ラップ、音頭、口上?! 大人も楽しい イマドキ「うた絵本」特集
子どもだけが読むなんてもったいない。大人も楽しい絵本の世界を、絵本トレンドライター・N田N昌さんが、独自の視点と「ゴイスー」な語り口でご紹介!
注目の新刊や作家さん、気になる絵本関連スポットなど、絵本のトレンド情報を大人に向けてお届けします。
パパママも一緒に歌いたい! イマドキの「うた絵本」のトレンドは?
レジャーシーズン到来! 旅行や帰省の車の中など、親子で一緒に歌を歌うシチュエーションも増えてくるのではないかと存じます。
数ある絵本のジャンルの中に、「うた絵本」というジャンルがございます。童謡などを絵付きで紹介したものからオリジナルの歌詞(詞だけで曲がない)のものなど様々なものがございます。基本的には、お子様と一緒に歌いながら楽しめる絵本と定義できるのではないかと存じます。広くは、声に出して読むと自然にリズムや節が生まれるような「ことば遊びの絵本」と言ってもよろしいかと。
なりきりラップで楽しむ「ラップ絵本」!
うた絵本は昔からございますが、最近の傾向でいうとラップ系のものが目立っているような気がいたします。例えば、こちら。
ラップにあまり関心のない方でも楽しめる、ラップ初心者向きのラップ絵本ではないかと。というのも、テキスト(歌詞)をナンセンス絵本で有名な おおなり修司さまが担当。起床ネタで身近なのはもちろん、とにかくテキストが楽しくて、歌ったり読んだりするだけで楽しくなる絵本でございます。さらに、画を担当しているのが人気絵本作家の飯野和好さま! 盛り上がらないわけがございません。「ねぎぼうずのあさたろう」シリーズ(福音館書店)や昔ばなしなど、どちらかというと日本的な画風のイメージの強い飯野さまが描くDJ、ラッパーがゴイスーにいい味がでております。飯野ファンは必見でございます。パパママもハマること間違いナッシングなラップ絵本でございます。是非、親子でお楽しみいただけるのではないかと存じます。
そして、本物のラッパーが絵本を作ったら…という編集者の発想から誕生したのが、『まいにちたのしい』(ブロンズ新社)でございます。
テキスト(歌詞)を担当したのはラップユニット「KAKATO」さま。人気ラッパーで「デザインあ」(Eテレ)で楽曲制作や子ども向けのラップワークショップの講師もされております。画はMVなども手がけるアーティストのオオクボリュウさまが担当。制作過程も独特で、毎回出版社に集合して、その場で作っては手直ししつつ作っていったそうです。本物のラッパーが手がけた絵本をご体験されたい方は是非是非、親子でご体験くださいませ。
もし、『まいにちたのしい』を読まれて(歌われて)ハマったなら、是非、こちらの絵本もオススメでございます。『まいにちたのしい』から約1年後、月刊絵本として出版された『ようようしょうてんがい』(こどものとも2020年12月号)でございます。こちらは、ラップユニット「KAKATO」のひとり、環ROYさまがテキスト(歌詞)を担当されております。
懐かしくて新しい?! 音頭、口上絵本
今回、うた絵本を特集したく思ったきっかけとなったのがこちらの絵本でございます。
生命の喜びにあふれた、みんなで歌える爆笑絵本
夕暮れの森で、生き物たちが太鼓にあわせて歌っています。地中での暮らしを終え、仲間に会えた喜びを歌うセミ。おしゃれな名前で呼ばれたいと嘆くデブスナネズミ……。小さな生き物の声に耳をすましてみませんか?読み聞かせで盛り上がる、歌って踊れる絵本。
サトウマサノリさま作・絵の絵本でございます。とにかくシュールで笑えます! 歌って、絵を見て笑えます。お子様よりパパママの方が大きな声で笑っちゃう可能性大でございます。パパママは、疲れたとき、ストレスが溜まったときに、絵を見ながら独りで読むと(歌うと)癒されること間違いナッシングでございます。とにかく声に出して読むことで(歌うことで)笑える絵本でございます。もちろん、リズムもオノマトペも見事で、子どもウケも間違いございません。様々な生き物が登場しますが、その絵もシュールで絵とテキストの相性がたまりまセブンでございます。わたくしの中では、最笑のうた絵本でございます。
次は、韻を踏んだ口上の絵本でございます。
画は、口上にあわせて芸をする旅芸人の動物たちの姿が描かれております。こちらのテキスト(口上)が秀逸でございます。歌いたく、語りたくなってしまうのでございます。さすが、言葉遊びの達人と言われる絵本作家、石津ちひろさまでございます。画は、絵本もたくさん手掛ける人気イラストレーターのいぬんこさまが担当。こちらもテキストとの相性がたまりまセブンでございます。
実はこの絵本、大阪が発祥といわれる話芸のひとつで、江戸時代に生まれた日本語ラップとも言える「あほだら経」がアイディアのもとになっております。
そして是非、ご覧いただきたいのが、出版社(福音館書店)の公式動画でございます。
超贅沢な作りになっております。アニメーションではなく、実写でございます。三味線の演奏とユニークな踊りでございます。味のあるおじさん(絵本作家で、切り絵師・パフォーマーであるチャンキー松本さんと、ミュージシャンのソボブキ・西尾賢さんのお二人)と可愛い子どもの踊りがゴイスーに“笑カワイイ”動画でございます。
実は、『ぺんぺんいちざ』に限らず、うた絵本の多くはPVなどの動画がネット上にございます。ちなみに『まいにちたのしい』では、テキストを担当した「KAKATO」のお二人が登場、ラップで歌われています(読み聞かせをされております)。メロディはそちらを参考するのがよろしいかと存じます。また、『だれでもおんど』のように巻末に楽譜がついたものもございます。
ゆかいでへんてこ「現代版わらべうた」絵本
最後にご紹介するのは、去年2021年9月に出版された『ぽんちうた』(ブロンズ新社)でございます。今回ご紹介したなかで最新の絵本でございます。
話題のイラストレーターの“死後くん”が、わらべ歌にヒントを得て作った15作の歌が楽しめる一冊でございます。意味がありそうでない、でもなぜが歌いたくなる楽しいテキストでございます。ついついくちずさみたくなる絵本でございます。
こちらも公式動画(アニメーション)がございます。
オリジナルで楽しい節をつけて歌ったり、踊ったりするのも、うた絵本の醍醐味でございます。是非、パパママも一緒にお楽しみ頂ければと存じます。
N田N昌
絵本トレンドライター・放送作家・絵本専門士
絵本の最新情報を発信&大人絵本文化、絵本プレゼント文化の普及活動に日々努めております。
(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)
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