『モチモチの木』『花さき山』など、現代切り絵作家の第一人者・滝平二郎さんの絵本
切り絵作家として、木版画家として、数々の名作を世に生み出してきた滝平二郎さん。
独自の切り絵の手法を用いて、日本の四季折々の懐かしい風景や人の生を描き続けました。
滝平二郎さんの手によって生まれた、世代を超えて読み継がれる名作の数々をご紹介します。
滝平二郎さんプロフィール
滝平二郎(たきだいらじろう)
1921~2009年 茨城県生まれ。1968年、第6回国際版画ビエンナーレ展招待出品。1970年から朝日新聞日曜版に、独自のきり絵を掲載して好評を博している。日本美術会委員、児童出版美術連盟会員。代表作に「八郎」、「三コ」(いずれも福音館)、「花さき山」、「モチモチの木」(岩崎書店)がある。
まずは読んでほしい、滝平二郎さんの代表作
滝平二郎さんと言えば、まずは児童文学作家である斎藤隆介さんとのコンビによって生み出されたこちらの2つの作品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
小学校の国語の教科書にも採用され、発刊から50年以上経った今でも多くの方の心を揺さぶる絵本です。
今こそぜひ読んでほしいこの2つの作品を、読者の方の感想と共にご紹介します。
■読者の声
勇気とは?
私は、この話を教科書で読みました。
もう一度読んでみたくなり図書館で手にとりました。
挿絵が本当に素晴らしいです。深く刻まれたじさまのしわ、おどろおどろしいモチモチの木の枝ぶり、ひがともったモチモチの木の美しさ。
ゆっくり味わいたいです。
臆病な豆太は、5歳になるのに、夜一人でトイレにいけません。豆太に自分を重ね、安心する子供もいると思います。
じさまが、モチモチの木に火がともる日があり、それを見ることができるのはたった一人の勇気ある子供だけだ、という話をしてくれました。
その晩、じさまが腹を痛がってうなっています。
豆太は、必死で医者を呼びに夜の道をはだしで走りました。医者も、わけを聞き、豆太を背負いじさまのところまで来てくれました。その時モチモチの木にひが付いているのを豆太は見ました。
じさまは、豆太が、勇気のある子供だったから、モチモチの木に火がついたんだと、言いました。
じい様の愛情とそれに立派に答えた豆太の勇気が、それは美しいモチモチの木を見せたのだと、思います。
豆太の行動を見て、自分にもできるかも、という気持ちが読んでいる子どもに沸いてきたらいいなと思います。
(ほかほかぱんさん 40代 ママ 群馬県)
独特な世界が、新鮮かも
滝平二郎さんの版画の世界が独特で、他の絵本にはない独特の世界観があります。その版画ならではの、黒の線がきつめの絵が、子供の頃には、随分と怖く感じられたのを覚えています。
現に、娘もちょっと怯えながら、話に聞き入っておりました。
でも、このちょっと暗い感じの絵が、このお話にはぴったりです。特に、モチモチの木がパッと明るくなる場面が、対比的に素晴らしく美しく幻想的で大好きです。
昔、私の田舎のおじいちゃんの家は、トイレが外にあり、確かに夜のトイレはとても勇気がいりました。街燈などない田舎の夜は、本当に真っ暗で怖かったものです。だから、豆太の気持ちは、私にもよくわかります。
また、じさまの優しさも、すごく心に染みてきます。
親を早くに亡くしてしまった孫が、殊更かわいくて仕方がないのでしょう。
そのじさまの優しさは、臆病者の豆太の中にも、やはり生きているのでしょう。
自分が強くなくては、人に優しくして上げられない。
だから豆太も、ほんの一晩、じさまのために強くなりました。きっと、豆太なら大人になる頃には、父親に負けないくらい強い男になることでしょう。
とっても、じーんとくる優しいお話です。
(はなしんさん 30代 ママ 千葉県 女の子5歳、男の子3歳)
名作であり、芸術!
私が子どもの頃からある、この作品。
記憶の中にあったのは、暗くて大きくて、どこか恐ろしいモチモチの木のシルエット。
話の内容は忘れてしまっても、この木の存在感と名前だけは、決して消えることがありませんでした。
何十年も記憶から消えることのなかった切り絵の美しさ、うまく捉えた子どもの心理、改めて感動しました。
お話も絵も、名作であり、芸術です!
絶対に手元においておきたい一冊です!!
