小学生の読書感想文におすすめ! 動物がテーマのお話10選
読書感想文の宿題を、面倒なものから楽しいものへ
毎年、楽しい夏休みと一緒にやってきてしまうのが、読書感想文の宿題。読むのも書くのも楽しみ! なんて子はなかなかいませんよね。でもせっかくなら、読書感想文の宿題をきっかけに本の面白さを知れたり、新しい発見に繋がったり、世界が広がったり、読むだけで心がちょっと成長するような機会になるといいですよね。
これは私の想像なのですが、読書感想文の宿題を出す側としては、おそらく、本と出会ういい機会にしてほしい、感想を書くことで、よりお話に入りこんで読み、深く読むことで得られる感動を味わってほしいという願いがあるのではないかと思うのです。
「読書感想文の宿題を、面倒なものから楽しいものへ」
そのために重要なのは何といっても「本選び」です。
これまでにもたくさんのおすすめ本をご紹介してきましたが、令和元年の今年の夏はさらに選びやすいように、「友達」「家族」「冒険」…・・・などのテーマに分けて、子どもたちが「本って楽しいんだ!」と体験できるような本を紹介していきます。さらに、小学生の皆さんにも親御さんにも、より多くの作品との出会いがあるように、毎年人気のある作品に加えて、できるだけ新しい本や隠れた名作などを織り交ぜながらご紹介していきたいと思います。
それでは、今回のテーマは「動物編」です。動物にまつわるいろいろなお話をご紹介していきます。
(※対象年齢は目安ですので、それぞれ自分に合った長さや内容の本を選んでみて下さいね)
小学1、2年生におすすめの動物のお話
『キナコ』
「このごろのママは、いつもいう。お姉ちゃんになるんだよって。だけど、あたしはもうずっと前からお姉ちゃんだもん。キナコのお姉ちゃんだもん。」
妹が生まれることへのとまどいと、大事にしているネコのキナコへの思いが交錯しながら、小学1年生のゆまが少しずつ成長していく物語です。ゆまのいろいろな気持ちを想像してみて下さいね。
キナコは、ネコです。ネコだけど、あたしの妹です。
なのに、ママが、赤ちゃんが生まれるからって、キナコをおばあちゃんにあずけようって言いだした。
あたしはそんなの絶対にヤダ! キナコを預けるくらいなら、赤ちゃんなんていらない!
キナコはあたしが守るってきめた。
キナコをおばあちゃんちに連れていかれないように、学校に連れてきて、倉庫に隠した。
でも、キナコがどこかにいなくなっちゃった……。
「ママのせいじゃん! ママがわるいんだよ。ママがキナコのこと、じゃまにしたから、赤ちゃんばっかりだいじにして。キナコが いなくなっちゃったのは、ママのせいだもん!」
いっぱいいっぱいどなって、わーって、ないた。
「ごめん。ごめんね」
ママは、あたしを ぎゅってした。
家族が増えることに対する戸惑いや葛藤を通じて、少しずつ成長していく女の子の物語。第39回日本児童文芸家協会賞受賞者による幼年童話です。
読者の声より
小学校2年生の我が家の娘が,図書館でこちらの本を見つけ一人読みしました。
小学校低学年の子供の一人読みにぴったりな幼年童話で,娘も真剣に読んでいたようです。
ねこのキナコを大切に思う主人公の女の子の気持ちがよく書かれていて読み手も引き込まれていきますね。
(まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子8歳)
小学1、2、3年生におすすめの動物のお話
『どうぶつのかぞく パンダ ぼくのなまえはユウユウ』
野生のパンダってどんな生活をしているの? 何を食べているの?
動物園のパンダとはひと味違う、大自然の中でのパンダの生態が分かりやすく描かれます。いつも一緒だったおかあさん。けれどもある日突然、おかあさんと離れてひとりぼっちになってしまったユウユウ。その理由とは…? ユウユウの気持ち、お母さんの気持ちを想像してみると感想文が書きやすそうですよ。
パンダのユウユウとおかあさんはいつでもなかよし。起きているときも寝ているときもおかあさんといっしょ。
でも、ある日・・・?!
