【クリスマス】小学4、5、6年生のクリスマスプレゼントにそっと添えたいクリスマスの名作
小学4、5、6年生のクリスマスプレゼントに、名作を添えて贈ってみませんか。クリスマスの名作の中でもとくに外国のお話を読むと、ストーリーの面白さだけでなく、クリスマスの風習や食事など、日本とは違ったクリスマスの文化が伝わってきて、クリスマス行事への理解が深まる楽しさがあります。今回はそれぞれに面白さの違うクリスマスの名作を3冊ご紹介します。さし絵や本の装丁の美しさにもぜひご注目ください。
クリスマスプレゼントに添えたいおすすめの名作3選
人間にとって大切なことはなにかを教えてくれる、クリスマスの名作
19世紀のイギリスの作家、チャールズ・ディケンズによるこれぞ王道! のクリスマスの名作です。クリスマスらしい、慈悲の心、親切の心、感謝の心をもつことの大切さを、ゆかいな方法で教えてくれる本書は、世界じゅうで読み継がれています。主人公のスクルージの目を通して、生きるうえで大切にすべきことが深く心に刻まれます。
愛蔵版 クリスマス・キャロル
クリスマスの前夜,強欲で嫌われ者の商人スクルージのまえに,かつての共同経営者の亡霊があらわれる.三人のクリスマスの幽霊の訪問をうけ,過去,現在,未来へと連れていかれたスクルージが見たものは…….恐怖が喜びに転じるクリスマス・ストーリーの傑作を,贈り物にぴったりの美しい造本でお届けします.
どんなお話?
クリスマスイブの夜、けちで頑固で冷酷なスクルージは、甥からの食事の誘いも冷たく断り、募金を求める紳士も追い払い、いつもと変わらないわびしい食事をして家に帰ります。心の底からクリスマスなんてくだらないと思っていたのです。
そんなスクルージの前に、事務所の元共同経営者で、7年前に亡くなったマーレイの幽霊が現れます。マーレイは、生きている間に何も良いことをしなかったために、亡くなった後で重い鎖に縛られさまよい続けているといい、スクルージに同じ運命をたどらせないためにと現れたのです。そして同じ道をたどらないためには三人の幽霊の訪問を受けるようにと助言します。
そうして順番にやってきたのが、第一の幽霊、第二の幽霊、第三の幽霊。
三人の幽霊は、毎晩スクルージにさまざまな風景を見せます。第一の幽霊は「過去」を、第二の幽霊は「現在」を、そして第三の幽霊は「未来」を。幽霊とともに、いろんな時代の「自分」と「自分」を取り巻く人たちの暮らしやスクルージに対する気持ちを目にするうちに、スクルージにどんどん変化が訪れます。
おすすめポイント
このお話の面白さは、なんといっても、あの世からやってくる三人の幽霊。それぞれどんな姿をしているのか、カラーのさし絵が入っていますので、じっくり見てみてくださいね。この三人の幽霊は、他の『クリスマス・キャロル』のお話では、精霊と呼ばれたりもしていますが、さまざまな絵で表現されているので、他の本と比べてみるのも面白そうです。それぞれの幽霊は、いったいなんのためにスクルージのところにやってきたのでしょうか。
人に対して冷酷で、興味があるものといえばお金だけだったスクルージがどんな風に変化していくかが注目どころです。幽霊に対する接し方もどんどん変わっていきます。
第三の幽霊が見せる「未来」には、スクルージの知り合いの人がたくさん出てきますが、スクルージ自身はどこにも見当たりません。はたしてスクルージの「未来」はどんな姿となっていたのでしょうか?
- 『クリスマス・キャロル』のお話は、小学生向けだけでもさまざま出版されていますが、今回ご紹介するのは、愛蔵版です。その魅力は、豪華な造本。白い表紙に金色でひいらぎとタイトルが箔押しされた美しい本が、青くて丈夫な美しい箱に収納されています。本の表紙を開くと真っ赤な見開きが目に飛び込んできます。
小学生向けに発売中の『クリスマス・キャロル』。読み比べてみるのもおすすめです。
やかまし村の子どもたちが見せてくれる、幸せいっぱいの名作
好奇心と元気と、すぐに遊べる友だちと、理解ある大人たちがいれば、春夏秋冬いつだって毎日はこんなに楽しい! ということを教えてくれる、幸福感が溢れ出す物語。クリスマスに、リンドグレーンが描くとびきり幸せなお話をプレゼントしませんか?
やかまし村の春夏秋冬
リーサ,アンナ,ブリッタ,ラッセ,ボッセ,ウッレのわんぱく6人組は,今日も元気いっぱい! クリスマス・パーティーにそり遊び,エープリル・フールにイースター,秘密の冒険に宝さがし……,年中楽しいことだらけ.小さな村にくらす子どもたちの,四季おりおりの物語.新訳・新装丁の「やかまし村」シリーズ,第2弾!
どんなお話?
