絵本ナビスタイル トップ  >  絵本・本・よみきかせ   >   絵本ナビ編集長の気になる1冊   >   「こわい!だけど たしかめたい!」
絵本ナビ編集長の気になる1冊

「こわい!だけど たしかめたい!」

 

トイレに行きたくなって、ふと夜中に目覚めた時。

 

「…カタン」

 

なんだか廊下の方から物音がしたような。
このまま寝てしまおうか。でも気になって仕方がない。
ふとんから出て、そろりそろりと確かめにいくと…!?

 


近所で噂になっている、ちょっと怖いおじさん。
おじさんの栗畑に勝手に入ると、とっても怒られるのだけれど、栗をくれる時もあるらしく、友だちが行ってみるという。確かめにいく?確かめにいかない?

 


知らなくていいことを偶然知ってしまったとき。
聞かなかったことにしようか。全て調べてしまおうか…。

 


「こわいものみたさ」とはよく言ったものです。

怖いけど、見たい。
逃げたいけど、好奇心が押さえられない。
知らないことがあると、確かめたくなる。

 

でも他人がそんな行動をしていると、理解に苦しみます。
どうしてそっちにいくの?
その先になにがあるというの?
知らないままでいいのに!

 

この絵本の中のアリスもそう。
それはもうぐいぐいと好奇心に引っぱられて先を行くのです。
いっぽう、弟のジャックというと…?
 

ゆめみるじかんよこどもたち

ゆめみるじかんよこどもたち

「ゆうら ゆう らいいいいい きいの しいたあ ようううう」

もしも、森の奥からこんな奇妙な声が聞こえてきたとしたら。
あなたらどうするでしょう?

アリスは言うのです。
「たしかめにいきましょう!」
ジャックは言います。
「でも、こわーいオオカミだったら どうするのさ。
 ぼく、おうちに帰りたいよ」

読者のほとんどが、ジャックの気持ちにうなずいたことでしょう。
でも、アリスは意思を変えません。
大丈夫だからと、ジャックの手をにぎって、森の中へと入っていくのです。

「はあは べえどおわあ かあでえ やあさあし まあすう」

どんな声で聞こえているのか想像するだけで、ドキドキしてきます。
アリスはどうして平気なのかしらね。確かめるために、どんどん奥へと進んでいきます。
その時…!?

この先の物語の続きには、ふたりの意外な行動と、思いもよらない優しい世界が待っています。もちろん、これはファンタジー。でも、子ども達が眠る前には、実にちょうどいい冒険の世界なのです。

「こわい!だけど たしかめたい!」

この絵本についている、キャッチフレーズ。
こんなこと言われたら、どうしたって、確かめたくなっちゃいますよね。オクセンバリーの描く美しい森の風景。そして、好奇心旺盛な姉アリスと、こわがりな弟の関係にも心癒されます。

 

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

http://www.ehonnavi.net/ehon/115811/%E3%82%86%E3%82%81%E3%81%BF%E3%82%8B%E3%81%98%E3%81%8B%E3%82%93%E3%82%88%E3%81%93%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%9F%E3%81%A1/

いざ同じ様な立場に立った時。
やっぱり同じ事をしている自分に気がつきます。それはもう、とめられません。理屈なんてないみたい。これがみんなの身体の中に飼っている「好奇心」というものなのでしょうか。それとも、安心したいだけ?

 

ひとつ言えるのは、アリスとジャックが同じ性格だったら、物語の結末も全く違っていただろうという事。違う速度で動くふたりが一緒というのが、思ったよりもずっと大きなポイントなのかもしれませんよね。

磯崎園子 (絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
Don`t copy text!