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未来の今日の一冊 ~今週はどんな1週間?~

【今週の今日の一冊】2022年の今年読んでおきたい戦争の絵本(世界の平和を考える絵本)

世界で起き続ける戦争。緊迫するこの状況にどう向き合えばいいのでしょう。傷つくのは、いつも家族の暮らしを穏やかに守ってきた普通の人たち。平穏な毎日に突然襲いかかる戦争を前に、人々が何を考え、どう生きたのか、どうやって希望を見出していったか。その切実な現実を描いた本がたくさんあります。

今週は、戦時下における暮らしと人々の思いを想像しながら、今読んで考えるヒントにしたい、戦争と平和の絵本をご紹介します。
 

2022年8月8日から8月14日までの絵本「今日の一冊」をご紹介

8月8日 ウクライナの作家が描く平和と戦争の絵本。

月曜日は『戦争が町にやってくる』

戦争が町にやってくる

色とりどりの花が歌う、ふしぎな町ロンド。
この町には、だれもが知ってる仲良し三人組がいました。

ぴかぴか光るガラスの体、電球の妖精みたいなダーンカ。
ピンクの風船犬、ふわふわ軽い、宝探しの名人ファビヤン。
折り紙の鳥みたいな見た目のジールカは、空を飛べて、旅が大好き。

三人をはじめとしたロンドの個性的な住人たちは、町での暮らしを心からたのしんでいました。

ところが、そんな平穏な日常を壊す、おそろしい影がロンドにやってきました。

戦争です。

ウクライナを拠点に活動するアートユニットが描く、平和な町と、壊された日常。その目も覚めるようなコントラストで、戦争の痛ましさを描き出した一冊です。

写真を組み合わせて作るコラージュと、ポップでかわいらしいグラフィックのキャラクター。
明るくやわらかな色で描かれる平和と、暗くおどろおどろしい色の戦争。
ファンタジックで詩的な世界観と、戦争というリアルなテーマ。
本作はそうしたいくつかの強いコントラストで構成されていて、それが両方の極の強烈な印象を、読者の胸に刻み込みます。

「ロンドの町の人たちは、戦争がどんなものか知りませんでした。
ところが、戦争は、どこからともなくやってきました。」

石で心臓を打たれて、ヒビの入ったダーンカ。ファビヤンはトゲで刺されて足がやぶけ、ジールカは火で焼かれて翼に穴があきました。そして、彼らの傷は物語の最後まで癒えることはありません。

戦争を止めるために、三人は相手のやり方をならいました。戦争の心臓を狙って、攻撃を返したのです。しかし、すべてむだに終わりました。

「なぜなら、戦争には心を心臓もないからです」

どうやっても戦争の歩みを止めることはできないとあきらめかけたそのとき、ロンドの町にある意外なものが、みんなの希望になって──?

作中で象徴的に描かれる、赤いヒナゲシ。これは、第一次世界大戦の戦死者を追悼するためのシンボルとして知られる花です。現実におおきな戦争が起きてしまった現在、その当事者たる著者らが戦争の悲惨と平和の愛おしさを子どもたちに向けて発信した、心ゆさぶられる作品です。

(堀井拓馬  小説家)

8月9日 戦争が奪ってしまう大切なものとは…

火曜日は『なぜ戦争はよくないか』

なぜ戦争はよくないか

姿を巧みに隠し忍びよる戦争のこわさ、おそろしさを伝える絵本。深みのある文章と、力強い絵で静かに語りかけます。

読者の声より

なぜ戦争はよくないか
戦争を擬人法で表現しているのが、特徴あります。
そう、戦争はちっとも進歩しないし、反省もしない。
省みることなんてしない。

戦争が終わった後には何も残らない。
残らないどころか、戦争で巻き散らかされた汚染物が、目に見えないところにもそこらじゅうに残るだけ。

戦争の本質を、子供にもなんとなくわかる文章がすばらしいと思いました。
12歳の二男も、読み終わってちょっと首をかしげながら、でも戦争の愚かしさはわかったようでした。
(イザリウオさん 40代・ママ 男の子15歳、男の子12歳)

8月10日 「わたしの光はパスポートなしで旅をします」

水曜日は『キーウの月』(ウクライナ救援のための緊急出版)

