【今週の今日の一冊】西内ミナミさんの絵本をたどる一週間
絵本作家の西内ミナミさんがお亡くなりになったという悲しいお知らせが届きました。
西内ミナミさんといえば、代表作は『ぐるんぱのようちえん』。1966年に刊行されて以来、本当にたくさんの親子に愛され続けている絵本です。他にも西内さんが作られた絵本は、楽しくて元気の出る作品で長く読み継がれています。表紙を見て、『ぐるんぱのようちえん』以外にも懐かしい作品を見つけることができるのではないでしょうか。
今週は、長年にわたる創作活動といつも私たちを明るく元気づけてくれる作品に敬意と感謝を込めて、西内ミナミさんの絵本特集をお送りします。
2023年10月23日から10月29日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
10月23日 ぐるんぱは、みんなの友だちであり、あこがれです
月曜日は『ぐるんぱのようちえん』
ぐるんぱは、とっても大きなぞう。
でも、ずっとひとりぼっちでさみしく暮らしてきたのです。
からだもきたなくて、くさいにおいもして……時々涙を流したりして。
見るに見かねたジャングルのぞうたちが、会議をします。
「ぐるんぱを、はたらきに出そう」
「さんせーい」
みんなに全身を洗ってもらい、みちがえるほど立派になったぐるんぱ。
さあ、はりきって仕事探しです!
ところが……。
ビスケットやのびーさんにも、おさらつくりのさーさんにも、靴やのくーさんにも言われてしまうのです。
「もう けっこう」
ぴーさんにも、じーさんにも。
こんなにがんばっているのに、どうして?
1966年に発売されて以来、ずっと変わらず子どもたちに愛され続けているこの絵本。なかなか上手に自分の居場所を見つけられないぐるんぱを見ながら、子どもたちは知らぬ間に自分と重ね合わせているのかもしれません。だからこそ、最後の場面に出会った時、たくさんの子どもたちに囲まれて遊ぶぐるんぱの様子に心底ほっとため息をつき、嬉しそうな笑顔を見せるのでしょう。
さらに子どもたちの心に強烈な印象を残すのは、ぐるんぱの作った大きなビスケットであり、大きなおさらや靴であり、スポーツカーやピアノであり。あのワクワクするようちえんであり。そういった魅力的な絵の数々でもあります。そうやって、あらゆる感覚を刺激してくれる1冊だからこそ、ロングセラーとなっているのでしょうね。
失敗を繰り返しながらも前に進む健気ななぐるんぱ。その先でしっかりと自分の仕事を見つけるぐるんぱ。絵本を開くたびに出会うぐるんぱは、大人になった今でも、私にとって「ともだち」であり、「あこがれ」なのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
10月24日 何でも「めんどくさい! 」と言っていたら…!?
火曜日は『ゆうちゃんとめんどくさいサイ』
何でも「めんどくさい! 」と言うゆうちゃんが、何にもしない“めんどくさいサイ”の子になります。ところが、あんまり手が汚れたので洗おうとしたら、めんどくさいサイが「手を洗うな」と言うのです。堂々と「めんどくさい! 」を連発するゆうちゃんは、子どもたちの憧れの的! そして、めんどくさいサイのところを自分から飛び出していく結末も、共感を呼びます。身近なテーマから生まれた愉快なお話です。
読者の声より
着替えなさいっ!歯を磨きしなさーいっ!!
わが家のようです・・・。
ママが、いくら怒っても、平気の平左のゆうちゃん。
うーーんっ、見てるだけなら、逞しくてステキ☆(笑)
『めんどくさい』を連発するたび、
変なものが生えてきても、平気平気♪(笑)
呆れて追い出されても、ぜーんぜん気にしなーい☆
でも、何もするなと言われると・・・、なんだか居心地が悪い??
わが道をススムゆうちゃん。
『自分のことは、自分で決めるぜ!!』って感じが、爽快でした☆
(しゅうくりぃむさん 40代・ママ 女の子5歳)
10月25日 ピカッとひらめいたらすぐ実行!
水曜日は『おもいついたら そのときに!』
小さな丘の上の小さな家に、おばあさんとねこ、ひとりといっぴきが暮らしています。今日はいい天気。外へ出てみると、おばあさんの育てたチューリップが見事に咲いています。… と、ここまでは普通のおばあさんの普通で素敵な暮らし。
「わたしは はなづくりの てんさいだわ」
その瞬間、おばあさんの頭の中で何かがピカっと光ります。
そして、こう言うのです。
「おもいついたら そのときに!」
バタバタと動き出すその様子に呆気にとられていると、その間におばあさんはどんどん行動して、実行していきます。それからも、おばあさんのピカッは止まりません。自分のお料理にうっとりした時、自分で作ったドレスの出来上がりにうっとりした時、自分の髪を見事にゆいあげた時…その度にこう言うのです。
「おもいついたら そのときに!」
その行動力の積み重ねで、何が出来上がったかというと…すごい事になっていますよ。おばあさん、大丈夫!?
この勢い、この実行力、この破天荒さ。おばあさんがとにかくかっこいいのです。それは子どもたちの目にだって同じに映るはず。やれば何でもできちゃうって感覚、絵本だからこそ味わえるものですよね。
さてさて、おばあさんの「おもいつき」の連続から生まれたのは、なんと小さな町! なんだかとても居心地が良さそうですよね。明るく元気な気持ちになれる1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者の声より
おもいついたらそのときに!どんどん行動できるおばあさん!
