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パパも絵本を楽しもう!

【パパも絵本を楽しもう!】読み聞かせの達人パパが選ぶ11月の絵本

「子どもに読んであげる絵本を、パパが選ぶのってすごく楽しい。パパ自身がもっと絵本を楽しんだら、いろんなことを子どもと分かち合えるし、自分にも返ってくる。ママとパパ、複数の目線で選ぶと、子どもの本棚はすごく豊かになるんです。」  そう語るのは、イベントなどでの読み聞かせ活動歴10年以上、ロングセラー絵本の知識はもちろん新刊情報もいち早くキャッチしている読み聞かせの大ベテラン、奥平パパ。2児のパパでもあります。
たとえば、好きな詩を共有するように、パパも絵本を通して子どもたちに思いを伝えられたらいいですよね。
気負わず楽しく、パパ目線で絵本選び。奥平パパから子育て中のパパたちに向けて、絵本を選ぶコツと季節のおすすめ絵本を紹介します!

パパが選ぶ、11月に読みたい絵本

いよいよ11月、2021年も終盤です。ちょっと突然ですが今回は50年以上も読みつがれている大ロングセラーの紹介をしたいと思います。子どもの頃に読んでもらった絵本を、お子さんに読ませたいと思ったことがありませんか? それで書店に行くと、それが古本ではなく今も店頭で新刊を手に入れることができる……、もちろんすべてのタイトルではありませんが、改めて考えてみるとこんなジャンルは他にありません。

日本で絵本がとても充実した形で広がり始めたのは、僕はISUMI会(※)のメンバーを中心として1960年代くらいからだと思っているのですが、たしかにこの頃の作品には今も読まれている名作が多いんです! 1967年生まれの僕はその恩恵を十分に浴びて育ちました。昨今は読書体験や嗜好の多様化もあり、絵本もその型や発想が広がって、新たな素晴らしい作品がたくさん生まれています。もちろんそれはとても大事なことなのですが、僕たちの世代には、先達の生み出した「日本の子どもたちのための絵本」を伝えていく義務があるのではないか、そんなふうにずっと考えています。

大人には懐かしく、もちろん子どもたちと読んで楽しいものばかりです。秋の夜長、じっくりと絵本に向き合いたい!!

※1955年から活動した、石井桃子さん、瀬田貞二さん、鈴木晋一さん、松居直さん、いぬいとみこさん、渡辺茂男さん(後に参加)をメンバーとする日本の子どもの絵本を考える会。

おとうさんと動物園へ !

うさこちゃんとどうぶつえん

おとうさんと汽車に1時間乗って、動物園に行きます。おうむたちがうさこちゃんを歓迎してくれます。次に、うさこちゃんは、しまうまを初めて見ました。それから、おなかのふくろに赤ちゃんを抱えたカンガルー。今度はおおきなぞうに、うさこちゃんのパンをあげました。片手でぶらさがってるおさるさんは余裕顔、2匹の首の長いキリンを見たときは少し怖くなってしまいました。最後には亀に乗って、楽しい1日の終了です。

1964年刊行。言わずとしれた「うさこちゃんの絵本」シリーズ。中でも僕はこの「どうぶつえん」が大好きです。石井桃子さんの訳は、日本語のリズム、言葉の選択が選びぬかれていて、素晴らしいです。ぜひ声に出して読んでみてください。五七五のリズムで読んでいるほうもとても楽しい気持ちになります。赤ちゃん絵本はまずもって読んであげる大人が楽しく読めることが肝心。何度も読むものですからね! 石井桃子さんのあとを継いだ松岡享子さん訳の作品も変わらず素晴らしいです。

完全な再話と美しい絵で味わう「いっすんぼうし」のおはなし

いっすんぼうし

子がいないおじいさんとおばあさんは、お天道様に「こどもを おさずけください」と拝んでいました。そのうち、おばあさんのおなかが痛み、小さな小さな男の子の赤ん坊が生まれました。赤ん坊の体の大きさは、手の親指くらいの大きさです。おじいさんとおばあさんは、お天道様の思し召しだと、たいそう喜びました。なじみ深い一寸法師のお話が、完全な再話と美しい絵で、子どもたちの心によみがえります。

1965年刊行。よく知られた昔話ですが、「再話」と言われる手法で語られてきたおはなしを物語にしているので、ここには日本語に対する造詣や子どもに対する考えによって作品の出来上がりには違いがでるのではないかと思います。「いっすんぼうし」の絵本なら僕はこの石井桃子さんのものがオススメです。

息子が小さい頃これを何度も読み聞かせていましたが、あるとき奥さんの実家に遊びに行ったとき近所の知らない子どもが僕ら親子に寄ってきていろいろ話しかけられました。ちょっと人見知りの息子は僕の後ろに隠れて小さな声でなにか言っていました。

「なにようあってここにきたのか」

これはこの『いっすんぼうし』の中で使われたフレーズで、うん、まったく正しい使い方、と思わず笑った、そういう懐かしい個人的な思い出がこの本にはあります。

3匹のヤギとトロルの勝負の行方は……?

