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絵本トレンドライターN田N昌の “大人だってもっと絵本読みたいの!”

大人にもおすすめ! イマドキ児童文学をご紹介

子どもだけが読むなんてもったいない。大人も楽しい絵本の世界を、絵本トレンドライター・N田N昌さんが、独自の視点と「ゴイスー」な語り口でご紹介! 
注目の新刊や作家さん、気になる絵本関連スポットなど、絵本のトレンド情報を大人に向けてお届けします。

ワクワク、スイスイ読み進む、大人も手に取りたい児童文学

 

読書の秋、みなさま本を読まれたでしょうか……。読書週間も11月9日まで、読書の秋もそろそろ終わろうとしております。

まだ一冊も読んでいない、忙しくて読む暇がない…そういったパパママにもオススメの児童文学を今回はご紹介したく存じます。

児童文学なので短く読みやすいのですが、大人が読んでも、「やられた!」と思うこと間違いナッシングな作品をご用意いたしました。

本を読むのが苦手という方でもスイスイ、ワクワクと、あっという間に読み終わること、重ね重ね間違いナッシングでございます。

 

まずは先日、はじめての絵本『あんまりすてきだったから』(ほるぷ出版)を出されたくどうれいんさま。作家、歌人、俳人など幅広く活躍されております。エッセイも女性から大人気でございます。小説の『氷柱の声』(講談社)は芥川賞候補作でございました。

あなたのプンスカ、ジャムにしませんか?

プンスカジャム

「もう、もうもう、もうもうもう、ぼくはおこった!」小学2年生のハルは、友だちのタニくんに遊ぶ約束をすっぽかされて怒っていました。プンスカしているハルの前に「ベーカリーあんぐり」「あなたのプンスカ、ジャムにします」と書いてあるふしぎな車があらわれて、中から、あぐりさんと名乗るおばあさんが顔を出しました。ハルは、あぐりさんとプンスカジャムを作ることになりました。プンスカジャムっていったいなんでしょう。

童話以外のくどうさまの作品を読んだことのある方は、「えっ」と思われるかもでございます。かなりナンセンスな設定になっております。絵本『あんまりすてきだったから』は、手紙の魅力が伝わる、どちらかというとしっとり系・癒し系の内容でございますが、こちらの『プンスカジャム』は、ゴイスーにポップな内容でございます。実はこのお話、くどうさまが高校時代、高校文芸コンクール(児童書部門)に応募するために書いた作品「ベーカリーあんぐり」という作品がベースになっているとのこと。主人公の男の子は、その日、あることでプンプンに怒っていました。そこに「ベーカリーあんぐり」「あなたのプンスカ、ジャムにします」と書かれている不思議な車とおばさんが登場いたします。そして、そのおばさんと一緒にプンスカジャムを作るというお話でございます。もちろん、ポップなだけでは終わりません。ご本人も盛岡経済新聞の取材で、怒りとの向き合い方を考えるような絵本にしたいと思っていたと答えていらっしゃいましたが、大人が読んでも大満足いただける内容になっております。ちなみに、絵を担当されているのは、この連載でも以前特集させていただきましたくりはらたかしさまでございます。絵本、漫画、イラスト、アニメと、多岐にわたって大活躍中でございます。ポップなお話にとてもマッチしております。まさに人気絵本作家同士の共演でございます。

ぜんぶ、わしのせなかにできた「せなか町」で起こったこと

せなか町から、ずっと

わしは、何百年も海の上を漂っている。その姿は、マンタと呼ばれるおおきなえいに似ているらしい。とにかくわしはおおきくて、わしにくらべたら、クジラはまるで小魚のよう。これから話すのは、ぜんぶ、わしのせなかにできた「せなか町」で起こったこと。あまのじゃくなカーテン、少女の涙からうまれた極上のハチミツ、はこからちっとも出てこようとしないネコ。ちいさくてささやかだけれど、どれもとびきりふしぎなお話なんじゃ。

お次は、詩人で絵本作家で童話作家でもある斉藤倫さまの創作童話でございます。斉藤さまも、この連載で何度かご紹介させていただいております。

斉藤さまの児童書をご存知ない方でも、『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』(福音館書店)をご存知の方、少なくないのでは…。そんな斉藤さまですが、『どろぼうのどろぼん』(福音館書店)で第48回日本児童文学者協会新人賞と第64回小学館児童出版文化賞を受賞されております。児童文学会では大注目の作家さまでございます。『どろぼうのどろぼん』もそうですが、設定が奇抜というかポップで大人も楽しめるというところが、斉藤さまの創作童話の一番の特徴かと。斉藤さまの絵本がお好きな方は、間違い無くハマるのではないかと存じます。

