大人読者も虜に! 斉藤倫さんの絵本
子どもだけが読むなんてもったいない。大人も楽しい絵本の世界を、絵本トレンドライター・N田N昌さんが、独自の視点と「ゴイスー」な語り口でご紹介!
注目の新刊や作家さん、気になる絵本関連スポットなど、絵本のトレンド情報を大人に向けてお届けします。
詩人・作家、斉藤倫さん特集!
連載の前々回、詩人の絵本を特集いたしました。
そのなかで、詩人で絵本作家の方の作品をご紹介しましたが、この方について「この人も紹介してよ!」と思われた方も多いのではないでしょうか。今回、しっかりご紹介させて頂きます。
詩人で絵本作家の斉藤倫さまでございます。他に童話(児童文学)なども手掛けておられます。『どろぼうのどろぼん』(福音館書店)で第48回日本児童文学者協会新人賞と第64回小学館児童出版文化賞を受賞されております。斉藤さまの書かれる童話、わたくしも大ファンでございます。児童書のカテゴリーに入るのかもしれませんが、大人も普通に、いや、ゴイスーに楽しめるお話でございます。まさに「子どもから大人まで楽しめる作品」ではないかと存じます。もちろん、中に出てくる言葉のセンスもゴイスーでございます。子どもも大人も楽しめる、それが斉藤さまの特徴ではないかと存じます。決して「大人でも楽しめる」「子どもでも楽しめる」ではございません。大人も子どもも存分に楽しめるのでございます。
斉藤倫さんの本・児童書
なかでもわたくしのオススメは、『あしたもオカピ』(偕成社)、『せなか町から、ずっと』(福音館書店)でございます。『どろぼうのどろぽん』も含め是非、パパママにご体験頂きたい作品でございます。ちなみに、『せなか町から、ずっと』の画は、最新刊『EDNE』(白泉社)も話題の大人気絵本作家junaidaさまが担当されております。
本好きの方は、2019年に出版された『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』(福音館書店)をご存知の方、少なくないのでは…。こちらは、児童書としても一般の書籍としてもかなり話題になりました。多くの方が書店で目にされたのではないでしょうか。
斉藤倫×うきまるコンビ絵本
前置きが長くなりました。本題の斉藤倫さまの絵本でございます。絵本の場合は、“うきまる”さまとのコンビの作品が多くございます。テキストと画のコンビではなく、テキストをコンビで担当されております。
うきまるさまは、広告や商品企画、映像制作などの仕事をされている方で、絵本は、これからご紹介する斉藤さまとのコンビ作『はるとあき』がデビュー作でございます。
斉藤倫・うきまるコンビ絵本の特徴、魅力はなんといっても、ゴイスーな「アイデア」「着想」「設定」でございます。大人読者を虜にしている理由もそこにあるのではないかと存じます。もちろん、子どもも虜でございます。そこは児童書も絵本も一緒でございます。
『はるとあき』(小学館)の登場人物はなんと!四季でございます。「春」と「夏」と「秋」と「冬」でございます。それだけでも斬新ですが、なんと春は夏との会話中に秋に会ったことがないことに気付き、手紙を書くことに……。この設定を聞いただけでも、読みたくなるのではないかと……。
耳をすますと、聞こえてくるのは誰の声?
レミーおばあさんのたんすのひきだしには、かつて活躍したたくさんの小物たちがしまわれています。
ある日そこに、チョコレートを宝石のように彩っていた小箱が仲間入り。周りのみんなは、次はどんな役割を与えられるか、ドキドキしていました。時が過ぎるにつれて、小物たちはレミーさんに新しい役割を与えられ、嬉しそうに、次々とひきだしの中から旅立っていきます。だんだんさびしくなっていくひきだしの中で、次第に不安になる小箱。
そんなとき、レオおじいさんが訪ねてきました。
『レミーさんのひきだし』(小学館)はというと、舞台がレミーおばさんのたんすの中でございます。たんすの中にしまわれたモノたちの会話を中心にお話は展開します。そのしまわれたモノも、いわゆるどこの家のたんすの中にあるものではございません。そう、斉藤・うきまるコンビ作は一癖も二癖もあるのでございます。そして、物語はレオおじさんの登場と共にたんすの外に…。ヨーロッパのショートムービーを観ているような絵本でございます。
着想・アイデア、斎藤倫×うきまるコンビの真骨頂!