三びきのやぎのがらがらどん

橋の向こう側の山で、たくさん草を食べようと考えた3匹のヤギ。小さなヤギ、中ぐらいのヤギ、大きなヤギ、みんな名前は「がらがらどん」。橋をわたっている途中に谷に住むトロル(おに)にでくわしてしまいます。小さなヤギの機転によって、小さなヤギと中くらいのヤギはトロルから逃げて橋をわたることができました。いちばん大きくて強いヤギはトロルに勝負を挑みます。3匹のヤギは無事に橋をわたることができるのでしょうか?

1965年刊行。初めて読んだときには、3匹ともがらがらどん!?とちょっと戸惑いましたが、繰り返しのストーリー、ちょっと怖いトロルが出てきてドキドキ(ほんとはがらがらどんが一番怖い!?)、最後は安心するという、短い作品ですがとてもドラマチックです。原文を読んだことがないのですが、読んでいてとても楽しいのはやはり練に練られた瀬田貞二さんの日本語のおかげだと思います。トロルの声は低い声で読むと雰囲気はぴったり、ぜひ男の人の声で読んであげてください。

小さなじぷたの大活躍!

しょうぼうじどうしゃじぷた

高いビルにはしごをのばして火を消すことのできる、はしご車ののっぽくん。たくさんの水で激しい炎も消すことのできる高圧車のばんぷくん。けが人を運んで助ける救急車のいちもくさん。大きくて立派な働きをするみんなは、いつも小さな消防自動車じぷたを「ちびっこ」あつかいしていました。でも、道がせまい山の中で火事がおこりました。このままでは山火事になってしまいます。そんなとき、出動を命じられたのはなんとじぷたでした。

1966年刊行。じぷたは我が家では「車の絵本」の代名詞というくらい、もう何十回読んだかわかりません。山本忠敬さんの絵に初めて触れたのもこの絵本。今見たら少しレトロな雰囲気もまたいい感じですが、細部まで描かれた絵と、リズムのあるおはなしは全く古びず、小さなじぶたが自分の存在意義を見出していくストーリーはやっぱり傑作。

愛され続ける、赤ちゃんとのコミュニケーション絵本

いないいないばあ

いない、いない、ばあ。にゃあにゃが、くまちゃんが、ほらね、いない、いない……。
発売から50年、600万部をこえる、日本で一番売れている絵本です。(トーハンミリオンぶっく2015年版調べ)

「赤ちゃんと、どんな風にコミュニケーションとったらいいでしょうか?」こんなお問い合わせをいただくことがよくあります。この絵本はそんな赤ちゃんとご家族にぴったりの絵本です。「いない いない ばあ」と語りかけて一緒に楽しむことで、大人もあかちゃんも笑顔になり、心の交流を通じて親子の信頼を深めるきっかけになります。そんな読者の皆さんの体験や信頼が口コミで広がり、支持され続けてきた絵本です。

1967年刊行。赤ちゃん絵本の代名詞。とにかく日本の絵本の中で一番売れているのです。その冊数700万部以上! 刊行から54年経ってもなお売れ続けているそうですよ。今、日本では新生児の人数が100万人を切っていますが(2020年は84万人と統計史上最小になってしまった)、毎年赤ちゃんの10人に一人以上はこの絵本を読んでいる計算になりますね。「にゃあにゃがほらほら、いないいない・・・・ばあ」から始まるこの絵本、パターンの繰り返しで予想通りに進むこの喜び・楽しさ、響きの良い言葉のリズム、見開きの絵、めくって「ばあ」となるページの構成など考えつくされていて、みんなが大好きなのも納得です。

https://www.ehonnavi.net/specialcontents/contents.asp?id=16 『いないいないばあ』編集長インタビュー

鬼と大工の運くらべ?!

だいくとおにろく

川に橋をかけようとする大工とその川に住む鬼のユーモラスなやりとり、民話の語り口を生かした文章、日本の伝統的な美しい絵、すべてが子どもを満足させます。

1967年刊行。松居直さんの再話、絵は赤羽末吉さん。赤羽さんの絵はとても素朴なタッチですが、力強く迫力があって、物語の面白さを高めていると思います。松居さんと赤羽さんのコンビはこの他にも多くの傑作を生み出していてどれもオススメです。

11ぴきのねこ』1967年刊行。「11ぴきのねこ」シリーズも、もう50歳超なんですね!

おんなじ おんなじ』 1968年刊行。「おなじ」と「ちがう」をわかり始める時期に!

わたしのワンピース』1969年刊行。今見ても素晴らしい色遣い、色褪せぬストーリー

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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