんの家の中での事ですけれど(笑)。

自立にあたって、お母さんは子どもたちに大切な注意をします。
中でも大切なのは、けっして音を立ててはいけない事。
ねずみがいるとドドさんたちにわかったら、ねずみ獲りをしかけられるから。
そこでお母さんは、ねずみ獲りに引っかからないようにと、注意を歌で伝授。
「猫に注意」も歌で。

こそこそ話すお母さんに小さな声で応える3匹のこねずみ。
でも、ヤカちゃんはとにかく大きな声「わかったよ。」と応えます。
全然わかってないじゃん。と、つっこみを入れたくなるこの楽しいやりとりの繰り返し。
でも、大きな声が功を奏し、・・・。

ちょっと長いので、2年生くらいから一人読みができそうです。
でも、我が家ではヤカちゃん役を当時6歳の息子に任せ、一緒に読んで盛り上がりました。
(アダム&デヴさん 50代・ママ 男の子12歳)

 

声に出して読みたい本!
7歳と11歳の子どもに読みました。

子ねずみのヤカちゃんは天真爛漫というか、空気読めないというか.....
人間の家でひっそりと暮らしていくために大事なことの一つ、大きな声を出してはいけないという注意をことごとく守れず、お話を聴いている子どもたちの笑いを、心をとらえていきます。

ねずみとりが仕掛けられたり、猫が出てきたり、泥棒が...そのたびに子どもはドキドキするようで、思わず声がでてしまうようでした。

ヤカちゃんの台詞は大げさなくらい大きく、天真爛漫に読みました。
その台詞の度に子どもは大笑い。

ヤカちゃんのお母さんが歌ってくれた歌を創作して歌うのも、なかなか楽しいものでした。(ちなみに私は子守唄風になりました)

小2のクラスでも読み聞かせをしましたが、長い話にもかかわらず子どもたちの集中力は最後まで続き、何度も笑いが起こりました。
(メレカリキマカさん 40代・ママ 男の子11歳、女の子7歳)

大声のねずみが大活躍!?
人間に存在を知られてはいけないはずのネズミですが、4兄弟のひとりヤカちゃんはあまりの大声で、住んでいるドドさんに「かべの中にライオンが住んでいるんじゃないかね」と間違われてしまうほど。でも、その大きな声でドドさんちの危機を救います。

4歳の息子には少し長いお話かなと思いましたが、次はどうなるんだろうとワクワクしながら最後まで飽きずに読んでいました。ヤカちゃんの台詞は本当に大きな声で読むと大喜び! 「ヤカちゃんたら~声大きすぎるよね~」と言って楽しんでいました。
(kokeさん 30代・ママ 長野県 男の子4歳)

お話を作られたのは?

リチャード・ウィルバーさん。1921年、アメリカのニューヨーク市に生まれ、詩人・翻訳家として活躍されました。1957年にピューリッツアー賞受賞。『番ねずみのヤカちゃん』は、本国で1963年に出版され、その後、ストーリーテリングによって多くの子どもたちに親しまれています。他、日本で翻訳された作品としては、『…の反対は? (詩人が贈る絵本)』(みすず書房)があります。
(※『番ねずみのヤカちゃん』作者・訳者・画家紹介ページ参照)

訳者は、松岡享子さん。

松岡享子さんは、自ら創作を行う作家として、また諸外国の優れた作品を日本に紹介する翻訳者として、また図書館員の育成など、子どもの本の世界を豊かにするために、多くの大人や子どもたちに働きかけてこられました。

さらに日本のストーリーテリングの第一人者としても活躍された松岡享子さんならでは、の語り口で読む『番ねずみのヤカちゃん』は、声に出して読むと、リズム良く、文章に気持ちよく声がのるのを感じられるでしょう。

松岡 享子(まつおかきょうこ)
1935年神戸市に生まれる。神戸女学院大学英文学科、慶應義塾大学図書館学科卒業。1961年渡米。ウェスタンミシガン大学大学院で児童図書館学専攻後、ボルチモア市立イーノック・プラット公共図書館に勤務。帰国後、大阪市立中央図書館を経て、自宅で家庭文庫を開き、児童文学の翻訳、創作、研究を続ける。1974年、石井桃子氏らと共に財団法人東京子ども図書館を設立。2015年まで理事長を務めた後、同館名誉理事長。文化功労者。著書に『子どもと本』『えほんのせかい こどものせかい』創作に『なぞなぞのすきな女の子』『とこちゃんはどこ』、翻訳に『しろいうさぎとくろいうさぎ』、「うさこちゃん」・「パディントンの本」シリーズなど多数。
 

写真提供:(公財)東京子ども図書館

挿絵を描かれたのは、大社玲子さん。

大胆な構図で、ヤカちゃんはじめ子ねずみたちの姿がユーモアたっぷりに描かれています。絵にどこかで見覚えがあるような‥‥‥と思われた方は、それもそのはず。大社玲子さんは、『なぞなぞの好きな女の子』や『みしのたくかにと』など長く読み継がれている童話の挿絵をたくさん書かれていらっしゃいます。

いかがでしたか。

今回、読者レビュー全てを読ませていただいたのですが、ヤカちゃんは、うちの子に似てる! という声がたくさんあがっていて、思わずくすりとしてしまいました。

「大きな声が功を奏する」ヤカちゃんのお手柄には、大きな声の持ち主ほど(実は私自身も……)とっても嬉しくなってしまうのかもしれません。

 

秋山朋恵(あきやま ともえ) 

絵本ナビ 副編集長・児童書主担当

書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。編著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。

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絵本ナビ編集部
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