小学生の読書感想文におすすめ! 家族がテーマのお話10選
読書感想文の宿題を、面倒なものから楽しいものへ
毎年、楽しい夏休みと一緒にやってきてしまうのが、読書感想文の宿題。読むのも書くのも楽しみ! なんて子はなかなかいませんよね。でもせっかくなら、読書感想文の宿題をきっかけに本の面白さを知れたり、新しい発見に繋がったり、世界が広がったり、読むだけで心がちょっと成長するような機会になるといいですよね。
これは私の想像なのですが、読書感想文の宿題を出す側としては、おそらく、本と出会ういい機会にしてほしい、感想を書くことで、よりお話に入りこんで読み、深く読むことで得られる感動を味わってほしいという願いがあるのではないかと思うのです。
「読書感想文の宿題を、面倒なものから楽しいものへ」
そのために重要なのは何といっても「本選び」です。
これまでにもたくさんのおすすめ本をご紹介してきましたが、令和元年の今年の夏はさらに選びやすいように、「友達」「家族」「冒険」…・・・などのテーマに分けて、子どもたちが「本って楽しいんだ!」と体験できるような本を紹介していきます。さらに、小学生の皆さんにも親御さんにも、より多くの作品との出会いがあるように、毎年人気のある作品に加えて、できるだけ新しい本や隠れた名作などを織り交ぜながらご紹介していきたいと思います。
それでは、今回のテーマは「家族編」です。家族にまつわるいろいろなお話をご紹介します。
(※対象年齢は目安ですので、それぞれ自分に合った長さや内容の本を選んでみて下さいね)
小学1、2年生におすすめの家族のお話
『ぼくが見たお父さんのはじめてのなみだ』
お父さんが泣いたところを見たことはありますか?
「お父さんって泣くのだろうか?」 そんな疑問を持ったことがある子にはこの本がおすすめです。お父さんとの会話を通して、強いだけのイメージだったお父さんについての発見がいっぱい生まれるお話です。
“そういえば、ぼくはお父さんのなみだを、今まで一度も見たことがない”。そのことに気づいた主人公のゆうきは「お父さんはなんでなかないの?」とたずねます。そこで初めて明かされる、怖かったお祖父さんとの思い出、そしてお祖父さんに教わった、人として、男としての「大事なこと」――。テンポのいい会話を軸に構成される、父子の絆を描いた作品です。
読者の声をご紹介
自分の父親の涙というものを見たことのある子供というのは、そう多くはないのではないでしょうか。
つい涙が出てしまう自分と父親を比較して、ふと気になった主人公のゆうきの疑問はとても素朴で、かつ読んでいる多くの人にもあてはまる疑問かもしれない・・・と思いました。
ゆうきの疑問に真摯に向き合ったお父さん。
そして語られる、自分の父親との思い出。
昔気質だった父親(ゆうきの祖父)の不器用な愛情表現を感じ取っていたお父さんは、ちゃんと愛されて育ったことを分かっていたのだろうなぁと思いました。
だからこそうっすらと浮かべた”汗”に、ゆうき自身もお父さんの愛情を感じたのではないでしょうか。
「お母さんにはひみつ」にしようというゆうきの優しさが、何だかくすぐったくなる、温かいラストでした。
(hime59153さん 40代・ママ 男の子7歳)
『ひみつのきもちぎんこう かぞくつうちょう できました』
2016年に課題図書となり大きな話題となった『ひみつのきもちぎんこう』の続編。今回は「かぞくつうちょう」ということで、自分の気持ちだけでなく家族みんなの気持ちが貯まっていきます。溜まるのは青色のコインとピンク色のコイン。それぞれどんな気持ちの時に溜まっていくのでしょうか。自分の気持ちや身近な家族の気持ちについて考えるきっかけとなる1冊です。
ジャラーン! カラーン! なに、この音?
人の きもちを あずかる 【きもちぎんこう】。しんしょうひんの 【かぞくつうちょう】が できました!
きょうだいとけんかばかりしているひかるに、きもちぎんこうから手紙が届きます。行ってみると変なおじさんに「家族通帳はもうすぐ青コインでいっぱいになる」といわれました。通帳がいっぱいになるとどうなってしまうのでしょうか?
