【パパも絵本を楽しもう!】読み聞かせの達人パパが絵本講座でおすすめしている絵本
「子どもに読んであげる絵本を、パパが選ぶのってすごく楽しい。パパ自身がもっと絵本を楽しんだら、いろんなことを子どもと分かち合えるし、自分にも返ってくる。ママとパパ、複数の目線で選ぶと、子どもの本棚はすごく豊かになるんです。」 そう語るのは、イベントなどでの読み聞かせ活動歴10年以上、ロングセラー絵本の知識はもちろん新刊情報もいち早くキャッチしている読み聞かせの大ベテラン、奥平パパ。2児のパパでもあります。
2019年12月から毎月続けていただいた連載は、今回で最終回となります。絵本以外にも常に幅広くアンテナを張っている奥平パパならではの視点に、いつもなるほどと頷かされる連載でした。最終回は、特に奥平パパが「絵本講座」で日頃からおすすめしている、選りすぐりの読み聞かせ絵本を教えてもらいました。
「本棚に多様な価値観を」「絵本を親が楽しんで読もう」
2010年だったか、ある先輩が受けていた柏市の仕事のピンチヒッターで、急遽僕に「父親と絵本」としたテーマで読書ボランティア向けの話をしてくれないかと依頼がありました。それが僕が初めて行った講座です。それまで子どもたちの前で読み聞かせをしたり、その前後で簡単にお話をすることはあっても、講座という形でお話をする機会はなく大変緊張していましたが、読み聞かせの実演で『ドオン!』(山下洋輔・長新太 福音館書店)を読んだところ、参加していた子どもたちの反応がとても良く場が和んだことや、偶然柏市に住んでいた僕の大学時代の友人がチラシに僕の名前を見つけてお子さんと参加してくれたりして、自分的にはとても楽しく終わらせることができました。まあでも初めての講座ということもあり、今思うと資料も稚拙で話し方もこなれていなかったかもしれないです。そのときに参加くださった方には申し訳ない気持ちもありますが、そのとき話した内容は、以来僕の講座の内容の骨子として変わらず残っています。
若いお父さんたちと時々話をする機会がありますが、父親の子育てがハイライトされた時代は過去のもの、彼らにとって子育てはデフォルトになっていて、その意識や実践は僕が子育てをしていたときとのそれと隔世の感があります。同時に毎年100万に近い人が「新しく」父親になることで戸惑いや悩みをもち、そしてそれを語る場を求めていることは変わらずあるのだとも感じています。そんな中で少しだけ先輩の僕が伝えられることは、「本棚に多様な価値観を」「絵本を親が楽しんで読もう」ということで、これが10年以上前から変わらずお伝えしている骨子なのです。父親に限らず、子育てにはできるだけ多くの大人が関わることがいい、絵本も誰か一人が選んだものが本棚にあるより、多くの大人が選んだものがあるほうが多様性が保たれる、だから母親だけでなく父親も、おじさんもおばさんも、おじいちゃんもおばあちゃんも、それぞれが好きなものを選んでほしい、そうして一人の子どもの本棚の「多様性」は保たれる、これがひとつめ。同時に好きなものを選んでいるということそれ自体が、子どもに「好き」を伝えられる。読んでいる人の「好き」が子どもに伝わるんです。だから自分で好きなものを読もう、これがふたつめ、です。そういうわけで今回は、普段の僕の絵本講座でおすすめしている絵本の一部をご紹介します。
コミュニケーションの絵本2冊
一緒に「ぴょーん!」
ページをめくるたびにいろんないきものが、「ぴょーん」とはねる楽しい絵本です。
小さなお子さんに読んであげると、いっしょになってとんでしまうという、たのしいご報告をたくさんいただいています。
僕の中では「ダイナミックなコミュニケーション絵本(笑)」というカテゴリ第1位のこの絵本。いろいろなものが「ぴょーん」とジャンプします。コミュニケーションというのは、ようは絵本に合わせて「たかいたか~い」をするということですが、登場するカエル、ニワトリ、トビウオなどと一緒に、できるだけ高く、できるだけおおげさにアクションしながらお子さんと楽しめるものとしてオススメしています。抱き上げたり、くすぐったり、くっついたり、そういう体を使った動きに特に赤ちゃんは喜びます。それを絵本を通して体現できる。これはママが読んでパパがぴょーんとする、そういう掛け合いで読んでも面白いと思います。これぞパパの出番。できるだけ高く持ち上げてあげてください!