(しゅうくりぃむさん 40代 ママ 大阪府 女の子8歳)
■読者の声
可憐で力強い花
表紙の絵を見た瞬間、さっと絵本を後ろ手に隠し、「この本の作者はだ~れだ?」と、嬉しそうに聞く娘。
そして、
「難しい漢字は読めないんだけどね、『モチモチの木』と『ふき』をかいた人!」と、満面の笑みで教えてくれました。
「モチモチの木」は、娘が小さい頃からずっと大切にしている絵本。
いつもどこか心の奥深いところにあって、時々思い出しては、読んでみたくなる・・・、娘にとって、そんな本なのだと思います。
花さき山に咲く一面の花は、モチモチの木のように、はっと息を呑むほどの光り輝くまぶしさはないけれど、一輪一輪が、可憐に、力強く咲いているのが印象的です。
―やさしいことを ひとつすると ひとつ さく―
「今日もきれいな花をたくさん咲かせてくれたね」と、娘に言うと、ちょっとだけ照れくさそうに、にこっと笑って、「うん」と答えてくれました。
(ガーリャさん 40代 ママ 静岡県 女の子8歳)
ロングセラーです
小さい頃に読んで、影絵の様な絵に強い印象を受けたことを覚えています。
大人になって、じっくり読み返してみると「なんて深い話なんだろう。」と思い、あらためて絵をじっくり見てみると話とすごく調和してて、ロングセラーというのはこういうものなんだな~って、感動してしまいました。
何度か、娘の小学校では夏休み等のお休み前には3クラス合同で変わった形で読み聞かせをしてます。とレビューに書き込んでますが、私の受けた感動を是非、子どもたちにも見せたいなあと思い、夏休み前の読み聞かせに影絵として実現させたいとおもいます。
(かおりせんせいさん 30代 ママ 沖縄県 女の子7歳、男の子4歳)
舞台を見終わった時のような
有名な絵本だと思います。
はじめて全体を読んでみました。
10歳のあやが、山菜取りに夢中になっているうちに迷い込んだ奥深い場所でやまんばに出会ったと言うお話ですが、薄暗く美しい、幻想的な舞台での、独り芝居を見ているような芸術的な雰囲気を感じる絵本でした。
咲き続けている花たちは、人が犠牲になり、善行をした時の勲章のような感じを受けました。
(capellaさん 60代 じいじ・ばあば 大阪府)
『花さき山』に出てくる2つのお話
『花さき山』のお話の中に、「ある人が犠牲となりできた山」が2つ、登場します。
これは、斎藤隆介さんと滝平二郎さんのコンビで生まれた2つの作品がモチーフとなっています。
『花さき山』の理解を深めるこの2作も、心が震える名作です。
こちらもあわせてぜひご覧ください。
秋田を舞台に、本当の強さと優しさとは何かを問う名作
昔、秋田に八郎という名の山男が住んでいました。
八郎は樫の木ほどもある大男でしたが、もっともっと大きくなりたいと願い、どんどん大きく育ち、山ほども大きくなりました。
ある日八郎は、村の田んぼが荒れた海に飲み込まれるのを必死で防いでいる村人たちを助けようと、渾身の力で山を動かし、海の中に放り込んで、海の水を堰きとめます。
村の百姓たちが喜び感謝したのも束の間、怒り狂った海が沖の水まで集めて津波となって村に押し寄せてきます。
八郎は村を守るために海に入り、自らが堰となって波を食い止めます。
波と闘い、海に沈みながら、八郎はなぜ自分がこれまで大きくなりたかったのかを悟ります。
秋田弁で描かれた文章に、滝平二郎氏の力強い版画が実によくマッチしています。
どんどん大きくなりながらも、もっと大きくなりたくて、浜に出ては海に向かって叫んでいた八郎。
しかし自分でも、なぜ自分が大きくなりたいと思うのかがわからなかったのです。
村の人たちを助けたい、泣いてる子どもの力になりたい、そのために海に沈んでいく八郎。
自分の生まれてきた意味を知った八郎の表情はすがすがしく、その叫びは私たちの胸の奥に響きます。
「わかったあ! おらが、なしていままで、おっきくおっきくなりたかったか!
おらは、こうしておっきくおっきくなって、こうして、みんなのためになりたかったなだ、んでねが、わらしこ!」
自分は何のために生まれてきたのか・・・そう悩んだことのある方なら、八郎の悟りに共感できることでしょう。
大人も子どもも、少し自信を失ってしまったとき、八郎から力をもらえるかもしれません。
■読者の声
八郎潟伝説を秋田弁で
力強い表紙にまず惹かれます。
子どもの頃読んだのでしょうか、少し記憶に残っています。
秋田の山男、八郎は大きくなりたいという衝動に駆られます。
海に向かって「うおーい」と叫ぶ姿に迫力があります。
やがて、大波の被害を嘆く男の子に心動かされ、海に立ち向かう八郎は、自らの運命を悟るのです。
秋田弁がやや難解ですが、味わい深いです。
やはり声に出して読み聞かせする絵本ですね。
滝平さんの絵がとても迫力的です。
(レイラさん 30代 ママ 兵庫県 男の子12歳、男の子9歳)
臆することなく東北弁!
