絵本ナビスタイル トップ  >  絵本・本・よみきかせ   >   小学生におすすめのシリーズ   >   【小学2、3年生におすすめのシリーズ】『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』
小学生におすすめのシリーズ

【小学2、3年生におすすめのシリーズ】『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』


手紙のやりとりを通じてはじまる新しい出会い、一歩を踏み出す勇気など、たくさんのドキドキワクワクが詰まった『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』。もう読まれましたか?

もともと人気のある作品なのですが、2018年秋にこの本のドイツ語版が、ドイツ児童文学賞・児童書部門を受賞したことで話題となり、注目を浴びています。
 

そして、このお話には続きが3冊もあることはご存知でしょうか? もしはじめの一冊しか読んだことがないとしたら、それはもったいない! 1冊目から2冊目、2冊目から3冊目、3冊目から4冊目と、バトンのリレーのように手紙の書き手が繋がっていき、それぞれに登場した動物のその後の様子なども分かって、続けて読むと面白さが倍増するんです。

今回は、この『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』のシリーズの魅力についてたっぷりご紹介します。

手紙の書き手が繋がっていく楽しいシリーズ

最初のトップバッターは?

『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』

まず最初に登場するのは、アフリカに住んでいるキリンです。

キリンはたいくつでした。それは気持ちの通じる友だちがいなかったからです。

そこで、手紙を書くことにしました。それは同じようにたいくつしているペリカンが「ゆうびんはいたつ」をはじめたというポスターを見たからです。キリンは手紙を書きます。だれに書いたかって? それがとっても素敵なんです。ちょっとお手紙の内容をご紹介しますね。

「地平線のむこうに すむ きみへ

 ぼくは アフリカに すむ

 キリンと いいます。

   ながい 首で ゆうめい

   です。

 きみのことを

 おしえて ください。

      キリンより」

キリンは、この手紙を「地平線のむこうで、さいしょにあった動物に、わたしてほしいんだけど。」と配達屋のペリカンに頼みます。誰に届くか分からないなんてすごくワクワクしてしまいますよね。そして、次の日に待ちに待った「地平線のむこう」の誰かからのお手紙が届くのです。それはこんなお返事でした。

キリンくん 

ぼくはクジラ岬にすむペンギンといいます。

ぼくは、きみの 手紙で はじめて

首というものを 知りました。

ぼくには 首が ないのでしょうか?

それとも ぜんぶ 首なのでしょうか?

        クジラ岬 ペンギンより

どうやら、キリンの手紙を受け取ったのは、ペンギンだったようです。ここからキリンとペンギンとの手紙のやりとりが始まります。面白いのはお互いの姿を見たことがないということ。なんといったって地平線をはさむぐらい遠いのだから仕方ないですよね。そこで、キリンは手紙で相手の色や体の特徴などを聞いていき、うまく真似ができたら、会いに行く約束をします。さて、キリンとペンギンはうまく会うことができたのでしょうか?

また毎回はるか長い距離を行き来して手紙を配達してくれる空の配達員ペリカンと、海の配達員アザラシにもご注目下さいね。

さらに、お話の中で重要な役割をしているのが、ペンギンが通っている学校のクジラ先生です。このクジラ先生はとてつもなく大きくて、とてつもなく年をとっているのですが、まだまだ豪快な「しおふき」が得意な先生です。クジラ先生は、ペンギンと一緒にキリンからの手紙を楽しみます。

二番手は、クジラ先生です。

『わたしはクジラ岬にすむクジラといいます』

1冊目のキリンとペンギンのさわやかな友情にあこがれ、すっかり影響を受けたクジラ先生は、次のような手紙をたくさん書きました。


「水平線のむこうにすむきみへ

 わたしはクジラ岬にすむ クジラといいます。

 からだのほとんどが、頭です。

 ですからみんなに、頭がいいと いわれます。

 あなたのことを おしえて下さい。

          クジラ岬 クジラより」

 

こちらのお手紙にお返事をくれたのは、オットッ島のくーぼーでした。くーぼーはクジラ先生と同じクジラでしたが、まだこどものクジラでした。昔、おじいちゃんがクジラ岬に住んでいたそうで、手紙のやりとりを続けていくうちに、くーぼーがクジラ先生のかつての親友の孫だったということが判明します。くーぼーからの手紙がきっかけで久しぶりに昔を懐かしんでいると、クジラ先生の手紙を読んだという昔のクジラ仲間がぞくそくと集まってきます。そして、昔行った「クジラ岬オリンピック」を開催することになりました。早速オット島のくーぼーにも参加のお誘いのお手紙を送ります。