最初のお話はこちら
『おねえちゃんってほんとたいへん』
姉妹の日常をおねえちゃんの目線から語るシリーズの1作目。おねえちゃんって、妹や弟に比べてなにかと大変! そんな風に思ったことがある子は共感できる気持ちがたくさんありそうです。自分が妹や弟だという子も読んでみるとおねえちゃんの意外な気持ちが分かって面白いかも!? 兄弟姉妹がいないという子も、兄弟がいる生活を想像しながら楽しく読んでみて下さいね。
ママが再婚して、新しいパパの娘がココの妹になった。名前はナッちゃん、3歳。ナッちゃんは、ママにすっかりなついちゃってヤな感じ。おまけに6歳のココより背が高い!
「おねえちゃんって」シリーズ
読者の声をご紹介
小学2年生の我が家の娘が、ここ数ヶ月の間に、こちらのシリーズ本を何冊か一人読みしました。我が家の娘は一人っ子で、「おねえちゃん」でも「いもうと」でもないのですが、本を通して自分とはまた違った環境の女の子を感じられたようで、楽しんで読んでいました。
(まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子8歳)
小学3、4年生におすすめの家族のお話
『チャーリー、ただいま家出中』
父さんも母さんも兄さんも、ちっとも自分のことをわかってくれない。もう家出してやる! そんな風に思ったことがある子には、こちらをおすすめ。意を決して大荷物で家を出たわりに、行く場所に困って家出した先は物置小屋の裏。けれども誰か?のおかげで、なかなか快適に過ごせたようですよ。友達も巻き込んでの楽しい家出劇、家族の反応にも注目して読んでみて下さいね。
チャーリーは7歳の男の子。父さんも母さんも兄さんも、ちっとも自分のことをわかってくれない。ある日チャーリーは、また母さんに怒られた。部屋にじっとしてなさい、だって。朝みんなが寝てるうちに、コンピューターのゲームで遊ぼうとしただけなのに。そうだ、家出してやろう! 小型テレビまでかばんにつめて家出したチャーリーの行き先は、物置小屋の裏。ところが雨がふってきて…? やんちゃな男の子チャーリーのいろんな行動が楽しい読み物。
『かあちゃん取扱説明書』
刊行以来、毎年とくに読書感想文時期に大人気の作品がこちら。
絵本ナビにもとにかく面白かった! 子どもが読んでも大人が読んでもそれぞれに感じるところがあって面白いとの絶賛の声がたくさん届いています。本を読むのが苦手という子でも共感しながら楽しく読める作品なので、本選びに困ったらまずこちらをおすすめします。
ぼくんちで、一番いばっているのはかあちゃんです。今朝も朝からガミガミうるさくって、ぼくはハラがたちました。かあちゃんにいいたいのは、何日も同じごはんをつくらないでほしいです。さいごに、かあちゃんはすぐ「早く」っていうけれど、ぼくが「早く」っていうとおこるのは、やめてほしいと思います。
……ぼくの作文を読んだ父ちゃんは大笑いして「かあちゃんはほめるときげんがよくなるんだ。とにかくほめること。パソコンもビデオも扱い方をまちがえると動かないだろ、それと同じさ」
扱い方! そうか、扱い方さえまちがえなければ、かあちゃんなんてちょちょいのちょいだ!
哲哉はこうして、かあちゃん取扱説明書を書きはじめたのだが…。
読者の声をご紹介
冒頭の作文に笑い、父ちゃんのコメントにも笑い、それを褒める先生の姿にもあるあると頷く息子。
早くが口癖で怒ってばかりのかあちゃんをうまく操縦しようと、取扱説明書を作る事にした少年の話です。
説明書を作るために相手の事を良く知らなくては、とかあちゃんがどういうときに怒るのか、機嫌がいいのはどんな時か、考えたり、観察したり。
最初はうまい事操縦し始めた子どもの姿にハラハラしましたが、やっぱりかあちゃんは一枚上手。
気がつくと言われなくても宿題したり、部屋を片付けたりしています。
相手のことを考え、自分のこともできるようになった子どもの姿、悪い事をしたと心を痛め、態度で示そうとする姿に心を打たれました。
私もこんなかあちゃんになりたいな。
(ヤキングさん 30代・ママ 男の子9歳、女の子4歳)
『拝啓 お母さん』
出産を控えたお母さんにひどい言葉を投げつけたまま、ひとり九州の祖父母の家で過ごすことになった小学4年生のゆな。昔ながらの活版印刷所を営むじいじばあばを見て、丁寧に言葉をつむぐ大切さに気づいていきます。ゆながお母さんに向けて活字をひとつひとつ拾いながら苦労して作り上げた1枚のはがき。ゆなの気持ちはお母さんに届いたのでしょうか。