野生のパンダの親子の生態とパンダのひとり立ちが楽しくやさしいお話しで読めます。
動物園のパンダとはまたひと味違う、大自然の中でのパンダの可愛らしい姿をサトウさんのイラストでたくさん紹介。
動物の家族をテーマにした童話シリーズ「どうぶつのかぞく」。他の巻もおすすめです。
小学3、4年生におすすめの動物のお話
『ハニーのためにできること』
主人公はふたばという女の子。おばあちゃんが亡くなったお葬式の日、おばあちゃんが飼っていた老犬ハニーと出会います。意を決して引き取ったのもつかの間、ハニーは重い病気にかかってしまいます。テーマは重く考えさせられる場面がたくさんありますが、かけがえのない存在に出会えたしあわせと、命の温かさが伝わる感動作です。「自分がふたばだったら、ハニーに何ができるか」を読みながら一緒に考えてみませんか。
ふたばのおばあちゃんが亡くなって、ハニーという老犬を引き取ることになりました。そうしなければ保健所などにつれていかねばならないので、ふたばがお母さんを説得したのです。しかし、やがてハニーは重い病気になってしまいました。獣医の先生に相談し、ふたばは両親とともにいっしょうけんめい看護しますが、別れの時が近づいてきます。ふたばは、ハニーのために何ができるか必死に考えました……「命」を見つめる感動作。
読者の声より
このお話は、二つの死が出てきます。
一つ目は大好きだったおばあちゃんの死。
そして二つ目は、大好きだったおばあちゃんが可愛がっていた犬・ハニーの死です。
おばあちゃんは、たまにしか逢うことが出来なかった上に、ある日突然死んでしまったので、ふたばにとっては、死が少し遠い存在でした。
けれどハニーは、病気でだんだんと弱っていく姿を目の当たりにした先にある、本当に近くにあった死でした。
どんなに手を尽くしても後悔の残る、ふたばにとっては衝撃的な出来事だったに違いありません。
そんな二つの死を経験することにより、苦しさや哀しみ、後悔などの受け止め方を学ぶと共に、これからどうあるべきかや、寄り添う心のあり方など、多くの考えるべきことに出会い、人として大きく成長していったのではないかと思いました。
(hime59153さん 40代・ママ 男の子7歳)
『黒ネコジェニーのおはなし(1) ジェニーとキャットクラブ』
体が小さくて、これといった特技もなく、はにかみやの黒ネコジェニー。ネコたちのグループに入りたくても勇気が出なかったり、学校でいじめっこにあってしまい、怖がったり。子どもたちが学校生活で体験するあれこれを連想させるところがあり、ジェニーの気持ちに共感する子は多いのでは!? ジェニーを応援しているうちに、勇気や元気をもらえそうな1冊です。
キャットクラブに入るには特技が必要ですが、小さな黒ネコのジェニーはなんにもできません。でも、ご主人がクリスマスにスケート靴をプレゼントしてくれて……。
続けて読みたい黒ネコジェニーのおはなしは全部で3冊!
