【今週の今日の一冊】6月20日は「世界難民の日」。子どもたちの視点から語られる物語
2022年6月20日から6月26日までの絵本「今日の1冊」をご紹介
6月20日は「世界難民の日」。戦争や迫害により故郷を追われた人の数は世界で1億人を越えたと言われ、今も増え続けています。彼らへの保護と援助に対する世界的な関心を高めるために国連総会が定めた国際デーです。
安全な地域に逃れたからといって快適な生活を送れる保証はなく、子どもたちにとってもそれは同じ条件なのです。私たち日本人も無関心でいられる時代ではなくなっています。
今週は、子どもたちの視点を通して描く物語を中心に、難民の生活の現状を考えるきっかけとなるような本をご紹介します。
6月20日 時代や国を超え、同時進行で語られる3人の子どもたちの物語
月曜日は『明日をさがす旅 故郷を追われた子どもたち』
ナチスドイツから逃れるユダヤの少年、カストロ政権下のキューバを出てアメリカに向かう少女、内戦下のシリアからヨーロッパをめざす少年。故郷を追われて旅立つ3人の物語が、時代や国を超えて同時進行で語られる。彼らの運命はやがて思わぬところで結びつくことに……。命の危険にさらされ恐怖と闘いながらも、明日への希望を見失わず成長していく子どもたちの姿を描く。歴史的事実を踏まえたフィクション作品。
6月21日 「このまちをでていかなくてはならないの」
火曜日は『なんみんってよばないで。』
「このまちをでていかなくてはならないの」とお母さんがいいました。
そうなったら、あなたはどうしますか。
何を持って、だれに別れを告げて、どんなふうに移動していくのか。
安全に暮らせなくなった故郷を去り、難民として逃れる親子の物語。
遠く逃れた先でもなくしたくないものとは何か、ぜひ大切な人と一緒に見つけてください。
小学校低学年から読める、社会問題を知るための入門絵本。
難民支援協会推薦!
読者の声より
難民として、異国に渡った子どもについて考える本です。 やっとの思いで移り住んできた子を、「難民」という言葉でひとくくりにしないでほしい、どの様にして移り住んできたかをわかってほしい、という本でしょうか。 当たり前の生活を失って、どんな苦労をしてきたか、一緒に考えたい絵本です。
(ヒラP21さん 60代・パパ )
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6月22日 心の中にまで入り込んでどこまでもつきまとう戦争。振り払ってくれたのは…
水曜日は『せんそうがやってきた日』
窓辺に花が咲き、お父さんは弟に子守唄をうたい。お母さんは私の鼻にキスをして、学校まで送ってくれ。火山のことを勉強した後に、鳥の絵を描いた。そして、ランチタイムのすぐあとに……
せんそうがやってきた。
せんそうは校庭の向こうからやってきて、全てを吹き飛ばし、私の家があった場所を黒い穴にし、誰もかも連れていってしまった。
小さな女の子に襲いかかった恐ろしい出来事は、そこで終わってはくれません。せんそうは、どこまで逃げても追いかけてくるのです。遠く遠くまでやってきて、やっと見つけた家の門は閉じ、学校に入ろうとするとこう言われるのです。
「あなたの場所はありません」
2016年春、イギリスで、3000人の孤児の難民の受け入れが拒否され、同じ頃、座るイスがないという理由で難民の女の子が学校への入学を断られました。そのことを聞いて作者が書いた詩が、この絵本の元になっているのだそう。イスは、全てを失い行き場のなくなった子ども達との連携のシンボルとなったのです。
世界には2,250万人という数の難民がいます。そして、その人たちが誰一人として望んで難民になっているわけではないのです。どんな子どもたちにも未来を夢見る権利があります。安全な場所にいる私たちにできる支援はあるのでしょうか。
だけど、当たり前だと思っていた日常がある日突然壊される、この悲しみと恐ろしさは絵本を通して痛いほど伝わってきます。ひとりぼっちになってしまった女の子の絶望感に打ちのめされます。今自分が何を感じ、どんなことを考えたのか。絵本を読んだ後にその感情をしっかり受け止める。子どもたちには、そんな力がきっとあるのだと思います。
世界がどこへ向かっていくのか、しっかりと見極めていかなければならない今。大事なヒントとなる1冊なのかもしれません。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
6月23日 子どもの視点から難民生活の記録を描いたグラフィック・ノベル
木曜日は『オマルとハッサン 4歳で難民になったぼくと弟の15年』
こんにちは、オマルです!
