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絵本ナビニュース2024

パレスチナ/ガザ絵本を翻訳出版するためのクラウドファンディングをスタート

絵本『もしぼくが鳥だったら:パレスチナとガザのものがたり』出版のため、クラウドファンディングを実施中

『もしぼくが鳥だったら』アラビア語原書(アラブ首長国連邦カリマート社2009年刊行)

ゆぎ書房は、翻訳絵本『もしぼくが鳥だったら:パレスチナとガザのものがたり』の2025年1月出版を目指し、9月18日よりクラウドファンディングによる資金調達を開始しました。

CAMPFIREにて、10月17日までに150万円の支援金を集める目標ですが、最初の1週間で全国から100人を超える人たちからの支援が集まり、10日間で目標の3分の2を達成するなど大きな反響がありました。

CAMPFIREでのクラウドファンディングは10月17日まで実施

プロジェクトの背景と概要

絵本『もしぼくが鳥だったら』は、パレスチナの人々の追放とイスラエルによる占領・入植を、少年の目からやさしくやわらかい言葉で描いた絵本です。しかし、パレスチナ/イスラエル問題の根源をあまりに率直に語っていることから、訳者の片桐早織さんから6年前に紹介されたときは、日本で受け入れられるのは難しいと感じました。

ところが、2023年10月以降、ハマスによるガザ越境攻撃ののちパレスチナ占領の状況が極度に深刻化するのに伴い、今だからこそ日本の子どもたち・大人たちに読んでほしい絵本だと考えるようになりました。

個別リターンのほか「社会的リターン」を設定

【リターン例】日本語絵本1冊+アラビア語原書セット

支援者には、出版後の日本語絵本を提供するほか、部数限定でアラビア語原書とのセットのご用意もありましたが、好評のため終了してしまい、目下追加を検討しています。また、同プロジェクトの大きな特徴は「社会的リターン」を設定している点です。IBBY Palestine (国際児童図書評議会パレスチナ支部)の協力を得て、「ガザの子ども図書館」をテーマとした展示パネルを制作し、提供することを予定しています。

「社会的リターン」への想い

「社会的リターン」を設定したのは、プロジェクト立案時に、「現地情勢が苛烈な中、現地への支援ではなく日本での出版のために資金を集めることは許されるのか?」とスタッフとともに自問自答したことがきっかけでした。

 

絵本の原書出版社であるカリマート社(アラブ首長国連邦、シャルジャ首長国)が、同書売上利益のすべてをガザ地区でのIBBY Palestine (国際児童図書評議会パレスチナ支部)の図書活動に寄付していたことも背景にあります。同社はシャルジャ首長国の王女が創業・運営している出版社。創業5年目の小出版社である、ゆぎ書房には同じことはとてもできませんが、代わりに何かできることはあるだろうかと考え、思い至ったのが、IBBY Palestineが運営していたガザ地区内の二つの子ども図書館のことを伝えることでした。

「ガザの子ども図書館」展とは

国際アンデルセン賞の選出などでも知られるIBBY (国際児童図書評議会)は、2024年現在、世界84の地域と国に支部があります。同パレスチナ支部は、国際的な支援を受けつつ、ガザ北部のベイトハーヌーンと南部のラファの2箇所に子ども図書館を運営していました。

 

たくさんの子どもたちが楽しそうに図書活動に参加している写真も数多く残されています。しかし、2014年のイスラエルによる攻撃で、2館はそれぞれに全壊・半壊し、その後再建されていましたが、2023年10月の攻撃でいずれも跡形も無く破壊されています。これらの情報と画像、および、現地の司書さんによる発信などを展示内容とする予定です。

 

パレスチナ/イスラエルについては、web上での情報も多く、日本語による一般書や専門書も多数出版されていますが、理解しようにもどこから手をつけていいのか分からない、という人も多い。その中で、絵本を読む人たちにとっても身近で想像しやすい「子ども図書館」というトピックに限定し、起きていることの一端を伝えようと思いました。

プロジェクトの今後の展開

本プロジェクトに対しては、「テレビで現地情勢を見て、心痛めていた。自分にも何かできることがあればしたいと感じていた」との想いを込めて支援下さる方々がとても多いです。

 

「ガザの子ども図書館」展についても、大学のゼミの学生さんたちによるチャリティーイベントでの展示や、多文化共生や難民・移民と絵本をテーマにした学びの場などで、いずれも、「なぜこの絵本を出版するに至ったのか」などのトークや講演とともに実施してほしいとのお申し出をいただいています。

 

絵本をひとつの媒介として、「共に学ぶ/知る」ことへの糸口としていきたいと思います。

出版情報

『もしぼくが鳥だったら:パレスチナとガザのものがたり』

文:ファーティマ・シャラフェッディーン

絵:アマル

翻訳:片桐早織

解説:鈴木啓之(東京大学・中東研究文化センター 特任准教授)

発売日:2025年1月15日刊行予定

価格:1980円(税込)

サイズ:B5変形 上製本

ISBN:978-4-910343-08-2

※クラウドファンディング開始と同時に、全国書店・ネット書店でも予約注文の受付をスタート。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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