そっと耳を澄ませてみよう
食べる音や水道の蛇口の音、工事現場や電車、動物園の音、そして音楽や子守唄まで、
ページを開いてそっと耳を澄ませてみると、きっと聞こえてくる聴覚の絵本です。
聴覚、味覚、触覚、嗅覚、視覚、感覚(感情)、6つの感覚を絵本にするという画期的なシリーズ「The Book of Sense」。その1冊です。「ぴょーん」とは少し違う形の「コミュニケーション」がとれる絵本として僕の講座では毎回オススメに入れさせていただいています。この本には字がありません。ですので絵だけを見ることになりますが、字の情報はときに想像力を限定することがあります。正面から絵に向き合って、その「音を聞いてみる」。聞いているのは読んでいる子ども、どうぞお子さんからどんな音が聞こえてくるのかを尋ねてください。僕は、同じ水なのに聞こえてくる音がぜんぜん違うことが感じられる水道の蛇口を描いたシーンが特に好きです。
読んであげる側の大人にも楽しんでもらえる赤ちゃん絵本
みんなで一緒に「し~」!
動物たちが、親子でにぎやかにおさんぽしています。すると、ももんちゃんがやってきて、「し~」だって。どうしてかな? ももんちゃんが、そっと木の後ろに回ると……。
愛され続けて、ついにシリーズ15作目。「し~」という言葉と動作が面白く、読み聞かせると、子どもたちが嬉しそうにまねしてくれます。眠っているお友達を気づかう、少し大きくなったももんちゃんに出会えるおはなしです。きんぎょさん、さぼてんさんをはじめとして、かみなりさんなど、これまでシリーズに登場したキャラクターがほぼ総出演しています。
ももんちゃんのシリーズはたくさんありますが、僕はこの「し~」がとても好きなのでご紹介します。作者・とよたかずひこさんの講演を聞いたとき、赤ちゃん絵本は赤ちゃんに向けての絵本ということ以上に、読む親のためのものだ、とおっしゃっていてとても感銘を受けました。そして読む親が飽きたりつまらなく思わないように、読んでいて楽しいものを作っている、ということに深く共感しました。そう、楽しい気持ちは伝わるのです。だから絵本は自分で選んでほしい、自分で好きなものを読んでほしい、ということを繰り返しお伝えしています。
男の人が読むと楽しい絵本
一番の寂しがりは……?
ある日、キツネは<ともだちや>を始めることを思いつきました。1時間100円でともだちになってあげるのですが、さて…。
主人公のキツネは友だちごっこをしてお金をもらっています、でも実は一番の寂しがりで……というこのおはなし。キツネやオオカミは昔話や絵本の中では悪役が多いのですがこの中ではそんなことはありません。繊細な心をもつキツネと、やさしいオオカミの話はとてもあたたかな気持ちを残します。おはなしの中でひとつだけオオカミの迫力のあるセリフがあるのですが、そこなんて男の声で読むと雰囲気が出ますよ。ほかにも濁声など低い声が活躍する絵本です!
自分で好きなものを読もう!
ノスタルジーに満ちたファンタジー!
かんたがお宮にある大きな木の根っこの穴から落ちて訪れた国は、何ともへんてこな世界でした。そこの住人“もんもんびゃっこ”“しっかかもっかか”“おたからまんちん”とかんたは仲良しになり、時のたつのを忘れて遊び回ります。けれどもすでに夜。遊び疲れてねむった3人のそばで、心細くなったかんたが「おかあさん」と叫ぶと……躍動することばと絵が子どもたちを存分に楽しませてくれるファンタジーの絵本です。
そして究極は自分が好きな作家を見つけられたらいいですよね。僕にとって長谷川摂子さんはそういう作家さんの一人です。読んでいて言葉の謎があり、面白い響きがあり、と何度読んでも飽きることなく面白い。この『めっきらもっきらどおんどん』はドラマチックで、いかにも子ども時代のノスタルジーにも満ちていて、大好きな作品でオススメです。
というわけで、今回で僕の連載は終わります。「もっと絵本を楽しもう!」
まだまだたくさん! 奥平パパセレクトの読み聞かせおすすめ絵本
『きょだいな きょだいな』「あったとさーあったとさ」は読む方もリズムが取れて気持ちいい。
『はちかづきひめ』 こちらも長谷川摂子さんのオススメ作品!
『まるまるまるのほん』絵本でもインタラクティブに楽しめる。子どもたちの驚く反応が楽しみ。
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絵本ナビ編集部
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