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現役学校司書が本でCheer Up! 中学生に読んでほしいオススメ本

「地学」の本 お天気・石・地質……身近な科学を楽しく学ぼう!

みなさん、こんにちは!
2023年12月にstand.fm「ちどりの学校図書館ラジオ」で「地学分野に進みたいあなたへ」として2回の特別企画を放送しました。
気象技術者・雪氷研究者である小松麻美さんと、地球工学系大学生のとくちゃんと3人で、地学の魅力を語り、本をご紹介しました。

 

ところで、「地学」ってどのような学問かご存じですか?

 

「地学」を辞書で調べると、

地球およびその構成物質に関する科学。地質学・地球物理学・地球化学・岩石学・鉱物学・海洋学・気象学・地形学などを含む。

とあります。

 

私たちが住んでいる地球に関する学問、それが地学です。
地面のはるか下から空の上まで、海や大地や石など、地学の分野は「地球」まるごとです。

地学は、毎日身近に接している、目に見える事象を多く扱っています。
キレイな石を見つけたり、雷に驚いたり、海の塩辛さに驚いたり……。
「幼児さんが出会うはじめての科学の疑問」の多くが、地学に関係すると言っても過言ではなさそうです。

そして、地球温暖化や異常気象、環境・資源問題などに関係する学問として、地学は各方面から大きな注目と期待を集めています。今、とてもホットな学問なのです。

しかし、一方で地学「教育」は、今大きな危機に瀕しています。
幼児さんや小学生が持った「地球の疑問」を、中学や高校でより深く学ぼうと思っても、専門的に学べる機会や先生が、どんどん減っているのです。

地学の魅力を伝えたい! 地学を学びたいと思う人たちを応援したい! そんな3人がアツく語った2回の放送でした(放送のリンクはこの記事の最後にあります)。

 

今回の特集で、その放送を基に幼児さんから高校生まで、楽しく地学に触れることができる本をご紹介します。低学年向けとしている本も、内容は中高生でも簡単すぎるということはなく、学び多いものばかりです。親子で楽しめる本もたくさんあります。ぜひ読んでみてくださいね。

楽しく地学に触れることのできる本をご紹介します!

幼児からおすすめの地学・科学の本

『あめ、ゆき、あられ、くものいろいろ-雨と雲のはなし 新装版(かこさとしの地球のかがくえほん)』

そらにうかんでいる「くも」はなにからできているのだろうか。
そんな疑問を、かこさとしさんと一緒に考えよう!
『からすのぱんやさん』や『だるまちゃん』シリーズの作者である絵本作家のかこさとしさんは、東京大学工学部応用化学科で学んだ工学博士です。
ええ? そうなの? とびっくりされる人も多いことと思います。
かこさとしさんは、自然や科学の不思議を子どもたちに分かりやすく伝える絵本をたくさん書いているんですよ。雨や雪をもたらし雷の発生源となる、雲の正体はいったいなんだろう? ということを、この絵本で解説しています。表紙から裏表紙まで見どころいっぱいの本ですが、大人と子どもと一緒にまえがきを読んでほしいです。一部抜粋しますね。

自然の うつくしさや ちからには
きっちりとした すじみちが あるのだ。
この すばらしい せんせいから、
たくさんの ことを おしえて もらおう。
まなんで、かんがえよう。
そして 自然を だいじに しよう。

凜としたこの言葉に、私はとても感動しました。
一緒に空を見上げて、あれはなに雲? と話し合いたくなる絵本です。

小学校低学年からおすすめの地学・科学の本

『頭のいい子を育てる しぜんとかがくのはっけん! 366』

1月1日から12月31日まで、1日1つの対象にじっくり向き合い、1年で366の自然科学に興味を持つことができる本です。地学に限らず自然科学全般の14のジャンルを扱っています。人体や昆虫や草花などの動植物など生物分野のトピックが多めですが、「ちきゅう」「うちゅう」といった地学のトピックもありますよ。6月は雨、7月は天の川など、季節や行事に合わせたお話になっています。毎晩の親子の読み聞かせで楽しむ、総ルビなので中学年からはひとり読みの読書タイムに、朝読書の習慣づけに、多くのシーンで活躍しそうな本です。

