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絵本ナビ編集長の気になる1冊

魔法がつかえる? つかえない?

 

「わたし、魔法がつかえるんだ」

 

こんなことを堂々と宣言したら、きっと「あの子はウソつきだ」って言われちゃう。みんなだって、すごく憧れがあるはずなのに、どこか「そんなはずはない」って思っているんだよね。だから、誰かが口に出すと、ムキになって否定したりして。

 

でも意外なことに、大人になればなるほど「魔法の存在」への確信が強くなっている気もするのです。

 

だって、あんなに嫌いだった野菜を、急に美味しそうに食べはじめる子どもを目の前で見ちゃったら。この前まで泣き虫だった近所のあの子が、野球チームのエースとして活躍する姿を見ちゃったら。

 

絶対しゃべれないと思っていたあの子と、いつの間にか友だちになっていたり。一生やる気なんて起きないと思っていたのに、信じられないくらい仕事が楽しい日があったり。

 

説明のつかない奇跡って、意外と身の回りで起きているもの。そして、重要なのは魔法がかかる「アイテム」なのかもしれないって、思うのです。魔法使いが「ちちんぷいぷい」って言いながら振る、あのスティックね。

 

大人になると、そのアイテムを見つけるのが上手になるから、魔法をかけたり、かかったりするのも、少しだけコントロールできるようになるのかもしれません。

 

今は亡き馬場のぼる先生も、こんな可愛らしい魔法の絵本を描いていたんですね!
 

まあすけのぼうし

まあすけのぼうし

おや? 森の中で、こぐまのまあすけが、自転車に乗る練習をしているようですよ。どれどれ。

「ふらふらふら…がっしゃーん。」
「ふらふらふら…がっしゃーん。」

あぶなかしくって見てられない。まあすけは張り切っているのにね。見かねたやぎのおじさんが、まあすけにぼうしをくれます。

「すぐ じてんしゃに のれるように なる ふしぎな ぼうしだよ。」
「へえー、ほんとっ。ありがとっ。」

そんなすごい帽子なんてあるのかな、なんて思っていると、まあすけはすいすいすい……すごい!? その時、風が吹いて帽子が飛んでいってしまった!どうする、まあすけ?

「自転車に乗れるようになりたい!」
そう思いながらも、怖がっていたり、うまくいかなくて嫌になっていたり。そんな子どもたちがたくさんいるはず。でも、まあすけがマイペースに頑張る姿を見ているうちに、不思議と心の緊張がほぐれていくようです。すっとんきょうな表情がいいのかな? それもあるけど、まあすけの素直な心が伝わってくるんですよね。魔法もかかっちゃうはずなのです。最後にちょっとだけお兄ちゃんになったまあすけにも、心が温まります。

馬場のぼるさんの「くまのまあすけのえほん」シリーズ。こんな愛らしい作品があったんですね。新しい出会いに嬉しくなっちゃいました。

 

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

http://www.ehonnavi.net/ehon/115326/%E3%81%BE%E3%81%82%E3%81%99%E3%81%91%E3%81%AE%E3%81%BC%E3%81%86%E3%81%97/

まあすけは、魔法の取り扱い方をちゃんと知っています。役目を果たしたアイテムを、ちゃんと次の子に渡すのです。そういう事ができちゃうのが子ども。しびれちゃいますよね。尊敬です。
…大人の私は、アイテムを次の人に渡すことができるのかしら。

磯崎園子 (絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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