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未来の今日の一冊 ~今週はどんな1週間?~

【今週の今日の一冊】今、戦争を考える。 2022年の今年読んでおきたい戦争の絵本(日本の絵本)

今日から8月。8月になるといつも以上に意識に強くのぼってくるのが、平和への願い。今年2022年は、ロシアによるウクライナ侵攻が始まったことによって、世界で戦争が起き続けているという現実に心を痛める日々が続いています。その中で、平和や戦争について、どのように考えていったら良いのか混乱しているという方も多いのではないでしょうか。
今週と来週は2週にわたり、「2022年の今年読んでおきたい戦争の絵本」を特集します。ロングセラーから新刊まで、どの絵本からも伝わってくるのは、平和の大切さを懸命に願う心。ひとりで、親子で、友だちと‥‥‥戦争について考えたり、話すきっかけとして手にとってみてください。
 

2022年8月1日から8月7日までの絵本「今日の一冊」をご紹介

8月1日 田島征彦さんが描くほんとの沖縄戦。子どもたちへ…

月曜日は『なきむし せいとく 沖縄戦にまきこまれた少年の物語』

なきむし せいとく 沖縄戦にまきこまれた少年の物語

出版社からの内容紹介

《沖縄に40年以上通い続けてきた著者が描く「沖縄戦」》

ここは1945年の沖縄。ぼくの名前は「せいとく」です。
いつも泣いているので、みんなから「なちぶー」とよばれています。
父に続き、兄も兵隊となり、ぼくは母と妹の3人で、南へ逃げることになりました。

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絵本作家・田島征彦は、40年以上取材を重ね、これまでにも「沖縄の絵本」を描いてきました。
(『とんとんみーときじむなー』[1987年]『てっぽうをもったキジムナー』[1996年]『やんばるの少年』[2019年、いずれも童心社・刊])

本作では、長年の取材の集大成として、真っ正面から「沖縄戦」を描きます。

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「悲惨な戦争を子どもたちに見せて怖がらせる絵本を創るのではない。平和の大切さを願う心を伝えるために、沖縄戦を絵本にする取り組みを続けているのだ」
田島征彦(「母のひろば」685号より)

読者の声より

1945年の沖縄戦。日本が第二次世界大戦をしているとき、沖縄では米軍が攻めてきて大変な戦争がありました。
田島征彦さんはこの絵本を描き子供たちに戦争の悲惨さを見せて怖がらせるのではなく、平和の大切さを願う心を伝えるために、この絵本を描いたと書かれています。


私も戦後に生まれて戦争の悲惨さは人に聞き学び、広島長崎の原子爆弾投下の悲惨さなどで知っていますが、今もロシアウクライナでの戦争が現実に起こり、ニュースで見るのがつらくなる現状です。

なぜ? 戦争をやめないのか。罪のない子供やみんなが殺されています。絵本の沖縄戦も同じです。沖縄のガマという洞穴に逃げまどいますが……子供や赤ちゃんが泣くと米軍に見つかると日本兵が殺しました。なんというむごいことでしょう。

せいとくは、お母さんが血だらけになり死んでいくのをみてどんなに悲しかったことでしょう! 目の前で自分の愛する人が殺されるのを見たら どんなに悲しいかが伝わり、涙が出ました。
1945年8月15日 日本は負け、戦争は終わりました。
「せんそうのくるしみをいちばんしっているのはぼくたちなんだ。」

せいとくは、妹のきぬこが生きていたことはどんなにうれしかったことでしょう!


今もなお沖縄には米軍基地があり、米軍の飛行機が飛んでいます。いつになれば沖縄から米軍基地がなくなるのでしょう?
この絵本をみんなに読んであげて、戦争のことを考え平和な世界を目指したいです!
(にぎりすしさん 60代・その他の方 )

8月2日 「戦争だけは絶対にはじめてはいけない」

火曜日は『焼けあとのちかい』

焼けあとのちかい

出版社からの内容紹介

「戦争だけは絶対にはじめてはいけない」

日本の戦争に向き合い、戦争の過程を精緻に解明してきた半藤一利。その原点は中学2年で体験した東京大空襲だった。
開戦から日に日に苦しくなる下町の生活。そして3月10日。猛火を生きのびた半藤少年は焼けあとでちかった。
半藤一利の初の絵本を描くのは、大胆な画風で注目を集める絵本作家・塚本やすし!