読者の声より
みなし子ネコのジェニーはキャプテン・ティンカーの家で暮らし始めます。
小さいけれど、自分の置かれている状況や、自分をいじめてくるネコのこともきちんとて見ているジェニー。
「ジェニーがキャット・クラブにはいるはなし」では、新しい環境に入ることができるか悩む子どもたちの新学期を連想しました。
「ジェニーがネコの学校へいくはなし」は、いじめっ子とどう対していくのか?みたいなところを連想。この話と次の話しは胸がすくような思いで読みました。
小さなネコという設定ですが、子どもたちが日常抱える問題とも通じるものがある気がします。
黒ネコというところも神秘的であり希少性があるネコということもありるのでしょうか。
一人読みするなら小学校中学年ぐらいだと思いますが、シリーズも出ているみたいなので、ジェニーの活躍ぶりを親子で楽しんでいけたらと思いました。(はなびやさん 40代・ママ 男の子10歳)
小学4、5、6年生におすすめの動物の本
『シャーロットのおくりもの』
はじめてこの物語を手にする時には、シャーロットというのがクモのことだという事にびっくりするかもしれません。しかし、このクモがとっても賢くて親切で友達思いで魅力的なんです。このシャーロットが、クリスマスに食べられてしまうという子ブタのウィルバーを助けるために奔走するのですが、いったいどうやって助けるのでしょう? 原書は1952年にアメリカで刊行されており、長く読み継がれているファンタジーの古典です。
子ブタとシャーロットのかけがえのない友情を描いた児童文学の最高傑作!23ヵ国4500万読者に愛され続けるロングセラー。
読者の声より
未熟児で産まれたこぶたのウィルバーと、それを助けた少女のファーンのエピソードで始まる物語ですが、主人公はブタでも少女でもなく、ウィルバーが買い取られた農場に住んでいるクモ。
この意外性から、物語も意外性で読む側の心を揺さぶります。
巣の模様に文字を入れて、ウィルバーを助けたクモ。
シャーロットという名前がとても洒落ていて、そのシャーロットが次々に活躍する様子には感動します。
人につくすことで、一生を終えるシャーロットですが、とても見事な幕引きがとても切なく感じました。
(ヒラP21さん 60代・パパ)
小学5、6年生におすすめの動物の本
『シャイローがきた夏』
この本を読み終えた時、主人公の少年マーティと同年齢ぐらいの子どもたちにぜひ手渡したい話だと思いました。飼い主からひどい目にあっている子犬を守りたいと奮闘するマーティの気持ちが痛いほど伝わり共感する場面がたくさんあるのではないかと思います。子犬のために初めて人に隠し事をしたり、嘘をついたりするマーティの心の葛藤の部分にいろいろな感想が湧いてきそうな1冊です。
ある夏の日、11歳の少年マーティは、ビーグルの子犬に出会います。飼い主は嫌われ者のジャド。普段からひどい目にあわされているのか、マーティが近づくと後ずさり、声も出しません。マーティは、ジャドから子犬を守ろうと決意し、「シャイロー」と名付け、家族にも内緒でこっそり世話をしはじめます。しかしシャイローを守るためには、つきたくもない噓をつかなくてはならず、マーティは悩み、考えます。「本当に正しいこと」って何なのだろう?
子犬との出会いをきっかけに、成長していく少年の姿を描いたさわやかな物語。
『シートン動物記 オオカミ王ロボ』
数多く出ている「シートン動物記」の中でも特におすすめなのがこちらのシリーズ。臨場感あふれる動物たちの物語を通してシートンが大切に考えていた野生動物の個性や生き方がしっかり伝わってきます。Q&Aでの解説もあり、疑問に分かりやすく答えてくれたり、物語の背景や動物たちの習性についてより詳しく丁寧に教えてくれます。
100年以上前のアメリカに「ロボ」と呼ばれる巨大なハイイロオオカミがいました。とても賢く、どんな毒入りの罠をしかけても、決してだまされることがありませんでした。
これは、ロボがどんなふうに大地をかけまわり、妻ブランカと情愛で結ばれていたのかを、追いかける人間(作者、アーネスト・T・シートン)の側から記録した物語です。
雨があまり降らない、赤茶けたニューメキシコ(いまのアメリカ南部一帯)の高原。しかし川沿いの低地には緑があふれ、たくさんの羊や牛が放牧されていました。そこに君臨するのが、オオカミ王、ロボでした。牧場主たちがどんなに用心しても、ロボとその仲間は、ねらった家畜を確実にしとめ、ゆうゆうと暮らしていました。
