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現役学校司書が本でCheer Up! 中学生に読んでほしいオススメ本

「光る君へ」の世界を読み解こう。 源氏物語と平安時代を楽しむ本

みなさん、こんにちは!
2024年辰年です。龍(竜)は、日本でも海外でも、絵本や児童文学に多く描かれています。竜やドラゴンに関する物語はこちらを見てくださいね。

>>竜やドラゴンが出てくる物語(読み物)

ちなみに私が好きなのは『エルマーとりゅう』です

さて、2024年のNHK大河ドラマは「光る君へ」。『源氏物語』の作者である紫式部をヒロインにした平安歴史ドラマです。平安時代を舞台にした大河ドラマはこれまでいくつか放送されており、最近の放送は2012年の「平清盛」でした。これまで大河ドラマで描かれた平安時代は、ほとんどが源氏と平家の武士の物語なので、平安貴族にスポットを当てた今回の「光る君へ」は世間の注目度がとても高いんですよ! ドラマは、現代のみなさんにも親しめる工夫がちりばめられています。ぜひ観てくださいね。

大河ドラマの放送に合わせて関連本がたくさん出版されています。本記事では、紫式部が生きた平安時代と源氏物語をさらに楽しむための本をたっぷりご紹介します。
 

源氏物語と平安時代を楽しむ本

『マンガとクイズで楽しく学ぶ!源氏物語 るるぶ』

旅行ガイドでおなじみの「るるぶ」の出版社が、小中学生のみなさんに「マンガとクイズを使って楽しく学ぶ」ことができるように作ったシリーズの1冊です。
『源氏物語』とその時代を、オールカラーのマンガや図解で楽しく知ることができます。ストーリーマンガで『源氏物語』の有名なシーンを紹介しつつ、豆知識的なコラムを読んでいくと、読み終わる頃には平安貴族の文化や習慣にかなり詳しくなれちゃいます。基礎の基礎から説明してあるので、日本の古典文学にはじめて触れる人に、とっても優しい1冊です。
 

『図解でスッと頭に入る紫式部と源氏物語』

この本は『源氏物語』が描かれた平安時代の貴族の生活や、しきたりを知るのにピッタリです。オールカラーで、ふんだんにイラストや図解が使われています。『源氏物語』の作者である紫式部も出仕していた後宮(后や女官たちが住むところ)の仕事や女性たちの身分、当時流行ったゲームなど、物語周辺の知識も身につけることができ、日本史の学習の助けにもなりますよ。学校司書である私が、もし、平安時代の後宮でお仕事することになったら……?「書司ふみのつかさ」という書物や紙や墨などを扱う部署があったようで、こちらのお仕事にぜひ就きたいです! 平安時代の製本について書かれているページもあります。結婚双六(すごろく)や、出産行事などの図解もあり、気になるところからぜひ読んでみてください。

『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 源氏物語』

この本の特徴は、長い長い『源氏物語』54帖(巻)を1帖(巻)ずつコンパクトに、すべて解説しているところにあります。それぞれ、あらすじの他、その帖(巻)に出てくる主要な人物と、補足の説明が可愛らしいイラストと共に掲載されています。
そして、各帖(巻)の説明の合間には、『源氏物語』の時代の暮らしを解説したページや「謎」を知るページが挟まれています。
全体の流れが知りたい、各帖(巻)ごとの内容が知りたい、という人にはピッタリの本です。
 

『講談社青い鳥文庫 紫式部日記 天才作家のひみつ』

大長編『源氏物語』の作者は、紫式部。その紫式部ってどんな人だったのでしょうか。この本は、紫式部が残した日記を元に、紫式部の生涯を小説形式でまとめたものです。
この本のあとがきにもあるように『紫式部日記』は、途切れるように終わり、誰のために、なんのために書かれたかということもよく分からない、謎の多い本です。この本は『紫式部日記』以外の資料も参考にしながら、『源氏物語』を書いた紫式部という人物に迫っています。

 

ずっと年上の男性と結婚して娘を出産、幸せもつかの間、愛する夫に先立たれてしまう紫式部。紫式部の結婚は『源氏物語』が生まれる前のできごとです。その後、気が進まぬまま宮中に仕えることに。紫式部の才能は周囲にだんだんと知られるようになり、『源氏物語』が書き進められていきます。この本では、紫式部が見た道長やその周辺の人々の様子や、宮仕えに対する戸惑い、同時代をときめく女流歌人や作家が登場し、宮中の様子が書かれています。栄華を極める道長とその周辺の人々の様子もよく分かるので、大河ドラマの副教材としてピッタリですよ。