小学校中学年以上向け。
小学校3年生以上の漢字にルビ。用語解説の注あり。

読者の声より

「歴史探偵」を自認していた作家の半藤一利さんが亡くなったのは、コロナ禍が猛威をふるっていた2021年1月のことでした。享年90歳でした
自身初めての絵本となったこの作品は2019年7月に刊行されたものです。そのテーマは「戦争」です。

半藤さんは1930年で東京の向島に生まれました。
この絵本のはじめの方では、友だちと遊びころげていた姿が描かれています。そんな生活が一変したのが、1941年12月のアメリカとの開戦でした。その時の町の人々の表情が「晴れ晴れとして明る」かったと、半藤さんは記憶しています。 しかし、いろんなものが生活から消えていきます。大好きだったベエゴマ、動物園の動物たち。 やがて、町の人たちから笑顔も消え、母ときょうだいも疎開し、15歳の半藤さんは父と二人残ることになります。
そして、1945年3月10日、東京下町に大量のB29機が襲いかかってきます。東京大空襲です。その時の様子を半藤さんはこの絵本で詳細に綴っています。生きるのも死ぬのも、わずかな違いだったともいえます。そんな生死の境を半藤さんは生き延びました。

「いざ戦争になると、人間が人間でなくなります」と、半藤さんは書いています。
焼きあとに立った半藤さんは、自分が死なないですんだのも偶然だし、生きているのも偶然、この世に「絶対」はないと思います。そして、「絶対」という言葉を使わないで生きていきます。
そんな半藤さんですが、この絵本でその言葉を使って、こう語りかけます。

「戦争だけは絶対にはじめてはいけない」
絵本の形でこのメッセージが残された意義を伝えていかなければなりません。
(夏の雨さん 60代・パパ )

8月3日 核兵器の問題を子どもたちと語り合うために

水曜日は『核兵器をなくすと世界が決めた日』(2022年7月の新刊です)

核兵器をなくすと世界が決めた日

出版社からの内容紹介

すべての国が核兵器の保持や使用をしないと約束する核兵器禁止条約。被爆者らの声と、市民の国際的な連帯が生んだ画期的条約の成り立ちを初めて絵本に。ウクライナ危機で核戦争の脅威が深まる中、子どもたちに希望を伝える。

8月4日 こんなに小さな子どもをも巻き込む戦争とは…

木曜日は『ちいちゃんのかげおくり』

ちいちゃんのかげおくり

出版社からの内容紹介

夏のはじめのある朝、小さな女の子のいのちが、空にきえました。--悲惨な戦争の中に幼い命をとじた女の子の姿を、静かに描く。

読者の声より

ある日の空襲で、お母さんとお兄ちゃんとはぐれてしまった、ちいちゃん。
たった1人、お母さん、お兄ちゃんとの再会を待つちいちゃんの唯一の
心の支えは、家族でやった「かげおくり」でした。

この絵本には、戦争を責めるような言葉は一つも出てきません。
けれども、ちいちゃんを通して、こんなに小さな子どもをも巻き込んでしまう
戦争とは如何なるものか、ということがしっかりと伝わってきます。
現実に、このちいちゃんのように誰にも気付かれずに亡くなった方が
たくさんいたのでしょう。そして、その一人ひとりに様々なドラマがあって、
戦争さえなければ続くはずだった未来が、その人の命と共に消え去った
事実を想像すると、胸が痛みました。

表紙絵の可愛らしくも寂しげな表情が全てを物語っているように感じます。
「かげおくり」が、子ども達にとって楽しい遊びとなりますように。
未来の子ども達が、明るい表情で素晴らしい未来を切り開いていけますように。
戦争のない世の中を、願わずにいられません。
シンプルながら、強いメッセージを感じられる1冊です。
(どんぐりぼうやさん 40代・ママ 男の子14歳)

