小学校で絵本を読む前の、心と絵本の準備。読み聞かせボランティアをはじめたあなたに
橿原書店での新刊絵本を楽しむ会にて
長かった夏休みも終わり、2学期が始まりました。小学校では、読書ボランティアによる読み聞かせもそろそろ始まっている頃でしょうか。
前回は「小学校で読書ボランティアをはじめる方へ」と題して、読み聞かせを始める前に知っておいてほしい大切なことをお伝えしました。
今回はそこからもう一歩進んで、実際に子どもたちの前で絵本を読むときのお話をしたいと思います。
「どんな絵本を選んだらいい?」
「読む前にどんな準備をしたらいい?」
「実際に子どもたちの前では、どう読んだらいい?」
そんなときのヒントになるように、絵本の選び方や準備、読み方について、私が大切にしていることを具体的にお伝えします。
そして後半では、2学期の読み聞かせにおすすめしたい絵本を、低学年・中学年・高学年に分けてご紹介します。
実際に読んでみよう!
どんな絵本を選ぶ? ― 絵本の選び方
前回の記事でもお伝えしましたが、読み聞かせで大切にしたいのは、「いつ・どこで・誰が・誰に読むのか」ということです。
小学校での読み聞かせで、まず確認しておきたいのが時間です。
読み聞かせの時間は何分あるのか。その時間内に最後まで読める絵本であることは、選書の大切な条件のひとつです。絵本を読む時間については、このあと「準備」のところでもう少し詳しくお話しします。
そして、季節を感じられる絵本を選ぶのもいいですね。
春には春の、秋には秋の。その時だからこそ出会ってほしい絵本があります。季節や行事をきっかけに選んでみると、絵本の世界と子どもたちの今の暮らしがつながります。
集団での読み聞かせでは、「遠目がきく」絵本であることも大切です。
教室のいちばん後ろに座っている子どもにも、絵がしっかり見えるでしょうか。手元で見ると楽しい絵本でも、大勢で見ると細かな絵や小さな文字が見えにくいことがあります。実際に少し離れたところから絵本を見て、確認してみるのもおすすめです。
もちろん、内容についても考えます。
前回もお伝えしたように、集団での読み聞かせでは、そこにいる子どもたち一人ひとりのことを、読み手がよく知っているとは限りません。だからこそ、どんな内容なのか、どんな言葉や表現が使われているのか、子どもたちが安心して受け取れるものか、丁寧に読んで選びたいと思います。
そして、授業で今学んでいることと絵本をつなげてみるのも、おすすめです(事前に先生に確認しておくことをお勧めします)。
たとえば、国語の教科書で学んでいる作品と同じ作者の別の絵本を選んでみたり、理科でひまわりを育てているなら、ひまわりが登場する絵本を選んでみたり。
「あ、これ今やってる!」と、学校での学びと絵本の世界がつながるのも楽しいものです。
そしてもうひとつ。
自分の好きな絵本を読む、というのももちろんありです。
時間や遠目、内容など、集団で読むための条件を踏まえたうえで、それでも迷ったら、自分の好きな一冊を。
自分が心から「おもしろい」「好きだな」「「子どもたちにも届けたい」と思える一冊。その気持ちは、きっと読む声にも表れます。
子どもたちの前に立つ前に ― 読み聞かせの準備
読む絵本が決まったら、次は準備です。
まず、その絵本をどう用意するのか。家にある自分の絵本を持っていくのか、公共の図書館で借りるのか、学校の図書室で借りるのか。これも大切な準備のひとつです。
自分の絵本を持っていく場合は、帯やカバーは外しておきます。新しい絵本なら、ページがしっかり開くかどうかも確認して、必要であれば開きぐせをつけておきましょう。
そして、これは必ずしてほしいこと。
下読みです。
初めて開く絵本を、そのまま子どもたちの前で読むことはおすすめしません。まずは自分でしっかり読み、できれば声に出して読んでみてください。
黙って読むのと、実際に声に出して読むのとでは、感じ方も違います。言葉のリズムや読みづらいところ、ページをめくるタイミングなど、声に出して初めて気づくこともあります。
そして、表紙から裏表紙まで実際に読んで、時間を計っておきましょう。
先ほど「絵本の選び方」でもお伝えしたように、決められた時間の中で最後まで読み終えられることは、とても大切です。緊張のあまり早口になることもあれば、子どもたちの反応によって、練習したときより時間がかかることもあります。少し余裕を持って考えておくと安心です。