なかでもオススメな創作童話が『せなか町から、ずっと』(福音館書店)でございます。こちらの絵を担当されているのが、絵本でも数々の賞を受賞されている大人からゴイスーに人気の高い画家のjunaidaさまでございます。こちらも人気絵本作家同士の共演でございます。『せなか町から、ずっと』は、短編集でございます。読書が苦手という方でもスイスイ、ワクワク読めるのではないかと存じます。それぞれ、どの作品も設定が秀逸で、おばあさんのために窓を覆うひねくれもののカーテンの話だったり、自分の名前を落としてしまった女の子の話だったりいたします。そして、それぞれの短編のお話が、ほかのお話につながっていたりするところがまた、たまりまセブンでございます。大の大人も楽しめる創作童話でございます。

友達との関係に悩む女の子と、ねこの物語。

わたしといろんなねこ

あやは、大のねこ好きの小学3年生。両親は共働きで、学校が終わるとひとりで家に帰ります。仲よしのアッキーとはケンカをしてしまうし、知りあったばかりのさくらちゃんは会うとすぐににげてしまうし、まったくつまりません。そんなある日、いつもどおり家へ帰ると大きいねこが、またある日には小さいねこが現れました。日常とふしぎを往きかうなか、あやが思い出したことや、決心したこととは…? 絵本作家のおくはらゆめさんが、はじめて書き下ろした童話です。

こちらも人気絵本作家さまの創作童話でございます。

第1回MOE絵本屋さん大賞新人賞を受賞した『ワニばあちゃん』(理論社)や第41回講談社出版文化賞絵本賞を受賞した『くさをはむ』(講談社)をはじめ数々の人気絵本を出されている人気絵本作家、おくはらさまがはじめて書き下ろされた創作童話作品でございます。と同時に、第68回小学館児童出版文化賞を受賞、全国学校図書館協議会選定図書にも指定された作品でございます。とにかくポップで今ドキなお話の展開でどんどん読み進めていけます。それでいて、物語に次々に登場する猫のお話が見事に絡み合って一つの物語を紡ぎ上げているのでございます。その構成の妙がとにかくゴイスーなのでございます。騙されたと思って、とにかく一度、読んで頂きたい一冊でございます。ナンセンスでありつつ、友だちとの人間関係に悩む女の子と猫の切なくてほっこりする物語でございます。大人への癒し効果も抜群でございます。

フミオくんの日常はへんてこであふれてる!

あさって町のフミオくん

小学3年生のフミオくんの町は、どこかへん。スーパーマーケットへ牛乳を買いにいったらシマウマの子どもと間違われたり、がいこつのおじさんとプールへ行ったり、「おいらたちは、おまえの足にぴったりだ!」という運動靴に出会ったり、お茶目なタコが耳にできたり......フミオくんの日常はへんてこであふれてる! あさって町でおこるふしぎな出来事を描いたおはなし4話を収録。

最後は、昼田弥子さまの『あさって町のフミオくん』(ブロンズ新社)でございます。昼田さまも絵本のテキストを書かれている絵本作家さまでございます。絵本も創作童話もポップでナンセンスな作風が魅力でございます。ナンセンス好きのパパママには刺さること間違いナッシングな作家さまでございます。こちらの創作童話は小学3年生のフミオくんが主人公の短編集でございます。こちらもスイスイ読みやすい物語でございます。スーパーに買い物に行ったらシマウマの子に間違えられたり、耳に愉快なキャラのタコができたり、ナンセンスの度合いがゴイスーにポップな作品でございます。絵を担当されているのは、絵本の『ほんとはスイカ』(ブロンズ新社)で共演されている人気絵本作家の高畠那生さまでございます。

今回ご紹介させていただいた創作童話は全て、大人も楽しめる不思議(ナンセンス)がウリの創作童話ばかりでございます。とにかくヘンテコリンなお話でございます。大人が楽しめるヘンテコリンでございます。ヘンテコリンなお話こそ、最近の創作児童文学の特徴、トレンドではないかと存じます。昔もヘンテコリンなお話はございましたが、最近はヘンテコリンが主流として受け入れられてきているような気もいたします。

そして、ヘンテコリンなお話の共通点は、大人も面白がれる点にあるような気もいたします。是非、読書の秋の滑り込み読書として、イマドキのヘンテコリン童話(児童文学)をお楽しみいただければと存じます。

N田N昌

絵本トレンドライター・放送作家・絵本専門士
絵本の最新情報を発信&大人絵本文化、絵本プレゼント文化の普及活動に日々努めております。  

@NtaNmasa

 

(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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