三番手は、子どものクジラ「くーぼー」が手紙を書きます。

『オットッ島のせいちゃん、げんきですか?』

オットッ島にすむオットセイのせいちゃんは、仲良しの友だちが出かけたまま帰って来ないので心配していました。そんなせいちゃんのところに1通の手紙が届きます。
 

「オットッ島のせいちゃんへ

  せいちゃん、げんきですか。ぼくは

  げんきです。ぼくは、じいちゃんの

  ふるさと、クジラみさきで、まいにち、

  しおふきのれんしゅうをして

  います。おおきくなったら、

  きんメダルをもらいたいからです。

  だから、しばらくオットッ島には

  かえれないけど、ぼくのことを

  わすれないでください。

  また、てがみかきます

  クジラみさき くーぼー」
 

そう、オットセイのせいちゃんが帰ってこないと心配していたのは、2冊目で「クジラ岬オリンピック」に参加するためにクジラ岬へ出かけたくじらのくーぼーだったのです。くーぼーは、よっぽどクジラ岬に何かひきつけられるものがあったのでしょう。ここからくーぼーとオットセイのせいちゃんとの手紙のやりとりが始まります。

配達員は、2冊目で開催された「クジラ岬オリンピック」の競泳競技でアザラシ配達員に助けられ、見習い配達員となったザラシ―です。何度かせいちゃんとくーぼーの手紙の配達を行い、その後配達員の試験に無事合格するのですが、せいちゃんからの大量の手紙を配達する途中で大変な災難に見舞われます。もちろん預かった手紙もなくしてしまいます。けれどもこの災難のおかげで出会ったのが、ラッコのプカプカでした。

四番手は、コンブ林にすむラッコのプカプカが手紙を書きます。

『おいらはコンブ林にすむプカプカといいます』

もともと一人でいるのが好きだったラッコのプカプカ。しかし3冊目で配達員のザラシーと友達になったことで気持ちに変化がおとずれ、次のような手紙を書きます。
 

「おいらはコンブ林にすむ

プカプカといいます。

おいらの生まれはラッタッタ島

だけど、旅ラッコなので

いまはコンブ林にいます。

おいらは一匹ラッコです。

でもたまにはおきゃくさんが

きてもいいかなとおもって

るんだ。

あそびにきたらとまっても

いいぞ。

コンブベッドのねごこちは

さいこうだぜ。

貝もごちそうしてやるぞ。

コンブ林 プカプカ」

 

この手紙を読んでやってきたのは、「ウミガメのカメ次郎」。見慣れないへんなヤツでしたが、プカプカのところを探して尋ねてきたカメ次郎をプカプカはしばらく泊めてあげることにします。けれどもカメ次郎の様子がどうも変。昼間はいそいそとでかいカバンを持ってどこかへ出かけて行くし、いつもノートに何かをメモしているのです。そんな中、最近クジラ海に、怪盗カメ次郎という怪しいヤツがうろついているといううわさが耳に入ります。クジラ岬では、クジラ先生、ミセス・クジラ岬、ペリカン配達員、アザラシ配達員による「クジラきんきゅう会議」が開かれました。さてカメ次郎は、うわさの怪しいどろぼうなんでしょうか?

こちらがシリーズに登場する動物たちと、住んでいる場所の位置関係(『おいらはコンブ林にすむプカプカといいます』より)

五番手は、なかなか友だちができない、サメのサメ次郎が手紙を書きます。

『ぼくは気の小さいサメ次郎といいます』

ぼくは気の小さいサメ次郎といいます

2001年に刊行されたシリーズ1冊目の『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』のドイツ語版が、2018年ドイツ児童文学賞を受賞。ある日たいくつなキリンが書いた手紙により地平線の向こうに新しい友だちができ、その輪が広がっていくというユニークなシリーズの5作目です。顔がこわいのでみんな逃げてしまって友達ができない、サメのサメ次郎が手紙を書きました。気ままに旅をするウミガメのカメ次郎から話を聞いた「コンブ林のプカプカさんへ」です。その手紙はプカプカに届いたのでしょうか? 知らない誰かに手紙を書く、それはその人を知ろうとする気持ちにつながります。返事がくるまでの時間も、さまざま想像をふくらませて楽しい時間です。「世界はひろいよ。あなたのこと、わかってくれる人、必ずいます。」作者のはじめの言葉です。

六番手は、「カメ次郎商店」を開いたカメ次郎が手紙を書きます。

『あっしはもしもし湾にすむカメ次郎ともうします』

あっしはもしもし湾にすむカメ次郎ともうします

2001年に刊行されたシリーズ1冊目の『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』は、たいくつなキリンが書いた手紙により「地平線の向こう」に新しい友だちができるお話。その後「地平線の向こう」のクジラ海に舞台を移し、さまざまな手紙をきっかけに広がっていく友だちの輪を描くユニークなシリーズとなり今作は6巻目。旅から帰ったカメ次郎、集めた貝ガラや石を使って、貝の笛から看板まで何でも作るのが得意なので、「カメ次郎商店」を開くことにしました。前作でクジラ海にできた郵便局に頼んでチラシを配ってもらったのですが、何日たっても、一人もお客さんがきません。調べてみると、にせの「カメ次郎商店」が賑わっているではありませんか! どういうこと? 郵便局のオープン記念イベントも重なり、クジラ海は大賑わい。にせカメ次郎の正体は? 新しく登場のカメ次郎のおっかさんや妹のかめよも個性的です。手紙で伝わることは、きっと書いてあること以上のものなのでしょう。