『地球の中に、潜っていくと……』

ストーリー仕立てで楽しく読める地質学(地球の内部の地層や岩石に関する学問)の本です。地球上で最も固い鉱物「ダイヤモンド」でできた船に乗って、研究者のおじいちゃんと孫のハルキ、アユの3人が地底探検をするお話です。タイトルのように、地球の中に、潜っていくと…。

 

みなさん、地球の中ってどんな様子をイメージしていますか?
私は「暗くて、固くて、ぎゅうぎゅう」と思っていましたが、この本を読んで「どうやら全然違うみたい!」と驚きました。地震の原因ともなっている「プレートの移動」に乗って、ゆっくりと地球の内部に潜っていく3人。見たり、行ったりすることができないことも、絵本になればこんなに分かりやすく体験できてしまうのですから、絵本って改めてすごいです! 現時点での実現が不可能なフィクションではありますが、解説されている地球内部の地質については、最新の研究です。読み聞かせなら、幼児さんから楽しめます。

小学校中学年からおすすめの地学・科学の本

石の違いや特徴がはっきり分かるような、大きな石の写真が特徴的な、写真絵本です。
最初に登場するのは川原などで見かける、ごま塩おにぎりのような石。
この石、見たことあるよ! という人も多いかと思います。
マグマからできた石、と書いてあり、「火山の中から出てきたマグマだったとは!」と見慣れた石の思わぬ出身地に私はびっくりしました。
石、といっても、小さな石が集まってできたもの、砂つぶが集まってできたもの、生きものの死がいからできたものなど、その種類はいろいろです。
石がたくさんあるところに出かけていって「あなたは、どこのご出身?」と尋ねてみたくなりますよ。巻末には解説が付いていて、「石の仲間分け表」はとっても便利です。


解説は原子の話で終わります。身近な石から、はるか彼方の宇宙まで。最後まで読んで、最初の表紙からもう一度めくってみてください。そこには、灰色ばかりの月の写真が。そして、もう一度ざっと登場する石を眺めていくと、宇宙の中の地球という1つの星にある、さまざまに美しい石の表情に感動を覚えることでしょう。石から、地学、物理、化学の世界へと誘ってくれる本です。

小学校高学年からおすすめの地学・科学の本

『石は元素の案内人』

色とりどりの美しい石が目をひく写真絵本です。特集の最初に地学は「毎日身近に接している、目に見える事象を多く扱っている」と書きました。この本は身近に手にとって観察できる石から、原子、元素といった小さな粒の世界を学ぶことができる本です。


最初のページには

この世界のすべてが、たった90種類の「元素」の組み合わせでできています。

とあります。その不思議を、石を使って説明するのがこの本です。
写真がどれも大きくて、特徴や他との違いを目で見て確認することができます。
地球の内側や、見えないほどの小さな粒は、写真の代わりにイラストの図解でその仕組みを知ることができます。実験の過程も分かりやすく、ワクワクしながらページをめくりたくなりますよ。
とっても分かりやすいのに、扱っている内容はとても幅広く、超一級の上質な写真絵本の世界にうっとりします。『石はなにからできている?』と共に、手元に置いて何度も楽しみたい本です。

気象(お天気)に興味を持ち始めた中学年・高学年のみなさんに、オススメなのがこの1冊。全国のお天気コーナーを経験している気象予報士の菅井貴子さんが、みなさんの「天気の疑問」に答えてくれます。例えば、雷1つ分のエネルギーってどれくらい? 桜の開花日はなにを基準にしているの? 大気の状態が不安定、ってどういうこと? など。オールカラーで見やすく、お天気の謎をたくさん解決することができますよ。
 

中高生や大人にもおすすめの地学・科学の本

『ときめく図鑑Pokke! ときめく鉱物図鑑』

ちんまりとした文庫サイズで、薄紫の表紙が愛らしいこの本は、まるで手のひらに載る鉱物標本室! オールカラーで鉱物の写真が大きく、鉱物標本室をひとりで見て回っているような、そんな気持ちにさせてくれます。
第1章では、古代から現代まで鉱物に魅せられてきた人々のエピソードを紹介しています。伝説や神話から宮澤賢治の作品に登場する鉱物まで。これらのエピソードで胸を躍らせたら、さぁ、鉱物標本室の扉を開けてみましょう!
この標本室は「美形」「内包」「光輝」などと名付けられたオリジナルカテゴリになっています。天然の鉱物なのに現代アート? と間違えてしまいそうな黄鉄鉱、ニンニクのにおいがするスコロド石など、珍しい石もたくさん載っています。巻末には鉱物との出会い方ページもありますよ。

