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小学生におすすめの名作

【小学1、2年生におすすめの名作】『大きい1年生と小さな2年生』

昔も今もこれからも、小学1、2年生を力強く応援するお話

小学校への入学を迎える新1年生の子どもたち。本人にとっても見守る家族にとっても大きな節目ですね。園での生活から小学校という社会へ。毎日の生活リズムがガラリと変わったり、時間割に則した勉強が始まったり、一緒に過ごすお友達の数もぐんと増えたり、環境が大きく変わるのですから、どんな性格の子だって不安がない子なんていませんよね。一方で小学校生活を一年やり遂げた新2年生も、自分と周りの違いに悩んだり、まだまだ心許ない揺れる存在ではないでしょうか。
弱かったり悩みがあったりするのはみんな同じ。決して自分だけじゃないんだと気づかせてくれ、さらに弱くても頑張る主人公の姿に勇気をもらえる物語があります。一番この物語に共感するであろう小学1、2年生にぜひ手渡したい名作をご紹介します。
 

子どもたちの共感を呼び、励まされる名作

大きい1年生と小さな2年生

みどころ

体は大きいけれど弱虫の1年生のまさやと、体は小さいけれどしっかり者でけんかも強い2年生のあきよ。このお話に出会う子どもたちは、それぞれどちらにより共感するでしょうか?

1年生になったばかりのまさやは家から学校までの「がけのあいだのみち」がこわくて仕方がありません。狭くて暗いし、木はしげっているし、時々カラスも鳴いていてこわいのです。けれどもお母さんからひとりで学校へ行くのよ、と言われ困っていると、次の日、2年生のあきよを含めた子どもたち四人が迎えにやってきて、まさやはあきよに手をつないでもらって登校するようになります。まさやはあきよがいるだけで心強い気持ちになり、だんだんあきよの強さとしっかりとした様子に憧れるようになります。その一方であきよもまた、まさやを見守ることによって、体は小さくても自分は大きいのだという自信が湧いてくるのでした。

そんなある日、事件が起こります。
あきよが好きな「ホタルブクロの花」を、「じんじゃの森」に探しに行くことになったあきよとまり子(あきよの友達)とまさや。傷を作りながらもあちこち探して、やっとの思いで二つだけ手にするのですが、帰り道に3年生の男の子たちとケンカになり、ようやく手にした花が踏みつぶされてずたずたになってしまったのです。そこで、まさやは初めてあきよが泣く姿を目にします。驚きながらも、「なかないで、あきよちゃん。ぼく、あきよちゃんに、きっと、ホタルブクロをとってあげるよ。もちきれないほど、いっぱいね。」と言うまさや。そして1週間後の日曜日、さまざまなきっかけに背中を押されて、まさやは「ホタルブクロの花」がたくさん咲いているという、普通はバスで行くような遠い「一本スギの森」に向かって歩きだすのでした。ひとりで学校への道も通れないまさやでしたが、道中、どんな体験をしていったのでしょうか。
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どんな子におすすめ?

まさやとあきよと同じ、小学1、2年生に出会わせてあげたい作品です。しかし長さは166ページとボリュームがありますので、1、2年生でひとりで読めるという子はなかなかいないでしょう。内容もハラハラする場面がたくさんありますので、はじめはぜひ、大人がお話の案内人となって読んであげることをおすすめします。お話の中にはまさやとあきよ、それぞれの悩みが描かれますが、まさやとあきよが悩む姿や頑張る様子を通して、同じ年頃の子どもたちはそれぞれに何か感じるものがあるのではないでしょうか。

おすすめポイント

  • 主人公のまさやと同じように、小学生になったばかりの子どもたちはさまざまな不安を抱えている存在です。まさやの心情には共感するところもたくさんあるでしょう。不安なのは自分だけではないと安心したり、弱かったまさやが勇気を出す場面に励まされたり、大きく気持ちを動かされる魅力ある作品です。
     
