笑撃の絵本作家 ”ガタロー☆マン”とは?
子どもだけが読むなんてもったいない。大人も楽しい絵本の世界を、絵本トレンドライター・N田N昌さんが、独自の視点と「ゴイスー」な語り口でご紹介!
注目の新刊や作家さん、気になる絵本関連スポットなど、絵本のトレンド情報を大人に向けてお届けします。
今回は、話題の「笑本おかしばなし」シリーズを特集! シリーズの編集者・渡会拓哉さん、営業・楠本徹さん(誠文堂新光社)にもお話を伺いましたので、あわせてお楽しみください!
パパママも爆笑! 親子で読みたい話題作「笑本おかしばなし」シリーズ
これまでの連載の中で、くりはらたかしさま、キューライスさまなど、漫画家から絵本デビューされた方を特集したことがございました。
今回ご紹介するガタロー☆マンさまも漫画家でございます。わたくしも大ファンでございました。マンガ界の鬼才・漫☆画太郎さまでございます(絵本と漫画でペンネームが違います)。 30代~50代の男性の方(当時、週刊少年ジャンプを読んでいた世代)ならよくご存知かもしれません。超シュール、超お下品がトレードマークのギャグ漫画、お笑い好きからは絶大な支持を受けている漫画家さまでございます。代表作の『珍遊記』はシリーズ累計販売部数約400万部を記録、松山ケンイチさま主演で実写映画化もされております。
ガタロー☆マン(漫☆画太郎)
子どもの笑顔を守るため
ニコリン星からやってきた宇宙人☆
かなしい結末がだいきらいで世界中のむかしばなしをハッピーエンドに変えちゃおうとたくらんでいる年齢不詳・性別不明のスーパーヒーロー☆
そんな漫☆画太郎さまの絵本デビュー、その作風を知る方は、「どんな絵本になっちゃうの?!」と驚かれたのではないかと存じます。ところがでございます! シリーズ1作目、絵本デビュー作の『笑本おかしばなし(1) ももたろう』は、昨年末発表になった第14回MOE絵本屋さん大賞2021 で新人賞1位を受賞! シリーズ累計発行部数は20万部突破!! でございます。今年2月には、シリーズ第3作も発売になっております。
わたくしも、初めてガタロー☆マンさまの絵本を読んだ際、「裏切られた! まさかまさか、よだれ、鼻水、おちんちん全開の画風が、世のママたちにも受け入れられるとは…」「漫☆画太郎さまの笑いのスタイルは、絵本向きでもあったのか!」と思い知らされたのでございます。
いったいどんな絵本なのか?
前置きが長すぎて申し訳ございません。ひと言でいえば、「今までにない絵本」でございます。新しいジャンルといっても過言ではございません。 シリーズ3作とも、誰もが知る昔ばなしを大胆にアレンジした内容になっております。「悲劇は喜劇に、喜劇は超喜劇に!」をコンセプトに、かなしい結末がだいきらいで、世界中のむかしばなしをハッピーエンドに変えちゃおうとたくらんでいるガタロー☆マンが、独自の解釈を加えた絵本シリーズということでございます。
とにかく大人も子どもも大爆笑なのでございます。ここまで読者を笑わせることに徹した絵本には、まだお目にかかったことがございません。そこがこの絵本のゴイスーに魅力的なところでございます。
大人が自分のために買う絵本が昨今増えておりますが、ガタロー絵本は、ギャグ漫画を読んだり、コントを観たりする感覚で、本人が笑うために買う絵本ではないかと。
トータス松本さまがゲスト出演した先日(1月29日)のNHKの人気番組「あさイチ」で、『ももたろう』が“ガッツがでる本”として紹介され、絵本としての認知度も急上昇、なんとママ層、大人の女性からの支持も厚いということでございます。
子どもも大人も、一緒に笑って楽しめるまったくあたらしい昔話 第1弾!
デビュー作の『ももたろう』については、「漫画界の鬼才も参入! 大人も楽しい ユニークすぎる“桃太郎えほん”」という特集で、ご紹介させて頂いておりますので、是非そちらをお読み頂ければと存じます。
可愛らしいキャラクターたちが繰り広げるドタバタ劇
大大大好評!の『ももたろう』に続く、漫☆画太郎こと「ガタロー☆マン」作、笑本(えほん)おかしばなしシリーズ第2弾!!!
あるひ おじいさんが はたけをたがやしにいくと、おおきなかぶが はえてい……ました!!!
