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未来の今日の一冊 ~今週はどんな1週間?~

【今週の今日の一冊】8月11日は「山の日」。心地良い景色と風を感じる絵本

国民の祝日の一つである「山の日」。日本では国土の約7割を山が占めることから、山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝することを趣旨として2014年に制定され、2016年より施行となった記念日だそうです。今週は、ページいっぱいに広がる壮大な景色と心地良い風が感じられるような「山の絵本」を特集します。

2023年8月7日から8月13日までの絵本「今日の一冊」をご紹介

8月7日 それぞれの立場から見る「わたしのやま」

月曜日は『わたしのやま』

わたしのやま

表紙から読み始めると、あれ?!
途中でユニークなつくりになっていることに気がつきます。
表紙から読むと羊飼いの物語。
裏返して裏表紙から読むと、狼の物語。
それぞれの立場から見る「わたしのやま」が語られます。

ふたりが見ている山は同じはずなのに、その風景はかなり印象が違います。
視点が違うと、同じものも違う意味を持つのです。
でももっと不思議なのは、それぞれのセリフが、一言一句同じだということ。
訳者の谷川俊太郎さんは、
「人間の立場と狼の立場が、<いのち>の眼で見れば同じという真実を、テキストとレイアウトのアイデアに溢れた工夫で、シンプルに描き出しているところが新鮮です。」
とコメントしています。

「人間にとって、きけんってなんだろう?」
「オオカミがおそれるものは?」
「人間とオオカミは、敵なの?味方なの?」
と、いろいろ考えさせられる作品です。
他者の立場になってものを考えるという体験は、子どもにとっても大人にとっても大切なこと。
ぜひ子ども大人も一緒に読んで、大いに語り合ってみてください。

(出合聡美  絵本ナビライター)

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=135311
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8月8日 森をぬけ、岩を登り、雲を越え…そして絶景が!

火曜日は『ポレポレやまのぼり』

ポレポレやまのぼり

表紙で澄んだ青空の中にそびえ立っているのが「たかいたかいやま」。そしてふもとの方に小さく佇んでいるのは、慌てんぼうのやぎくん、お調子者のはりねずみくん、しっかり者のぞうくん。これから頂上をめざして出発するのです。大丈夫なのかな?だって、やぎくんの荷物の大きさといったら・・・!(笑)
そんなスタートの場面を見ているだけでワクワクしてくる『ポレポレやまのぼり』。
絵本の中には登山の楽しさがぎゅっと詰まっています。さわやかな景色と空気の中ゆっくりと歩くふもと部分、意外なほど険しい岩壁、そして息をのむほどの雲海。
頂上についた後はにぎやかな食事と静かで深い闇の夜。
(ここでは、やぎくんが大活躍しますよ!)
なんだか、私も一緒に山登りがしたくてむずむずしてきました。
こんな景色や楽しい時間、経験がないと描けないのでは?と思っていたら、たしろさん、キリマンジャロ山に登った時のことを思い出されながらこのお話を創られたのだそう。(本格的!)山登りの醍醐味はそのままに、こんなに愛らしいお話が完成してしまうなんて、さすがなのです。
ところで、ポレポレってどんな意味だかわかりますか?

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=82472
https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=82472

8月9日 雄大な山々が見守るのは、生きるものたちの営み

水曜日は『山はしっている』

山はしっている

その、最初のページ。
朝もやに浮かびあがる雄大な山の景色を目にした途端。
ひんやりした地面の空気を感じた瞬間。
物語を読む前から感覚的にそれは伝わってくるのです。

彼らは山に見守られている、ということ。

早起きの鳥は空へ飛び立ち、シロイワヤギがひづめの音を響かせ、小さなナキウサギが目を覚まし。つゆに濡れた草をそよがせて歩くのはヘラジカの親子。朝ごはんを探しているのです。

昼になれば、木洩れ日のさしこむ枝のあちこちで鳥たちがさえずり、クズリが獲物をもとめてうろつき、シカは立ち止まり。

やがて日が沈むころ、真っ赤に染まる山を背景に、忙しく動き回るのはビーバーやハイイログマ。寝床へもどっていくものがあれば、目を覚ます動物たちもいる。夜は夜で、また一日の世界がはじまっていき……。

刻一刻と変化していく陽の光、さらに夜になれば月の光に照らされる自然の風景が。毎日繰り返されているであろう、それぞれの動物たちのそれぞれのいとなみが。こんなにも美しく、こんなにも尊いものに見えてくるなんて! 揺さぶられるほどの感動を味いながら、最後に語るその言葉が静かに心に突き刺さってきます。

「夜が朝になるように、世界もかわっていく。
 永遠に続くこともあれば、進化するものもある。
 かわらないのは、生きること。」

山は、知っているのです。
消えいく命のことも、生まれ来る命のことも。
そして、見守られている私たちが考えるのは、これからの地球について。

リチャード・ジョーンズが描く美しい自然や愛らしい動物たちを素直にたっぷり堪能しながら、しっかりと感じたことを心に留めていこうと思うのです。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=135455
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8月10日 さまざまな表情の山を立体的なしかけで楽しもう!

木曜日は『ルー、山へ行く』

ルー、山へ行く

ルーといっしょにオオカミをさがしに山へ行こう!
世界中でベストセラーとなったしかけ絵本『ナマケモノのいる森で』、『オセアノ号、海へ! 』のフランス人作家デュオによる「山」がテーマの待望の新作です。主人公・ルーがオオカミへ会うために山登りへ向かうストーリー。さまざまな表情の山が立体的なしかけで楽しめます。

編集者のおすすめポイント
ベストセラーとなった既刊『ナマケモノのいる森で』では360度広がる森の世界を、『オセアノ号、海へ!』では海の上と海の中をひとつのページに同時に表現し、つねに新しいテーマと表現方法に挑戦する作家のボワロベールとリゴー。新作のテーマは雄大な「山」。今回のもうひとつのモチーフである「オオカミ」が全ページのどこか隠されていて、探す楽しみもあります。美しいイラストレーションと迫力あるしかけを堪能できる、素晴らしい作品です。本国フランスと同時発売!