方言で書かれた絵本はたくさんありますが、八郎ほどありのままの方言で書かれている絵本も珍しいかも知れません。
斎藤隆介さん・滝平二郎さんのコンビですが、ほかの作品に比べて語尾や話し言葉に方言が余すことなく使われています。
だからと言って読みにくいという訳ではなく、東北に馴染みのない私でもきちんと意味はわかるし、秋田の八郎潟を語ったこの物語の世界にどっぷりとつかることができます。
全ページモノクロの画調も、この作品の良さです。
モノクロであるからこそ、八郎の心優しさ、力強さ、そして東北の空気感が表れているのだと思います。
(ドラゴンキッドさん 30代 ママ 東京都)
■読者の声
雄々しい創作民話
滝平さんの作品の中でもかなり雄々しい絵と、斎藤さんの少し重く感じられるお話で、とても重厚な作品だと思いました。
貧しい村の水のみ百姓の三男として生まれた三コ。
どうして巨人になったのかはわからないが、村のことを考え、オンチャたちに情をかけ、自らの命で村を守る守護神のようになった。
長男だけが総領として尊まれ、後はごくつぶしとして差別化されてオンチャと呼ばれて、歴史の暗部を語っていると思いました。
山を持ち上げたり、持ち上げた山が口をきいたり、スケールの大きさを感じました。
読み聞かせ本としては骨太です。
(ヒラP21さん 60代 パパ 千葉県)
パワーがわく本
4歳の娘には難しかったかもしれない。
でも父親はとても感動した。
三コのパワフルな行動力に、優しさに、リーダーシップに。
クライマックスでは、いつの間にやら音読する声もでかくなってしまう。
「あ。自分の声、でかくなってんな。」と気づくものの、ますます声は勢いを増していく・・。
迫力ある文章、ダイナミックな切り絵、本の世界に引き込まれます。
沈んだ疲れた心も、この本を読めば、メキメキと力がわくと思う。
(NARIGEさん 30代 パパ 東京都 女の子4歳、男の子1歳)
その他の滝平二郎さん×斎藤隆介さんのコンビ作
斎藤隆介さんとのコンビによって、今紹介した作品の他にもたくさんの名作が生み出されています。
読者の方から寄せられた感想と共にご紹介します。
■読者の声
切り絵
切り絵にとても険しさ、厳しさ、切なさ、優しさが伝わってきました。
大男の大太郎のふきを思う切ない気持ちが温かく、ふきのことは永遠にお友達として心の中に行き続けると思いました。青鬼の仇を討つために何日もまんまも食べないし、眠りもしないで待っていたふきの根性は並大抵なものでないと思いました。おとうの仇を幼いふきが討とうと決心したのを一番に止めたいと思っている大太郎であったと思うから、止められなかったのも後悔していると思うと切なくなります。
(押し寿司さん 60代 じいじ・ばあば 愛知県)
■読者の声
『モチモチの木』を習った子どもに読みました。
国語の教科書で『モチモチの木』を習った3年生に読みました。
モチモチの木はなんだか少し怖いような気がするお話ですが、こちらはオニが出てくる割に面白い結末になるお話でした。
最後のオニからソメコのお父さんに宛てた手紙には笑ってしましまいた。
「モーイイカイ モーイーカイ」と催促してくるソメコに「マーダダヨ マーダダヨ」と言いながら立ったまま手紙を書くオニ、想像するだけで可笑しいです。
滝平二郎さんの絵がとても素敵です。
(Sprashuterさん 40代 ママ 熊本県 男の子9歳、男の子6歳)
■読者の声
友情の物語り 作者の友情と重ねて
ユとムの二人の友情 全く違う二人が 親友なわけは?
このお話の作者の斉藤隆介氏の最後の作品だったとは
最後の小西氏の後書きを読んではじめて知りました
二人の作品は 花さき山・ モチモチの木・半日村・ ひさの星など
感動する作品をたくさん読みました
二人のコンビの作品のすばらしさはぐっと心に残るのです。
このユとムはなんとすばらしい友情なのでしょう 人のことを我が事のようによろこべるなんて・・・・
ユのことを心から喜んでいたム
そして、ある日 村を襲ったヒ おそろしい 虎ともヒョウとも違う生き物それをしとめたのは ム かれは 力比べではユのかなわなかったのに
いざ 狩りとなると すごい力を発揮するのに驚きました
この話は まさに 作者たちの友情が込められていたとは
後書きに感動しました!