ガタロー☆マンが今回描くお話は「おおきなかぶ(~)」?
今作ももちろん、大人も子どもも思わずにっこり、そして繰り返し読みたくなる「笑本」に仕上がり……ました!!!
可愛らしいキャラクターたちが繰り広げるドタバタをお楽しみください!
2作目の『おおきなかぶ~』では、なんと、トータス松本さまが絵本の帯(推薦コメント)を書かれております。ちなみに、そのコメントをご紹介すると、
ページをめくるめくるめくるめくる
めくるめくコール・アンド・レスポンス! すべてがサビ!
これは絵本の
ソウル・ミュージックやないか!
まったく同感でございます。読めばトータスさまの言っている意味が「わかる〜」でございます。
パワフルかつハイテンション、そして圧倒的な画力
シリーズ累計発行部数20万部突破!!!
第14回MOE絵本屋さん大賞2021 新人賞1位受賞『ももたろう』、
第2作『おおきなかぶ~』に続く、笑本(えほん)おかしばなしシリーズ第3弾が登場!!!
ガタロー☆マンが今回描くお話はウクライナの民話「てぶくろ」がテーマ。
おじいさんが森の中で落とした「てぶくろ」のなかに、動物たちが次々ともぐりこみ……???
今作も、パワフルかつハイテンション、そして圧倒的な画力で、
大人も子どもも、みんなつい笑顔になってしまう「笑本」に仕上がり……ました!!!
3作目の『てぶ~くろ』の元ネタの『てぶくろ』は、ウクライナの民話でございます。ガタロー☆マンさまの題材となる昔ばなしのチョイスも気になるところでございます。
最後になりますが、是非パパママには、お子様と一緒に元ネタの昔ばなしの絵本と読み比べて頂きたいのでございます。昔ばなしの絵本は複数、違う出版社から出版されております。それぞれ、絵もテキストも違うはずでございます。それらも含めて親子で読み比べるのも、楽しいかもでございます。「笑本おかしばなし」シリーズを含め、「物語」の多様性を肌で感じていただけるのではないかと。
「ももたろう」の絵本
「おおきなかぶ」の絵本
「てぶくろ」の絵本
「笑本おかしばなし」プロジェクトチームインタビュー!
「笑本おかしばなし」シリーズの制作の裏側やエピソード、気になる読者の反響について、誠文堂新光社の担当編集者・渡会拓哉さん、営業・楠本徹さんにお話を伺いました。
―― マンガ界の鬼才、漫☆画太郎さんが初めて手がける絵本、企画の段階での社内の声はどんなものだったのでしょうか?
渡会: 最初の段階でいただいていたラフを読んだときから「子どもたちはきっと喜ぶに違いない」という確信はありましたので(もちろん漫☆画太郎先生のマンガ作品、作風は知っていましたが)、個人的には特に心配はありませんでした。社内的にも、特に先生を知る30~40代の面々が皆企画を面白がってくれて、後押ししてもらえました。
しかし刺激の強い作品であることは間違いありませんので、「絵本」として親御さんに受け入れてもらえるのかどうか、という点についての心配は多少ありました。結果的にはとても多くの親御さん、子どもたちが楽しんでくれていて、とてもうれしく思います。
楠本: 企画会議の際は、社内でもこの企画に対して温度差が少しあるなと思っていました。ただ30代~40代の人間は「やっちゃえ!やっちゃえ!」みたいな空気でした。これは当時の私個人の考えですが、プロモーションを上手く仕掛ければ、話題になると思っていました。兎にも角にも、書店さん、読者に面白がってもらえれば勝ちだと企画を見たときに思ったのを今でも思い出しますし、シリーズが出るたびに自分が客として面白いと思うことを試してみようと思っています。
――『ももたろう』のラフを最初に見たときの感想を教えてください。
渡会: ラフ(ネーム)の段階から、「~し……ました!!!」で物語を進行させる構成は出来上がっていました。語り口、見せ方のアレンジで、見知ったお話がこうも楽しく、リズミカルになるのか、「これは発明だ!」と、興奮したのを覚えています。自然と声に出して読みたくなりますよね。
楠本: ラフを見たとき、第一声「(画太郎先生)本人?」の後に「やべぇのきた!」って声に出してしまった気がしますね。もともと画太郎先生の漫画をかなり持っていたので、「絵本か!!」と驚きました。そして中身を見て笑いました。この本は絵本ですが、父親たちが自分で読んで喜んでから子どもに読んであげる姿が、ラフを読んだ後に見えました。読者がイメージできる企画って売れるなと思っています。あと単純にこの本を売るのが面白そうだなと思いました。
―― 絵本が完成するまでのエピソードで印象に残っていることがあれば教えてください。
渡会: 原画のもつ迫力、鮮やかさ、美しさには本当に終始圧倒されっぱなしでした。長年マンガ界の一線で活躍し続けている作家さんの気概と、絵本に対する本気を感じ、同時に私自身、この作品を読者のみなさんにしっかりと届けねばと、身の引き締まるような気持ちになりました。原画については、展示会など、今後読者のみなさんにも直接目に触れていただけるような機会があればいいなと、思っています。
―― 現在シリーズ3作まで刊行され、読者や書店さんからどのような反響が届いていますか?