ぼくはソマリアで生まれました。
内戦でお父さんを殺され、お母さんとは生き別れになりました。
そして、4歳のとき、まだあかちゃんだった弟のハッサンとともにふるさとを離れ、ケニアの難民キャンプに行きました。
これは、15年にわたる難民生活の記録です。
ぼくの子ども時代は失われたも同然でした――
「本書は、難民の子どもたちが不遇な環境の中でも夢と希望を捨てず、夜空に輝く星を目印に行く旅人のようにひたむきに歩き続ける姿を描き出します。その姿から私たちは多くを学ぶでしょう」(監修者より)
全米図書賞児童図書部門最終選考ノミネート(2020年)
「New York Times」優良児童書25選(2020年)
「TIME」年間ベストブック(2020年)
「School Library Journal」年間ベストブック(2020年)
「Kirkus」優良児童書(2020年)
Amazon 最優秀児童書賞(2020年)
ニューヨーク公共図書館子ども向けベストブック
ジェーン・アダムス児童書賞最終選考ノミネート
全国英語教育者協議会シャルロット・ハック賞受賞
6月24日 新たな家をさがしもとめ、前を向く子どもたちと家族の姿を写真で
金曜日は『世界に生きる子どもたち 私はどこで生きていけばいいの?』
シリーズ《世界に生きる子どもたち》第二弾
だれにでも住む家が必要です。
子どもたちには、安全で、幸せに暮らせて、家族と食事ができて、
おもちゃで遊べて、なんの不安もなく眠りにつける場所が必要なのです。
しかし、世界には、危険がせまり、家を離れざるをえなくなった人たちがいます。
2016年末の時点で家を追われた人の数は6,560万人といわれています(国連UNIHCR協会*ホームページより)。
戦争や紛争のために、多くの子どもたちとその家族が難民になりました。
彼らの人生は過酷で不安に満ちています。
それでも、ときには笑い、遊び、友だちをつくり……
どこかで、誰かが、自分たちを新しい家へと温かく迎えてくれるだろうという希望を胸に、生きています。
本書はこうした難民の状況を知り、問題を考えるきっかけとなることを目指して作られた写真絵本です。
新たな家をさがしもとめ、前を向いて生きている子どもたちと家族の姿をとらえています。
*UNHCR…国連難民高等弁務官事務所
(総ルビ/対象学年:小学校中~高学年)
6月25日 「シリア難民」という大きな国際問題を、純粋でひたむきな子どもの目線からとらえた長編作品
土曜日は『5000キロ逃げてきたアーメット』
ある日、主人公アレクサのクラスに、ひとりの男の子が転入してきました。その子は、だれとも話さず、笑わず、遊びません。休み時間になると、ふいと姿を消してしまいます。
アレクサは、どこかさびしげな転校生が気になります。
親友3人といっしょに、彼と友だちになろうといろんな作戦を試しますが、なかなかうまくいきません。
次第に、転校生の様子をふしぎに見ていた生徒たちの間で、
「英語が話せないのかな?」「前の学校で暴力問題を起こしたんだよ」「病気があるから隔離されるんだ」とうわさがとびかい、ついにはいじめまで起こります。
実は、彼がそんなふるまいをするのには、大きな理由がありました。彼は、中東シリアから、はるばるイギリスのロンドンまで逃げてきた難民だったのです。そのことを知ったアレクサは、彼のために色々と行動に移します。そしてそのアクションは、ついには大きな国際問題にまで発展することに……
カーネギー賞ロングリストノミネート
ブランフォード・ボウズ賞ノミネート
ウォーターストーンズ児童文学賞総合賞受賞
ブルーピーター文学賞受賞
6月26日 いつかきっと、安心してくらせるところへ、たどりつけますように
土曜日は『ジャーニー 国境をこえて』
戦争がはじまり、なにもかもがめちゃくちゃになった――。安全な国をめざして森を抜け、海を渡り、母と子のながいながい旅が続きます。子どもの目線で語られる、心を揺さぶる物語。グラフィカルなイラストレーションが美しく、発表以降たちまち20ヵ国語に翻訳された注目作です。
◆2017年アムネスティCILIP特別賞(ケイト・グリーナウェイ賞)◆全米イラストレーター協会ゴールドメダル◆エズラ・ジャック・キーツ賞次点◆第24回いたばし国際絵本翻訳大賞(英語部門)受賞作品◆アムネスティ・インターナショナル日本 推薦◆全国学校図書館協議会選定図書◆日本子どもの本研究会選定図書◆JBBY「おすすめ! 世界の子どもの本2019」選定◆
《推薦の言葉》
「ただいま」といえる故郷はありますか?
戦争が奪うのは命だけじゃない、笑顔も居場所も奪った。
それでも彼らは、そして私も生きようとしている。
――サヘル・ローズさん(タレント・女優)
読者の声より
読みながら、また読み終えた後もドキドキしました。具体的な戦争の悲惨さを表現したわけではないけれど、
恐怖が忍び寄ってくる様子が絵やお話から伝わってきて、もし、私がこの母親だったらどうするだろう?と、ハラハラしながら読みました。
移民問題は簡単なものではないかもしれませんが、もしこんな不安で逃れてきた人たちがいたら、大丈夫だよと手を差し伸べる人になれたらとは思いますが、実際は難しいのかもしれません。
(まことあつさん 30代・ママ 男の子7歳、男の子4歳)
いかがでしたでしょうか。自分ごととして読んでみると、途端にその心情が伝わってきます。無理せず、少しずつでも読み進められたらいいですよね。
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