しかもこの話は東京オリンピックの時に書かれたとは
記念すべき作品ですね
(にぎりすしさん 60代 その他の方 京都府)
滝平二郎さんが手がける名作
滝平二郎さんが名作や昔話、世界の民話を手がけると、こんなにも個性的で心を揺さぶる作品になります。
時を超えて未来まで読み継いでいきたい名作をご紹介します。
■読者の声
ユーモアあふれる挿絵
「さるかに合戦」のお話は、日本の昔話の中でも特に好きなお話です。
たくさんの作家さんが絵本にしていますが、こちらは『モチモチの木』や『花さき山』でおなじみの、滝平二郎さんのイラストで楽しめます。
こちらは『モチモチの木』のような木版画とは違いますが、登場人物の表情がユーモアたっぷりに描かれています。
遠目にも聞くので、読み聞かせにもぴったり。
松谷みよこさんの文章も、とっても読みやすいです。
(クッチーナママさん 40代 ママ 東京都 女の子17歳、女の子14歳、男の子11歳)
ちからたろうの力強さが心に伝わる紙芝居
■読者の声
民話ならではの楽しさ
そらをとぶふねを作ってお城に参上したものがお姫様と結婚できると王さまがいったので出かけます。
そして森で不思議なおじいさんに会ってそらとぶふねの作り方を教えてもらって完成します。
そこからがまた面白くって旅の途中に出会った人を仲間にして連れていけというのです。
その予言通りに次々と面白いおじいさんが現れてどんどんと仲間にしていきます。
仲間を増やすたびにその後の展開を想像しては興味津々でした。
とっても面白いお話です
(らずもねさん 30代 ママ 東京都 男の子9歳、男の子7歳)
■読者の声
きょうだいが七夕の星になるお話です。
日本で俗に伝えられている恋人同士の七夕の物語よりも、ずっと心に残るお話でした。
この物語で、牽牛星は兄の白光。
淑女星は妹の紅華。
きょうだいが七夕の星になるお話でした。
物語の舞台は中国の華北地方に伝わる伝説……でしょうか(?)
作者は「橋のない川」の著者:住井すゑさんです。
絵は滝平さんで、独特の木版画が物語にあっていて味わい深かったです。
話もいいし、滝平さんの絵ですから遠目もきくので、ぜひ子どもたちに紹介してみたいと音読して時間を量ったら、(早口でやって)15分以上ありました。
読み聞かせで小中学校にもっていくのは、時間的に難しそうです。
やや昔風の言葉遣いなども出てきますが、とても素敵な物語でした。
興味のある方はぜひ読んでみてください。
また、他の七夕の絵本を紹介して、こういうのもあるよってブックトークしてくるのはありだと思います。
(てんぐざるさん 40代 ママ 埼玉県 女の子21歳、女の子16歳)
小学生以上のお子さんにもおすすめしたい作品
絵本を卒業した小学生のお子さんには、全集になったこちらの作品をぜひどうぞ。
1つ1つは短い作品が収録されているので、本を読むのがあまり得意ではない子にもおすすめです。
朝読にもぴったりです。
『モチモチの木』『花さき山』を英語でも楽しめる!
名作『モチモチの木』『花さき山』を、英語でも読んでみませんか。
日本在住の詩人・随筆家・翻訳家であるアーサー・ビナードさんが英語に翻訳しました。
日本語原文も巻末に掲載されている「おトク」な絵本です。
50年のときを越えて読み継がれる不朽の名作を、アーサー・ビナードさんが英語訳!
豆太は、峠の猟師小屋にお爺さんと2人で住んでいる。夜中に小屋の外におしっこに行くのが怖くて仕方がない。小屋の前にある大きなモチモチの木が、夜になると、怒って「オバケェ?!」っておどかすからだ。
ところが、ある晩、お爺さんは腹痛で身体を丸めてうなり始めた。豆太は、医者を呼ぼうと、夜中、飛び出して峠の坂道をふもとへと駆け出していった!
小学校の国語教科書に掲載されているロングセラー絵本を、アーサー・ビナードが訳した英語版。
山菜をとりにいって道に迷い、山んばに出会った、あや。山には一面のきれいな花。やさしいことをすると美しい花が一つ咲く。名作絵本の英語版。日本語原文を巻末に掲載。
これからの時代を生きる子どもたちにぜひ読んでほしい
50年以上の時を超えて読み継がれる、滝平二郎さんの名作たち。
優しさとは何か、強さとは何か、生きるとは何か……
滝平二郎さんの詩情豊かな切り絵や木版画を通して、今も私たちに問いかけているようです。
これからの時代を生きる子どもたちにも、ぜひ読んでほしいと願います。
気になる作品から、ぜひ手に取ってじっくりとその世界を堪能していただければと思います。
編集協力・執筆:洪愛舜(ほんえすん/ライター・編集者・絵本作家)
この記事が気に入ったらいいね!しよう ※最近の情報をお届けします |