子どもノンフィクション文学賞小学生の部、大賞受賞作品が絵本に『二平方メートルの世界で』発売
子どもノンフィクション文学賞小学生の部、大賞受賞作品が絵本に!
「第11回子どもノンフィクション文学賞」小学生の部大賞受賞作品『二平方メートルの世界で』が、絵本で小学館より刊行されました。
みどころ
病室のベッドの大きさは、たて約二メートル、幅約一メートル。
その周りをぐるりと囲うカーテンの中が入院中のわたしの世界のすべてーー。
札幌に暮らす小学3年生の女の子、海音ちゃん。彼女は、脳神経の病気の治療のために、3歳の時から定期的に入退院を繰り返している。彼女は大抵の事は「わかっている」。なかなか効果の出ない治療だという事も、もっと痛い思いをして検査を受けている子がいるという事も、家族の住まいがバラバラになってしまう家があるという事も。どうしてわたしだけ、とは思わない。
だけど、やっぱりつらい気持ちになる事がある。孤独を感じたり、怖くなることだってある。「もういや!」「薬を飲まなくていい日をください!」内から生まれるたくさんの言葉を飲みこむのは、家族みんな、それぞれが思いを抱えていることを知っているから。そんなある日、彼女の目に思わぬ光景が飛び込んできた……!
主人公は実在の小学5年生、前田海音さん。彼女が3年生の時に書いた作文が 「子どもノンフィクション文学賞」を受賞し、絵本作家はたこうしろうさんとのコラボレーションにより、この一冊の絵本が誕生したのです。海音さんが見ている街や学校の風景、病院の様子。そして彼女の口から語られる言葉は、一つ一つどれも重みがあり、まっすぐに読む人の心に刺さってきます。けれどもそれは、悲しみだけではありません。私たちみんなが覚えておきたい、大切なことばかりなのです。
「ひとりじゃないよ」
ベッドの上で海音さんの見つけた大事な発見。この絵本を通して、きっとまた違う誰かに届いていきますように。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
病院のベッドの上で、少女が発見したのは……。
たくさんのだれかが、わたしに語りかけてくれた。ひとりじゃないよって……。絵本『二平方メートルの世界で』は、札幌の小学5年生・前田海音さんが3年生のときに書いた作文がもとになっています。この作文は「第11回子どもノンフィクション文学賞」(福岡県北九州市主催)小学生の部大賞を受賞しました。
海音さんは、脳神経の病気の治療で3歳のころから入退院をくりかえしています。入院中のある日のこと、たまたまいつもとは頭と足を逆にしてベッドに横たわると、備え付けのオーバーテーブルのうらに、たくさんの落書きがあることに気がつきます。「みんながんばろうね」「再手術サイテー」「ママにめいわくかけちゃってる。ごめんね」……海音さんと同じベッドを使っていた、顔も名前も知らない子どもたちの言葉でした。受賞作には、その落書きを発見したときの思いや、入院中の孤独感、家族に対する気持ちなどが綴られています。
編集部から本にしたいというお願いをさしあげたところ、「病気と生きる仲間がいること、いたことを、わたしが代表してみんなに伝える役割なのかなと、覚悟を決めました」という手紙が届いたそうです。そこで、作文を絵本作家のはたこうしろうさんに読んでもらうと、はたさんは、「海音さんが気づいたことや感じたことは、みんなに覚えておいてほしい大切なことかと思う」と言って、絵を描くことを引き受けてくださいました。はじめて海音さんとはたさんが会ったのは、去年の秋、感染症流行の第2波がやってくる直前のことです。その後もふたりは編集部を介して打ち合わせを続け、この作品を完成させました。
書籍紹介
『二平方メートルの世界で』
文・前田海音/絵・はた こうしろう
定価:1650円(税込)
AB判上製オールカラー、40ページ
2021年4月20日発売 小学館
著者プロフィール
文・前田海音(まえだ・みおん)
2010年、北海道滝川市生まれ。札幌市の小学校に通う小学5年生。趣味は将棋と水泳と読書。「絵本は『100万回生きたねこ』、読みものだと『にいちゃんのランドセル』が好きです」。
絵・はた こうしろう
1963年、兵庫県西宮市生まれ。絵本作家。おもな作品に「ショコラちゃん」シリーズ(文・中川ひろたか、講談社)、『なつのいちにち』(偕成社)、『どしゃぶり』(文・おーなり由子、講談社)など。
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