【今週の今日の一冊】ママもたまには、ひと休み。「母の日」に心をほぐす絵本特集

毎日のご飯作りからお洗濯にお掃除、家族のお世話、子育てにまつわるあれこれ……。ママ業は年中無休ですね。そして1年のうちで一番忙しいのは、3月4月の入園、入学、進級の時期ではないでしょうか。さらに楽しい連休のGWだって、子どもに楽しい思い出を作ろうと頑張って終わってみれば疲れが残っているなんてことありませんか。そう考えると、「母の日」がGWが明けた次の日曜にやってくるのはベストタイミングなのかもしれません。
今週は、毎日頑張っているママに「母の日」ぐらいはひと息ついてほしい! そんな思いを込めて、ママの心がほぐれたりエールになるような絵本をご紹介します。
2025年5月5日から5月11日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
5月5日 どっちの気持ちも分かる? 子どもパワー全開の絵本
月曜日は『ママのおくちチャック!』(2025年3月刊)
ぼくが何かするたびに、ママは言うんだ。
「はやく しなさい!」
「もっと、ちゃんとして!」
「しずかにして」
「もう! いいかげんにしなさい!!」
あーーもう、こんなに色々言われたらぼくだってイヤになる。だから大きな声で思わず言ったんだ。
「ママのおくち チャック!!」
するとママのおくちに本当にチャックがついた! おまけに怒ろうとすると動けなくなったみたいだ。ということは、ぼくがなにをしてもママにしかられることはない……これは、チャンス!?
どんな家庭でも、日常的に見られるこんなやりとり。怒ってばかりいるママに自分を重ねてしまう人も、怒られてばかりいるぼくに共感してしまう子も、きっとたくさんいるでしょうね。でも、もし本当に何をしたって怒られることがないとわかったら、自分だったら何をするのかな。
子どもの気持ちも大人の気持ちもユニークに描きだしてしまう、大人気絵本作家さいとうしのぶさんの最新作は、思わずニンマリ、ちょっぴり悲鳴、最後には幸せな気持ちになってしまう、仲良し親子の楽しいお話。
読者の方からのアイディアも参考にされたという「思いっきりやりたいことをやるぼく」の場面は見ごたえたっぷり。それはもう大胆不敵、爽快な気持ちになるほど見事な暴れっぷり。ママのあきらめの表情も納得なのです。一つ言えることは、ママもぼくも「全力の時間を過ごしている」ということ。親子で一緒に笑い飛ばしながら読んでみてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者レビューより
この絵本を読んで、大爆笑しました!!
我が家の日常・・・。
子どもはこんなふうに思ってるんだろうなと
わかってはいても、とまらない口・・・。
ママがいろいろ言っているときに、白目になっている絵が
一番はまりました。
ほんとにおもしろくて、ユニークな発想に、
感激すらした絵本でした!!
(スケボウさん 40代・ママ 女の子14歳)
5月6日 急な子どもの熱に駆けつけてくれたのは…?
読者の声より
天女銭湯のシリーズ?でしょうか。天女が出てきます。
子どもが熱を出したけれど、会社からまだ出られないお母さん。おばあちゃんに子どもの世話を頼むが、なんとそれは間違い電話で天女にかかってしまったのでした。子どものもとに天女がやってきて、看病するのですが、ユニークでとってもおもしろかったです。絵ではないので、不思議な雰囲気が出ていて、それがこのお話に出てくる天女にぴったりです。天女の顔、すごいです。最後に、天女の羽衣が残されているページがあるのですが、娘はこのページが気に入ったようで、「見て見て忘れてるよ」と嬉しそうに見せに来てくれました。
娘は気に入って、何度も読んでいました。
(じっこさん 30代・ママ 女の子6歳、男の子2歳)
5月7日 ママの気持ち、ねずくんに伝わるかな?
水曜日は『ねずくんとママのおおげんか』(2025年4月刊)
家族でピクニックへ行く朝。食事中に遊んだり、着替えもぐずぐずだったりのねずくんに、ママの怒りが爆発! ママが怒って出かけてしまい、残されたねずくんの「ママはぼくのこと嫌いになっちゃったかも」という不安な気持ちと、「怒っちゃってもホントは大好きなんだよ」というママの本音の気持ちを描く。ねずくんとママ、なかなおり、できるかな? パパのさりげないねずくんへのフォローも必見。
「このママは私かも」と、子育て中の読者ママも共感のストーリーは、2児の母としての著者自らの日常の子育てエピソードから生まれたもの。ピクニックに行ってねずくんの笑顔が見たかっただけなのに、準備をしてくれない、あげくのはてにお弁当が台無しになったイライラでついつい怒ってしまったママ。でも、本心はねずくんが大好き。怒って出かけても、目に入るのは、わが子と同じくらいの年齢の子どもたちや親子連れ。考えるのはねずくんのことばかり。子育て中のママが共感する「子育てあるある」エピソードが満載で、心がほっこり、最後はにっこりのエンディング。世界中の親子に読んでほしいハートフルストーリー。
ボローニャ国際イラストレーション賞 受賞作家・刀根里衣(とねさとえ)が細部まで緻密に描き込んだ美しい絵で綴る美しい絵本。
5月8日 どんなときもあなたのことがいちばんすき!