キーウの月

ウクライナ・キーウの月は、わたしたちが見上げている月と同じ月。世界的作家・ロダーリの絵本を、ウクライナ救援のために緊急出版。

8月11日 家の歴史から見えてくる戦争、差別、迫害と分断…

木曜日は『あの湖のあの家におきたこと』

あの湖のあの家におきたこと

その家を建てた作者の曽祖父一家はナチスに追われ、その後に住んだ音楽家一家も徴兵を逃れ家を出ます。戦後に暮らした家族は「ベルリンの壁」によって湖と隔てられ……。
ベルリンに実在する一軒の家の変遷から戦争、分断の歴史を見つめる物語。
この100年に起きたことを描いていますが、「昔あったこと」ではなく、世界中で分断が進むいま、同じことをくり返さないためにあらためて読みたい1冊。

読者の声より

これは湖のほとりにある、一軒の小さな木の家の物語です。
それは長い時の物語でもあります。
絵本ですが、まるで長編の物語を読むようでもありますし、長い一篇の映画を観るようでもあります。
でも、これは絵本です。ゆっくりと頁をめくる、そんな絵本です。

家はこの絵本の作者であるトーマス・ハーディングさんの曽祖父が1927年に建てたものです。曽祖父は医者で、4人の子どもたちが自然の中で暮らせるように、湖のほとりに建てたそうです。でも、時代がよくありません。
戦争になって、ユダヤ人であった一家はこの家を去ることになります。
次に住んだのは、音楽好きの一家。でも、彼らも戦争のせいでこの家を出ていきます。さらにまた別の一家、さらに戦争が終わって別の家族がこの家で暮らします。

家はきっと住む人たちの、さまざまな様子や感情を見てきたでしょう。
その姿はそれぞれだったでしょうが、きっと家を愛するということでは同じだったかもしれません。
家はそこに住んだ家族のことを覚えているのでしょうか。そこで笑ったり泣いたり怒ったりした家族のことを覚えているでしょうか。

訳者である落合恵子さんは、2020年の春浅い日々から晩春にかけてこの本とずっと一緒だったと綴っています。コロナ禍の時、落合さんは戦争で揺さぶられた家とともにあったのです。この絵本はそんなふうにして、時代の中で何かを考えさせる一冊です。

(夏の雨さん 60代・パパ)

8月12日 日記帳に綴られた13歳の不安、恐れ、怒り、愛

金曜日は『[グラフィック版]アンネの日記』

[グラフィック版]アンネの日記

隠れ家での2年間の雑居生活。異常な環境で思春期を迎えた13歳の少女の不安、恐れ、怒り、愛を書きつづった「アンネの日記」。500ページ近い大著を、アンネ・フランク財団監修のもと、150ページのグラフィック版で刊行。

8月13日 戦没者と家族の心を支え続ける詩とヒナゲシの物語

土曜日は『ヒナゲシの野原で 戦火をくぐりぬけたある家族の物語』

ヒナゲシの野原で 戦火をくぐりぬけたある家族の物語

真っ赤なヒナゲシの花がゆれるフランダースの野。のどかな風景のこの場所は、第一次世界大戦時、激戦地になったところだ。今も、不発弾や兵士の持ち物が見つかる。近くに住むマルテンス一家には、代々伝わる宝物があった。それは詩が記された一枚の紙きれ。第一次世界大戦に従軍した兵士が書き、戦後、世界中で有名になった詩だ。なぜこの詩がマルテンスの一家に伝わることになったのかを語りながら、戦争と人々のかかわりを描く物語。あとがきでは、「ヒナゲシの花」が戦後、戦没者追悼の象徴となった経緯が述べられている。

読者の声より

ベルギーのイーベル地方を舞台にした壮大な物語です。
広大な野原に咲き乱れるヒナゲシの群生は、第一世界大戦、第二次世界大戦の戦場ともなった場所で戦死した、おびただしい数の戦没者の象徴となりました。
「フランダースの野に」という、ジョン・マクレーの詩は初めて知りましたが、ヒナゲシとマクレーの詩を、重要な舞台装置にして、4世代に渡る人間物語です。
モーバーゴの語る物語は、詩情と抒情に満ち溢れていて、しかも現実感があります。
つい、実話を基にしていると勘違いするほど、事前調査が深堀されています。
卵売りの少女に、友人の墓にヒナゲシを供えて欲しいと頼んだ兵士が書いていた詩の反古。
それが曽祖父と曽祖母を結びつけるキーとなり、それが次世代にもつながるところに運命的なものを感じます。
曾孫にあたるマルテンスの父親は、ヒナゲシ畑にトラクターで踏み込んだときに、埋もれていた不発弾の爆発で死んでしまいました。
戦争の傷跡が残る場所は、戦争の悲惨さ伝える埋み火となっているようです。
物語の後の解説やマクレーの詩が、この本をさらに重厚にしています。
(ヒラP21さん 60代・その他の方 )