シリーズのおすすめポイント

その1 手紙を出して、返事が来るまでの時間にワクワクする

誰かに手紙を書いたことのある子なら、早くお返事が来ないかな~と楽しみに待つ気持ちや、なかなか来なくてじりじりする気持ちがなんとなく分かるかなと思うのですが、それが誰からお返事が来るか分からないとなれば、なおさらドキドキワクワクしますよね。またこのお話では、手紙をやりとりする相手が地平線の向こうにいたり、同じ海の上でもどのぐらい距離があるか分からないところとのやりとりなので、時間もどのぐらいかかるのか分かりません。けれどもその待つ間というのは、とっても幸せで豊かな時間なのではないでしょうか。この豊かな時間の心地良さをたっぷり味わってみてほしいと思います。もし忙しく毎日を過ごしていたとしたら、お話の中だけでもゆったりとした時間を過ごしてみませんか。またお手紙をまだ書いたことのない子にもお手紙の楽しさが伝わるお話です。このお話をきっかけに誰かにお手紙を書いてみるのもいいですね。

その2 作者の岩佐めぐみさんの「はじめに」の言葉が読みたい気持ちを誘う

それぞれ本の最初のページに、作者である岩佐めぐみさんからのメッセージがあります。

このメッセージを読むと、まるで自分ひとりに直接呼びかけられているようで親近感が湧き、まるで魔法をかけられたようにすっとお話に入り込んでしまったような感覚になります。1冊目から4冊目までの「はじめに」の一部分をご紹介しますね。

 

『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』

「みなさんはどんな毎日をすごしていますか。なかよしの友だちがいますか。それとも、ひとりぼっちですか。することがいっぱいあって、いそがしいですか。それとも、なにもなくてたいくつですか。」

 

『わたしはクジラ岬にすむクジラといいます』

「みなさんは、どんなときにうれしいですか?ほしいものを買ってもらったとき?うんどう会で一等になったとき?テストで百点をとったとき?それともすきなだけおかしが食べられるとき?クジラ岬を知っていますか。そこにすむクジラ先生は、さいきんとってもうれしいことがあったそうです。」

 

『オットッ島のせいちゃん、げんきですか?』

「はじめてのことってドキドキしますね。会ったことのない人に会うとき、やったことのないことをやるとき、いったことのないところにいくとき……心細いし、しっぱいするんじゃないかな?って不安になるかもしれません。でもあなたのことを、応援してくれている人がきっと、いるはずです。」

 

『おいらはコンブ林にすむプカプカといいます』

「あなたはひとりでいるのがすきですか?本をよんだり、なにかを作ったり、ゲームをしたり、なんんびもしないで、ぼーっとしたり……じぶんだけの時間ってたいせつですよね。でもだれかといるのもすてきです。」

 

その3 住む場所も生態も年齢も違う動物たちの出会いと交流が温かい

陸に住むキリンと、海に住むペンギン。とてつもなく年をとっているクジラ先生と子どもクジラのクーボ。見習い配達員のアザラシ、ザラシーとひとりが好きなラッコ、プカプカ…など、このシリーズでは、住む場所も生態も年齢も性格も違う動物たちが登場します。まずはキリンの一歩の行動から、出会いが広がって繋がっていきますが、それぞれが違いを認め合い、尊重しながら、困った時は助け合い、嬉しい時には一緒にお祝いする。そんな関係性がとても温かく描かれます。

 

住む場所も年齢も立場も違う者たちの出会いと交流が温かく、また常に相手の立場になって想像力をふくらませるという普遍的なテーマを含んだこの本。これまでに賞を受けたドイツの他、韓国、 台湾、 ブラジル、 メキシコ、 中国、 ニュージーランド、 トルコで刊行されているのだそう。さらにこれからロシア、 ギリシャ、 ルーマニア、 ベトナムでも出版される予定だそうです。いつかどこかの国の子と出会った時に、共通の話題としてこの本のことを話せるかもしれませんね。

 

こちらのシリーズ作品を読むことで、ゆったりとした時間を味わったり、世界のどこかにある国のことや、遠くにいる誰かのことをたくさん想像する楽しさを知ることができますように。
 

秋山朋恵(あきやま ともえ) 

絵本ナビ 副編集長・児童書主担当

書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
Don`t copy text!