さらに、stand.fmの放送では次の本をご紹介しました。
こちらも併せて読んでみてくださいね。

気象技術者・雪氷研究者である小松麻美さんのオススメ

※小松麻美さん(日本気象協会所属)https://twitter.com/komatsu_met 

『角川まんが学習シリーズ まんがで名作 これから科学者になる君へ 寺田寅彦エッセイ集』

角川まんが学習シリーズ まんがで名作 これから科学者になる君へ 寺田寅彦エッセイ集

明治~昭和にかけて物理学者として活躍する一方、文筆家としても優れたエッセイを数多く残した寺田寅彦。
彼の作品は海の波や茶碗の湯気、電車の混雑など身近なものをていねいに観察することで、科学の楽しさが伝わってくるような内容になっています。
また、寺田寅彦は関東大震災を経験し、地震や防災にまつわるエッセイも多く残しました。

読むと科学がグッと身近に感じられる!
何世代にもわたって愛される科学エッセイを初の学習まんが化!!

地球工学系大学生のとくちゃんのオススメ

『天気と気象 異常気象のすべてがわかる!』

天気と気象 異常気象のすべてがわかる!

ゲリラ豪雨、竜巻、豪雪、猛暑など異常気象のメカニズムをカラー図解。さらにそのカギとなる、偏西風の蛇行、エルニーニョ・ラニーニャ、温暖化の影響なども徹底解説。大気、気圧、積乱雲、前線などの気象の基本や天気図、天気予報もカラー図解でまるわかり。

  

ちどりのオススメ

中学生に贈りたい本!2023ー2024」の記事の中でも紹介したこちらの本!

  

『難しいことはわかりませんが、日本の未来が明るくなるニュースを教えてください 地学・資源・エネルギーのすごい話』

難しいことはわかりませんが、日本の未来が明るくなるニュースを教えてください 地学・資源・エネルギーのすごい話

ニュースを見ると日本の暗い話題が多いけれど、実際は、日本の未来が明るくなるような話題に溢れている。
そうした話題の中から「地学」「資源」「エネルギー」の3つの分野に分けて紹介するのが本書。
著者は同テーマをYouTubeで発信し続け、登録者10万人を超す、ひつじさん。

・小笠原諸島にある西之島は噴火を繰り返し、日本の国土が徐々に広がっている!?
・東シナ海にある海底油田では、サウジアラビアの10倍の天然ガスが埋まっている!?
・日本が世界をリードする、究極の再生可能エネルギー「宇宙太陽光発電」とは!?

一見、難しそうな話題でも、写真や図解付きでわかりやすく書かれているため、
ワクワク・ドキドキしながら楽しめる一冊。

もっと等身大の日本に目を向け、明るくなる未来を想像しよう!

今回ご紹介した本は、いかがでしたか。

2024年度は科学・研究に関する特別企画も構想中です。お楽しみに!

ちどりからのお知らせ

stand.fm「ちどりの学校図書館ラジオ」、特別企画「地学分野に進みたいあなたへ」2回の放送はこちらから

今回は、特別企画「地学分野に進みたいあなたへ」2回の放送のリンクをお知らせします。「地学」の本のおすすめを、ぜひ音声でも楽しんでみて下さいね♪

※QRコードを読み取っていただくか、URLをクリックすると聴くことができます。

地学分野に進みたいあなたへ 第1回 地学の人 地学の魅力を語る!
地学分野に進みたいあなたへ 第2回 地学の人 地学系志望者にエールを送る!

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山下ちどり
 

現役学校司書。
音声メディアstand.fm「学校図書館ラジオ〜本とともにごきげんな毎日」のパーソナリティ。
比較的新刊のお気に入り本や、学校図書館、出版周辺のトピックスなどを配信している。Twitter @nagisalib

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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