【今週の今日の一冊】絵本ナビスタッフが選ぶ贈る絵本。「サン・ジョルディの日」によせて。

今週、4月23日は「サン・ジョルディの日」。スペイン・カタルーニャ地方が発祥の「サン・ジョルディの日」は、親しい人と本やバラの花束などを贈り合う記念日です。そこで今週は、絵本ナビスタッフが今、贈りたい絵本をそれぞれ選んでみました。さて、どんな思いをのせてどんな絵本を選んだのでしょう。ご参考にしながら大切な人に本を選んでみませんか。
※4月23日は、1995年にはユネスコによって「世界図書・著作権の日」としても制定され、さらに日本では、「子ども読書の日」としても制定されています。
4月21日から4月27日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
4月21日 おはなさんが想像する楽しい世界ってなに?
月曜日は『かたちえほん おはなさん』
本は四角でなければいけないの?
丘に咲く一輪の花。このおはなさんが想像する楽しい世界ってなに?空を飛ぶ?友達をつくる?たとえ失敗したって、落ち着いて深呼吸すれば大丈夫。どのページを開いても、常に前後のページと絵がつながる。これまでにないユニークな姿・かたち・構造をもった絵本。本を開いた形もお話の内容とリンクします。
(絵本ナビスタッフS)誰に贈る?
この春、育休から仕事復帰した友人に
選んだ理由は?
自分自身の仕事復帰のことを振り返ってみると、仕事をすること自体に不安を抱えていたり、「子どもや生活のために頑張らないと!」と肩に力が入ったりしていたなぁと思いました。なので友人にも「自分のやりたいことも大切にしていいんだよ」と感じ取ってもらえたらいいなと思い、エールの1冊として選びました。
4月22日 あなたは世界にただひとり!
火曜日は『ぼくだけのこと』
「ぼくだけのこと」「わたしだけのこと」って言われたら、何か見つけられる?
うーん、何だろう。すごく足が早いわけでもないし、珍しいペットを飼ってるってわけでもない。
ようたくんの「ぼくだけのこと」はこんな感じです。
「お兄ちゃんと妹、3人兄弟のなかで、ぼくだけ、右のほっぺにえくぼがある。
これは、ちょっと嬉しい ぼくだけのこと。」
お兄ちゃんも証言してくれています。
「確かに弟にはえくぼがあります。笑うとできるし、怒るとなくなります。」
それから、家族の中ではぼくだけ、いつも蚊にさされるし、
仲良し6人組の中では、ぼくだけ、逆立ちあるきができる。
452人いる学校の生徒の中で、ぼくだけ、運動会の閉会式で貧血をおこしてたおれたり、
町内だと、ぼくだけ、隣の家の犬にほえられないんだ。
ようたくんってどんな子なのか、だんだん見えてくる。
そんな「ぼくだけのこと」がたくさん重なった「ぼく」とまったく同じ子がいるとしたら、
それってすごい奇跡!ぼくは世界にただひとり。
「ぼく」が過ごす新しい一日、これも全部ぼくだけのこと。
そう思うとすごいよね。
人気の児童文学作家であり、直木賞受賞作家でもある森絵都さんによる心に残る絵本。
スギヤマカナヨさんの明るくて可愛い絵が、この絵本を親しみやすく魅力的なものにしています。
「ぼくだけのこと」「わたしだけのこと」。
家族や友だちに聞きながら、ゆっくりでいいから見つけてみようかな。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
(絵本ナビスタッフF)誰に贈る?
親戚の双子(5歳)に
選んだ理由は?
お友達やきょうだいと比べて複雑な気持ちになることがあると思うけれど、自分ではイマイチだと思うあなただけのことが、他の人には羨ましいことだったりもする。あなただけのこと、あなたの傍にいるそのひとだけのこと、いっぱい見付けて、言葉にして、のびのび大きくなってね!……という想いを込めて贈りたいです。
4月23日 夜が明ければ、また新しい一日が始まる。
(絵本ナビスタッフI)誰に贈る?
友人の結婚祝いに
選んだ理由は?