『講談社青い鳥文庫 源氏物語(新装版)』

『源氏物語』はなんと原稿用紙約2,400枚、100万字の大長編です。3部構成になっており、第1部第2部は光源氏とその周辺の人々の物語、第3部は源氏亡き後の子孫たちの物語となっています。第1部と第2部の主人公である光源氏の一生に焦点を当ててまとめたものが、この講談社青い鳥文庫版『源氏物語』です。高木卓さんの簡潔で気品のある文章と、睦月ムンクさんの可愛くて妖艶なイラストがよく合っています。なじみ深い青い鳥文庫で読んでみたい、という人はぜひ!

『紫式部の娘。賢子がまいる!(1)』

タイトル通り、紫式部の娘である賢子が主人公のフィクション小説です。控えめ(今風に言えば陰キャ)な紫式部と正反対の、堂々としていて猪突猛進な娘として描かれています。スーパー著名人の母を持つ娘が、母と同じ宮中で働くことになったら……。周囲に注目されてちょっと居心地悪いですよね。賢子はそんなことをもろともせずに、先輩たちをあっと言わせます。ここに清少納言、和泉式部と「すごい母」を持つ娘たちも仲間に加わって、物の怪の謎を突き止めたり、まるで平安アクション小説です。

 

平安時代の女性の生涯は分からないことが多く、実際に賢子たちがどんな人だったかくわしくは分かりません。分からないことを作者の想像力で補って、まるで女子中高生がクラスの仲間と冒険するような、修学旅行の夜に恋バナを語り合うような、親しみが感じられます。読み終わったら、紫式部の娘の、歴史上に伝えられる生涯を調べてみてくださいね。物語と歴史がこうつながっているのか! と二度楽しむことができますよ。

『岩波ジュニア新書 平安女子の楽しい!生活』

『岩波ジュニア新書 平安男子の元気な!生活』

この2冊は、平安時代の貴族の生活を、今のティーン向け雑誌を読むような感覚で知ることができる楽しい本です。平安貴族は、財力があって流行の最先端を行く、いわばハリウッドセレブのようなインフルエンサー(?)だったのかもしれません。住まいや、ファッション、遊びや、発信など、現代に生きる私たちの生活にたとえながら平安貴族たちの生活を説明してあって、ぐいぐい引き込まれます。

 

『平安女子の楽しい!生活』から例を挙げると、平安女子のファッション、メイク、ヘアケア、そして気になる恋愛事情! 片思い、両思い、新カノの登場と失恋、許されぬ恋……と女子の恋心は今も昔も千々に乱れております! 他にも仕事とキャリア、結婚・出産など気になる平安女子のライフスタイルが分かる本です。

 

『源氏物語』も同時代の日記文学も、女性が書いたものは男性像が少し遠くに感じられがちですが、『平安男子の元気な!生活』を読むと、彼らの表情がくっきり分かるように感じられます。歴史上の人物、藤原道長、藤原兼家などがぐっと身近に感じられるはずです。

 

『源氏物語』の作者紫式部やその時代の作家について知りたい人は、最新刊『平安のステキな!女性作家たち』を読めば、むらちゃん(紫式部)や、せいちゃん(清少納言)たちが、現代の友達のように身近に感じられますよ。

『岩波ジュニア新書 平安のステキな!女性作家たち』

ここで、問題です。平安貴族たちがお出かけするとき、どんな手段で出かけていたでしょうか?

答えは……次の2つの方法です。

 

・歩いていく
徒歩は自分の姿を見せることになるので、高貴な身分の人が取る手段としてはふさわしくないとされていましたが、とても高貴な場所、神社仏閣をお参りするとき、道が舗装されていない地方の道を通るときには徒歩を利用していました。

 

・おみこしみたいなものに乗る
輿といわれる屋形に2本の棒が出ていてそれを担ぐおみこしのような乗り物は、奈良時代の上級貴族が使っていました。人力で運ぶのは大変だったのでしょう。平安時代になると貴族たちは、その棒を牛に引かせる「牛車」という乗り物を使うようになります。