ロボの首には懸賞金がかけられますが、名だたる猟師が挑戦しては、みなことごとく失敗して去っていきます。
友人から話を聞いたシートンは、ロボとの知恵比べに挑みました。くふうをこらした罠をしかけ、足跡を追い、観察し、記録する日々が続きます。そしてついに、本物のロボを目の前にする日がやってきます・・・。
シートン動物記のなかで最も名高い作品『オオカミ王 ロボ』。いくつか訳本がありますが、本書は動物学者の今泉吉晴氏(ムササビ先生)が、様々な資料をもとに、あらたな解釈で訳しなおしたシリーズ「シートン動物記」の中の一冊です。(つづきはコチラ>>>)
読者の声より
子供の頃、学習塾にあった児童書コーナーでシートンの動物記を、時間を忘れた読んだことを思い出します。特にオオカミ王ロボは、小学生の私の心に強い感動を与えてくれました。
親のおしつけにならないか心配でしたが、子に読み聞かせたところ、2回目、3回目と催促されて何度も読むことに…(笑)
主人公であるロボが人間に駆除されてしまうなど実話故のリアリティーと、実話なのに猛獣である狼のやさしさ、愛情が描かれている部分とが混在した名作。
動物も含めたこの世界が
「悪いもの→退治する」 「良いもの→大切にする」
といったシンプルな二項対立で存在しているわけではないことを、わが子にも感じ取ってもらえたようで、いつもは幼い表情のわが子が、読み終わった後は妙に大人びた表情をしてくれて、なんだか満足してしまいます。
少し古い本かもしれませんが、名作は名作。いつまでも大切にしたいものです。
(よむとさん 30代・パパ 女の子4歳)
『チビ虫マービンは天才画家!』
こちらは動物ではなく、虫が活躍するお話なのですが、とびきり面白いのでこちらでおすすめさせて下さい。
小さな甲虫の男の子マービンと、11歳の男の子ジェームズの間に友情が生まれてどんどん絆が深まっていく様子や、ことばを使わずに気持ちを伝え合う工夫にどんどん惹きこまれます。美術館の盗難事件に巻き込まれる後半はハラハラドキドキの連続ですが、二人が大きな冒険を超えて成長していく姿がみどころです。アートに興味を持つ入り口にも。
小さな虫の男の子マービンは、人間の少年ジェームズへのプレゼントとして小さな絵を描いた。ところが、大人たちはその絵を見て大騒ぎ…。絵画盗難事件もからんだ、スリルあふれる少年とチビ虫画家の友情物語。
『キツネのパックス ―愛をさがして―』
ピーターは、死にかけていた子ギツネを助け、キツネをパックスと名づけます。それ以来ずっと仲良く一緒に過ごしてきたピーターとパックス。しかしピーターの父親が戦争に行くことになり、二人は別れなくてはならないことに。章ごとにピーターの視点とパックスの視点で交互に語られ、キツネのパックスの視点でも描かれるところに面白さがあります。
ピーター少年は、助けた子ギツネをパックスと名づけ、ずっといっしょに生きてきました。しかし、戦争が近づいて別れなければならないことに。48週連続ニューヨークタイムズのベストセラーに選ばれ、全米で絶賛された作品。ジョン・クラッセンのイラストも見事です。
『ぼくと象のものがたり』
少年と象の交流、絆を深めていく様子が温かく描かれ、物語を通して象の習性を知れる面白さがあります。一方でインドの貧しい暮らしの様子、生活の厳しさ、不法労働など考えさせられるテーマがたくさん込められている骨太な作品です。
10歳の少年ハスティンは、北インドの乾燥地帯の貧しい村で、母さんと妹の三人で暮らしていた。妹が熱病におかされ、その治療費を支払うために、ハスティンは家族のもとを離れ、ジャングルのサーカスで象の世話係として住み込みで働き始める。けれども、非情な雇い主は、密猟によってつかまえてきた子象のナンディタも、ハスティンも、同じいのちのある存在とは思っていない。道具のようにこきつかわれ、一年間という約束も、なにかと理由をつけてはひきのばされていく。苦悩と葛藤の中で、ハスティンとナンディタは心を通わせ、ハスティンはナンディタを野生に返してやろうと決意する。
いかがでしたか? 今年の読書感想文の本選びのご参考に、ぜひご活用いただけますように。動物のお話がもっと読みたい! と思ったら、動物の本を集めた対象年齢別テーマページものぞいてみて下さいね。
秋山朋恵(絵本ナビ 児童書担当)
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