【編集長の気になる1冊】それでも、子どもたちはくらいつく。
「どうせ打つならホームラン!」
野球をやったことのない、そして野球を知らない私にしてみれば、ホームランってそういうものなのです。
ところが、息子が野球を始めて、その考えはがらりと変わります。所属しているチームのコーチが、たまに遊びでお母さんたちにも参加させてくれたのです。グラウンドに立って数秒で理解できます。
「え、野球ってこんなに難しいの…?」
あっという間に子ども達を見る目が変わります。
もちろん、打てる子は打てるのです。素人の目から見ても、センスの差っていうのはあるものです。それでも、子どもたちはくらいつく。どの子だって思いは同じなのです。
「いつか、ホームランを打ちたい」
そんな子どもたちとも、卒業と共にお別れです。
普段は、あまり人前でやることのない絵本の読み聞かせを、卒業生たちへの贈り物として選んだのはこの絵本。
ホームランを打ったことのない君に
「思い切ってバットを振ってみろ。
自信を持て。君ならできる」
監督の指示に気合を入れて構えるぼく。
…来た!
ちぇー、ボテボテのセカンドゴロ。ダブルプレーでチームも負けちゃった。
あーあ、もっとバッティング上手くなりたいよ。
試合でちっとも打てなくて、落ち込むルイが出会ったのは、野球部出身の仙ちゃん。仙ちゃんはルイに色々とアドバイスをくれます。レギュラーとして活躍していただけあって、さすがに詳しいのです。だけど、そんな仙ちゃんもホームランは打ったことがないと言う。
「打ちてえなあ、ホームラン。一生に一度でいいから、でっかいのをな。」
ルイは、彼がけがをしてリハビリ中だという事、それでも野球への情熱を失っていないことを後から知り、ぼくもいつか…と誓うのです。
野球が大好きな少年へ。夢にむかって歩き始めた子どもたちへ。
そして、野球を知らなかったお母さんたちにも。
見てもらいたいのは、仙ちゃんが目の前で見たという場外ホームランの場面。
そこには、有無を言わさぬ感動と野球の奥深さが詰まっています。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読み終わるまで、じっと聞いている子がいる。
そして、すぐにその子は私のところに来て言います。
「これ、ぼくのことだから、この絵本ちょうだい」
私は、何も言わずに差し出します。
これが、野球のことを少しだけ知った瞬間です。
まだまだあります!野球の絵本
磯崎園子 (絵本ナビ編集長)
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