『源氏物語』で牛車のシーンは「葵」の巻に出てくる「車争い」のエピソードがとても有名です。「車争い」は愛する男性光源氏の晴れ姿を一目見ようと、源氏の正妻の葵の上と、愛人の六条御息所が牛車の場所取りをめぐって争います。後から来た正妻のために退かざるを得なかった愛人のみじめさが描かれています。

『牛車で行こう! 平安貴族と乗り物文化』

この本は、平安貴族の乗り物である「牛車」についてまるまる1冊解説している本です。「昔の乗り物なんて興味ないし……」と思わず、ちょっと読んでみてください。牛車は身分によって、使ってよい形や飾りが異なります。中におられる高貴な人の名前はわからなくても、牛車を見ただけでだいたいどんな人が乗っているのかが分かるのです。
また、自分たちの権力をアピールするために、高貴な方のお供も牛車に乗り、その数およそ20台なんてこともあったようです。葵の上と六条御息所の「車争い」も牛車一対一の戦いではなく、「人給」というお供の車列があったことが書かれています。

 

牛車のランク分けや乗り方、車の貸し借りなど、乗り物から平安貴族の価値観や行動が分かります。面白いですよ!

『【復刻版】なんて素敵にジャパネスク』

出版40年! お母さんも読んだかもしれない? 現代小説のように読める、平安ラブコメディの金字塔がこちらの『なんて素敵にジャパネスク』です。こちらは復刻版の1巻となりますが、シリーズで出ております。
主人公は由緒正しい貴族の家に生まれたお姫様。名前は『源氏物語』の玉鬘の幼名と同じ瑠璃。和歌は上手だけれど、姫のたしなみである裁縫や琴は大の苦手!
幼少期を吉野で過ごし、吉野で見かけた初恋の男の子「吉野の君」を思い続けています。
そんな瑠璃の幼馴染で許嫁(結婚を親同士で約束した相手)である高彬は、高貴な家柄のお坊ちゃま。琵琶は上手だけれど、瑠璃より年下で頼りなくって字も和歌もへたっぴです。
この二人に、瑠璃の弟の融、謎のイケメン鷹男、側近の小萩などが多くの登場人物が絡んで華やかに物語は展開していきます。瑠璃と高彬は結婚するのか? コメディタッチで軽く読めます。平安時代の文化や習慣も学ぶことができて、一石二鳥ですよ!

今から1000年以上も前に書かれた『源氏物語』を、現代社会と照らし合わせて読むと、実に面白い考察ができます。大学時代の卒業論文では『源氏物語』の「浮舟」を研究した山崎ナオコーラさんの『ミライの源氏物語』は、『源氏物語』を通じて現代社会の諸問題を読み解くことができる本です。1000年前と異なる価値観が『源氏物語』を読みにくくしているのであれば、現代との価値観の違いを明らかにすることで、『源氏物語』はとても興味深い対象になります。『源氏物語』で描かれる、「美しいもの」「権力」「プライド」は、現代的に読み解くと「ロリコン」「マチスモ」「マウンティング」と考えることも可能です。そうした、気づきを読者に与えてくれるのがこの本です。
それは『源氏物語』という作品の価値を貶めるものではありません。1000年前の価値観と、現代も変化している社会の価値観とを見比べながら、新しい気持ちで(もしかしたらずっと身近に)『源氏物語』を感じられることと思います。
『源氏物語』のあらすじや背景を知っている人が読むと、より楽しいです。

おわりに

いかがでしたか? 他にもまだまだ紹介したい『源氏物語』関連本がたくさんあります。
書店のコーナー展示などでぜひ手に取ってみてくださいね。
ドラマ「光る君へ」は個性的なキャストが熱演しています。『源氏物語』には多くの登場人物がいるので、「自分が物語に入り込んだら誰になりたい? ベスト3」などを脳内で妄想するのも楽しいですよ。
みなさんの「推し人物」がいたら、教えてくださいね! それではまた!

今月のスペシャルコンテンツ

今回も絵本ナビスタイルの読者さん限定の音声スペシャルコンテンツを用意しています。
「学校図書館ラジオ」を配信しているstand.fm で「今月のちどりのもう1冊」を聴くことができます♪
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山下ちどり
 

現役学校司書。
音声メディアstand.fm「学校図書館ラジオ〜本とともにごきげんな毎日」のパーソナリティ。
比較的新刊のお気に入り本や、学校図書館、出版周辺のトピックスなどを配信している。Twitter @nagisalib

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