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未来の今日の一冊 ~今週はどんな1週間?~

【今週の今日の一冊】「雨の日って素敵だね」新刊もたっぷり!しっとり味わう雨の絵本

じわじわっと続く雨。晴れていたかと思ったら急にふりだす雨。霧雨のようなしっとりした雨。私たちは毎年、梅雨の季節から夏にかけて色々な雨とつきあっていますよね。その景色も味わう感情もさまざま。だからこそ「雨」をテーマにした絵本の表現は豊か。毎年、素晴らしい雨の絵本がたくさん発売されています。

今週は、その中でも青い色が印象的な「しっとり味わう雨の絵本」を、新刊を中心にご紹介します。

2022年6月27日から7月3日までの絵本「今日の1冊」をご紹介

6月27日 雨の日って素敵だね! 旅のむかえにきたのは…?

月曜日は『りすとかえるのあめのたび』

りすとかえるのあめのたび

りすとかえるは、旅をする約束をしていましたが、りすはこんな雨ふりじゃ旅にはいけないと思っていました。ところが…「雨の日って素敵だね! こんないい日に旅にいけるなんて!」とかえるがりすをよびにきたのです。…雨の中、舟を出すふたり。なにげない1日が愛おしくなる、りすとかえるの雨の日のおはなし。

6月28日 つまんない!と思っていた雨の日に起きた不思議な冒険

火曜日は『ふしぎなかさやさん』

ふしぎなかさやさん

「ポツリ」遊びに行こうとレミがドアをあけると、ほおに雨のしずくが。でもレミはかさをささずに家を飛び出します。とおりに出ると急に強くなる雨。「あめなんて、だいっきらい!」そう叫んだその時、「あめ、おきらいですか?」とかさやさんの奥から声が聞こえてきます。

お店にはレースやみずたま、花柄やストライプ、色とりどりの傘が並んでいました。「いらっしゃいませ」と声をかけたのは、1匹のくろねこ。
「こちらの新作はいかがですか?きっと雨が好きになりますよ」
言われるがままにレミが鮮やかな緑色の傘を開くと、あたりは緑のしずくが飛び散る深い森に変わります。「おつぎはこちら」黄色い傘を開くと、そこには砂漠の宮殿が。赤い傘をさすとお花畑、ブルーの傘をさすと石造りのお城……。つぎつぎにねこの差し出す傘を広げると、あたり一面が傘の色に変わり、美しい雨模様が映し出されるのです!

作者のたなか鮎子さんは、パリ在住の作家さん。銅版画による神秘的な絵づくりに定評があり、『クリスマスマーケットのふしぎなよる』(講談社)『ルナのたまごさがし』(フレーベル館)などの作品があります。

傘の色ともようが景色と繋がる、夢のようなおはなし。傘をパッとひらく瞬間のあのワクワク感をたくさん味わえる作品です。雨が好きになること間違いなしの1冊。ぜひ手にとって、雨の美しさを堪能してください。

(出合聡美  絵本ナビライター)

6月29日 甘くてとろける…こんな雨だってあっていいよね!?

水曜日は『あまやどりのホットケーキ』

あまやどりのホットケーキ

憂鬱な雨の印象が180度、いえ270度くらい変わる雨の日におすすめの絵本の登場です。

急な雨。女の子が公園のあずまやで雨宿りをしています。目の前の池を見つめていると、ザーザーと降っていた雨が次々とくっついていろんな色に光り出し、なんとそこに、大きなふわふわのホットケーキが出現!

雨が降れば降るほど、ホットケーキもどんどんと高くなり、なんとバターとシロップもふってきて……! これはもう、食べるしかない!!

作者の尾崎潤さんが「やさしい雨があったり、激しい雨があったり。ならばこんな雨があってもいいんじゃないかな、いや、あるかもしれないぞ」と想像しながら制作した本作。尾崎さんの描く透明感のあるイラストは、甘くて魅惑的。バターとシロップたっぷりの5段重ねホットケーキは、見るだけで目がとろけてしまいます。

雨を見るたびにふわふわのホットケーキが食べたくなって困っちゃうかも!?

(出合聡美  絵本ナビライター)

https://www.ehonnavi.net/ehon/175002/%E3%81%82%E3%81%BE%E3%82%84%E3%81%A9%E3%82%8A%E3%81%AE%E3%83%9B%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%AD/

6月30日 雨の日の少し切なく優しいファンタジー。

木曜日は『青い花』

青い花

うら通りに、傘の修理をしている小さな「かさや」がありました。
主人の若者は、山ほどの傘のなかに座って、毎日せっせと仕事をしていました。
ほそいほそい雨のふる日、かさやは、小さな女の子が垣根にもたれてぽつんと立っているのを見つけます。

「かさをもってないのかい」

かさやは女の子と、町へ傘にはる布を買いに行き、海や空の色に似た青い傘を作ってあげました。

その日から不思議なことが起こります。かさやのもとへ、町中の女の子から青い傘の注文が舞い込んだのです。大忙しになったかさやは――

教科書にも掲載されていた安房直子さんの名作童話『青い花』。
本書は、パステル画で描かれていた1983年刊行の絵本(岩崎書店刊)を、南塚直子さんが銅版画で全面的に描き直して出版されたものです。
銅版画で描き出される雨脚の線、鮮やかに画面に開く傘の美しいこと! 物語を包み込むような色彩に見入ってしまいます。
かさやが女の子とデパートでクリームソーダを飲むシーンも、ぜひ実際に手にとって眺めてほしい場面のひとつ。最高においしそうです……!

