【絵本ナビ編集長の気になる1冊】あの頃の夏が好き。『夏 なつ』
夏が来た。
お気に入りのワンピースを着て、帽子をかぶって、いってきまーす。
今日もたくさん遊ぼう!
…あの頃は、本当に夏が好きだった。
それも、暑ければ暑いほど。
とけるような暑さの中を歩くと、なんだか現実じゃないみたい。
日差しが白すぎて、いつもと違う景色みたい。
ビーチサンダルでどこでもペタペタ歩くのは、自由な気持ちになる。
「なにがそんなに?」と聞かれれば答えられなかっただろうけど、とにかく夏の間は心が踊っていたものです。
今大人になってみると、残念ながらあの頃みたいな気持ちにはなれません。
ただひたすら日差しと暑さと闘う夏になっています。
でも、偶然にも絵本の中で、あの頃の夏に出会えることがあります。
そしてそこに答えがあったりするのです。ああ、「この夏」が好きだったんだ!
夏 なつ
ちりちり ちりちり ちりちり
かーん かーん かーん
白い帽子、白いランニングを着た少年が、明るい日差しの中を歩いています。
広い地面、真っ青な空、照らされた建物。
「夏」です。
じゅん じゅん じゅん じゅん
音からも記憶が蘇ってきます。
これは、確かに夏の音。
気が付けば、自分の中の「夏の記憶」と重なって、絵本の中の夏の風景はどんどん広がっていきます。遠くから聞こえる子どもたちの声。さぁ、僕もプールに飛び込むぞ!
子どもの頃、大好きだった暑い夏。
こんな風に音で記憶していることもあるんだと、改めて気がつかされます。
子どもたちの目には、どんな風景に映っているだろう。
絵もデザインも、どれをとっても味わい深い「夏の絵本」です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
夏を音であらわすと…なんて考えてもみなかった!こんな風に、理想の夏が具体的に絵本の中に存在していると、驚いてしまうし、すごく嬉しい。絵本作家さんって、やっぱりすごいのです。
一方で、子どもにそういう記憶を残せているかな…なんて不安になることも。
私と同じではないのだから、どこか心躍る季節があるといいな。今度聞いてみることにしよう。
「あの頃の夏」を思い出す絵本!
磯崎園子(絵本ナビ編集長)
この記事が気に入ったらいいね!しよう ※最近の情報をお届けします |