なんて素敵!しかも、なんだって上手にこなしてしまうのですもの。
憧れてしまいます。
でも、なんでもどんどんできるって、自分で自分の行動を加減して
いかないと、自分の首をしめかねないのですね。あまりに忙しくて
おばあさんもねこも大変でした。
最後にはおふろで(温泉だし!)のんびりできてよかったよかった。
私はなんでも、どんどんできるタチではないけれど、おばあさんの
行動力は見習って、おもいついたら、少しでも動くようになりたいな。
(ぽこさんママさん 40代・ママ 女の子4歳)
10月26日 「ひとーつ まめ ひとつ あったとさ」
読者の声より
かわいいかぞえうたの絵本です。
かぞえうたですが、ちゃんとお話になっており、土に植えたまめが大きくなって食べられるまでを描いています。
かぞえうたなので、葉っぱやまめの数が数字と揃っておりページごとに数えることができます。
でも、途中でまめが逃げ出してころころころころ…とかぞえうたに関係ないページも挟まれており、型にとらわれない自由でのびのびとした絵本だなと思います。息子はころころのページが大好きで、何度も読みたがります。これでひとつふたつ…の数え方を学べると良いなと思います。
(ぱそがえるさん 30代・ママ 男の子1歳)
10月27日 愛らしくてユーモアいっぱいのぶーぷのお話が7話
金曜日は『こぶたのぶーぷ』
満面の笑顔で美味しそうにショートケーキをほおばっているのは、こぶたのぶーぷ。とっても幸せそうですが、そんなぶーぷの毎日をちょっとのぞいてみましょう。
“林の中のいっけんやに、こぶたのぶーぷが、ひとりできちんと暮らしていました。きょうも、ぶーぷは、元気よくおきると、すぐに、外に出て朝の体操をし、おいしい空気を、胸いっぱいにすって、家に入りました”
あら、なんだかずいぶんきちんとしたこぶたくんのようですよ。
でも楽しいイベントやお出かけが続いて、家の中は散らかり放題。ぶーぷは大けっしんをして1日そうじをすることにします。でも台所をそうじしようとしたら棚からケチャップやマヨネーズがふりかかってきたり、お風呂そうじをしようとしたら間違ってシャワーが出て水びだしになったり、リビングルームでは転んで絵の具でベタベタになっちゃったり、どんどん大変なことに。やっとのことで家じゅうのそうじがすんでほっとするぶーぷ。その後、洗濯場に行き目にしたものとは?!
『ぐるんぱのようちえん』をはじめ楽しいお話をたくさん生み出されている西内ミナミさんと、美しく温かな色づかいでいつも私たちを和ませてくれる真島節子さんから届いたとってもかわいくて愛らしいこぶたくんのお話。「たいへんなそうじ」「ぶーぷは消防士」「オオカミがあらわれる!?」「雨の日のなぞなぞ」「ぶーぷには毛皮がない」「災害はわすれたころにやってくる」「日時計はいまなんじ?」の7話が入っています。お友だちとの楽しいやりとりや、ぶーぷのかわいい勘違い?が盛りだくさんのユーモラスなお話。読み終わったら見開きの“ぶーぷワールド”を眺めてみると、ぶーぷの世界をより身近に感じることができますよ。
1話1話がちょっとした時間に読むのにちょうど良い長さなので、ぜひお家での読み聞かせタイムや、教室での読書時間に楽しんでくださいね。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
読者の声より
予想以上に面白く、お気に入りになりました。
1話ずつ完結なので、寝る前の読み聞かせにもちょうどいいです。
ただ、面白すぎてゲラゲラ笑い、眠くならないかも(笑)。
大掃除、日時計等、身近なことから、災害の備え、人と違ってもいいんだよ等、大切だけど、まだ小さい子には難しいかなと思うことまで、さらっと書かれていたりします。
どのお話も楽しくて、今日は1つだけと言うと、目次を見て真剣に選んでいます。
長く楽しめる本だと思います。
(マリレオ&クーさん 30代・ママ 女の子5歳)
10月28日 ほうちょうさんが歌って踊って、なにができるかな?
読者の声より
子供のお気に入りの絵本。
チャーハンのできる工程が描かれているのですが、カラフルで躍動的、おまけにクイズ形式なのでなんともドラマチック。
おひるごはんがチャーハンと知るとテンションが下がり気味だったわが子に、「今日はおやまごはんだよ!!」と声をかけると大喜び。
おやまごはんマジックです。
10月29日 「め」からゆかいなイメージがつぎつぎ連なって…
読者の声より
「め・め・め」だけで、いろんなことにお話が広がって言葉って凄く大切なんだと認識した絵本でした。いろんな目が出てきて、最初は、当てっこできるから、ゆっくり、ゆっくりのクイズの好きな孫には、大好評な絵本だと思うし、いろんな目を意識できるし、「花の芽」にも広がっていって素敵だなあと思いました。絵もインパクトがあって惹かれました。
(押し寿司さん 60代・じいじ・ばあば)
個人的に思い出深いのは、水曜日にご紹介した『おもいついたら そのときに!』。どんどんやりたいことを思いついてはすぐに行動に移すおばあさんが痛快で大好きで、よくおはなし会でも読ませていただきました。
楽しくて、読むと明るい気持ちにさせてくれるたくさんの作品をこれからも大切に読み継いでいきたいと思います。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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