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=171994
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8月11日 「山の日」に読みたい本格登山体験絵本

金曜日は『槍ヶ岳山頂』

槍ヶ岳山頂

小学5年生の男の子が、燕岳(つばくろだけ)から槍ヶ岳(やりがたけ)という北アルプス一番人気のルートを2泊3日で歩く絵本です。
ある夏の日の早朝、ぼくはとうさんに連れられて自宅を出、特急電車とバスを乗り継ぎ、登山口へむかいます。
初日は燕岳登山。山頂近くの山小屋に宿泊。翌朝、雲海にのぼるご来光を見て出発。槍ヶ岳山頂をめざすのです。
見晴らしのいい尾根道から、クサリ場の難所へ。急に雨も降り、だんだん厳しくなる天候と上りに、ぼくは内心半泣きで山頂をめざしますが・・・。

じつはこれ、落語絵本などで大人気の川端誠さんの作品なのです! 雰囲気が違うので驚きますが、太陽の光線とともにうつりかわる雄大な山々の色や立体感、美しさを描くために、今回の絵を選んだにちがいない!と納得させられます。
個人的にはお弁当がおいしそうなこと、克明な登山時間、大天井(おてんしょ)ヒュッテや水俣乗越(みなまたのっこし)などの「山の言葉」に思わずときめいてしまいます。
この絵本、川端誠さんの息子さんたちがそれぞれ10歳のとき、いっしょに槍ヶ岳にのぼったときの取材をもとに描きあげたそうですから、お弁当の中身や時間も実話に近いのかもしれませんね。

中空に槍がつきでたような、独特のかたちをもつ山、槍ヶ岳。
標高3,180メートル、日本で5番目に高い山である槍ヶ岳は、しっかり事前準備をしないと、おいそれとはのぼれない山です。
でももしのぼったら、こんな道と風景が広がっているのだと教えてくれる絵本がはじめて誕生しました。

文字は総ルビ。山登り独特の表現はありますが、テンポよいリズムで、小学生中・高学年くらいにぴったりでしょう。
前後の見返しには、2泊3日の縦走ルートと、山小屋のスタンプがいっぱい!
あこがれの山にのぼりたくなる絵本。そして、山を知らなかったひとも、山を好きになりそうな絵本です。
(大和田佳世  絵本ナビライター)

8月12日 念願のエベレスト初登頂へ…

土曜日は『シェルパのポルパ エベレストにのぼる』

シェルパのポルパ エベレストにのぼる


『富士山にのぼる』などの重厚な山岳作品の多い石川直樹さんが、ヒマラヤ登山に欠かせない山岳民族シェルパの姿を感謝の気持ちを込めて描いた、山を登る過酷さを乗り越え、その頂に立った達成感を体感できる作品です。

ヒマラヤの麓で生まれ、毎日ヒマラヤを眺めて育った少年・ポルパ。ポルパは、ヒマラヤの山々に登るという夢のために、毎日思い荷物を背負って運ぶ、荷物運びの仕事をしていました。でもポルパが1人で行けるのは、氷河の入口まで。

いつかこのさきにいきたい、いきたい、いきたいなあ。

その夢が、遂に叶う日がやってきました!
ポルパはテンジンおじさんたちにシェルパとして必要なことを教えてもらいながら、エベレストの山頂まで同行することになったのです。
ご存じの通り、エベレストは標高8849mもある世界一高い山。登山も一筋縄ではいきません。

富士山よりも2000mも高い標高5364mでのベースキャンプ作りに、危険な氷河越え。重い装備を身につけ、様々な道具とテクニックを駆使して、ようやく氷河を越えた後も、数々の難所がホルパを待ち受けています。「はーっ はーっ ふーっ」と何度も繰り返されるポルパ少年の呼吸音に、その過酷さが体感できるでしょう。

まさに命懸けの困難を乗り越えて、ようやく立つことができる山頂。「ここより高い場所はどこにもない!」という場所から眺める景色は、その見え方や、鳥たちの飛ぶ様子、太陽の温かさなど、見どころがいっぱいです。そしてなによりも心に響くのが、ホルパの努力が報われた瞬間。ガイドとして認められた時の喜び、自分の足で山頂に立った感動、危険な道を下山しベースキャンプに戻ってきた安堵感の様子など、ホルパの喜びを自分のことのように感じることができます。

「シェルパのポルパ」シリーズは、『シェルパのポルパ 冬虫夏草とおおきなヤク』、『シェルパのポルパ 火星の山にのぼる』へと続きます。ヤクのおはなしも気になりますが、「火星」っていったい!? ポルパの冒険譚が楽しみですね。
(中村康子  子どもの本コーディネーター)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=145451
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8月13日 美しくてやさしく懐かしい、山の春夏秋冬…

日曜日は『ぼくたちのやま』

ぼくたちのやま

近く遠く、いつもそこにある山は、私たちの心の原風景。春夏秋冬-季節を装う山の姿は美しく、やさしく、どこか懐かしく…。時をきざむ自然・生命の息づかいのなかで、ふっと感じる何かを大切にしたい。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=119960

いかがでしたか。まだまだ暑さの厳しい8月ですが、ほっとひと息、山の景色や心地良い風の感触を想像しながら読んでみてくださいね。

秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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