8月5日 40年以上読み継がれ、心に刻まれる一冊

金曜日は『ひろしまのピカ』

ひろしまのピカ

出版社からの内容紹介

昭和20年8月6日、原子爆弾の光が広島の空をつらぬきました。
戦争への怒りと鎮魂と平和への願いをこめて送る絵本。
世界二十数ヶ国で読み継がれています。

読者の声より
以前「丸木美術館」へ行き、実際に見てきたことを思い浮かべながら読みました

何種類も原爆についての絵本や書物は読んできましたが、絵本の後書きを読んで、実際に存在した方のお話が元になっているとのことでした

からだに7つも穴があいたにもかかわらず、1度は元気になったおとうさん、7歳のままであるみいちゃん・・・

現実はつらく悲しい出来事ですが、その中で「生きる」強さも、この絵本の中にはたくさん詰まってました
現実は現実として受け止め、そこからまた前を向いてスタートする
自分自身の弱い心を叩き出しながら、一歩ずつ進んでいく・・・
そんなメッセージをたくさんいただきました
(風の秋桜さん 40代・その他の方)

読者の声より

本の存在も知っていて、内容もおぼろげながらわかっていてもなかなか手が出せない本があります。

『ひろしまのピカ』は私にとってはそんな本の一冊でした。あまりに悲惨な出来事をどう子どもと受け止めていいのか、苦手意識の方が勝っていました。

小学四年生の国語の教科書に紹介されていて、折しも福島原発での事故があり、私自身今年の夏は原発・原爆関連の本を三十冊以上読んだでしょうか。

過去の出来事、特に戦争のような痛ましいことについては、大人がまず知っていること、語り継いでいくこと、風化させないという意識が必要なのだと思います。

こういうことは、子どもとの信頼関係があり、身近で話ができる立場にいる親なり先生なりがするのが一番伝えやすいように思いました。

絵が訴えかける力の大きさにたじろぐ思いがましたが、繰り返し伝えて行けたらと思っています。
(はなびやさん 40代・ママ 男の子9歳)

8月6日 家族のアルバム写真が語りかけてくる多くのこと

土曜日は『ヒロシマ 消えたかぞく』

ヒロシマ 消えたかぞく

出版社からの内容紹介

原爆投下前、戦争中であっても、広島の町には笑顔にあふれた家族の日々の暮らしがありました。散髪屋さんである鈴木六郎さん一家の6人家族も、少しの不安はあったかもしれませんが、毎日笑顔で楽しくくらしていました。お父さんの鈴木六郎さんは、カメラが趣味。たくさんの家族写真を撮りためていました。
あの日。1945年8月6日。
一発の原子爆弾がヒロシマのまちに落ちました。
六郎さん一家は全滅しました。
長男の英昭くん(12歳)と長女公子ちゃん(9歳)は、通っていた小学校で被爆。英昭くんは公子ちゃんをおんぶして、治療所があった御幸橋まで逃げました。衰弱した公子ちゃんを「あとで迎えに来るからね」と治療所にあずけ、英昭くんは親戚の家へ避難しましたが、高熱を出し、数日後に亡くなります。公子ちゃんの行方はわからなくなりました。次男まもるくん(3歳)と次女昭子ちゃん(1歳)は、六郎さんの散髪屋さんの焼け跡から白骨で見つかりました。お父さんの六郎さん(43歳)は、救護所でなくなりました。救護所の名簿には「重傷後死亡」と記録されていました。家族がみんな亡くなってしまったことを知ったお母さんのフジエさん(33歳)は、井戸に身を投げて亡くなりました。 
たった1発の原爆が、六郎さん一家を消し去ってしまいました。
この本を開くことで、原爆の残酷さ、戦争のむごさを、読む人の身に引き寄せて考えるきっかけとなったら、という願いを込めてつくりました。また、愛情あふれるすばらしい家族写真の数々から、幸せにくらす人間の何気ない日常こそが大事であることに気づかされます。それは、幸せな平和を作っていくのは、私たち自身であると訴えかけているようにも思えます。
家族で平和を考えるために、最適の写真絵本です。

読者の声より

あまりにも悲しいアルバムです。
生き生きとして、写真の中で幸せを語っている家族が、原爆で亡くなってしまったのです。
幸せと絶望を突きつけられて、冷静な感想は持てません。
一瞬にして消えた家族、絶望して命を絶った母親、妹を背負って懸命に逃げようとした長男。
それぞれに原爆にねじ伏せられた一生でした。
親戚に預けられて遺された写真たちは饒舌です。
当たり前の生活を返せ!!!
何が家族を消滅させたのでしょう。
この事を考えるのは、今を生きている人たちでしょう。
(ヒラP21さん 60代・パパ)

『ヒロシマ 消えたかぞく』ができるまでを中心に指田和さんの活動をまとめたノンフィクションが、2022年7月に刊行されました。こちらも合わせて!