詩も写真もとても綺麗で、ページをめくるたびに、朝の光が零れ落ちてくるような一冊です。
私はこの絵本を読むと、大きく深呼吸した後のような清々しい気持ちになれるので、たとえうまくいかない日だって、この本をめくれば大丈夫と勇気づけてもらえる気がして、エールの代わりに送りたいと思いました。
4月24日 息をひそめて こしたんたん ねらっているのは…
(絵本ナビスタッフF)誰に贈る?
年長さんになった息子に
選んだ理由は?
最近、四字熟語の音だけをクイズのように楽しんでるので、意味がわかるともっと面白いよって知ってほしくて選びました。「虎視眈々、意味はね…」と、お勉強っぽく説明するよりも虎視眈々と狙っている表情とことば遊びの楽しさが詰まってるこの一冊で、もっと日本語を楽しんでほしいです。
4月25日 変わることは、新しい扉をひらくこと
(絵本ナビスタッフA)誰に贈る?
人生の変わり目にきている友人に。
選んだ理由は?
これまでの仕事を辞めて、新たな道を模索している友人の気持ちにそっと寄り添ってくれるような絵本を贈りたいと思いました。おばあさんとのお茶の時間を喜びとしていたティーカップの、当たり前だった役割を失ってしまった後にやってきた新しい出会いや気づきが、静かに胸を打ちます。友人と一緒に読んでじっくり語り合いたくなります。
4月26日 1日の終わりにゆったりとした気持ちで読んでほしい
土曜日は『ねむたいひとたち』
タテ126ミリ、ヨコ119ミリという小さなサイズの青い表紙に、ゆるい服と帽子をかぶった4人が立っています。目を閉じていますが…なんだかとっても幸せそう。絵本を開く前から伝わってきます。
どうやら彼らは、とっても小さなサイズの家族。どのくらい小さいかというと、みんなの履くスリッパの片方の中に一家まるごとすっぽり入れちゃうくらい。
そして、彼らを説明する言葉はただひとつ、「ねむたいひとたち」。
ねむたいひとたちは、ねむれる場所さえあれば、どこでもいいのです。いつもとってもねむいんです。おねまきを着て、ナイトキャップをかぶって、あくびをして…。ねるまえには、とうさんが探してきたココアとクッキーで「ねるまえのスナック」をもぐもぐ。ココアをのんでいるうちに目はとろんとろん。とうさんも寝息をたてはじめて。
私たちは、いったいなにを見ているのでしょう。ねむたいひとたちがお休みする時間? それとも彼らの大事な仕事の時間?それとも可愛いあくび?…どちらでもいいですよね。大切なことは、かれらが部屋のどこかすみっこに住んでいるのかもしれないってこと。私たちも、かれらと一緒におやすみしましょうね、「すーすーくーくー」。
人生においての幸福とはなにか、特に誇張することなく、いつも淡々と問いかけてくれるゴフスタインの作品。この『ねむたいひとたち』は特に直接的で、誰にでも共感できて、とてつもなく愛らしい。子どもたちと一緒にかみしめたい一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
(絵本ナビスタッフT)誰に贈る?
がんばっている友人へ
選んだ理由は?
手のひらサイズでモノクロの絵に短い文にシンプルな装丁。普段、絵本を読まない友人にもこの見た目の可愛さで、まず喜んでもらえそうかなと思います。ゆるやかなゴフスタインの絵に谷川さんの心地よい言葉選びの相性はぴったり。一日の終わりに、ベッドの中でゆったりとした気持ちになりながら読んでもらいたいです。
4月27日 いつも頑張っている友人にのんびり気分を
(絵本ナビスタッフK)誰に贈りたい?
お疲れ気味の友人に
選んだ理由は?
目覚まし時計やほうき、洗濯バサミ、休みの日に思い思いにゆっくり過ごしている姿に癒されます。いつも忙しく頑張っている友人が、この絵本で、のんびり気分を楽しんでくれたらいいなと思います。
いかがでしたか。
今回、絵本ナビスタッフの贈りたい本とその理由を聞いてみてあらためて思ったのは、一冊の絵本を贈ったり、贈られたりすることの中には、人の思いがたっぷり入っているということでした。本の記念日が重なる4月23日には、本を介して気持ちを贈り合う素敵さを体験してみませんか。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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