読み聞かせの前に、できる準備はしっかりとしておく。
何度も読んで、絵本を知って、時間も確認しておく。その準備が、子どもたちの前に立ったときの自分の自信につながります。
さあ、読んでみよう! ― 読み方
さあ、準備ができたら、いよいよ子どもたちの前へ。
読み聞かせでまず大切なのは、みんなに絵本がちゃんと見えること。そして、声がしっかり届くことです。
そのためには、まず絵本をしっかりと持ちましょう。読んでいるうちに絵本がぐらぐら動いてしまうと、子どもたちは絵に集中しにくくなります。
コツは、絵本を持つ方の肘を曲げて腰に当て、固定すること。絵本が体から離れると安定しません。
本の後ろに添えた親指を立てると、安定して持ちやすくなります。
教室のいちばん後ろの子どもにも届くように、しっかりと声を出しましょう。大声ではなく、後ろまで届く声を意識します。
無理に感情を抑えて、淡々と読む必要もありません。
また、人は緊張すると、どうしても早口になりがちです。自分が思っている以上にゆっくりと、そして、はっきりと心を込めて読みましょう。
絵本に書いてあること以上を、読み手があれこれ説明する必要はありません。絵本そのものを、子どもたちに届けるつもりで。
そして、絵本は表紙から裏表紙まで。作者や画家、訳者など、絵本をつくった人の名前も読みましょう。
読み終わったあとも、読み手から自分の感想や解説を加える必要はありません。子どもたちは、その一冊からそれぞれに何かを受け取っています。その余韻を大切にしたまま、絵本を閉じ、教室をあとにしましょう。
何より、子どもたちと絵本を囲む時間を楽しんでほしいと思います。
そして、たくさんの物語を、子どもたちに届けてください。
2学期におすすめ! 学年別・読み聞かせ絵本
学年別におすすめします。
まずは低学年から。
低学年の読み聞かせにおすすめ
まずはこんな一冊はいかがでしょう。
『ぱくぱくはんぶん』
おおきなケーキを焼いたおばあさん。
これだけ大きければ当分なくならない、と思ったけれど、念のため食いしん坊のおじいさんに釘を刺します。
「おじいさん、ケーキはぜんぶたべたらいけないよ。はんぶん のこしといてね。
わたしも あとで たべるんだから」
おじいさんは言いました。
「ああ、もちろん もちろん」
このおじいさんのポーズがたまらない。
そして、おじいさんは食べた。
ぱくぱくはんぶん。
はい。約束どおり。
そこへ犬のジョンがやってきて……。
半分の、半分の、また半分。みんなちゃんと半分ずつ残しているのに、ケーキは……。
誰も悪くない。みんなちゃーんと半分残しておいたんだもの。
そして最後の結末もよくて。
柔らかくてほわほわのケーキを食べたあとみたいに、口いっぱいに幸せな気持ちが広がります。
繰り返される「ぱくぱくはんぶん」の言葉のリズムも楽しく、読んでいると察しのいい子どもたちがだんだん「あれ? 大丈夫?」という顔になっていく。
南伸坊さんの絵もかわいらしくユーモラスで、白地の背景は後ろの子にも見えやすい。
まずは物語をたっぷり楽しんで。そこから自然に「半分って?」「そのまた半分は?」と算数の世界へつながっていく、そんな楽しみ方もできる絵本。
でもまずは、お勉強になる前に、絵本の中でたっぷり「はんぶん」の不思議を楽しんでほしい一冊です。
合わせてこちらもおすすめ。
中学年の読み聞かせにおすすめ
『ヒギンスさんととけい』本の面白さに出会うきっかけに。
もし玄関の時計と、屋根裏部屋の時計と、台所の時計が、どれも少しずつちがっていたら、いったいどの時計が合っているのでしょう?ヒギンスさんは、こいつは時計がこわれてしまったと思ったのですが、じつはぜんぶの時計が合っていたのです!時計の読み方をおぼえようとしている子どもたちは、作者パット・ハッチンスの生きたユーモアを楽しみ、このお話の明快の論理をかみしめることでしょう。この本は、こどもの心のなかに時を刻んでやまない絵本なのです。
ある日、ヒギンスさんは屋根裏部屋で、なかなか立派な時計を見つけます。
この時計がちゃんと合っているか心配になったヒギンスさん。もうひとつ時計を買い、寝室に置きました。
寝室の時計は、ちょうど3時。
よし、屋根裏部屋の時計が正しいか見に行こう。
急いで屋根裏部屋へ上がると、時計は3時1分!