「やかまし村」三作シリーズの二作目にあたるお話です。やかまし村のわんぱく六人組が過ごす春夏秋冬が、7歳のリーサの目線で語られていきます。お話は、一作目『やかまし村の子どもたち』の最後の章「もうすぐクリスマス」でリーサがシナモンクッキーを焼くのが楽しみだと話したことからつづき、クリスマスのシナモンクッキー作りのお話から始まり、楽しいクリスマスの準備の様子が伝わります。
また、クリスマスが終わった後も、そり遊び、大みそかの夜ふかしなど冬の楽しみがたっぷり。冬休みの読書にもおすすめです。他、イースターやエイプリル・フール、夏休みなど、子どもたちが過ごす15のお話が入っています。
おすすめポイント
やかまし村の六人の子どもたちが一年中、とにかく遊びまくる姿が魅力。読んでいると一緒に体験しているようなワクワクした気持ちが味わえたり、それ知ってる! と楽しい体験を思い出すようなことがたびたびあるでしょう。
リーサの目線で語られていくので、おちゃめなおしゃべりを聞いているかのように無理なく読めます。
さまざまなお話がある中で、一番ワクワクするのはやはりクリスマス準備の様子! たくさんのシナモンクッキーを焼いたり、みんなで森にモミの木を切りに行ったり、持ち帰ったモミの木に飾りつけをしたり……。またクリスマスのごちそうもとっても豪華。そして、クリスマスプレゼントはサンタクロースではなく、子どもたちがトムテンという妖精小人に変装して配るというところもとってもユニークなんです。
- 2018年から刊行が始まった「リンドグレーン・コレクション」。日本では初公開となる原書初版ニイマンのユーモラスなさし絵と新訳で、より子どもたちの手に取りやすくなっています。 キュートでおしゃれな装丁は手にした時に喜ばれそうです。
クリスマスの夜もパディントンは大騒動! わらっちゃう名作
パディントンの行くところには大騒動が巻き起こる! 紳士なのにおっちょこちょいで愛らしいパディントンは、映画にもなったことでさらに有名になりましたよね。パディントンはクリスマスの夜にも大騒ぎ。ゆかいでわらえるこんな名作も子どもたちへの贈り物におすすめです。
パディントンのクリスマス
すべての子どもと同じように、パディントンは好奇心のかたまりです。パディントンの行くところ、必ずや笑いのうずがまきおこります。クリスマスの夜のパディントンの興奮と活躍……。
文庫版はこちら
どんなお話?
パディントンの最初のお話『くまのパディントン』につづく第ニ巻のお話です。パディントンといえば、ロンドンのパディントン駅でブラウン夫妻に出会い、家族の一員として迎えられたくま。しかしパディントンが来て以来、ブラウン家は事件の連続! 好奇心旺盛で一生懸命なパディントンの行くところにはつぎつぎに大騒動が巻き起こります。本作『パディントンのクリスマス』には、7つのお話が入っていて、最後の2つがクリスマスのお話です。
おすすめポイント!
- 巻き起こる騒動の中身が半端じゃない!パディントンが動けば行くところ行くところで騒動を巻き起こし、その大きさが半端じゃないところにびっくりさせられたり、わらってしまったり。なにか起こりそうないやな予感がしたら、ほぼ間違いなく予想が当たるところも面白いんです。
- 毎回、大変な騒動になりつつも、周りの目が温かく、とりわけ一緒に住んでいるブラウン夫妻やお手伝いのバードさんの温かなまなざしに、ホッとさせられます。
- パディントンが愛らしい。紳士なのに、おっちょこちょいで失敗をしてしまうギャップがたまりません。誰かに迷惑をかけてしまったとしても、一生懸命やった結果であり、パディントンにはまったく悪気がないことが分かります。
- パディントンが風邪をひいてしまう場面があるのですが、周りの人たちのパディントンへの愛と優しいまなざしが強く感じられ、温かな気持ちにさせてくれます。
- 個人的なお気に入りの場面は、最後のお話「クリスマス」の章で、パディントンから「みんなあっちの部屋に行っていてほしい」と言われた時に、パディントンの行動を先読みして煙突の中をのぞく場面。すっかりパディントンのペースに染まってしまったブラウン家族の楽しい勘違いにご注目ください。
- ワクワクすることがいっぱいあって、おいしいものもたくさん食べたクリスマスの夜、眠る前にパディントンが感じたのはどんな気持ちだったでしょう? この場面は読んだら忘れられない1ページになりそうです。
合わせて小学4、5、6年生の子どもたちにおすすめしたいクリスマスの名作
いかがでしたか。タイトルは聞いたことがあっても、お話をちゃんと読んだことがないという小学生が実は多いかもしれません。名作というと一見、難しそうな印象があるかもしれませんが、読み始めてみると、長くたくさんの人に愛されているだけの理由が分かります。クリスマスにはとっておきの名作を、そっと手渡してみませんか。
文・選書:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長・児童書主担当)
撮影:所 靖子
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