小学5、6年生におすすめの家族の本
『ムカシのちょっといい未来』
小学5年生の武蔵は、図工の時間に将来についての絵を描くことになったのをきっかけに、将来について考えはじめます。そこで、パン屋を営んでいるパパが昔なりたかったものやパン屋を始めた理由を知ることになり、パパと家業のパン屋を見直していきます。はたして、武蔵は自分の夢を見つけることができたのでしょうか。
さびれた商店街で昔かたぎの商売を続けるパン屋の息子・小村武蔵(あだ名はムカシ)。図工で描く絵のテーマをきっかけに「将来」について考えるようになりましたが、自分の夢ってなんなのか、探しあぐねています。そんな折、父親が思いつきで作ったナスのミソ炒めパンが大ヒットして、小さな店は押すな押すなの大盛況。ムカシの人生にも一大転機が訪れそうなのですが……。"シンミリ朗らか"な商店街ヒューマン・コメディーの誕生です。
「ユウレイ通り商店街」シリーズ
『メキシコへ わたしをさがして』
住んでいる国や境遇が違う子の暮らしや気持ちを感じて、遠い場所に思いを馳せてみるにはこちらの1冊を。大切にしていた暮らしと家族を守るため、はじめは臆病だった主人公のナオミが強くなり、勇気を持っていく姿に引き込まれます。
ひいおばあちゃんと、弟のオーウェンと暮らす少女ナオミのもとに
ある日、実の母親スカイラがあらわれる。
勝手な理由で、ナオミを引きとろうとするスカイラだったが、
ナオミたちはそれに対抗し、はなればなれになった父親をさがして、
メキシコへ旅立つことになる。
国を越え、ルーツにふれて、自分自身をみつける少女の物語。
『竜の座卓』
夏休みに、じいちゃんと「てつ兄」とぼくで一生懸命作った座卓。けれどもじいちゃんが亡くなってしばらくたったある日、座卓が捨てられてしまい・・・・・・。1台の座卓をめぐり、「てつ兄」、ぼく、父さん、母さんの思いが交錯します。じいちゃんが話してくれた話や座卓の存在が、ぼくを勇気づける様子にも注目して読んでみて下さい。
『手紙 ふたりの奇跡』
2019年6月に発売になったばかりの、福田隆浩さんの新刊です。
秋田に住む小学6年生の女の子穂乃香と、長崎に住む同い年の男の子が、手紙を通して、穂乃香のお母さんの秘密に迫っていきます。読んでいると手紙を書く行為というのは、自分自身の想いを整理したり見つめることに繋がり、それが前に進む力ともなるのだなあということを感じます。ほんの小さな手がかりから大きな秘密にたどり着くまでのふたりの謎解きが気になって最後まで読ませられてしまいます。亡き家族が幸せな人生を送ったのであってほしいとの願いも込められ、大人っぽいところもありますが、高学年の子どもたちに読んでほしい内容です。
秋田に住む小六の穂乃香は、亡き母の少女時代の大切な思い出の謎を探すため、勇気を出して長崎に住む耕治の小学校へ手紙を送る─。
「この手紙は、長崎市の東山小学校に届いていますか?
そして、6年生の吉野耕治さんの手元へ届いているでしょうか?
そうなっていることを信じて、続きを書くことにします。
はじめまして!
わたしの名前は清水穂乃香といいます。秋田県秋田市にある桜坂小学校に通う小学6年生です。
吉野さんが、この手紙を読んでいるとしたら、きっとびっくりしていることと思います。
だって、会ったこともない、まったく知らない子から、突然こんな手紙が届いたのですから。
─中略─
お母さんの人生って、いったいなんだったのだろう……。
最近、よくそのことを考えてしまいます。
自分のために生きていたのかなあって。うれしいことあったのかなあ。きらきら輝いていたことがあったのかなあって……。
でも、お母さんがすっごく笑って、本当に本当に楽しそうにしていたことがありました。
そう。
それが、長崎での出来事について、わたしに話してくれたときでした。」(本文より)
『ふたり』が感想文全国コンクール課題図書に、『香菜とななつの秘密』が厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に選ばれるなど、人気、実力を兼ね備えた現役教師作家、福田隆浩氏により感動作。
いかがでしたか? 今年の読書感想文の本選びのご参考に、ぜひご活用いただけますように。家族のお話がもっと読みたい! と思ったら、家族の本を集めた対象年齢別テーマページものぞいてみて下さいね。
秋山朋恵(絵本ナビ 児童書担当)
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