木曜日は『しろくまのそだてかた』
可愛いけど、ときどきモンスターになってママを困らせる。
こどもはみんな「しろくま」です。
この本はしろくまの成長をこどもの成長に重ねて
「大変だけど、お母さんになったときの気持ちを思い出して! 」
という思いが込められたママへの応援歌です。
読者レビューより
絵本講座で読み聞かせてもらって思わずホロリ。
あれ、隣の方も・・・早速、帰り道書店で購入しました。
表紙だけ見ていると、ほのぼの絵本?ファンタジー??
ですが、数ページ読むとすぐに「しろくま=とってもかわいいけれど、それだけじゃ育てられない子どものこと」だと分かります。
ひつようなときは しっかりと しかって ください
みんなに あいされる しろくまになるために。
のメッセージは胸に刺さりました。
そうか、我が子が皆に愛され社会の中でやっていけるように、そのために叱るのだと。
言葉にするとそれだけですが、やさしい絵のしろくまを通してならストンと心に響いてきます。
そして最後は、しろくま(我が子)と一緒のこの奇跡のような時間をゆっくりかみしめて過ごしていきたい。そう思わせてくれます。
子育てサークルでのママ向け読み聞かせや、出産のお祝い絵本としてもぴったり!!
もっと多くの方に知ってもらいたいおすすめの1冊です
(しばわんこ314さん 30代・ママ 男の子5歳、女の子4歳、男の子2歳)
5月9日 すべてのお母さんにやさしく寄りそう小さな詩の本
金曜日は『今日』
この詩は、ニュージーランドの子育て支援施設に伝わる詩ー作者不詳のまま英語圏に伝わった詩を、詩人の伊藤比呂美さんが日本語訳したものです。
初めてこの詩を読んだとき、僕は父親でありながら嬉しくなってしまって、パソコンの前で涙が込み上げました。
子育ては大変。子育ては素晴らしい。どちらもそうですが、それぞれすべてではありませんよね。そう、言うなれば「大変だけど素晴らしい」。そんなリアルな、いつも私たちが感じている日常の想いを、スッと見事に表してくれている詩なのです。
この素敵な詩に、さらに素敵なイラスト が添えられ、素敵な装丁の本になりました。
上質な質感の、小さな本。心の宝物になることでしょう。
パソコンやスマートフォンで読むのとは、ひと味もふた味も違う印象ですよね。
自分に一冊、大切な人への贈り物にもどうぞ。
※巻末にはもうひとつの有名な詩がおさめられています。
ペットを亡くした方ー特に愛犬を亡くした方への詩「虹の橋」です。
5月10日 眠たくない子どもの横で、疲れたママはうとうと…
土曜日は『ママ、もう ねるじかんだよ』
夜です。眠たくないアマリアの横で、疲れたママはうとうと。ママに毛布をかけてあげたり、ママの下じきになったぬいぐるみを助けたりしているうちに夜は更けて…。母と子の甘美なひと時を色彩豊かに描いたおやすみ前の絵本。
5月11日 娘から母への手紙。わたしがおとなになったら…
日曜日は『おかあさん、いいこと おしえてあげる』(2025年3月刊)
ねえ、おかあさん、いいことおしえてあげる。わたしがおとなになったら、この手で石を真っ二つに割って、おかあさんにあげる。野生の黒い馬をつかまえて、おとなしくなったら、おかあさんを乗せてあげる……。
1964年に刊行されて以来、アメリカで長く読み継がれてきたシャーロット・ゾロトウの名作をジュリー・モースタッドが新たな解釈で描き出した1冊。
母と子の愛情と思いやりと自立を詩情豊かにうたいあげた美しい絵本。
アメリカのベストセラー絵本作家で著名な編集者でもあるシャーロット・ゾロトウの読み継がれてきた名作絵本の初邦訳。
作家の娘である作家クレセント・ドラゴンワゴンによる「母シャーロット・ゾロトウとこの絵本」という詳細な解説で、ゾロトウの絵本作りの秘密やアメリカ絵本黄金期を担ってきた編集者の仕事について語っている。
アメリカ絵本の歴史にも詳しい翻訳家の福本友美子による、ふくよかな訳文とあとがき付き。
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いかがでしたか。
「母の日」には、ぜひご自身でも頑張っている自分を褒めながらひと息ついてくださいね。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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