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絵本トレンドライターN田N昌の “大人だってもっと絵本読みたいの!”

パパママも一緒に楽しい“横長〜〜い絵本”

子どもだけが読むなんてもったいない。大人も楽しい絵本の世界を、絵本トレンドライター・N田N昌さんが、独自の視点と「ゴイスー」な語り口でご紹介! 
注目の新刊や作家さん、気になる絵本関連スポットなど、絵本のトレンド情報を大人に向けてお届けします。

”長~~い”のには意味がある!! 面白さ保証付きの横長絵本

絵本には、縦長のもの、横長のものがございます。中には縦横比が2倍以上もある“横長〜〜い絵本”もございます(そんなに数は多くありませんが…)。

特徴は本の形だけではございません。その絵本のストーリーや内容に横に長〜〜くする意味があるのでございます。読んだ後、「これ、縦長でもよかったんじゃない…」というようなものは、まずございません。“横長〜〜い絵本”になるだけの意味がある(面白い)絵本だと言えるのではないかと…。判型が通常と異なることで、書店では置く場所に困る、出版社では予算が通常より多めにかかる、それらのデメリットがあるなかで刊行されているのです。面白くないわけがないのでございます。

 

前置きが長くなりましたが、今回この“横長〜〜い絵本”を取り上げさせて頂こうと思ったきっかっけは、最近出版された『へび ながすぎる』と『まって! まって!』という二冊の絵本でございます。どちらもゴイスーに魅力的な“横長〜〜い絵本”なのでございます。

まずは、こちら!『へび ながすぎる』(こぐま社)でございます。

へび、どこまで長~~い?!

へび ながすぎる

なが~いへびを、へびとはきづかず、楽しく遊ぶ動物たち。
ウサギはおおなわとびをして、ゴリラはターザンごっこ、そしてみんなでプールあそび!?
驚きとユーモアたっぷりの展開に、つぎつぎとページをめくりたくなるはず!

主人公はヘビでございます。人気絵本ユニットのtupera tuperaさまの『へび のみこんだ なに のみこんだ?』(えほんの杜)も有名でございますが、ヘビが主人公の絵本は本当にたくさんございます。ヘビは絵本の世界で、長いことを表すときに重宝されている動物ナンバーワンではないかと…。そしておそらく、ヘビが主人公の絵本は、ほぼ横長絵本ではないかと存じます。そんな横長ヘビ絵本のなかにあって、この『へび ながすぎる』のヘビは、とにもかくにも長い!わたくしが存じ上げているヘビ絵本の中では最長ではないかと。まず、最初のページで「へび ながすぎて」というテキストではじまり、そこにはヘビの尻尾部分だけが描かれております。そこからページをめくると、その続きとなる長いヘビの胴体部分を使って様々な動物たちが遊んでいるのでございます。

胴体が長過ぎてヘビの顔が見えず、彼らはヘビとは知らず縄跳びにしたり、滑り台にしたり、好き放題遊ぶのでございます。そして、途中で「あれ?」「もしかして」「これ、ひょっとして(ヘビ)?」と気付き、ついにはヘビが登場!頭の部分がやっと登場いたします。…と思ったら、もうひとつゴイスーなオチが用意されております。パパママも驚く見事なオチでございます。

お子様は、この絵本を読むと、きっと自分でも長いヘビ絵本を描きたくなるのではないかと…。是非、親子で長いヘビ絵本を描いて楽しんで頂ければと存じます。

 

このように“横長〜〜い絵本”の一番の特徴は、「長いものを扱う物語が多い」こちらではないかと存じます。例えば、おくはらゆめさまの人気絵本『くろいながい』(あかね書房)もそうでございます。ちなみに、こちらは大人からも大人気の絵本でございます。まだ読まれたことのないパパママにはオススメでございます。主人公の女の子の髪の毛とその女の子が大好きな黒猫の尻尾がとにかく長いのでございます。どのくらい長いのか、髪の毛の先端部分、しっぽの先端部分がどうなっているのか確かめるために旅に出るというストーリーでございます。言うまでもございませんが、長〜〜い旅になります。

そして、『まって! まって!』(ポプラ社)でございます。

子どもの目線を表現した横長のページに、楽しさが詰まった絵本

まって! まって!

風に飛ばされた帽子を追ってどこまで行くの?
子どもの目線から描かれる、やさしくて愛しい日常のひとコマ。
ごく少ない言葉だからこそ、女の子の心の機微が伝わってきます。
主人公以外の周りの人たちの様子まで楽しい、
絵を読むおもしろさがつまった、何度も開きたくなる絵本!

こちらは、ストーリーに登場するものの“長さ”は一切関係ございません。ではなぜこの形(横長〜〜い)なのか…。その理由は、まず読んで頂きたい!見ていただきたい!のでございます。ストーリーは、女の子の帽子が風で飛ばされ、それを追いかける、ただそれだけでございます。特別なこと、意外なことは起こりません。ただ!!全ての画面(ページ)が地上100センチの世界で展開しているのでございます。舞台は街で、大人も子どもも登場します。しかし、描かれているのは地上から100センチだけなのでございます。主人の女の子は全身が描かれておりますが、一緒にいる親や途中登場する大人たちも胸から下しか描かれておりません。地上100センチから上は読者が想像するしかないのです。つまり、この絵本はその世界観を強調するために横長〜〜い判型になっているのでございます。絵本に描かれていないその上の世界に想像を巡らしながら楽しめる絵本なのでございます。その感覚を是非、ご体感頂きたいのでございます。

それだけではございません。絵の中にたくさんの発見、楽しみが隠されています。パパママが見つけられないものをお子様は発見して楽しんで頂けること間違いナッシングでございます。そんな発見をお子様から教わるのも、この絵本の魅力ではないかと…。まさに、何度読んでも楽しめる、絵本ならではの楽しみを思う存分味わえる絵本ではないかと存じます。

このように、“横長~〜い絵本”には、それぞれ理由がございます。それが許される裏側には、それだけの魅力、価値が必ずございます。是非是非、“横長〜〜い絵本”を見つけて、楽しんで頂ければと存じます。なぜこの形になったのか、そんなことを考えながら読むのも大人の絵本の楽しみ方の一つではないかと…。

 

そうそう、大人の楽しみ方といえば、大人絵本の“横長〜〜い絵本”として有名な絵本を最後にご紹介いたします。出版当時、かなり話題になったのでご存知の方も多いかもしれません。ヨーロッパで、絵本としては異例の売り上げを記録した『Moi、J'attends(ぼくは待っている)』を、映画『おくりびと』、“くまモン”の生みの親としても有名な放送作家の小山薫堂さまが翻訳した『まってる。』でございます。こちらは、大人が大人にプレゼントするのにオススメの絵本でございます。ゴイスーにオシャレでアートな絵本でございます。職場や身近な方へのちょっとしたクリスマスプレゼントの候補に是非是非!!でございます。

N田N昌

絵本トレンドライター・放送作家・絵本専門士
絵本の最新情報を発信&大人絵本文化、絵本プレゼント文化の普及活動に日々努めております。  

@NtaNmasa

 

(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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