そして次にこちらの二冊。実は、この二冊を紹介したくて斉藤さまの特集をしたと言っても過言ではございません。
『まちがいまちに ようこそ』(小峰書店)と『のせのせ せーの!』(ブロンズ新社)でございます。この2作品の着想・アイデアがとにもかくにもゴイスーなのでございます。さらに、そのアイデアが絵本ならでは!というところがチョベリグーなのでございます。画を最大限活かしたテキスト、画と文章の至極のコラボレーションでございます。まさに「ザッツ・エホン」なのでございます。これまでにない斬新な手法が使われております。斉藤・うきまるコンビの真骨頂でございます。是非、というか絶対、見て欲しい読んで欲しい絵本なのでございます。
「まちがい」って、こんなに面白かったっけ?
ああ、なんていい天気。きょうはお引っこしです。おとうさんと、おかあさん、犬のころと、ぼく。これからすむ、あたらしいまちは「まちがいまち」っていうんだって! 斉藤倫×及川賢治が贈ることば遊び絵本。
画を担当しているのは、大人のファンも多い人気絵本作家、及川賢治さま。第13回日本絵本賞大賞を受賞した『よしおくんが ぎゅうにゅうを こぼしてしまったはなし』(岩崎書店)や『まる さんかく ぞう』(文渓堂)など、及川さまも「アイデア」「着想」「設定」がゴイスーな絵本作家として有名でございます。そんな二人、いや三人が組んだ絵本、ただの絵本になるはずがございません。この作品は「ことば遊び絵本」でございますが、もちろん、ただの言葉遊び絵本ではございません。かつてないスタイル(システム)の言葉遊び絵本でございます。お話の舞台は間違いに溢れる「まちがいまち」。どんな手法かというと、言葉のちょっとした間違いを画に転嫁するという手法(システム)でございます。たとえば、普通ならテキストが「はなばたけ(花畑)」であるべきところが「あなばたけ(穴畑)」になっているのでございます。絵本の画も花畑がある場所に穴畑が描かれております。そう、絵本の絵は間違いである「穴畑」で展開しております。ほかには「ホテル」が「ホタル」になっていたり、「えんとつ」が「えんぴつ」になっていたり、ゴイスーに不思議な世界が絵本の中で展開してまいります。子どもも大人も、そのテキストと画に釘付けなのでございます。
こちらは、2022年4月に発売された絵本でございます。行きつけの書店に行った際、店員さんに「これ、面白いですよ」と勧められ、「やられた!このアイデアがあったか!」と、一目惚れした絵本でございます。 ページをめくるのが楽しい、めくるという構造をゴイスーに活かしたアイデアの絵本でございます。左のページの風景に右の風景の一部が移るという仕組み、アイデアになっております。
ただ、それだけでないのが斉藤・うきまるコンビでございます。そのアイデアを最大限活かした物語の構成です。「なるほど、そうきたか」と思うこと間違いナッシングでございます。一癖も二癖もある構成とアイデアがパパママのハートを鷲掴みでございます。それでいて、子どもは子どもでワクワクドキドキ楽しめる絵本になっております。親子で楽しめること間違いナッシングでございます。まさに斉藤・うきまるコンビの真骨頂でございます。それでいて、絵本という形態を最大限活かした絵本ではないかと存じます。
N田N昌
絵本トレンドライター・放送作家・絵本専門士
絵本の最新情報を発信&大人絵本文化、絵本プレゼント文化の普及活動に日々努めております。
(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)
この記事が気に入ったらいいね!しよう ※最近の情報をお届けします |