どっちの時計が正しいの?!
そこでヒギンスさんは、もうひとつ時計を買ってきます。
なんかおかしい。
なにがおかしい?
どこまでも大真面目なヒギンスさんと、真正面から描かれるこの物語の展開がたまらなくおもしろい。
作者のパット・ハッチンスさんは、あとがきでこう書いています。
「私は子どもだからといって、調子を下げるつもりはありません。ただ物語が論理的にきちんとしていることを心がけています」
もし、この絵本を読んで「???」となってもいいんです。
「わかる子いる?」なんて聞いて、わかる子に説明させる必要もありません。
何度も読んで、自分で「あっ!」と気づいたとき、その子はきっと、この「あっ!」をずっと覚えていることでしょう。
読み終わったあと、「来週までこの絵本、教室に置いておくね」なんていうのも素敵ですね。
(事前に先生に確認しておくことをお勧めします)
すぐにわからなくてもいい。
答えを教えてもらわなくてもいい。
絵本を何度も開いて、自分で「あっ!」に出会う。
読み聞かせでの出会いが、もう一度その絵本を開くきっかけになったら。
そんな時間も一緒に届けてほしい一冊です。
合わせてこちらもおすすめ。
高学年の読み聞かせにおすすめ
『パンケーキ100まいたべたいの』「こうであってもいい」 そんな自由さを軽やかに差し出してくれる一冊。
「きょうは、おいしいパンケーキを100まい、すごくたべたい日なの」女の子は、パンケーキ100まいぶんの材料を買いにおつかいに。そこへ現れたのは大きな黒ねこ。行く先々でも、たくさんのねこたちが買い物のお手伝いをしてくれます。
そして、女の子は焼きあがったパンケーキをパクパクパクッと、大満足! さて、ねこたちは……?
読み聞かせにもぴったりな楽しいおはなし絵本です。
お誕生日でも、特別な日でもありません。
お天気がよくて、みつあみも上手にできたから、おいしいパンケーキを100枚食べたい。
そんな女の子の願いから始まる物語です。
その願いに、お母さんはにっこり。シーツも乾きそうだし、かまどの掃除も終わったし。
「100枚焼くのもいいかな」と思います。
パンケーキの材料のおつかいに出かける女の子。それを見ていたのは大きなねこ。「ひとりでおつかいは大変でしょう。私の背中にお乗りなさい」と女の子を乗せておつかいに出かけました。
粉屋さんで2匹。たまご屋さんで3匹。バター屋さんで4匹。牛乳屋さんで5匹。ねこが1匹、2匹、3匹…と増えていきます。
「どんなあじなの パンケーキ...」ねこたちは小さな声で歌いながらついてきます。
声に出して心地よい繰り返しのリズムと、石川えりさんの絵も相まって、どこか海外の昔話のような空気をまとった物語。
さて、100枚のパンケーキはどうなるのでしょう。
この絵本のおもしろさは、その結末にもあります。
「えーっ!」と思う子もいれば、「いいやん!」と思う子もいるかもしれない。
何も言わずに受け取る子もいるでしょう。それでいい。
高学年ともなると、同じ物語を読んでも、受け取り方は一人ひとり違います。
だからこそ、読み終わったあとに答えを求めず、それぞれの心に残ったものをそのまま大切にしてほしい。
私はとっても好きなんですよね、この終わり方。
「こうであってもいい」
そんな自由さを軽やかに差し出してくれる、高学年の子どもたちと楽しんでほしい一冊です。
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おわりに
今回の記事では、具体的に、絵本の選び方や、準備、読み方についてお伝えしました。
次回は、読み聞かせや子どもたちとも慣れてきた頃に楽しみたい絵本や、具体的なQ&Aなどもお話できたらと思っています。
お伝えしたのは…
ふわはねプロフィール
ふわはね(内田 祐子)
絵本講師・子育てアドバイザー・ふわはねえほん 主宰
大学で児童文学を学ぶ。2005年絵本講師1期生として絵本講師資格取得。関西を中心に企業での定期教室をはじめ、幼児教育に携わる先生や書店員への研修。絵本講座、研修、絵本コンサルなどを行っている。絵本のつなぎてとして、絵本の作り手と読み手を。親と子を。人と人を繋ぐ。
絵本のある暮らしを発信するインスタグラムはフォロワーが2万人を超える。
大学生と子ども園教諭の娘をもつ。
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