ヒロシマ 消えたかぞくのあしあと

出版社からの内容紹介

2019年7月に刊行された絵本『ヒロシマ 消えたかぞく』は、悲惨な戦争を幸せな家族の風景から伝えた新しい切り口として話題を呼びました。刊行後は、シニア世代を中心に多くの反響が寄せられ、あの家族を自分自身に重ねて読む人が多いことが分かりました。本書は1500枚以上あったアルバムから絵本ができるまでを紹介し、戦前、戦中、戦後の家族や、亡くなった家族、生き残った家族、また今を生きる家族など、「かぞく」をキーワードに、戦争、平和、いのちについて問い続ける著者・指田和の活動のノンフィクションです。

8月7日 くらべてみたときに、みえてくるのは…

日曜日は『へいわとせんそう』

へいわとせんそう

みどころ

「へいわ」と「せんそう」。

確かに違う、このふたつ。
平和の方がいいに決まってる。

…だけど。
「へいわのボク」と「せんそうのボク」ではなにが変わるんだろう。

詩人・谷川俊太郎と、一度見たら忘れられないモノクロームのドローイングが話題のイラストレーターNoritakeが取り組んだ、平和と戦争について考えるこの絵本。左右のページにはさまざまな人や物や場所の「へいわ」の状況と「せんそう」の状況が並び、ひとめでその違いが見えてくる。

例えば…
「へいわのボク」はいつも通り。いつもと同じに立っている。
「せんそうのボク」は座り込んでしまっている。

「へいわのワタシ」は勉強をしている。これもいつも通り。
「せんそうのワタシ」は何もしてない。

「へいわのチチ」はボクと遊んでくれて、「せんそうのチチ」は完全武装をして一人で闘っている。「へいわのハハ」は絵本を読んでくれるけど、「せんそうのハハ」は…。食卓を囲む「へいわのかぞく」、食卓には誰もいない「せんそうのかぞく」。手に持っているモノだって、木や海や街だって、明らかに全然違う。

それは、行き来が可能な世界ではない。
「せんそう」が終われば戻る世界でもない。
何かがなくなった、だけでは終わらない。

どこまでも深い「黒」と、少し光を放つような「白」の2色で構成されている場面に、シンプルだけど、これ以上ないくらいわかりやすい「ことば」。この絵本のどのページを見ても、まるでマークや記号のように、直接、目と頭に働きかけてくるのです。そして頭に残るのです。

でも、谷川さんは最後に大切な希望を見せてくれます。それは…。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

読者の声より

今この時代にも戦争をしている国々があって、日本は平和を保っているけれど、それがいつ崩れるか分からないからこそ、未来を生きる子どもたちに訴えかけていかないと…と思います。

へいわの国もせんそうの国も、同じ朝日が昇って生まれてくる赤ちゃんに差はありません。5歳の娘はこれを読んで、「ここはへいわ?」って何回も聞いてきました。

5歳にとっては「せんそうはいやだ」「せんそうはこわい」という気持ちを持てただけでも読んだ価値はあったと思います。その年齢に応じた考え方ができるのでどの年代にもおすすめしたいと思います。
(ouchijikanさん 40代・ママ 女の子11歳、女の子5歳)

読者の声より

白と黒のコントラストで書かれたこの本。新聞で取り上げられているのを知って手にしました。小さめの正方形の白い本で、表紙のイラストもどこか標識のような・・無駄のないタッチで描かれています。中の文章も短く、見開きの右と左を対比する言葉が書かれています。
平和だとこうなる毎日が戦争だとこうなるよ・・ということが短い言葉と絵だけでも充分に伝わってきます。

この絵本は最後がとても印象的です。
みんなみんな尊い命。
たにかわしゅんたろうさんが、最後に訴えかけているメッセージを感じることができました。幼稚園の子どもでも、この絵本を静かに聞いていました。
「けんかしたら嫌な気持ちする。」
「戦争したらダメ・・仲良くしたらいいのに。」

いろいろなことが学べます。平和を学習するうえで、小さな子どもから大人まで・・この本を心静かな気持ちで読んで欲しいです。
(Pocketさん 40代・ママ 女の子17歳、男の子13歳)

選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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