渡会: お父さんやお母さん、幼稚園、小学校の先生たちが、みんなで「ました!!!」と声に出して読んでいる、という感想を多く目にしますが、その様子を想像すると、本当にうれしくなってしまいます。
また、4~6歳の子どもたちから弊社にお手紙もたくさん頂戴します。覚えたばかりであろう文字で「だいすき」と書かれたものや、イラストを真似て書いたもの、そして親御さんからも「今まで絵本に興味の無かった子どもが何度も繰り返し読んでいる」といった感想をいただくなど、ガタロー☆マン先生が笑本に込めた想いが、広く、そして着実に届いていることを実感します。
楠本: シリーズとして回を重ねるごとに、書店さん、読者さん共にこのシリーズに対しての受け入れ体制が好意的になってきているような気がします。当初はコミック棚で展開する書店さんも多かったのですが、絵本として展開してくださる書店さんが増えてきた気がします。
『ももたろう』は、刊行前から話題になっていたので、出た後の感想が概ね好意的で驚きました。正直言うと、もう少し賛否両論になるのかなと思っていたので!これは嬉しい意味で裏切られました。
個人的に嬉しかったのが、『おおきなかぶ~』を出したときに、ノベルティで「コカブの種」を作ったのですが、とある書店さんに「今まで見たノベルティの中で一番くだらないけど、面白い」と言われたことです。それから、「コロナ禍で暗い世の中を明るくしてくれてありがとう」という読者の声を頂くと、自社の宣伝課と先生に「ありがとう!」と心から思います。けど毎回、配本前はドキドキしながら営業していますよ(笑)。
―― シリーズ3作の中で、おふたりのお気に入りの場面や、登場人物・キャラクターを教えてください。
渡会: お気に入りは『おおきなかぶ~』ラストの「あの」展開です。ネタバレになるので言えませんが……。この展開は子どもも大好きだと思いますが、大人だって笑わずにはいられませんよね!
楠本: これは2つあります。『ももたろう』の犬と『おおきなかぶ~』のネズミです。シリーズ通してみると、「あれ?この犬は……」とか色々あるんですけど、ゲラで見たももたろうの犬がビキニだったときのインパクトが忘れられない。『おおきなかぶ~』のネズミはとにかくかわいくて!
―― 絵本ナビ読者、シリーズのファンへ向けてメッセージをお願いします。
渡会:ガタロー☆マン先生の「子どもたちを笑顔にしたい」という想いが多くの方々に届き、そして高い評価をいただけていること、我々としましてはこれ以上の喜びはありません! 読者のみなさまへは深く感謝しています。今後とも末永く「笑本おかしばなし」シリーズをご愛顧いただけますと幸いです!
楠本: まず、小社の「笑本おかしばなし」シリーズを読んでいただいた読者の皆様に感謝を申し上げます。皆さまがこの本を面白がってくださるのが、こちらとしては何よりの活力です。
毎回毎回、企画が出てくるときは楽しみで、本が出る前は緊張し、大きな反響があれば一喜一憂しながら、このシリーズが一人でも多くの読者様に届くように頑張っています。営業として何より嬉しいのは、この本を親子で楽しんで読んでいる場面を見ること。それまでの苦労が吹っ飛びますので、これからも長くこの本を愛していただけますと嬉しいです。
長くなりましたが何より伝えたいのは楽しんでいただいた全ての方に「ありがとうござい……ました!!!」と、あの顔で伝えたいですね。
―― 渡会さん、楠本さん、ありがとうござい……ました!!!
「笑本おかしばなし」シリーズ
N田N昌
絵本トレンドライター・放送作家・絵本専門士
絵本の最新情報を発信&大人絵本文化、絵本プレゼント文化の普及活動に日々努めております。
(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)
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