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現役学校司書が本でCheer Up! 中学生に読んでほしいオススメ本

中学生に贈りたい本!

1年最後の月、12月はなにかとウキウキする季節ですね!
2021年が始まったばかりと思っていたのに、あとわずかになってしまいました。
ちょっぴりおめかしして、クリスマス会! 年越しやお正月には、親戚が集まってお年玉を頂いたり、中学生のみなさんはワクワクしながら12月を迎えることと思います。
 

わが子に、親戚に、本を贈りたいけれど、今どきの中学生って何を考えているか、分からなくて……と思うみなさんに、現役学校司書の私からオススメ本をご紹介します。
 

ご紹介はするのですが……、本選びの際に一番大切なのは、みなさんの「本を贈りたい」という気持ちだと思っています。中学生の頃に読んで心動かされた本や、書店で手に取っていいな!と思った本など、贈る相手のことを考えて選んだご自分の感覚をどうぞ大事になさってください。

なんの手がかりも無いし、最近の本は分からなくて……という方は、このブックリストを読んで、イメージを膨らませていただければと思います。

今回選んだ本は、大人も一緒に楽しめる本ばかりです。

中学生向けのオススメ小説をご覧になりたい方は、前回の連載
「読書の秋! 中学生がどっぷりハマる? 小説特集」
https://style.ehonnavi.net/ehon/2021/11/18_626.html
や、過去の連載
https://style.ehonnavi.net/post-series/29355
も参考になさってくださいね。

中学生に本を贈ろう。 目的別にご紹介!

クリスマスにちなむお話を贈りたいあなたに

クリスマスにちなんだ、感動の小説

舞台は今から60年前のアメリカ南部。両親を事故で亡くしたハニバルは、妻を亡くした祖父のポップと二人で暮らすことになります。人間の成長過程には過ちがつきものだ、ということは、人生を重ねてきた人にはわかること。でも、ハニバルはこれからさまざまな経験を積んでいく9歳の少年です。新しい友達に流されて行動しそうになったり、好奇心と約束との間で揺れ動いたりするハニバルを、ポップは絶妙な距離感で見守ります。出会いと、別れ。生きることと、死ぬこと。善と、悪。真実と、嘘。そうした人生で直面する課題について、ポップはたくさんのお話を通じて、そっとハニバルに気づきを促していきます。この作品を読み進めるにつれ、自分がハニバルと同じ経験をしているような、そんな気持ちになっていきます。

ポップとの暮らしは春から秋へと季節を重ねていき、ラストはクリスマスイブで終わります。人が生きる上で大事なことを、押しつけがましくなく伝えてくれる本作は、まるで、花びらや木の葉や雪が音もなく降り積もるように、心の奥底に温かな気持ちと共に積もっていく感じです。この本は世界中の人に愛され、日本でも朗読劇などの形で多く上演されてきました。多感な中学生の心をきっと動かしてくれる作品です。

短篇小説の名手といわれる、アメリカの作家O.ヘンリーの代表作「賢者の贈り物」を含む短篇小説集です。
登場人物は夫のジムと妻のデラの若い夫婦。二人は互いに愛する人へのクリスマスプレゼントを考えますが、そこには大きな大きな問題が。夫婦はとても貧しくて、プレゼントを買うお金がどこにもないのでした……。

 

クリスマスのお話の定番「賢者の贈り物」を、私は毎年この時期に読み返したくなります。中学生に贈る本を探す前に、まず読んでみるのもよいかもしれません。KADOKAWAから出ている越前敏弥訳のこの文庫は、16の短編で構成されています。最後の「春の献立表」は私の好きな作品です。若い娘の恋する気持ちが可愛らしくて、読むたびにあたたかな気持ちになります。
しかし! O.ヘンリーの作品の魅力は恋の純粋さにとどまりません。アメリカの摩天楼、N.Yを多く描いた彼は、都会的なウィットやひねりを利かせた短編が得意でした。え! そっちで終わるの!? という意外な結末も愉快です。それらの作品に登場するのは、大富豪から、貧乏人、犯罪者、とさまざまで、街をまるごとのぞいているような感覚にもなります。最後にもう一度、「賢者の贈り物」に戻って……賢者のみなさんが、中学生にとびきりステキな本を贈れますよう、お祈りしております!