  • 二年生になったら背がぐっとのびると思っていたあきよ、おなかがすきすぎて悲しくなり、教室で泣いてしまったまさや。「しっかりする」というのはどういうことなのか分からないまさや、など、子どものものの考え方や気持ちがありのままに生き生きと描かれるので、子どもは感情移入しやすく、大人はハッとさせられます。
     
  • 気持ちの弱かったまさやが、しっかりしたあきよに憧れ、あきよのためなら、と勇気ある行動を起こします。一方であきよもまたまさやを見守ることで、自分のコンプレックスを少しずつ解消していきます。子どもたちは子ども同士の関わりの中で大きく成長していく、ということが伝わってきます。

ここが面白い!

①タイトルが面白い

タイトルの「大きい1年生」と「小さな2年生」というところを読んだ時に、あれ?「小さい1年生」と「大きな2年生」の間違いじゃないの?と思いませんでしたか? 体は大きいけれど弱虫の1年生のまさやと、体は小さいけれどしっかり者でけんかも強い2年生のあきよ。この対照的な2人が出会うというところにまず面白さが感じられます。
 

②本の最初に出てくる地図に注目を

最初のページに出てくる「まさやのいえのまわりと、一本スギの森まで」の地図。お話の中に出てくる場所の全体が俯瞰できるので、お話を読みながら、またお話を読んだ後でじっくり眺めてみると、さらにお話を面白く感じることができるでしょう。

 

③各章につけられたタイトルが面白い
お話は全部で13章に分かれているのですが、それぞれにつけられた表題が目をひきます。

たとえば、「一年生のくせに大きすぎる」「「しっかりする」とは、どういうこと?」「子どもには、たいていのみちは、はじめてのみち」「しんせつなおじさんか? ゆうかいはんか?」いったいどんなお話になっているのか読みたくなりますね。


④あきよは強いけれども弱いところもある

いつでも言いたいことをしっかりと相手に伝えるあきよ。「おチビさん」「チビ」と言われることには我慢できず、五年生の先輩にも、三年生の男の子たちにも向かっていき、平気でケンカします。そんなあきよの強さを毎回目にするまさやですが、一方で花が好きだという女の子らしいところや、泣く場面にも遭遇し、友達にもいろんな面があることを発見します。

 

⑤まさやの思いきった行動がみどころ

家から学校までの道でさえ、こわくてひとりで通れなかったまさやが、あきよのために、思いきった行動に出ます。普段はバスで行くぐらい遠い「一本スギの森」まで歩いていくことにしたのです。はじめての道を通る不安、森へつづく道や川の怖さ、出会う人への警戒感、などまさやのドキドキが読者にも伝わってくる場面ですが、一緒に冒険しているような臨場感もたっぷり味わえ、読み応えのある場面です。

 

⑥ホタルブクロってどんな花?

あきよとまり子(あきよの友達)が好きだという「ホタルブクロの花」。お話の中であきよとまり子とまさやはこの「ホタルブクロの花」を取るためにとても苦労します。うすむらさき色でふくろのかっこうをした花。実際にもある花なので、どんな花なのか見てみたくなりますね。

読者の声をご紹介します

自立・ひとり立ちを描いた作品
「おしいれのぼうけん」「ダンプえんちょうやっつけた」の古田足日さんの作品だということで、とても楽しみに読みました。
166ページ13章、かなり読み応えのある作品です。
毎晩寝る前に1日2章づつと決めて読むことにしましたが、「お願い、もう少し読んで!」と息子に懇願されることも多く、5日間で読みました。
体は大きいのにお母さんに頼ってばかりで、精神的にはとてもひよわな1年生の「まさや」。
体は小さいけれど自分の気持ちに真っ直ぐに行動することができる、しっかり者の「あきよ」。
対照的な2人ですが、友達になって時間を共有するうち、しだいにお互いのことを理解するようになっていきます。
「まさや」は勝ち気に見える「あきよ」にもコンプレックスなど複雑な心情があるんだと知ります。
そして、そんな「あきよ」のために大冒険に立ち向かうのです。
「あきよちゃんを喜ばせたい!」という一心で。
終盤、強い気持ちで不安をはねのけていく「まさや」の大きな成長を感じ、読んでいてウルウルでした。
子どもは子どもの中でたくましくなっていく。
子ども同士の遊びの時間はかけがえのない大切なもの。
そんなことも感じました。
子どもの心情の奥の奥まで細かく書かれていて、友情と自立をありありと描いたとても素晴らしい作品でした。
(カトリーヌみどりんさん 30代・ママ 男の子7歳、男の子2歳)