8月14日 戦争よりも強い人のやさしさと想像力を

日曜日は『戦争をやめた人たち 1914年のクリスマス休戦』

戦争をやめた人たち 1914年のクリスマス休戦

「せんろはつづく」 シリーズや 「鳥の巣の本」 シリーズなどの人気作を世に送り出している絵本作家の鈴木まもるさんが長年温めてきたテーマ、「戦争」そして「平和」がついに一冊の絵本になりました。

物語の舞台は1914年、第一次世界大戦開戦からわずか5カ月後のクリスマスイブ。
最前線で戦うイギリス軍兵士は、その夜、敵側のドイツ軍から音が聞こえてくることに気づきます。
耳を澄まして聞いてみると、それはドイツ語で歌われた「きよし このよる」でした。

「きょうは12 月24日 、クリスマス・イブなんだね」
「そうだったな。ドイツにもクリスマスがあるんだなあ」
「こっちも、歌おうか」

イギリス軍の兵士が母国語で「きよし このよる」を歌うと、ドイツ軍から拍手が聞こえました。
続いてドイツ軍から別のクリスマスソングが歌われ、イギリス軍も同じ歌を母国語で歌いました。
そうして両軍でクリスマスソングを歌い合いながら、イブの夜は更けていきました。

翌日、ドイツ軍側から一人の兵士が武器を持たずにイギリス軍側へ歩いてくる姿が見えました。
イギリス軍の若い兵士も同じように武器を持たずにドイツ軍側へ歩いていきました。
鉄条網を挟んで向かい合った二人の兵士。
この後、二人は一体どうなったのでしょうか……。

これまでの鈴木まもるさんの作品の特徴である、色鮮やかなタッチをグッと抑え、
茶や黒など落ち着いた色を使った前半は、まるでモノクロ映画を見ているかのような深みを感じます。
そして後半に進むに従い、色が少しずつ増えてきて、最後の数ページの、目を見張るような鮮やかな空の色は、
100年前から現在に至るまで変わらないものがあることを私たちに示しているように感じます。

この絵本の「あとがき」の絵を描いているとき、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻のニュースが流れてきたそうです。
「まだ「戦争」を始める人間がいる現実に愕然としつつ、戦争よりも強い人のやさしさと想像力が描きたくて、絵を完成させました。」と語る鈴木まもるさんは、最後のページに民族衣装をまとったウクライナの子どもたちと「この星に、戦争はいりません」という一文を追加しました。

100年前に実際にあった出来事を描くことで、これから100年先の子どもたちへのメッセージを絵本で残したい。
そんな作者の強い思いを感じることのできる一冊です。

(木村春子  絵本ナビ編集部)

読者の声より

昔の戦争だから、敵の兵士がより近い距離にいる、兵士自身にも辛い闘い。

何故戦争が起こるのか。
始まった戦争に駆り出される人達自身も、きっとそんなことを考えたのかもしれません。
戦争なんか早く終わればいいのに。
そんな気持ちがにじみ出ている感じのする表情の兵士達が描かれています。

だから、クリスマスイブには、仲間で歌を歌う。

遠くに聞こえる、言語は違うけれど同じメロディのクリスマスの歌。
同じメロディというだけで、ルーツは同じだと思えてきます。
同じ人間なんだと感じられます。
だからこそ手を取り合い、クリスマスという、同じ習慣のある仲間として、ともに時間を過ごす。

同じ人間だと知ってしまった後に、戦いに戻るのは大変つらい事だったろうと思います。
だからこそ戦いが避けられるように尽力した人達もいたのだと知り、哀しい中にも少しだけ安らかな気持ちになれました。
(hime59153さん 40代 ママ 三重県 男の子10歳)

選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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