異性が気になり始めた中学生に本を贈りたいあなたに

ここのところ、未就学児や低学年から性教育を行おうという動きがあり、関連する書籍が多く出版されています。思春期真っ只中の中学生は、一番性が気になるお年頃! 心も体もオトナに近づき、ぐんと成長する中学生は、自分の性や異性のことが気になって気になって仕方ない! 小さいお子さんに性の話をするのは抵抗がなくても、真っ只中の中学生と直接性の対話をするのはちょっとためらわれる……そんな方も多いと思います。そんな時には本を介して伝えてみませんか? 

 

この本は前と後ろの両方から読めるしかけになっています。男子編(ヴィオラのことが好きなストームが主人公)と女子編(ストームのことが好きなヴィオラが主人公)、男女それぞれの気持ちが綴られているのです。この本はグラフィックノベルといって、漫画のようなつくりの本ですが、途中に「すごろく」のページや「賢者たちの名言」ページもあります(日本の恋愛事情に関する部分はちょっと古すぎ! とは思いましたが……)。異性が気になることは同じでも、思考と行動は男女で随分異なります(性について気になるのは男女ともに同じですが、男子は脳の大半を占めちゃいます!)。ガールズサイドとボーイズサイドの両方を読むことで、なかなか気持ちを相手に伝えられないもどかしさ(それは甘酸っぱい若さの象徴ともいえるでしょう)と、思春期の男女の特性を知ることができます。男子も女子も読んで楽しい本です。
 

人生100年時代 大人も一緒に知識をアップデートしたいあなたに

大人になっても使える学びの本を贈りたい

『独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』

机上版の辞書よりずっと分厚くて、800ページ近くもあるこの本の英語タイトルは「Self-Study  ENCYCLOPEDIA」。独学で学ぶことに関する百科事典といえましょう。

ところで「独学」ってなんでしょう。言葉を分解すると「独りで、学ぶこと」。そしてこの本によれば、独学者とは「学ぶ機会も条件も与えられないうちに、自ら学びの中に飛び込む人」のこと。監視や強制が無い学びの自由がある代わりに、学ぶ内容や、方法、モチベーションの維持など、一筋縄ではいかない困難さが常に伴います。そんな孤独で困難の多い独学者のために、この本はあります。「なぜ学ぶべきか(学ぶ計画を立てて実行する)」や、「どのように学ぶべきか(情報収集・整理・吟味)」や「どうやって学ぶべきか(読む・覚える)」について、膨大な具体例や手法を紹介しています。
前書きから「小難しい……」と思っても心配はご無用です。だってこれは独学の百科事典なのですから、必要なときに必要な情報を参照すればよいのです。その時に必要でなかったところも、学びが進むうちに必要になるかもしれません。
現代は、学校時代に得た知識が、数年でアップデートされていく変化とスピードに富んだ世界です。そんな時代に必要なのは「常に学び続けること」。大人も子どもも関係なく、共に学ぶ者としてリビングに常備しておきたい一冊です。

宇宙規模(!)の教養を中学生に贈りたいあなたに

『宇宙人と出会う前に読む本 全宇宙で共通の教養を身につけよう』

この本、宇宙に関する本? と思えますよね。でもふつうの宇宙本とはずいぶん違うのです。「もし、あなたが宇宙人に出会ったら、人間である自分や地球のことをどれだけ宇宙人に紹介できますか?」という問いのもとに展開されている本なのです。この本の巻末には「宇宙偏差値」という独自のチェック表がついています。私が読み始める前にこのリストをチェックしたら、宇宙に関する知識はほぼ0! でした……チーン。でもご安心を! 2回読めば偏差値が15もアップできるように構成されています。
 

「なぜ地球上の生物は左右対称なのか」ということや、「太陽が2つあったら?」という、今まで考えたこともないような問いを考えることで、地球の常識を超えて宇宙を考えることができるのです。この本の最大の魅力は、「宇宙人の社交の場にあなたがいたら?」という設定を最後まで徹底しているところだと私は感じました。ワクワクするような設定を読み物として楽しみながら、宇宙規模の教養を身につけることができます。大人も一緒になって楽しめますよ。

食いしん坊な中学生に贈りたいあなたに

食事で世界一周してみよう!