大きい2年生

娘が「大きい1年生」だった頃に、読んであげたいと思って購入した本でしたが、いつのまにか2年生になってしまっていました。「小さな2年生」ではなく、「大きい2年生」ですけどね!
 あきよのように、男の子とけんかして泣かせてしまうようなことはありませんが、面倒見のいいところや、活発なところ、それに、花が大好きなところは、似ています。
逆に、怖がりで、泣き虫のまさやのことは、とてもおもしろく映るようで、まさやの言動に、何度もくすくすと笑っていました。
 でも、最後は、大感動! まさやが様々なハードルを乗り越え、たった1日で著しい成長を遂げます。
誰かを思う心、誰かのためにがんばる心って、とてつもなく大きな力になりえるんですね。
 子ども時代にこのような経験ができることは、本当に素晴らしいことだと思います。
(ガーリャさん 40代・ママ 女の子8歳)

その先が気になって一緒に楽しみました。
小学校に入学したばかりの娘に借りた本の1冊です。実はもっと薄い幼年童話だと思っていたら、ずしりと重い本で、まずびっくり。
しかし。お話の筋がとても面白く、ぐんぐん引きこまれてしまいました。それは娘だけでなく、読む方の私も同じ!という事です。
就寝のタイムリミットぎりぎりまで、毎日読みましたが、あまりの面白さに3,4日で読み切ってしまいました。
私自身は、こどもの自立とか、そういう観点よりも、どうやら娘と一緒に子供時代に帰った気持ちで読んでいました。主人公が立ち寄った家に「めずらしくカラーテレビがあって」という部分があるのですが、この本が出版された頃は自分もこのくらいの歳だったのです。そうそう、カラーテレビのある家は少なかった(笑)とか、楽しんで読んでしまいました。
娘とまた一つ、お話しが共有できた様で、ちょっと嬉しかったです。読み聞かせのポイントの一つは・・・親も一緒にワクワクすることだと思っているので・・・そういう意味では満点の本です。
(wakiさん 50代・パパ 女の子6歳)

この本を書かれたのは?

このお話を1970年に書かれた、古田足日さん。『おしいれのぼうけん』や『ロボット・カミイ』をはじめとした数々の名作を残し、子どもたちの成長と、子どもたちを取り巻く環境を注意深く見つめながら、35年にわたる創作活動を続けられました。子どもたちは古田足日さんの作品世界に入り込み自分のことのように共感して読むことでしょう。そしてそんな読書体験を経ると、大人になってからもその時に感じた作品世界の記憶がいつまでも心の中に残っていきます。古田足日さんは2014年にご逝去されましたが、古田足日さんの作品は、子どもから大人までたくさんの人々に愛され続けています。

いかがでしたか?

大人になってあらためてこの作品を読み直していたら、小学生の時に背が低くて、あきよちゃんのようにものすごく悩んでいたことを思い出しました。もちろん大人になった今でも悩みやコンプレックスはありますが、小学校の頃に抱えていた悩みの重さや深刻さもなかなかのものだったなあと振り返って思います。子どもの気持ちというのは分かったような気になっても、実は全然分かっていないのかもしれないということにもあらためて気づかせてもらう機会となりました。そんな子どもの頃の気持ちや感じ方を思い返しながら、一日一日を一生懸命過ごしている子どもたちに精一杯の応援を込めて、この作品をおすすめします。

秋山朋恵(絵本ナビ 児童書担当)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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