雨の日の少し切なく優しいファンタジー。
大切なことは何なのか、いつまでも心に残る物語です。

(掛川晶子  絵本ナビ編集部)

7月1日 雨がふってくる前に届けなきゃ! ズボンさんは…

金曜日は『へやぼしズボンさん』

へやぼしズボンさん

じっとりへやぼしのズボンさん。むにゃむにゃあくびをしながら、目を覚まします。晴れているなら外に干してくれたらよかったのに、部屋の中で留守番です。するとラジオから天気予報。

「昼すぎからは、ふたたび雨が降るみこみです」

大変、お友だちとのランチに出かけたサラさんにカサを届けてあげないと。ズボンさんは乾きかけのからだを起こし、カサを持って家を出ます。……ズボンさんだけで、本当に行けるのかしら?

このお話の主人公は、ズボンさん。しかもへやぼしの乾きかけ。なんてインパクトのある設定なのでしょう。想像するだけで、なんだかじめじめした気分になってきます。けれど、ズボンさんはとても明るく行動派。いつものさんぽ道の途中にはお友だちもたくさんいます。雨が降る季節に美しく咲くあじさいや、カエルやカタツムリも元気に登場。読んでいるうちに、気分はすっかり晴れやかに。

ちょっぴり奇妙なズボンさんの冒険。作者は愉快なお話とあたたかみのある絵が魅力の絵本作家、たごもりのりこさんです。ズボンが自分で歩いたりお昼寝したりする様子を存分に楽しんだあとは、自分の厚手のズボンもしっかり乾かしてあげてくださいね。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

7月2日 「雨の日にみんなで雨やどり。これ、最高のぜいたくです」

土曜日は『あめかっぱ』

あめかっぱ

「きょうは ピクニックびよりですよ」

お留守番をしているなおちゃんに話しかけてくるのは、かっぱ。このあたりでは、雨の日にお留守番をする時は、かっぱと一緒に過ごすのです。なおちゃんは驚いて聞きます。

「あめなのに?」
「あめだから!」

のりで巻いたおにぎりを持って、二人でお出かけです。人通りの少ない道を行き、やってきたのは緑の生い茂る林の中。おやつとふきのかさを買ってもらい、奥へと進むと目の前に広がったのは大きな広場 。真ん中には池があり、ほかの子どもたちもたくさん来ています。どんどん大きくなっていく池にやって来たのは船。「あめがたくさんふらないと辿り着けないところ」に向かうのです。そして着いた場所とは……。

どこもかしこも雨で濡れ、空は重く、どこか全体的に薄暗い……はずなのに。かっぱが案内してくれたその遊び場所の素敵なことといったら! 雨の中に佇む巨木や深い緑の美しさといったら!

「あめのひに みんなで あまやどり。これ、さいこうの ぜいたくです」

そんなかっぱの言葉に思わずうなずきながら、絵本の中の子どもたちと一緒になって静かに雨音に耳を傾けてしまうのです。こんなにも、しっとりと深く味わえる雨の絵本があるなんて。日常のすぐ隣にありながら、果てしないスケールの大きさをも感じさせてくれるこの世界観。むらかみさおりさんのデビュー作品なのだそうです。きっとこの絵本自体が、子どもたちの雨の記憶の一つとして残っていくのでしょうね。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon/143370/%E3%81%82%E3%82%81%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%B1/

読者の声より

妖怪のカッパがとてもとても愛らしく描かれた作品。表紙を見ると、一見暗い作品と思うかもしれませんが、とても楽しい作品でした。こんなすてきなかっぱたちが子守をしてくれるのなら、子どもたちは雨の日が待ち遠しくて仕方なくなるはず!
可愛らしいキャラクターに目を奪われてしまいますが、背景の草木の緻密な描写がすばらしいです。本当にどれだけの時間をかけて描いたのだろうと…。
(おざこんぐさん 30代)

7月3日 今日は大雨。地面の下はどうなっているのでしょう?

日曜日は『雨の日の地下トンネル』

雨の日の地下トンネル

雨がふったとき、地面の下はどうなっているのでしょう?
街をまもる仕組みを紹介します。大迫力の観音ページも!

読者の声

大雨での大災害が増えてきました。川の氾濫が起きる度に、都市部ではどうにか凌いでいる理由がこの絵本でよくわかりました。
暗渠が増え、生活排水や雨水が路上で大きな水溜まりを作っているのを見るにつけ、最終的な川の構造が気になったいました。
都心を流れる河川が横繋がりになっていることは聞いていましたが、この絵本で得心です。でも、コントロールする人たちの責任は重大ですね。
(ヒラP21さん 60代)

みなさんは、どの作品が気になりましたか? この中にもきっと「雨の絵本の新定番」となっていく絵本があるのでしょうね。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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