最近「地球の歩き方」シリーズがアツい! んです。馴染み深い「ガイドブック」のレイアウトはそのままに、世界の指導者や世界の巨像など、幅広いジャンルの本が出されて人気になっています。そしてついに「グルメ図鑑」が登場! 国ごとに食文化の概要や名物料理TOP5やレシピ、日本でその国の料理を味わえるお店のリストなどが紹介されています。食いしん坊(私も食いしん坊ですよ!)にはたまらない本です。先日ブルキナファソ産のドライマンゴーを食べたのですが、この本でブルキナファソについて調べてみたら、日本の納豆のような豆の発酵食品があるんですって。びっくりです。スーパーに書かれている産地や、ニュースで出てきた国名を調べてみるなど使い方は何通りもあります。この本で紹介されている、各国料理を日本で食べられるお店は東京周辺がほとんどです。東京近郊以外の方で各国料理を味わいたい! という人は、次の本の紹介を見てくださいね!

世界の料理を中学生と一緒に作ってみたいあなたへ

『全196ヵ国おうちで作れる世界のレシピ』

この本は、日本のスーパーで買える一般的な食材を使ってできる196ヵ国の料理が紹介されています。196ヵ国ってすごいんですよ。スワジランド、トーゴ、東ティモール、セントクリストファー・ネーヴィス、ニウエ、セントヴィンセントおよびグレナディーン諸島……ね? こうした国の料理を知ることができて、その国の料理が日本の食材で作れてしまうなんてすごいでしょう? 
この本は、クラウドファンディングで資金を集めて出版され、第5回 料理レシピ本大賞2018【料理部門】特別選考委員賞を受賞したそうです。作り手の熱量がビシビシ感じられます! この本で紹介されている料理はどれも美味しそうで、冬休みに毎日作って「食卓で世界一周」を目指したくなります。地球儀や世界地図でダーツのように国を決めて、親子で作ってみるのもよいかもしれません。

将来お金持ちになりたい or 全然経済観念が無い 中学生に贈りたい本

「ニューヨークに行きたいか〜〜〜!」は、スペシャルクイズ番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」の有名なかけ声でした。覚えているオトナの方も多いことでしょう! この本は「億万長者になりたいか〜?」と呼びかけたいような、億万長者になるための入門書です。日本には年始に「お年玉」という子どもたちにとって魅惑のイベントがあります。お年玉と一緒に贈ってはいかがですか?


この本はエミー賞を受賞したアメリカの子ども向け経済教育番組「Biz Kids$」をもとに作られています。英語で同名の金融教育プログラムもあるそうです。まずは、1万円を貯めることを目標に、その元手をどうやって増やして1億円にするか、様々な手法が紹介されています。本文内はドルやアメリカの金融制度を使って説明されているので、中学生はピンとこないかもしれません。「お金を稼ぐ、起業をするという手法をやってみたい!」と読んだ中学生が言ってきたら、ぜひサポートしてあげてくださいね。いつか大企業になってIPO(株式公開)なんてしちゃったときには、贈られた中学生だけでなく、贈ったあなたも大金持ちになっちゃうかもしれません!

スペシャルコンテンツのお知らせです。

スペシャルコンテンツのお知らせです。
絵本ナビのコラムを見てくださっている方に、今回も、スペシャルコンテンツがあります。
「学校図書館ラジオ」を配信しているstand.fm で「音声版、ちどりのオススメ!今月のもう1冊」を聴くことができます♪
下のQRコードからのみ、聴くことができる限定配信です。

QRコードを読み取っていただくか、URLをクリックして聴いてみて下さいね♪

おわりに

今回の特集「中学生に贈りたい本!」はいかがでしたか?
中学生に本を贈ろう!と思われたら、地元の書店さんにも足を運んでください。
私は、年末の書店が大好き! 来年のカレンダーや手帳が並び、家計簿や占いの本のコーナーなどもあって、年末特有のバタバタした感じと、人でにぎわう感じを味わいたくて、毎年12月にはなんども書店に行ってしまいます。
贈る相手と一緒に本選びをするのも、楽しい思い出になりそうです。
贈られる中学生が自分の好きな本を1冊、贈る人が中学生のために1冊、それぞれ選んでもよいかもです。
みなさんが、どんな本を贈られたか、私も興味津々です。
下記のアンケート欄で教えてくださいますと嬉しいです。

山下ちどり
 

現役学校司書。
音声メディアstand.fm「学校図書館ラジオ〜本とともにごきげんな毎日」のパーソナリティ。
比較的新刊のお気に入り本や、学校図書館、出版周辺のトピックスなどを配信している。Twitter @nagisalib

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